
学校の教師が生徒を盗撮した上でその画像を同じように盗撮する教師同士で共有していた事件が発覚し、世間に衝撃を与えています。国公立学校の場合、教師は公務員ですので、刑事処分だけでなく、公務員としての懲戒処分も受けることになります。
ここでは、教職員の性犯罪について解説します。
盗撮
盗撮は各都道府県の迷惑防止条例の卑わいな行為や性的姿態等撮影罪(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第2条)として規制されています。
性的姿態等撮影罪の場合は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処されます。
迷惑防止条例違反の場合は、6か月又は1年以下の拘禁刑や50万円又は100万円以下の罰金と定めている条例が多いです。
盗撮といえば、トイレや更衣室にカメラを仕掛けて気付かれないように撮影することが多いですが、性行為の様子を隠れて撮影している場合も盗撮となります。性行為そのものには同意していても、撮影自体には同意していない場合、盗撮となります。
被害者が小中高校生のような、18歳未満の児童の場合、児童ポルノ製造罪に該当し、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処されますます(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童ポルノ法)第7条第5項)。
この児童ポルノを提供すると、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処されます(児童ポルノ法第7条第2項)。不特定多数に提供すると、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はこれを併科されます(児童ポルノ法第7条第6項)。限られたグループに画像を共有するなどして提供していても、グループへの出入りが比較的自由であれば不特定多数とされる可能性があります。
痴漢
痴漢は多くの場合、都道府県の迷惑防止条例違反に該当します。こちらも盗撮と同様、6か月又は1年以下の拘禁刑や50万円又は100万円以下の罰金と定めている条例が多いです。
胸や性器部分を触るなど悪質な場合は、不同意わいせつ(刑法第176条第1項)となり、6月以上10年以下の拘禁刑とより重い罪に該当します。
痴漢のように知らない人からいきなり被害を受ける場合は「同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと」(刑法第176条第1項第5号)に当たります。
性行為
性行為については、相手が16歳未満ですと、わいせつな行為や性交等をすれば、不同意わいせつ罪(刑法第176条第3項)や不同意性交等罪(刑法第177条第3項)が成立します。(相手が13歳以上16歳未満の場合は行為者が5歳以上年上の場合に成立)
16歳以上であっても、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて行われれば、不同意わいせつ罪(刑法第176条第1項)や不同意性交等罪(刑法第177条第1項)が成立します。
教師が生徒に対して行う場合、逆らうと学校生活で不利益を負わされるかもしれないと委縮して不同意を示せなくなると考えられます。これは「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること」(刑法第176条第1項第8号)に当たる可能性があります。
その他、性交等をした生徒が18歳未満ですと、各都道府県の青少年健全育成条例違反や児童福祉法違反(児童福祉法第34条第1項第6号・第60条第1項。10年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又はこれを併科)にもあたります。
その際に金銭などの財産上の利益を対象として与えていれば、児童買春にあたります(児童ポルノ法第2条第2項・第4条。5年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金)。
懲戒処分
公務員が盗撮のような性犯罪をすると、非違行為をしたとして、重い懲戒処分を受けることになります。
国家公務員の懲戒に関する、人事院の「懲戒処分の指針について」によると、
「3 公務外非行関係」において、
「 (12) 淫行 18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して淫行をした職員は、免職又は停職とする。」、
「(13) 痴漢行為 公共の場所又は乗物において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。」、
「(14) 盗撮行為 公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けていない状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減給とする。」
という比較的重い処分となっています。
また、地方公務員については、各地方公共団体の機関が懲戒処分の指針を定めています。
自身の職務に関し、その職務上の立場を悪用した非違行為ほど、厳しい処分がされます。
例えば、「さいたま市教員の懲戒処分の指針」の「4 児童生徒に対する非違行為関係」では、「(2) わいせつな行為等」
「ア 職務上関係のある、あるいは関係のあった児童生徒に対してわいせつな行為をした教職員は、免職とする。」
「イ 職務上関係のある、あるいは関係のあった児童生徒に対してわいせつな言辞等の性的な言動等不適切な行為を行った教職員は、停職又は減給とする。この場合において不適切な行為が特に悪質なときは、当該教職員は免職とする。」
と定められています。
児童生徒が被害者でなくても、各地方公共団体では盗撮や痴漢、児童買春をした場合、免職も懲戒処分に含まれています。
公務員の身分に関する手続き
上記のように、性犯罪やわいせつな行為に対しては重い懲戒処分が下されます。
公務員の場合、起訴されると、強制的に休職させられることがあります(地方公務員法第28条第2項第2号、国家公務員法第79条第2号)。休職中は仕事ができませんし、給与は支給されません(国家公務員法第80条第4項参照)。
国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)。そのため、起訴されたり判決が出る前に懲戒手続がすすめられ、懲戒処分が下されることがあります。
例えば、逮捕勾留中に教育委員会の委員が拘束下にいる教師と接見して事情聴取し、非違行為があったと認められれば、懲戒処分を下します。
裁判の結果、有罪の判決を言い渡され、禁錮(拘禁刑)以上の刑に処されると、失職してしまいます(地方公務員法第28条第4項・第16条第1号、国家公務員法第条第76条・第38条第1号)。地方公務員の場合は、「条例に特別の定めがある場合」には失職とならないとすることができます。
しかし、通勤中の交通事故や執行猶予付きの禁錮にとどまる場合にのみ失職させないことができるという場合が多いです。
性犯罪の場合、懲役刑(拘禁刑)が多いですし、上記のように事案によっては免職となるほど重いとみなされている類型であるため、原則通り失職することになるでしょう。
まとめ
このように、教職員の性犯罪に対しては、重い処分が下されることになります。
性犯罪をしてしまったのではないかと不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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