休職・失職

公務員犯罪に伴う休職・失職について

公務員は、刑事事件で起訴される(略式起訴ではなく、正式な裁判になる公判請求の起訴の場合です。)と、強制的に休職させられることがあります。

公務員が犯罪の嫌疑があって起訴されたにもかかわらず、職務に従事することは、国民からの公務への信用を失ってしまう懸念があり、公務の秩序維持の観点から休職させられる可能性があります。

実際に休職処分にするかどうかは、合理的な裁量の判断で任命権者が決めることになります。

職員としての身分は保有しますが、職務に従事しないことになります。

休職の期間は、起訴されてから裁判が確定するまでです。

国会公務員の場合は、起訴休職期間中は、給与等の6割まで支給することができるとされています。

地方公務員の場合も、多くの地方自治体で同内容の条例が制定されています。

有罪となって禁錮以上の刑に処せられたら、失職することになります。

公務員は全体の奉仕者として公共の利益のために勤務しなければならず、その職の信用を傷つけたり、公務員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない義務があります。

禁錮以上の刑に処せられた者が公務員として公務に従事する場合には、その者の公務に対する国民・住民の信頼が損なわれ、公務一般に対する国民・住民の信頼も損なわれるおそれがあります。

そのような者は職員としての適格性を欠くとし、職員たる資格を認めないこととして公務の執行から排除することにより、公務に対する住民の信頼を確保することを目的としています。

禁錮以上の刑に処せられなかったとしても、適格性を欠くとして、懲戒免職となることがあります。

懲戒免職処分を受けたら、原則として2年間はまた公務員になることができません。

懲戒免職となった場合、氏名や職場が公表されてしまうことがあります。

懲戒免職の目安は、「懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職―68)(人事院事務総長発)」として公表されています。

具体的な処分の決定に当たっては、

  1. 非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
  2. 故意又は過失の度合いはどの程度であったか
  3. 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
  4. 他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
  5. 過去に非違行為を行っているか

等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとされています。

また、「正当な理由なく21日以上の間勤務を欠いた職員は、免職又は停職とする。」とされており、長期間の身体拘束によって懲戒免職となる可能性もあります。

https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.html#

最高裁判所平成元年1月17日第3小法廷判決は、地方公務員法の失職規定を以下のように述べて合憲としています。

「地公法二八条四項、一六条二号は、禁錮以上の刑に処せられた者が地方公務員として公務に従事する場合には、その者の公務に対する住民の信頼が損なわれるのみならず、当該地方公共団体の公務一般に対する住民の信頼も損なわれるおそれがあるため、かかる者を公務の執行から排除することにより公務に対する住民の信頼を確保することを目的としているものであるところ、地方公務員は全体の奉仕者として公共の利益のために勤務しなければならず(憲法一五条二項、地公法三〇条)、また、その職の信用を傷つけたり、地方公務員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない義務がある(同法三三条)など、その地位の特殊性や職務の公共性があることに加え、わが国における刑事訴追制度や刑事裁判制度の実情のもとにおける禁錮以上の刑に処せられたことに対する社会的感覚などに照らせば、地公法二八条四項、一六条二号の前記目的には合理性があり、地方公務員を法律上このような制度が設けられていない私企業労働者に比べて不当に差別したものとはいえず、また、条例に特別の定めがある地方公共団体の地方公務員と右特別の定めがない地方公共団体の地方公務員との間には失職に関しその取扱いに差異が生ずることになるが、それは各地方公共団体の自治を尊重した結果によるものであって不合理なものとはいえず、地公法二八条四項、一六条二号が憲法一四条一項、一三条に違反するものでない」

国会公務員法

欠格条項

第三十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則で定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。

一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者

二 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者

欠格による失職

第七十六条 職員が第三十八条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、人事院規則で定める場合を除くほか、当然失職する。

本人の意に反する休職の場合

第七十九条 職員が、左の各号の一に該当する場合又は人事院規則で定めるその他の場合においては、その意に反して、これを休職することができる。

二 刑事事件に関し起訴された場合

休職の効果

第八十条 

② 前条第二号の規定による休職の期間は、その事件が裁判所に係属する間とする。

③ いかなる休職も、その事由が消滅したときは、当然に終了したものとみなされる。

④ 休職者は、職員としての身分を保有するが、職務に従事しない。休職者は、その休職の期間中、給与に関する法律で別段の定めをしない限り、何らの給与を受けてはならない。

(懲戒の場合)

第八十二条 職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。

三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

一般職の職員の給与に関する法律

休職者の給与

第二十三条 4 職員が国家公務員法第七十九条第二号に掲げる事由に該当して休職にされたときは、その休職の期間中、これに俸給、扶養手当、地域手当、広域異動手当、研究員調整手当及び住居手当のそれぞれ百分の六十以内を支給することができる。

地方公務員法

欠格条項

第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。

一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者

二 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者

降任、免職、休職等

第二十八条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。

三 前二号に規定する場合のほか、その職に必要な適格性を欠く場合

2 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを休職することができる。

二 刑事事件に関し起訴された場合

4 職員は、第十六条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、条例に特別の定めがある場合を除くほか、その職を失う。

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