1.前科とは
前科という言葉はよく耳にすると思いますが、実は法律上の定義があるわけではありません。
一般的には、過去に刑事処罰を受けたことがあることを前科と称することが多く、そのような理解からは、刑法が定める刑(刑法9条)を科されたことが前科となります。
すなわち、懲役(刑法12条1項)や禁錮(刑法13条1項)、罰金(刑法15条)や科料(刑法刑法17条)といった刑を受けると、前科がついたことになります。
それゆえ、執行猶予(刑法25条1項)がついて実刑が回避された場合、すなわち刑務所服役をしないで済んだ場合や、略式罰金(刑事訴訟法461条本文)により正式裁判にすらならなかった場合でも、前科扱いになります。
スピード違反(道路交通法118条1項1号,同法22条1項)のような交通法規違反の場合、ケースによっては逮捕や正式裁判にはなっていないものの、罰金処分により前科はついていることもあり得ます。
反対に、不起訴処分や微罪処分となった場合には、前科はついていないことになります。
2.前科の不利益
前科がついた場合、特定の資格を得ることができなくなる可能性があるほか(弁護士法7条1号など)、事実上、解雇の原因や再就職にあたっての障壁になるおそれがあります。
また、刑事処分を受けるにあたり、過去に前科がある場合、検察官や裁判官が下す処分が重くなります。
このように、前科がつくことによって被る不利益は軽視できません。
3.公務員の場合
これに加えて、刑事処罰を受けた方が公務員の場合、より問題が顕著になります。まず、公務員が起訴されて有罪判決が下されてしまった場合、法律上も失職の事由となります(国家公務員法76条,同38条1号。地方公務員法28条4項,同16条1号)。
いわゆる実刑判決ではなく有罪判決が条件となるため、執行猶予がついて刑務所服役を回避できた場合でも、失職することになります。
また、刑事裁判にならずに済んだらそれでいいかというと、そういうわけにもいきません。なぜなら、公務員の失職リスクには懲戒免職もあり、こちらの場合は起訴されて有罪判決が下されたことまでは求められず、罰金処分であっても免職になるおそれがあるためです。
事案によっては、不起訴処分となった場合でも懲戒免職となることもあります。もっとも、懲戒免職となるリスクは、下された刑事処罰の重さとある程度の相関関係にあり、刑事処罰が軽いほど懲戒免職がされるリスクも低くなります。
すなわち、不起訴処分となった場合は、懲戒免職とされずに所属先に残れる余地が高くなるわけです。それゆえ、不起訴処分を目指すこと、換言すれば前科を回避していくことは極めて重要になります。
4.前科を避けるための弁護活動
不起訴処分を目指すには示談の締結や検察官への働きかけが重要になり、早期に弁護士への依頼ができるかが鍵となります。
とりわけ、逮捕を伴わない在宅事件の場合、自ら弁護士を依頼しないとなると、検察官が終局処分を下すまでは弁護士がつかない状況が続いてしまい、示談をすれば不起訴が獲得できていたかもしれないという状況も発生しかねません。後悔がないよう、弁護士には早期に相談し依頼をすることが求められます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を中心に扱う弁護士事務所として、これまで数多くの弁護対応を行ってきました。
公務員の方が依頼者だったケースで不起訴処分を獲得し、失職を回避できた実績も多数あります。前科を回避したい公務員の方やそのご家族の方は、まずは弊所にご相談ください。