公務員の盗撮事件-公務員が盗撮をしてしまった場合の流れについて解説

学校の教師が生徒の着替えを盗撮したり、トイレにカメラを仕掛けるなど、教育関係者の性犯罪が問題となっています。国公立の学校の教職員は公務員であるため、公務員として懲戒処分の対象となります。
ここでは、公務員が盗撮をしてしまった場合について解説します。

盗撮をしたときに成立する犯罪
性的姿態等撮影罪
盗撮をした場合、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿態撮影等処罰法)第2条の性的姿態等撮影罪に該当することが考えられます。
令和5年7月13日に性的姿態撮影等処罰法が施行され、この日以降の盗撮については性的姿態等撮影罪として、従来の各都道府県が定める迷惑防止条例違反よりも重く処罰されるようになりました。
3年以上の懲役(刑法改正後は拘禁刑となります)又は300万円以下の罰金と、後述の迷惑防止条例よりも重い処罰となっています。

(性的姿態等撮影)
第二条次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロイに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
二刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
三行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
四正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為
2前項の罪の未遂は、罰する。
3前二項の規定は、刑法第百七十六条及び第百七十九条第一項の規定の適用を妨げない。

迷惑防止条例違反
上記の性的姿態等撮影罪に該当しないと判断されても、各都道府県が定める迷惑防止条例違反に該当する可能性があります。
埼玉県迷惑行為防止条例第2条の2第1項第1号では、盗撮については次のように定めています。
(卑わいな行為の禁止)
第二条の二 何人も、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
一 次に掲げる場所又は乗物にいる人の通常衣服その他の身に着ける物(以下この条において「衣服等」という。)で覆われている下着又は身体を写真機、ビデオカメラその他の機器(衣服等を透かして見ることができるものを含む。以下この号において「写真機等」という。)を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置すること。
イ 住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所又は公共の乗物(イに該当するものを除く。)
ハ 学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イ又はロに該当するものを除く。)

このような盗撮行為をすると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(第12条第1項第1号)。

児童ポルノ製造
盗撮の対象が18歳未満の児童の場合、その性器や周辺部を撮影している画像は児童ポルノに該当し、盗撮は児童ポルノの製造に該当します。この場合、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条第3項・第7条第5項)。

その他の犯罪
盗撮をするとなると、更衣室やトイレに無断で侵入することが多くなります。このような目的で入ることは認められていないので、建造物侵入罪(刑法第130条)も成立することが多いです。3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます。ただ、これは盗撮の手段として行われていますので、性的姿態等撮影罪や児童ポルノ製造罪等結果である罪と比較してより重い方の刑により処断されます(刑法第54条第1項)。

被害者との示談
刑事事件において起訴を免れたり(起訴猶予)、起訴されても罰金などの軽い処分を目指すのであれば、被害者との示談は欠かせません。
もっとも、盗撮されたと特定された方が被害者になりますので、事件によっては膨大な数の被害者が出ることもあります。また、学校での盗撮事件では、学校の教師や児童の保護者がそもそも示談に応じないということも珍しくありません。

性犯罪関係の懲戒処分
公務員が犯罪行為をすると、非違行為をしたとして、重い懲戒処分を受けることになります。

国家公務員の懲戒に関する、人事院の「懲戒処分の指針について」によると、「3 公務外非行関係」において、「(14)盗撮行為」では「公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けていない状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減給 とする。」と定めています。

また、地方公務員については、各地方公共団体の機関が懲戒処分の指針を定めています。
自身の職務に関し、その職務上の立場を悪用した非違行為ほど、厳しい処分がされます。
例えば、「さいたま市職員の懲戒処分の指針について」では、「第2 標準例」「3 公務外非行関係」の「⑿わいせつ行為等」の「エ 盗撮行為」では、「公共の場所等において盗撮行為をした職員は、免職、停職又は減給とする。」と定められています。

懲戒処分においても、被害者と示談できたかどうかといった事情が考慮されます。

公務員の身分について
上記のように、盗撮行為に対しては重い懲戒処分が下されます。
公務員の場合、起訴されると、強制的に休職させられることがあります(地方公務員法第28条第2項第2号、国家公務員法第79条第2号)。休職中は仕事ができませんし、給与は支給されません(国家公務員法第80条第4項参照)。
国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)。そのため、起訴されたり判決が出る前に懲戒手続がすすめられ、懲戒処分が下されることがあります。
地方公共団体の職員でも、捜査中に教育委員会等の担当者が被疑者に接見して事情を聴取し、起訴の前後に懲戒処分を下すこともあります。

裁判の結果、有罪の判決を言い渡され、禁錮以上の刑に処されると、失職してしまいます(地方公務員法第28条第4項・第16条第1号、国家公務員法第76条・第38条第1号)。地方公務員の場合は、「条例に特別の定めがある場合」には失職とならないとすることができます。しかし、通勤中の交通事故や執行猶予付きの禁錮にとどまる場合にのみ失職させないことができるという場合が多いです。性犯罪の場合、懲役刑が多いですし、上記のように事案によっては免職となるほど重いとみなされている類型であるため、原則通り失職することになるでしょう。

こちらの記事もご覧ください。
公務員と性犯罪

まとめ
このように、公務員の盗撮は重い処分が下されることになります。
公務員の方で盗撮でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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