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公務員の起訴休職-公務員が事件を起こしてしまい、起訴された場合どうなるかについて解説

2024-05-10

公務員が刑事事件を起こしたり、起こした疑いをかけられて起訴、つまり公判請求をされると、多くの場合「起訴休職」などと言って、被告人となった公務員は裁判期間中休職させられることになります。

以下、公務員が公判請求され刑事裁判にかけられた場合の流れや対処について説明します。

事案

国家公務員Aさんは、普段は真面目に仕事はしているものの、プライベートでは自分の性欲を満たすために盗撮行為や痴漢行為を繰り返していた。手口としては警察に発見しにくい場所を選んで行うなど、容易には発覚しにくいもので、Aさんは自身の犯行が警察等に発覚することなく長年にわたって痴漢や盗撮行為を繰り返していた。

ある日、そのようなAさんの努力もむなしく、Aさんは電車内での痴漢と盗撮行為により現行犯逮捕されてしまった。逮捕されてから数日は、私選弁護人と家族の尽力により、職場に事件を起こしたことや逮捕されたことが発覚することはなかった。現行犯逮捕された事件については、示談が成立して不起訴になる可能性に賭けたいというAさんの意向で、私選弁護人が示談に動いた。結局、示談が成立はしたものの、あまりにも過去の余罪が多かったこともあり、検察官は現行犯逮捕された事件で起訴することを決定した。

起訴されたことで、警察から監督官庁に通報がなされ、Aさんは起訴休職を命じられることになった。

(上記はフィクションであり、弊所を含めた特定の法律事務所や、特定の人物、団体等とは一切関係ありません。)

関連法令

地方公務員法

第二十八条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。

② 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを休職することができる。

二 刑事事件に関し起訴された場合

国家公務員法

(本人の意に反する休職の場合)

第七十九条 職員が、左の各号の一に該当する場合又は人事院規則で定めるその他の場合においては、その意に反して、これを休職することができる。

一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合

二 刑事事件に関し起訴された場合

(休職の効果)

第八十条 前条第一号の規定による休職の期間は、人事院規則でこれを定める。休職期間中その事故の消滅したときは、休職は当然終了したものとし、すみやかに復職を命じなければならない。

④ 休職者は、職員としての身分を保有するが、職務に従事しない。休職者は、その休職の期間中、給与に関する法律で別段の定めをしない限り、何らの給与を受けてはならない。

(刑事裁判との関係)

第八十五条 懲戒に付せらるべき事件が、刑事裁判所に係属する間においても、人事院又は人事院の承認を経て任命権者は、同一事件について、適宜に、懲戒手続を進めることができる。(以下略)

国家公務員、地方公務員問わず、公務員の場合、起訴されると、刑事裁判での認否に関わらず、強制的に休職させられることがあります。もちろん、休職中は仕事ができませんし、原則として給与は支給されません(国家公務員法第80条第4項参照)。

また、刑事裁判は有罪判決が下るまで無罪推定として被告人を扱うのが大原則なのですが、国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)。そのため、特に事案がある程度単純で本人が罪を認めている事件などであれば、起訴されたり判決が出る前に懲戒手続がすすめられ、懲戒処分が下されることがあります。

対処法

このように、示談をすれば通常不起訴となる可能性が高い部類の事件であっても、常習性の程度やその他情状によっては、不起訴となることなく、起訴されてしまうことも有り得ます。

もちろん通常通りの刑事弁護活動や示談交渉の能力も重要ですが、公務員の方の事件の場合、民間で働いている方が事件を起こした場合では考えられないような手続もあります。刑事事件や懲戒手続で良い結果を出していくためには、刑事弁護だけではなく、懲戒手続等にも熟知した弁護士が必要です。

刑事事件を起こしてしまうと、どうしても弁護人だけが頼りになってしまうところがあります。安心のできる刑事弁護を受けたい公務員の方や、そのご家族の方は、ぜひ一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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公務員の懲戒処分の流れー公務員が罪を犯した場合の懲戒処分の内容や手続きの流れについて解説

公務員と自動車による人身事故-公務員が自動車を運転中に人身事故を起こしてしまった場合について解説

2024-05-07

普段は真面目に仕事をして生活している公務員の方々でも,自動車による人身事故を起こしてしまうことがあります。

公務員が人身事故を起こしてしまったら,失職や懲戒処分を受けることになります。

失職

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」には,以下のように規定されております。

「(過失運転致死傷)

第5条 自動車の運転上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は,七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし,その傷害が軽いときは,情状により,その刑を免除することができる。」

国家公務員法・地方公務員法では,執行猶予だとしても,禁錮以上の刑に処せられたら,公務員としての身分を失うと規定されております。

つまり,正式起訴されたら,罰金処分の可能性が低いことから,失職となってしまいます。

検察官は,正式起訴をするかどうかの判断で,注意義務違反の大きさと被害の大きさを総合的に考慮しています。

被害の大きさは基本的には客観的証拠に基づき評価されてくるので,争いの余地は小さいと思われます。

しかし,注意義務違反について,取調べで違法・不当な働きかけがあり,過剰に悪質性が大きい内容の供述調書が作成されてしまうことがあります。

警察官から取調べで,威圧されたり,誘導されたりすることが珍しくありません。

まずは取調べで毅然とした対応をして,注意義務違反が過剰に大きく評価されないようにしなければなりません。

そのためには,刑事事件について能力のある弁護士を付けて対応していく必要があります。

取調べで具体的にどのように話すかを打ち合わせし,違法・不当な働きかけがあったら抗議や黙秘で対抗することになります。

懲戒処分

刑事処分が罰金処分以下だったとしても,勤務先から懲戒処分を受けることになります。

人事院が示している「懲戒処分の指針について」では,以下のように記載されております。

「4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係

(1) 飲酒運転

ア 酒酔い運転をした職員は,免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ,又は人に傷害を負わせた職員は,免職とする。

イ 酒気帯び運転をした職員は,免職,停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ,又は人に傷害を負わせた職員は,免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は,免職)とする。

ウ 飲酒運転をした職員に対し,車両若しくは酒類を提供し,若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は,飲酒運転をした職員に対する処分量定,当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して,免職,停職,減給又は戒告とする。

 (2) 飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの)

ア 人を死亡させ,又は重篤な傷害を負わせた職員は,免職,停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は,免職又は停職とする。

イ 人に傷害を負わせた職員は,減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は,停職又は減給とする。

(3) 飲酒運転以外の交通法規違反

著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は,停職,減給又は戒告とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こして措置義務違反をした職員は,停職又は減給とする。

(注) 処分を行うに際しては,過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとする。」

飲酒運転や轢き逃げが加わると,特に重い処分となります。

懲戒処分では,過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとされておりますので,やはり個々の事故の状況の分析や被害者対応が必要になってきます。

被害者への傷害についても,重篤なものかどうかの評価を慎重にする必要があります。

過失の程度について,殊更重く評価されないように主張していかなければなりません。

事故後の対応等で一番重要なのは,被害者への賠償です。

任意保険で対人・対物無制限で補償されているかどうかがまず重要です。

そのうえで,任意保険の賠償金とは別に,示談金をお支払いして示談が成立したら,刑事処分と懲戒処分で有利に評価される可能性が高まります。

被害者に対して誠意を持って謝罪と話し合いをしていく必要があります。

そのためには,刑事事件について経験と能力のある弁護士に依頼することが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,公務員の自動車による人身事故の事件もこれまでに数多く扱って解決してきました。

まずは無料の面談でご相談ください。

刑事事件ではスピードが重要ですので,なるべく早くご相談されることをお勧めいたします。

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公務員と不同意性交等事件-公務員が不同意性交等事件を起こしてしまった場合について解説

2024-04-29

公務員だとしても、不同意性交等罪として問題が生じることがあります。

暴行・脅迫をすることだけでなく、肉体関係を持つ過程で被害者の同意がなかったとして問題となることがあります。

不同意性交等罪

不同意性交等罪の要件は、以下のとおりです(刑法第177条第1項・第176条第1項)。

①不同意わいせつ罪に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、

②同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、

③性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものである性交等をした者は、

④婚姻関係の有無にかかわらず、

5年以上の有期懲役刑に処されることになります。

①の不同意わいせつ罪には、以下が規定されております。

一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。

二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。

三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。

四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。

五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。

六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。

七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。

八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

暴行・脅迫がなくても、上記のような状況で安易に肉体関係を持ったら、②被害者の同意がないと評価される可能性があります。

同意があると思っていた、との主張が認められることは難しいと思われます。

③性交等の範囲も広がりました。

女性器内に指を入れるような行為も性交等に含まれます。

④夫婦間であっても、相手の同意を得ずに性交等をしたら、犯罪となる可能性があります。

行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、不同意性交等罪となります。

16歳未満の者に対し、性交等をした者も、被害者の同意があったとしても、不同意性交等罪となります。なお、13歳以上16歳未満の者については、行為者が被害者が生まれた日から5年以上前の日に生まれていた場合は、被害者の同意にかかわらず不同意性交等罪が成立します。

逮捕されたら

不同意性交等罪で公務員が逮捕されたら、その地位の重要性から、高い可能性で実名報道がなされると思われます。勤務先に知られ、懲戒処分を受けることになります。

逮捕・勾留の後に起訴され、裁判で有罪となったら、長期間の実刑で刑務所に入ることになります。前述のとおり不同意性交等は最低でも懲役刑ですので、有罪となると公務員は失職します(国家公務員法第76条・第38条第1号、地方公務員法第28条第4項・第16条第1号)。

懲戒処分

公務員の場合、犯罪を起こせば非違行為をしたとして懲戒処分の対象になります。

処分の内容は、それぞれの所属する団体の懲戒処分の基準により決定されます。

国家公務員の「懲戒処分の指針について」などのように、不同意性交等自体は記載されていないところもあります。もっとも、この「懲戒処分の指針について」でも、盗撮や痴漢が停職又は減給とされていることから、不同意性交等をすればより重い処分が下されるでしょう。

早めの対応が重要

逮捕後の被害者との示談活動も、起訴前に成立させて不起訴を求めたり、起訴後に成立させて実刑期間を短くさせたり、という観点から重要となります。

しかし何よりも、警察に被害届が出されて刑事事件化する前に動いて、被害者と交渉して示談が成立できるのであれば、逮捕や起訴等もなく事件が解決することになります。

もちろん、暴行や脅迫があれば、被害者の感情からして示談は難しいと思われます。

しかし、状況次第では、被害者の同意がない状況だったとしても、犯行の悪質性や加害者と被害者の関係性や被害者の考え等によっては、被害者が示談に応じてくれることもあります。

なので、早めに動いて、被害者に対して誠意ある態度を示し、謝罪と被害弁償金の支払いを行って、示談を求めていくことが重要です。

ぜひお早目のご相談を

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事弁護に強い弁護士が多数所属しております。

不同意性交等事件や公務員犯罪についても、これまで多数扱って解決に導いてきました。

早めの行動が重要ですので、ぜひ当事務所の無料面談に申し込んでいただけたらと思います。

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公務員の飲酒運転-公務員が飲酒運転をしたときに成立する犯罪や懲戒処分について解説

2024-04-22

飲酒運転は重大な交通事故につながるおそれが高く、厳しく処罰されます。全体の奉仕者である公務員が飲酒運転をすれば、重い懲戒処分が下されます。ここでは、公務員が飲酒運転をしてしまった場合にどうなるかについて解説します。

刑罰

道路交通法違反

何人も、酒気を帯びて車両等(道路交通法第2条第1項第17号)を運転してはなりません(道路交通法第65条第1項)。

この規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)にあった者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(酒酔い運転。道路交通法第117条の2第1項第1号)。

その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあった者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(酒気帯び運転。道路交通法第117条の2の2第1項第3号)。「身体に政令で定める程度」は道路交通法施行令にて定められており、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラムです(道路交通法施行令第44条の3)。

また、自分が飲酒運転をしなくても処罰されることがあります。酒気帯び運転することとなるおそれがある者に車両等を提供すること(道路交通法第65条第2項)や、酒類を提供したり飲酒をすすめること(道路交通法第65条第3項)も禁止されています。車両等の提供をした者は、運転者が酒酔い運転をした場合は5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処され(道路交通法第117条の2第1項第2号)、酒気帯び運転をした場合は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(道路交通法第117条の2の2第1項第4号)。酒類を提供したり飲酒をすすめた者は、運転者が酒酔い運転をした場合は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処され(道路交通法第117条の2の2第1項第5号)、酒気帯び運転をした場合は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます(道路交通法第117条の3の2第2号)。

危険運転致死傷

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)では、飲酒運転事故の中でも悪質なものが、危険運転と定められています。

アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為を行い、よって、人を死傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処します(自動車運転処罰法第2条第1号)。

アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処します(自動車運転処罰法第3条第1項)。

また、自動車運転処罰法は、このような飲酒運転の発覚を妨げるような行為をした場合を「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱」として処罰しています。アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役に処します(自動車運転処罰法第4条)。

懲戒処分

飲酒運転をした場合、重い懲戒処分を下されます。

国家公務員に関する「懲戒処分の指針について」では、「第2 標準例」「4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係」「⑴ 飲酒運転」にて、次のように定めています。

ア 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。

イ 酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職)とする。

ウ 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。

酒気帯び運転でも免職がありえます。

失職

また、公務員は禁錮以上の刑に処せられると当然失職となります(国家公務員法第76条・第38条第1号、地方公務員法第28条第4項・第16条第1号)。地方公務員の場合、地方公務員法第28条第4項により、条例に定める場合は失職とならないという例外を定めることができます。この場合でも、例外に当たるのは過失による交通事故などに限られており、飲酒運転をしていた場合は例外に当たらないとする公共団体は多いです。

まとめ

以上のように、公務員が飲酒運転をしてしまうと重大な結果に至ることになります。

公務員の方で飲酒運転にお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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公務員とアルコールにかかわる犯罪-公務員がアルコールで失敗して犯罪を行ってしまったケースについて解説

公務員の盗撮事件―公務員が盗撮をした場合に成立する犯罪と懲戒処分について解説

2024-04-15

公務員の方でも、盗撮事件を起こすことが少なくありません。

公務員の方で盗撮事件を起こしてしまい、当事務所に相談・依頼をされることが多くあります。

盗撮は、スマートフォンカメラなどで手軽にできてしまうことから、安易な気持ちで犯行を行ってしまいます。

しかし、発覚されてしまったときに失うものが非常に大きいです。

ネットニュースでも、以下のような記事があります。

※一部情報を修正しております。

「懲戒処分…ホテルで女性を盗撮した部長、女性に気付かれ逮捕…示談成立、釈放され不起訴に 課長もトイレ盗撮、被害者が特定されず逮捕なし

県と市は、盗撮行為などをしたとして、地方公務員法に基づき、部長を停職6カ月、課長を停職1カ月の懲戒処分にしたと発表した。2人はいずれも行為を認め、深く反省しているという。

部長は、ホテルで、派遣型風俗店の女性を呼び出し、ハンディーカメラを設置して隠し撮りした。女性がカメラに気付いて通報し、性的姿態等撮影容疑で逮捕された。女性と示談が成立し、釈放され、翌日に不起訴処分となった。

課長は、飲食店の共用個室トイレに、盗撮目的で映像機器を設置した。客の通報により、警察の事情聴取を受けた。被害届の提出はなく、被害者が特定されていないものの、市は条例に抵触すると判断して処分した。

県と市は幹部職員の処分について、「信頼を大きく失墜させる行為で、深くおわび申し上げます。全職員に綱紀粛正を徹底し、信頼回復に努めてまいります」とコメントを出した。」

性的姿態等撮影罪

盗撮罪は、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」に定められております。

性的姿態等撮影罪として、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されることになります。

未遂も罰せられます。

正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる対象性的姿態等を撮影する行為が、性的姿態等撮影罪となります。

・人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるもの)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分

・わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態

不同意わいせつ罪に掲げる以下の行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為も、性的姿態等撮影罪となります。

・暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。

・心身の障害を生じさせること又はそれがあること。

・アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。

・睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。

・同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。

・予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。

・虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。

・経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為も、性的姿態等撮影罪となります。

正当な理由がないのに、13歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は13歳以上16歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為も、性的姿態等撮影罪となります。

失職・懲戒処分

禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者は、失職となります。

禁錮以上の刑に処せられなくても、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合等として、懲戒処分を受けることになります。

人事院で発表されている「懲戒処分の指針について」では、「公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けていない状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減給とする。」と示されております。

しかし、悪質性が重く評価されたりしたら、当然ですが懲戒免職の可能性もありえます。

公務員の方で、盗撮事件をおこしてしまったら、ぜひ当事務所へ相談・依頼をしてください。

当事務所が全力でサポートいたします。

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公務員と性犯罪

公務員と国家賠償-公立学校の生徒が教師の不適切な指導により重い障害を負った事件を基に、公務員と国家賠償について解説

2024-04-08

【事例】

2016年に、都立高校の水泳の授業中に教諭から無理な飛び込みの指示を受け、プールの底に頭を打ち付けて重いけがをしたとして、当時3年生だった元男子生徒が東京都に損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は3億8000万円あまりの賠償を命じる判決を言い渡しました。

2016年7月、東京・江東区の都立高校で水泳の授業中に、元男子生徒は、体育教諭からデッキブラシを越えてプールに飛び込むよう指示され、頭をプールの底に打ち付けて、首の頸髄を損傷し、両手足に重度のまひが残る大けがをしました。

元男子生徒と家族は「事故は担当教諭による不適切な体育指導が原因で起きた」「18歳の男子高校生が何の落ち度もないまま、突然、夢見ていた将来を奪われた精神的な苦痛は甚大だ」と訴えて、東京都に対し、およそ4億2800万円の損害賠償を求めて裁判を起こしていました。

裁判では都に賠償義務があることは争いがなく、金額が争点となっていましたが、東京地裁はきょうの判決で3億8000万円あまりの賠償を命じました。判決後、元男子生徒は「事故からおよそ8年が過ぎ、この間に母が亡くなり、大きな支えを失ってしまいました」とコメント。そのうえで、教諭からは直接の謝罪がなく、「判決が出ても許すことはできません」などとしています。

元男子生徒に危険な飛び込みの指示をした体育教諭は、その後、業務上過失傷害の罪に問われ、2021年に東京地裁から罰金100万円の判決が言い渡されています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8067d866f3bdcfa6439c7818248d9388de352dea

3月26日火曜日13:18配信

(個人名などは修正しています)

刑罰と懲戒処分

公務員が一般市民に被害を与えた場合、犯罪に当たれば刑罰を受けます。また、非違行為として任命権者から懲戒処分を受けます。

参照:東京都教育委員会「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/staff/personnel/duties/culpability_assessment.html

【事例】の教諭は業務上過失傷害(刑法第211条)の罪に問われ、罰金刑を科されています。

国家賠償

また、このような被害を与えれば、本来であれば被害者に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負うところです。しかしながら、公務員の行為により一般市民が損害を被った場合、それは国・公共団体の活動により損害を被ったといえ、国・公共団体が責任を負うべきともいえます。また、このような場合、被害者が損害をより確実に補填される必要があります。そこで、国家賠償法により、特別に賠償されます。

国家賠償法第1条第1項は「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」と定めています。

国家賠償法では「公権力の行使に当る公務員」と規定されていますが、私人の権利義務を一方的に変動させる権力的公務だけでなく、広く公務員の公務全般が対象になります。

「その職務を行うについて、」とは公務員の職務の遂行において生じたことを意味します。【事例】のように公立学校の教諭が授業中に起こした事件では該当することについてはあまり問題になりませんが、事案によっては「その職務を行うについて」といえるか問題となる場合があります。

警察官が、もっぱら自己の利益を図る目的で、制服を着て職務中であることを装って、被害者に不審尋問をして所持品を預かり、持っている拳銃で射殺した事件では、最高裁は「客観的に職務執行の外形をそなえる行為をしてこれによって、他人に損害を加えた場合には、国又は公共団体に損害賠償の責を負わしめ」ると判示しました(最二判昭和31年11月30日)。これにより、客観的に職務行為の外形を備える行為については、「その職務を行うについて」に該当することになります。

「違法」とは公務員が「職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく」行った場合をいます(最一判平成元年3月11日)。教諭は学校のプールのような到底飛び込みに適さないプールで、デッキブラシを超えてというような、愉快犯的なやり方で飛び込むよう指示をしたのですから、職務上尽くすべき注意義務を尽くしていないのは明らかでしょう。

「故意又は過失」は一般的な不法行為と同様に、過失がない場合までは責任を負わないというものです。

以上の要件を満たせば、公務員の所属する国又は公共団体が、被害者に賠償責任を負います。

国家賠償法第1条第2項では、「前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。」と定めています。公務員に故意又は重大な過失があったときは、被害者に賠償した国や公共団体から、賠償額分を請求されてしまいます。

前述のように、教諭は学校のプールのような到底飛び込みに適さないプールで、デッキブラシを超えてというような、愉快犯的なやり方で飛び込むよう指示をしたのですから、重大な過失があるとされるでしょう。

まとめ

このように、公務員が公務を行うにあたり一般市民に損害を与えると、国又は公共団体が賠償責任を負いますが、故意又は重過失があれば、公務員自身が賠償額を負担しなければならなくなります。

公務員の方で他人に被害を与えてしまい心配の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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公務員の犯罪

公務員の窃盗事件-公務員が窃盗事件を起こしてしまった場合の、問題となる犯罪、懲戒処分について解説

2024-04-01

公務員が起こす刑事事件の中で,窃盗事件が少なくありません。

プライベートで窃盗事件を起こすこともあれば,市役所や自衛隊内など職場で窃盗事件を起こすこともあります。

窃盗の態様も,仕事で保管されているお金を盗んだり,同僚の物を盗んだり,仕事で使う物を勝手に盗んだりすることなどがあります。

窃盗罪

刑法第235条は,「他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と規定されております。

窃盗罪の保護法益は,占有です。

社会における財産的秩序は,所有権等の本権の存否自体よりも,むしろ占有が有する本権推定機能に対する信頼を基礎にしていると考え,財物の所持自体が保護されるべき対象であるとされています。

刑法第242条は,「自己の財物であっても,他人が占有し,又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは,この章の罪については,他人の財物とみなす。」とされていて,自己の財物でも他人が所持する物は窃盗罪の客体となります。

占有・所持は,人が物を事実上支配・管理する状態をいいます。

このような事実上の支配があるとするためには,主観的要素としての支配の意思と,客観的要素としての支配の事実が必要です。

窃取とは,財物の占有者の意思に反して,その占有を侵害し,自己又は第三者の占有に移すことです。

実行の着手は,他人の財物の占有を侵害する具体的危険が発生する行為を行った時点で認められます。

具体的事案において判断する場合には,対象となる財物の形状,窃取行為の態様,犯行の日時・場所等の諸般の状況が考慮されることになります。例えば、ロッカーの中のものを盗むのであれば、ロッカーを開けた段階で着手があったと判断される可能性があります。

既遂時期については,犯人が目的となる財物の他人の占有を排除して,自己又は第三者の占有に移した時点となります。

具体的事案における既遂時期の判断に当たっては,実行の着手の判断と同様に,対象となる財物の形状,窃取行為の態様,犯行の日時・場所等の諸般の状況が勘案されることになります。財布のような手に持てるものであれば、自分のポケットなどにいれた段階で既遂になります。

本罪は故意犯であり,財物の占有者の意思に反して,その占有を侵害し,自己又は第三者の占有に移すことについての認識が必要となります。

故意の他に,不法領得の意思が必要となります。

不法領得の意思とは,権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいいます。

経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思にいう経済的用法とは,その物の本来の用途にかなったとか,財物から生じる何らかの効用を享受するということで足ります。

利用し又は処分することも,必ずしも経済的な意義を有する必要はありません。

性的目的で下着を盗んだ場合等も,窃盗罪が成立します。一方で、嫌がらせのために隠したような場合は、不法領得の意思があったとはいえないとされます。

懲戒処分

公務員が窃盗を行った場合、刑罰だけでなく懲戒処分も受けます。

国家公務員に関する人事院の「懲戒処分の指針」によれば、「公金又は官物を窃取した職員は、免職とする。」と定めています。公務外であっても、「他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。」と定めています。

公務員が窃盗を行った場合、重い懲戒処分を受けることになります。

すぐに弁護士に相談を

窃盗罪を行ったら,逮捕される可能性があります。

現行犯で逮捕されるだけでなく,事件発生からしばらくしてから犯人が特定されて令状逮捕される可能性があります。

逮捕されたら,公務員の場合,その地位の重要性から,一般の人よりも実名報道される可能性が高いです。

職場にばれてしまい,懲戒処分を受けることになります。

窃盗の金額が大きかったり,常習的に何度もしている状況であれば,起訴されて正式裁判となる可能性もあります。

執行猶予が付いたとしても,懲役刑となれば,失職となります。

窃盗事件が起こってしまったら,すぐに弁護士に相談してください。

逮捕されたら釈放活動が必要ですし,被害者への被害弁償示談活動も必要になります。

懲戒処分や失職のリスクに対処するために,スピードを持って対応する必要があります。

事件をそのまま放置してしまったら,後で取り返しの付かない状況になってしまうことになります。

迅速な対応が必要になりますので,事件を起こしたご本人やご家族の方は,ぜひ当事務所にご連絡・ご相談してください。

こちらの記事もご覧ください。

市役所職員の刑事事件-市職員の置引きのケースを基に、置引き事件の弁護活動について解説

公務員の汚職の罪-警察官が勾留中の女性に抱きつくなどした事件を基に特別公務員暴行陵虐罪について解説

2024-03-25

【事例】

勾留中の30代女性に抱きつくなどしたとして、千葉県警は15日、特別公務員暴行陵虐の疑いで当時船橋署留置管理課に勤務していた男性警部補(54)を書類送検し、減給100分の10(6カ月)の懲戒処分とした。警部補は同日依願退職した。県警で今年、懲戒処分を受けた職員は3人目。

 書類送検容疑は昨年11月上旬ごろ、同署留置施設内で、勾留中の女性に抱きつき、12月13日には護送中の車内で同じ女性の手を握った疑い。

 県警監察官室によると、警部補は留置管理施設内で、女性が居室外のロッカーに着衣をしまう際、後ろから抱きついた。手を握った際、警部補は隣に座っていた。いずれも複数人で業務を行っている中で行われたが気付いた人はいなかった。

 1月下旬、女性から留置業務の担当官に申告があり発覚した。県警の調べに対し警部補は対応する中で特別な感情を抱いてしまったとしている。警部補は2月、本部警務課に異動になった。警部補は「このような行為を行い、関係者や警察組織に申し訳ない気持ちでいっぱい。職を辞して責任を取る」と話している。

 同室の首席監察官は「被留置者の適切な処遇を行うべき警察官が、このような行為に及んだことは警察業務の信頼を損なうもので誠に遺憾。被害者と県民に深くおわび申し上げる」とコメントした。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8ffbce62e93eb5f676e2e0a6a2e0891b2ca8e060

千葉日報3/17(金)15:37配信

(個人名などを修正しています)

公務員の中でも裁判官や検察官、警察官は逮捕のように国民の権利利益を強制的に制約する公権力の行使をも行うことができます。このような公務員がその職権を濫用すれば、公務の適正が害され、公務に対する国民の信頼も損なわれてしまいます。そのため、公務員が職権を濫用して汚職をすることに対しては、重い刑罰が科されます。

汚職の罪には贈収賄罪も含まれますが、これらは公務の適正とそれに対する国民の信頼を脅かすものです。一方、人を逮捕するなど身体拘束をする権限を有する者が、その権限を悪用して暴行やわいせつ行為を行う罪が特別公務員暴行陵虐罪です。

特別公務員暴行陵虐罪

裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、特別公務員暴行陵虐罪が成立し、7年以下の懲役又は禁錮に処されます(刑法第195条第1項)。法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、同様に処罰されます(刑法第195条第2項)。

第1項の罪の主体も、特別公務員職権濫用罪と同じく、裁判官、検察官、検察事務官、警察官、裁判所書記官などが該当しますが、人を逮捕監禁する権限を有しない者も対象になります。

暴行とは暴行罪などと同じく身体に対する不法な有形力の行使をいいます。

陵辱とは辱める行為や精神的に苦痛を与える行為、加虐とは苦しめる行為や身体に対する直接の有形力の行使以外の肉体的な苦痛を加える行為などをいいます。わいせつ行為など、暴行以外の方法で精神的又は肉体的に苦痛を与える行為が該当します。

第2項の「法令により拘禁された者」とは、逮捕や勾留されている者など、法令上の規定に基づいて公権力により拘禁されている者をいいます。このような者を「看取又は護送する者」が本罪の主体となります。

【事例】では警部補が勾留中の女性に抱きつくなどしており、特別公務員暴行陵虐罪が成立します。

特別公務員暴行陵虐罪を犯し、よって人を死傷させた場合は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断されます(刑法第196条)。

傷害罪は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金(刑法第204条)、傷害致死罪は3年以上の有期懲役(刑法第205条)に処されます。したがって、致傷罪は1月以上15年以下の懲役、致死罪は3年以上20年以下の懲役となります。

懲戒処分

特別公務員暴行陵虐罪は相当重い罪で、公務員への信頼を大きく損ねかねないことですが、懲戒処分の指針では、特別公務員暴行陵虐罪に当たる非違行為をした場合は挙げられていないところが見受けられます。このような行政庁では、暴行やわいせつをした場合の基準を参照して処分が決められるものと考えられます。

参考

人事院「懲戒処分の指針について」

https://www.jinji.go.jp/seisaku/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.html

こちらの記事もご覧ください

汚職の罪

おわりに

以上のように、特別公務員暴行陵虐事件は刑事・懲戒とも重い処分を科される可能性が高いです。そのため、早期に弁護士に相談して対応を決めるべきです。

特別公務員暴行陵虐事件でお悩みの方は、あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

公務員と児童買春-公務員が児童買春をした場合の刑事手続き・懲戒処分について解説

2024-03-18

公務員による児童買春が問題となっています。公務員が児童陪審をした場合、刑事手続きだけでなく懲戒手続においても厳しい処分が下されます。

ここでは、公務員が児童陪審をした場合の問題について解説します。

児童買春

児童買春は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(児童ポルノ法)において規制されています。同法の第2条第1項では、「児童」を18歳に満たない者と定め、第2項では、児童買春について定義しています。

 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。

 児童

 児童に対する性交等の周旋をした者

 児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者

そして、児童買春をした者は、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます(児童ポルノ法第4条)。

児童の保護者などがあっせんする場合も児童買春になりますが、昨今問題となっているのは、児童と直接会って金銭等の対償を供与して性交等をすることでしょう。

児童買春が成立するには、まず相手が18歳未満の「児童」であることを認識している必要があります。大学生だと紹介されていてそもそも18歳以上だと思っていた場合は成立しません。もっとも、このような認識は故意と呼ばれ、認識できたといえれば故意があったとされます。学生証などを見せてもらって、18歳未満であったと確信するようなことまでは必要はありません。相手が学生服を着ていたような場合、18歳未満の者であると認識できたでしょうから、「18歳未満だとは思わなかった」などという弁解はまず通用しません。

また、児童買春が成立するには、対償を供与し又はその約束をする時点で、相手が「児童」、つまり18歳未満の者であることを認識している必要があります。事前に対象を供与する約束をしており、実際に会って18歳未満だと気づいたがそのまま性交等をした場合や、性交等をした後で学生証を見て18歳未満だと気づいた場合は、児童買春は成立しません。

児童買春の弁護活動

以上のように、児童買春が成立するには、対償を供与し又はその約束をする時点で、相手が18歳未満の者であることを認識している必要があります。そもそも金銭などは与えていないしそのような約束もしていない、18歳未満だとは気づかなかった、気づいたのは会ってからだった、といった事情があれば、児童買春は成立しない可能性があります。もっとも、このような主張をすれば、警察官や検察官から厳しい取り調べを受けるでしょう。弁護士のアドバイスを受けて、適切に取り調べに臨むべきです。

一方で、児童買春をしたことが間違いないのであれば、相手の方と示談をすることになります。児童は18歳未満の者であるため未成年者(民法第4条)ですが、示談とは加害者が罪を認めて示談金を払うだけでなく、被害者も示談金以外の債権は存在しないと認め、訴えの提起などをしないという負担を負うものであり、単に権利を得る法律行為というわけにはいかないため、児童(未成年者)が一人でできるわけではなく、その親権者が法定代理人(民法第824条第1項)として、示談をすることに同意するか、親権者が代理人となって示談をする必要があります(民法第5条第1項)。この場合、親権者としては自分の子供が騙されて性加害を受けたという思いが強く、示談は容易にはできません。そこで、専門家である弁護士に依頼して、適切に示談が成立するように持っていく必要があります。

その他の犯罪の成立

18歳未満だと知ってから性交等をすれば、児童に淫行をしたとして、各都道府県の青少年健全育成条例違反となる可能性があります。

相手が16歳未満の場合は、不同意性交等罪(刑法第177条)が成立する可能性があります(なお、被害者が13歳未満の場合又は被害者が13歳以上16歳未満で行為者が被害者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることが条件となりますが、加害者が公務員である場合、年齢的にこの条件はまず問題とならないでしょう)。不同意性交等は5年以上の有期懲役であり、児童買春よりも重い刑罰が科されます。

懲戒処分

公務員が児童買春をすると、非違行為をしたとして、重い懲戒処分を受けることになります。

国家公務員の懲戒に関する、人事院の「懲戒処分の指針について」によると、「3 公務外非行関係」において、「(12)淫行」では、18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して淫行した職員は、免職又は停職とする、と定めており、重い処分が予測されます。

人事院「懲戒処分の指針について」

https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.html

こちらの記事もご覧ください。

公務員の児童に対する性犯罪-公務員から児童に対する各種性犯罪について解説

まとめ

このように、公務員が児童買春をした場合、非常に重い処分が下されることになります。

公務員の方で児童買春についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

公務員の不正アクセス―公務員が不正アクセスをした場合の刑事・懲戒手続上の問題について解説

2024-03-04

公務員は戸籍など一般市民のセンシティブな情報を扱っています。こうした情報を職務とは無関係に利用すれば、不正アクセスとなる可能性があります。

ここでは、公務員の不正アクセスについて解説します。

不正アクセス禁止法

不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)は、不正アクセス行為を禁止しています(同法第1条)。

この法律において「不正アクセス」とは、次のいずれかに該当する行為と定められています(同法第2条第4項)。

①アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く。)

②アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報(識別符号であるものを除く。)又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者の承諾を得てするものを除く。次号において同じ。)

③電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機が有するアクセス制御機能によりその特定利用を制限されている特定電子計算機に電気通信回線を通じてその制限を免れることができる情報又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為

典型的なのがIDとパスワードを入力してアクセスできるところに、許可なく他人のIDとパスワードを入力してアクセスする場合です。

なお、パスワードは「識別符号」(同法第2条第2項)のうちの「当該アクセス管理者によってその内容をみだりに第三者に知らせてはならないものとされている符号」(同項第1号)に当たりますが、パスワードだけではアクセスできないので、IDが「その他の符号」として、IDとパスワードで「次のいずれかに該当する符号とその他の符号を組み合わせたもの」として「識別符号」に当たります。

何人も、不正アクセス行為をしてはなりません(不正アクセス禁止法第3条)。これに違反すれば、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(同法第11条)。

不正アクセス行為の用に供する目的で他人の識別符号を取得すること(同法第4条)や、業務その他正当な理由による場合でなく他人の識別符号をアクセス管理者や利用権者以外の者に提供すること(同法第5条)、不正アクセス行為の用に供する目的で不正取得された他人の識別符号を保管すること(同法第6条)、アクセス管理者になりすましたりアクセス管理者と誤認させて識別符号の入力を要求すること(同法第7条)も、禁止されています。これらの違反行為をすれば、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(同法第12条第1号乃至第4号)。

その他の法令違反

不正アクセスにより秘密情報を漏洩させた場合、国家公務員法、地方公務員法の違反となります(国家公務員法第109条第12号・第100条第1項、地方公務員法第60条第2号・第34条第1項。いずれも1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)。さらに、特定秘密の保護に関する法律(特定秘密保護法)では特定秘密を洩らした場合、より重い刑罰を科されます(特定秘密保護法第23条第1項。10年以下の懲役、又は10年以下の懲役及び1000万円以下の罰金)。

不正アクセスに対する懲戒処分

不正アクセスは、秘密情報の漏洩や不正な利益の獲得につながり、「職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合」や「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」に当たり(国家公務員法第82条第1項第2号第3号、地方公務員法第29条第1項第2号第3号)、懲戒処分の対象となります。

懲戒処分の指針は国や地方自治体ごとに定められています。国家公務員に関する、人事院の「懲戒処分の指針について」によれば、不正アクセスそのものは「第2 標準例」には挙げられていません。

しかし、不正アクセスの結果前述のような秘密漏洩等の事態に至れば、標準例に挙げられているものが当てはまる場合があります。

例えば、「第2 標準例 1 一般服務関係」では、

○「(8)秘密漏えい ア 職務上知ることのできた秘密を故意に漏らし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。この場合において、自己の不正な利益を図る目的で秘密を漏らした職員は、免職とする。」

○「イ 具体的に命令され、又は注意喚起された情報セキュリティ対策を怠ったことにより、職務上の秘密が漏えいし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。」

○「(12)個人の秘密情報の目的外収集 その職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する事項が記録された文書等を収集した職員は、減給又は戒告とする。」

などに該当することが考えられます。

また「2 公金官物取り扱い関係」には「(10)コンピュータの不適正使用 職場のコンピュータをその職務に関連しない不適正な目的で使用し、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。」と定められています。

また、これらの標準例に挙げられていないからといって、なんら処分されないというわけではありません。「第1 基本事項」には「なお、標準例に掲げられていない非違行為についても、懲戒処分の対象となり得るものであり、これらについては標準例に掲げる取扱いを参考としつつ判断する。」と定められています。

こちらの記事もご覧ください

公務員と服務規律

まとめ

以上のように、公務員が不正アクセスを行えば、刑事処分、懲戒処分とも厳しい処分が予想されます。

不正アクセスでお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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