市議会議員が児童に対してわいせつ行為を行った事件-議員が起訴された場合について解説

【事例】

AはB市の市議会議員を勤める一方で、地域の児童の教育のために、自費で図書館を運営していた。

Aは同図書館を利用していた13歳未満の児童に対して、抱きついたり頬にキスをするなどのわいせつな行為をしたとして、強制わいせつ(現不同意わいせつ)の疑いで逮捕・勾留され、その後起訴された。

公判では、Aは自分から児童に抱き着いたりキスはしていないなどと述べて否認している。

AはなおもB市市議会議員の地位にある。

【市議会議員が起訴されたらどうなるのか】

事例の基となった事件では、Aは逮捕・勾留され起訴された後も議員の職にあります。

起訴された場合、公務員だと強制的に休職させられることがあります(地方公務員法第28条第2項第2号、国家公務員法第79条第2号)。休職中は仕事ができませんし、給与は支給されません(国家公務員法第80条第4項参照)。

そして、裁判の結果、有罪の判決を言い渡され、禁錮以上の刑に処されると、失職してしまいます(地方公務員法第28条第4項・第16条第1号、国家公務員法第条第76条・第38条第1号)。

国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)。重大な事件では判決が出る前に懲戒手続がすすめられ、懲戒処分が下されることがあります。

一方で、国会議員や地方議会議員は、これら国家公務員法や地方公務員法は適用されないとされています。議員は国民・市民の代表ですので、強く身分を保障する必要があり、一般の職員とは異なる扱いをされています。そのため、起訴されたからといって休職とはなりません。もっとも、その議員が勾留されたまま起訴されると、結局その議員は議会に出席できなくなります。

【懲戒処分の有無】

懲戒処分についても、議員は独立した存在であるため、これに対する懲戒は各議会の権限とされています。ですので、一般の国家公務員や地方公務員のような懲戒処分は受けません。それぞれの議会において辞職勧告決議などにより議員自らの身を処することを求められます。議会としての処分は、公務員のような一般的な指針ではなくそれぞれの議会で判断されます。国会議員、地方議会議員とも、議員の身分は強く保障されており、除名処分といった議員の地位を剥奪するような重い処分は、他の議員の多数の同意が必要となります。国会議員の場合は出席議員の3分の2以上の多数による同意が必要になります(国会法122条4号・憲法58条2項)。地方議会議員の場合は、議会の議員の3分の2以上の者が出席し、その4分の3以上の者の同意が必要となります(地方自治法135条1項4号・3項。。死亡事故や飲酒運転、わいせつ事件など重大な違反がされた状況でない限り行われないでしょう。

なお、事例の基となった事件では、議員の属する市議会は議員辞職勧告決議をするだけでなく、逮捕された議員の報酬の支給を差し止める条例を成立させています。

議員は、公職選挙法では禁錮以上の刑に処された者は選挙権・被選挙権を喪失する(公職選挙法11条1項2号)と定められており、被選挙権を失った場合職を失います(国会法109条、地方自治法127条1項)。したがって、議会から除名されなかったとしても禁錮以上の刑に処された場合は議員の地位を失うことになります。

強制わいせつ(現不同意わいせつ)の法定刑は6月以上10年以下の懲役(刑法第176条第1項)ですので、有罪となれば、当然に議員の職も失うことになります。

公務員の一般の懲戒処分についてはこちらもご覧ください。

公務員の懲戒処分

【おわりに】

このように、公務員が逮捕・勾留され、起訴されたとしても、議員の場合は異なる扱いがされます。罪を犯したと疑われて、今後ご自身がどうなるのか不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー LINE予約はこちら