公務員の官金着服事件-警察官が証拠品の現金を盗んだ事件を基に詳しく解説

【事案】

岡山南署で昨秋、事件の証拠品として保管していた多額の現金の紛失が発覚した事件で、岡山県警は9日、署内の保管庫から現金20万円を盗んだなどとして、窃盗、業務上横領などの疑いで同署巡査長の男(31)を逮捕した。

県警によると、巡査長は「金はパチンコやスロットに使った」と容疑を認めている。保管庫からは約320万円が紛失しており、残る約300万円についても関連を調べる。

逮捕容疑は2023年7月21日午前6時半ごろ、岡山南署内の保管庫から20万円を盗んだほか、同5月、当時入居していた警察官舎の管理人として官舎名義の口座から2回で計7万5千円を引き出し着服するなどした疑い。

昨年10月下旬、岡山南署員らが証拠品を点検した際、現金の紛失に気が付いた。首席監察官は「警察官として言語道断の行為で深くおわび申し上げる。全容解明を図り、厳正に対処したい」とのコメントを出した。

山陽新聞dijital(1月9日火曜日13:30配信)

https://news.yahoo.co.jp/articles/4982b274fa7b834635ab4d0e71d9b63dd6931909

(氏名など個人を特定できる情報は変更しています)

【事案】は警察官が証拠品として保管していた現金を盗んだり、警察官舎の口座から現金を引き出して着服したという疑いで逮捕された事件です。公金を奪った点では同じですが、それぞれ異なる犯罪が成立すると考えられます。

公金着服において成立する犯罪

業務上横領

自己の占有する他人の物を横領した場合横領罪(単純横領罪)が成立し、5年以下の懲役に処されます(刑法第252条第1項)。これが業務上自己の占有する他人の物の場合、業務上横領罪は10年以下の懲役(刑法第253条)に処されます。

「占有」とは、事実上の占有だけでなく、法律上の占有も含まれます。預金なども対象になり得ますが、預金通帳やキャッシュカード等を事務的に預かっているだけでは預金を占有しているとはいえません。【事案】の警察官は警察官舎の管理人なので預金通帳なども自ら管理していると考えられ、「占有」しているといえるでしょう。

「業務」とは、人がその社会生活上の地位に基づき反復継続して行う事務です。公務員がその仕事として行うものであれば「業務上」占有すると判断されるでしょうから、公務員がその業務に関係する物を横領した場合は、多くは業務上横領罪に当たるでしょう。なお、業務上占有できる物を占有していたとしても、業務とは無関係に占有した場合は、業務上占有しているとはいえません。【事案】の警察官は、官舎の口座の金銭を着服した事件については、警察官者の管理人として口座を管理していたと考えられるため、業務上占有していたと考えられます。

「横領」とは、不法領得の意思を実現する一切の行為をいいます。この「不法領得の意思」とは、「他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思」をいうとされています。金銭の着服は横領の典型的な行為です。着服の他に「横領」に該当する行為の態様は、毀棄・隠匿のほか、売却や貸与、譲渡担保や抵当権などの担保権の設定、質入れなど多彩な行為が考えられます。

窃盗

他人の財物を窃取した者は、10年以下の懲役又は10年以下の懲役に処されます(刑法第235条)。

自身に先述の「占有」がない現金などを持ち去れば、この窃盗罪が成立します。【事案】では被疑者は巡査長で警察署の保管庫の管理者などではなく「占有」がないといえ、ここから現金を持ち去れば窃盗となります。

懲戒処分

各都道府県の警察官は地方公務員であり、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合などは、懲戒処分を受けることになります(地方公務員法第29条第1項)。都道府県警察の警察官は警視総監や道府県警察本部長が任命権者となりますので、警視総監や道府県警察本部長が懲戒処分を行います(地方公務員法第6条第1項)。各都道府県が定める懲戒処分に関する条例や規則、指針等に基づいて処分が下されます。

国家公務員についてですが、人事院は「懲戒処分の指針について」にて、懲戒処分の基準を定めています。「第2 標準例」の「2 公金官物取扱い関係」において、「(1)横領 公金又は官物を横領した職員は、免職とする。」、「(2)窃取 公金又は官物を窃取した職員は、免職とする。」と、非常に重い処分が定められています。地方公務員である警察官もこれと同様に処分されるものと考えられます。

参考:懲戒処分の指針について

https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.html

こちらの記事もご参照ください

公務員の横領事件

まとめ

このように、公金や官物を横領したり窃取した場合は、非常に重い処分を下されることになります。

公金についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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