一口に公務員といっても、法律によって認められている権限が異なるなど様々な種類があります。ここでは、公務員の職種によって成立する犯罪について解説します。
公務員の種類
公務員によって成立する犯罪が異なる場合、公務員の名称ではなく認められている権限によって決められます。
特別公務員職権濫用罪、特別公務員暴行陵虐罪、特別公務員職権濫用等致死傷罪
裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、6月以上10年以下の懲役又は禁錮に処されます(刑法第194条)。また、これらの者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、7年以下の懲役又は禁錮に処されます(刑法第195条1項)。法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、同様に処罰されます(刑法第195条2項)。
これらの罪を犯し、よって人を死傷させた場合は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断されます(刑法第196条)。
これらの罪の主体は、公務員全般ではなく、裁判官、検察官、検察事務官、警察官、のほか、裁判所書記官などに限られます。
これらの公務員は刑事司法に関して職務上逮捕等により人を拘束する権限を有しています。このような職権を濫用することは害悪が甚大であるため、逮捕監禁罪(刑法第220条。3月以上7年以下の懲役)よりも刑罰が重くなっています。
税関職員によるあへん煙輸入等罪
税関職員が、あへん煙又はあへん煙を吸食するための器具を購入し、又はこれらの輸入を許したときは、1年以上10年以下の懲役に処されます(刑法第138条)。
この「税関職員」は、税関において勤務する職員のすべてを差すのではなく、税関において輸入に関する事務に従事する公務員であると解されています。
虚偽診断書等作成罪、秘密漏示罪
医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡診断書に虚偽の記載をしたときは、3年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処されます(刑法第160条)。また、医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を洩らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます(刑法第134条第1項)。
国公立病院の医師は、公務員にあたりますが、公務員であっても他の資格で業務に従事する者は、各法令により処罰されます。
なお、秘密漏示については、公務員であればそもそも公務員としての守秘義務を負っています(国家公務員法第100条第1項、地方公務員法第34条第1項)。これらに違反すると、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処され(国家公務員法第109条第12号、地方公務員法第60条第2号)、秘密漏示罪より重く処罰されます。そのため、秘密漏示罪ではなくこれらの罪により処罰されることになります。。
身分のない者による共犯
以上に述べたような公務員でないからといって、全く犯罪が成立しないとはいえません。
刑法第65条は、「犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。」と定められています。法律上定められた公務員の職種でなくても、実行行為を分担したとか、分け前に預かったような場合、共犯者となり、定められた身分を持つ者と同様に処罰されます。
公務員の身分によって成立する犯罪については、こちらもご覧ください
まとめ
以上のように、公務員の職種によって、成立する犯罪が異なることがあります。ご自身の行った行為が犯罪にあたるかどうか不安の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。