公務員とアルコール

「酒は人間関係の潤滑剤」などとも言われていますが、一方で飲酒の影響による暴行や傷害、性犯罪、飲酒運転などの問題が起こり得ます。全体の奉仕者である公務員が酒がらみのトラブルを起こせばより強い非難に値するでしょう。ここでは、公務員とアルコールに関する問題について解説します。

アルコールハラスメント(アルハラ)

飲酒に関連した嫌がらせや迷惑行為、人権侵害はアルコール・ハラスメント(アルハラ)と言われています。

アルハラには以下の5つがあります。

①飲酒の強要

上下関係や部署の伝統などといった形で心理的な圧力をかけ、飲まざるを得ない状況に追い込むことです。

②イッキ飲ませ

場を盛り上げるために、イッキ飲みや早飲み競争などをさせることです。

③意図的な酔いつぶし

酔いつぶすことを意図して、飲み会を行うことです。

④飲めない人への配慮を欠くこと

本人の意向や体質を無視して飲酒をすすめたり、酒類以外の飲み物を用意しなかったり、飲めないことをからかったりすることです。

⑤酔ったうえでの迷惑行為

酔って他の人に絡んだり、悪ふざけをしたり、暴言や暴力、わいせつ行為などをすることです。

迷惑行為の内容によっては、パワー・ハラスメント(パワハラ)や、セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)、暴行や傷害などの犯罪といった、他の非違行為にも該当する可能性があります。

参考

厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

アルハラ

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-018.html

酒と懲戒処分

酒に絡む問題は懲戒事由にもなります。

酩酊して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をした場合、減給又は戒告の懲戒処分を受けます(「懲戒処分の指針 第2 標準例 3 公務外非行関係(11)酩酊による粗野な言動等」)。

また、飲酒運転をした場合、厳しい懲戒処分が下されます。酒酔い運転をした職員は免職又は停職となり、この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせると、必ず免職となります。酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給となり、この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせると免職又は停職、さらに事故後の措置を怠る等の措置義務違反をしたのであれば、必ず免職となります。飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめたり、職員の飲酒を知りながらその職員の運転する車両に同乗した場合も、飲酒運転をした職員に対する処分料亭やその飲酒運転への関与の程度等を考慮して、処分が決められます(「懲戒処分の指針 第2 標準例 4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係(1)飲酒運転」)。

その他にも、パワハラなどの非違行為に該当すれば、それに従って懲戒処分が下されます。

参考

人事院 懲戒処分の指針について

https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.html

酒に関する犯罪

未成年者飲酒禁止法

「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」(未成年者飲酒禁止法)では20歳未満の者の飲酒を禁止しています(同法第1条第1項)。未成年者の親権者は未成年者の飲酒を知ったときはこれを制止しなければなりません(同条第2項)。これに違反すると、科料に処されます(同法第3条第2項)。科料とは、千円以上1万円未満の金銭を払う刑罰です(刑法17条)。

飲酒運転(酒気帯び運転、酒酔い運転)

道路交通法違反

酒に酔った状態で運転をすると、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(道路交通法第117条の2第1項第1号・第65条第1項)。

酒に酔った状態で車両等を運転した者に車両等を提供した者(道路交通法第117条の2第1項第2号・第65条第2項)や、自動車の使用者であるのにもかかわらず運転者が酒に酔った状態で自動車を運転することを命じ又は容認した者(道路交通法第117条の2第2項第1号・第75条第1項第3号)も、同様の刑に処されます。

酒に酔った状態で車両等を運転した者に対し飲酒運転をするおそれがあるのに酒類を提供した者(道路交通法第117条の2の2第1項第5号・第65条第3項)や、車両の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、その運転者に対し、その車両を運転して自分を運ぶことを要求又は依頼して、飲酒運転する車両に同乗した者(道路交通法第117条の2の2第1項第6号・第65条第4項)は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。

酒に酔った状態まではいかずとも、身体に保有するアルコールの程度が、血液1mlにつき0.3mg又は呼気1ℓにつき0.15mg(道路交通法施行令第44条の3)の状態で車両等(自転車等の軽車両は除きます)を運転した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(道路交通法第117条の2の2第1項第3号・第65条第1項)。これに当該車両等を提供した者(道路交通法第117条の2の2第1項第4号・第65条第1項)や、自動車の使用者であるにもかかわらず、酒気帯びで自動車を運転することを命じ又は容認した者(道路交通法第117条の2の2第2項第2号・第75条第1項第3号)も、同様の刑に処されます。

酒気帯び状態で車両等を運転した者に対し飲酒運転をするおそれがあるのに酒類を提供した者(道路交通法第117条の3の2第2号・第65条第3項)や、車両の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、その運転者に対し、その車両を運転して自分を運ぶことを要求又は依頼して、飲酒運転する車両に同乗した者(道路交通法第117条の3の2第3号・第65条第4項)は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。

自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪)

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)は、飲酒運転により死傷事故が起きた場合、危険運転致死傷としてより重い罰則を定めています。また、このような重い処罰を免れようと、飲酒運転であることを隠ぺいしようとする行為にも、「逃げ得」にならないよう重い処罰を定めています。

危険運転致傷

アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって人を負傷させた者は15年以下の懲役に処され、人を死亡させた者は1年以上の結城町刑に処されます(自動車運転処罰法第2条第1号)。

また、アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処され、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処されます(自動車運転処罰法第3条第1項)。

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪

アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることなど、アルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れるような行為をしたときは、12年以下の懲役に処されます(自動車運転処罰法第4条)。

人身事故において、運転手が飲酒運転をしていて「アルコールの影響によりその走行中に正常な運転に生じるおそれがある状態」であったことや、自動車の運転に過失があったことを立証できたとしても、事故後に新たに酒を飲んだり、現場から離れたりしたため、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態に陥ったことやそのことを認識しながら運転していたことが立証できなかった場合、危険運転致死傷罪では処罰できません。この場合、過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法第5条:7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金)や救護義務違反(道路交通法第72条第1項前段。人の死傷について処罰する場合は道路交通法第117条第2項:10年以下の懲役又は100万円以下の罰金、救護義務違反だけを問う場合は道路交通法第117条の5第1項第1号:1年以下の懲役又は10万円以下の罰金)や飲酒運転(酒酔い運転は道路交通法第117条の2第1項第1号:5年以下の懲役又は100万円以下の罰金。酒気帯び運転は道路交通法第117条の2の2第1項第3号:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)で処罰することになりますが、危険運転致死傷罪と比べても刑が軽く、「逃げ得」となってしまいます。これを防ぐために、飲酒運転をしたことと運転中に過失があった上で、アルコール又は薬物の影響の有無やその程度が発覚することを免れる目的で、さらに飲酒したり、現場を離れてアルコール濃度を減少させるなどルコール又は薬物の影響の有無やその程度が発覚することを免れるような行為をした場合は、危険運転致死傷罪に並ぶ重い刑罰を科すようにしました。

まとめ

このように、飲酒に関係して重い刑罰や懲戒処分が科される可能性あります。飲酒に関しては、自らを強く戒める必要があります。

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