公務員の犯罪

公務員は全体の奉仕者として、公共の利益のために職務を行うものであり、高い倫理観が求められ、一般市民の模範となることを期待されています。そのため、このような公務員が犯罪をしたという疑いが生じれば、社会の期待を裏切ったものとして、世間から非常に厳しい目を向けられます。

この記事では、公務員が犯罪を起こしてしまった、あるいはその疑いをかけられた場合の流れについて解説します。

公務員が犯罪の嫌疑をかけられた場合

公務員に犯罪の嫌疑をかけられた場合、以下のような問題が考えられます。

報道される

犯罪の嫌疑をかけられ被疑者(容疑者)として捜査の対象となった場合、被疑者は実名で報道されることがあります。特に被疑者が逮捕された場合は、実名報道される可能性がさらに高まります。実際に実名報道されるかどうかは、事件の重大性や社会的な関心の程度、報道されることによる被疑者の名誉やプライバシーへの影響等を考慮して判断されます。その判断は、報道機関に情報提供をする警察や検察、警察や検察から情報の提供を受けた各報道機関それぞれが行います。

最初に述べたとおり、公務員には高い倫理観が求められ、一般市民の模範となることを期待されています。公務員が犯罪の嫌疑をかけられていることは、この期待が揺るがされているといえます。そのため、公務員の犯罪は一般市民にとって重大な関心事であり、その情報の公開には高い公益性が認められるため、一般の人々よりも実名が報道される可能性が高いといえます。

また、嫌疑をかけられている犯罪の種類や規模、内容にもよりますが、公務員による犯罪は捜査の進展が逐次報道される可能性があります

休職・失職

被疑者が公務員の場合、起訴されると、強制的に休職させられることがあります(地方公務員法第28条第2項第2号、国家公務員法第79条第2号)。休職中は仕事ができませんし、給与は支給されません(国家公務員法第80条第4項参照)。

そして、裁判の結果、有罪の判決を言い渡され、禁錮以上の刑に処されると、失職してしまいます(地方公務員法第28条第4項・第16条第1号、国家公務員法第条第76条・第38条第1号)。

重い量刑

繰り返し述べていますが、公務員は全体の奉仕者として、高い倫理観が求められています。そのような公務員が犯罪を起こしたとあれば、国民の信頼を裏切るものとなります。そのため、刑事裁判においても、公務員が罪を犯したと認められた場合、その刑は重くなる傾向があります。

もっとも、公務員だからといって当然に一般人よりも刑罰が重くなるわけではありません。職権濫用罪や収賄罪等の汚職の罪は、犯罪の性質上職務の公正を害したり、公務への信用を毀損したりするものであるため、重い刑罰が定められています。これら以外の罪については、勤務外に職務とは無関係に起こした事件であれば、「公務員でありながら」「国民の信頼を裏切る」「強い非難に値する」などと指摘はされるものの、一般市民の場合と比べてそれほど量刑に違いは現れません。一方、詐欺や横領など一般市民でも行うことができる種類の犯罪であっても、職場内での地位を利用した犯罪であったり、自己の職務に関係する業務に関して行った犯罪などであれば、公務を利用した背信的なものとして強く非難され、刑も重くなります。

懲戒処分

刑事手続以外においても、犯罪を起こしたことを理由として、懲戒処分を科されることになります。懲戒処分には、戒告、減給、停職、免職があります(地方公務員法第29条第1項、国家公務員法第82条第1項)。懲戒事由としては「(国民)全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合」(地方公務員法第29条第1項第3号、国家公務員法第82条第1項第3号)とされるでしょう。

なお、国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国歌公務員法第85条)。

公務員犯罪の弁護活動

公務員の弁護活動の重要性

公務員であっても他の一般市民と同じ権利を有しており、それは刑事手続であっても同様です。公務員にも黙秘権があります(憲法第38条第1項・刑事訴訟法第198条第2項)し、供述録取書の増減変更申立てもすることができます(刑事訴訟法第198条第4項)。弁護人による弁護活動も、基本的には一般市民が犯罪の嫌疑をかけられた場合と同様です。公務員にも弁護人選任権があり(憲法第37条第3項)、立会人なく弁護人と接見することができます(刑事訴訟法第39条第1項)。

一方で、公務員が犯罪の嫌疑をかけられた場合は、上記のとおり世間の厳しい目が向けられ、報道されるリスクが高まります。捜査の進展は逐次報道され、報道された供述の内容の真偽に関わらず、インターネット上で様々な憶測が広がるでしょう。被疑者・被告人に当然に認められる権利を行使しても、例えば「容疑者は取調べに対して黙秘している」など報道されることで、「反省していない」などインターネット上でネガティブな情報を拡散されるおそれも一般市民より高いでしょう。また、処分や判決によっては、失職や懲戒処分のおそれもあります。

こうしたリスクを回避するため、一層迅速適切な弁護活動を行う必要があります。

報道への対応

上記のとおり、公務員が犯罪の嫌疑をかけられると、実名で報道され、捜査の進捗状況について逐次報道される可能性が高いです。犯罪の嫌疑をかけられたとして実名をさらされ、弁解内容や黙秘の有無まで知られてしまいます。瞬く間に社会に拡散し、半永久的に残ってしまいます。結果的に不起訴となったとしても、ネガティブな情報が世の中に広がってしまい、結局現在の仕事を辞めざるを得ない事態になりかねません。

弁護人は、警察や検察に対し、報道機関に対し、被疑者の実名等個人を特定できる情報や黙秘の有無や供述内容等を発信しないよう申し入れをします。また、報道機関に対しても、こうした情報を報道しないよう申し入れをします。そのうえで、過度にプライバシーを侵害する情報であったり、実際に供述したものとは異なる内容を供述したとして報道された場合、その是正を求めていきます。

不起訴を目指す

「休職・失職」で述べたとおり、被疑者が公務員の場合、起訴されると、強制的に休職させられることがあります(地方公務員法第28条第2項第2号、国家公務員法第79条第2号)。そのまま禁錮以上の刑に処されると、失職してしまいます(地方公務員法第28条第4項・第16条第1号、国家公務員法第条第76条・第38条第1号)。

したがって、公務員の場合は、起訴されないことが何よりも重要となります。犯罪を起こしたのではないときは、不起訴(嫌疑不十分・嫌疑なし)を目指していくことになります。犯罪を起こしたことを認めている場合、被害者がいる事件では被害者と示談をする等して、不起訴(起訴猶予)を目指していくことになります。もっとも、庁舎の備品を損壊する器物損壊事件など、国や地方公共団体が被害者の場合は、示談をすることは拒否され、損害の賠償に留まることも多いです。また、収賄事件など、具体的な被害者がいない事件では、示談をすることはできません。

不起訴とはいかなくても、罰金刑のある犯罪では、罰金刑を目指すことで失職を回避することを目指します。また、100万円以下の罰金又は科料であれば、略式手続(刑事訴訟法第461条以下)により、公判前に、書面で裁判を終了することができます。この場合、休職せずに済むでしょう。

懲戒処分を避けるために

懲戒手続は刑事手続とは別のものです。そのため、刑事手続で処分されなかったり軽微な刑罰であっても、懲戒手続にて重い処分を下される可能性があります。弁護士から、担当部署に、刑事手続の結果の報告だけでなく、非行の内容が重大ではないこと、真摯に反省していること、などを訴えて懲戒処分が過度に重くならないようにしていきます。

おわりに

以上のように、公務員が犯罪の嫌疑をかけられた場合、一般の市民よりも重大なリスクにさらされる可能性が高いです。そのため、早期に弁護士に相談して対応を決めるべきです。

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