公務員は国や地方公共団体の国民・住民の個人情報を扱ったり、重要な政策上の情報を扱っています。これらの情報は、プライバシーに係る情報や、政策の円滑な遂行や公平性のために秘密にするべき情報があります。こうした情報を悪用して不正な利益を得たり、漏洩すれば厳しい制裁を受けます
ここでは、公務員の情報の保護について説明します。
公務員の秘密情報の保護
国家公務員法・地方公務員法
国家公務員は、国家公務員法100条1項において、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と定められています。
地方公務員についても、地方公務員法で同様に定められています(地方公務員法34条1項)。
これらの規定に違反して秘密を洩らしたときは、いずれも1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(国家公務員法109条12号、地方公務員法60条2号)。
個人情報保護法
個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)は、個人情報(第2条第1項第1号)について、「デジタル社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにし、個人情報を取り扱う事業者及び行政機関等についてこれらの特性に応じて遵守すべき義務等を定めるとともに、個人情報保護委員会を設置することにより、行政機関等の事務及び事業の適正かつ円滑な運営を図り、並びに個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的」としています(第1条)。
個人情報保護法は、国の責務として、「この法律の趣旨にのっとり、国の機関、地方公共団体の機関、独立行政法人等、地方独立行政法人及び事業者等による個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な施策を総合的に策定し、及びこれを実施する責務を有」すると定めています(第4条)。
行政機関等の職員若しくは職員であった者が、正当な理由がないのに、個人の秘密に属する事項が記録された第60条第2項第1号(保有個人情報を含む情報の集合物であって、一定の事務の目的を達成するために特定の保有個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの)に係る個人情報ファイル(その全部又は一部を複製し、又は加工したものを含む。)を提供したときは、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(第176条)。
行政機関等の職員がその職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する事項が記録された文書、図画又は電磁的記録を収集したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(第181条)。
懲戒処分
秘密情報の悪用や漏洩に対しては厳しい懲戒処分が下されます。
人事院の「懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職―68)」の「第2 標準例」、「1 一般服務関係」では、次のように定められています。
(8) 秘密漏えい
ア 職務上知ることのできた秘密を故意に漏らし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。この場合において、自己の不正な利益を図る目的で秘密を漏らした職員は、免職とする。
イ 具体的に命令され、又は注意喚起された情報セキュリティ対策を怠ったことにより、職務上の秘密が漏えいし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。
(12) 個人の秘密情報の目的外収集
その職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する事項が記録された文書等を収集した職員は、減給又は戒告とする。
まとめ
以上のように、公務員には厳格な秘密保持の義務があり、情報を漏洩したり悪用すれば違反すれば厳しい処分を受けます。
公務員の方で情報の扱いに問題がないか不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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