公務員と公文書の保護-公務員の公文書の保護や違反した場合の刑罰について解説

神戸連続児童殺傷事件の裁判記録が破棄されていたことが発覚するなど、重要な公文書が内容を改ざんされていたり、破棄されていたことが問題となっています。

ここでは、公文書の保護について解説します。

行政における公文書の保護

公文書等の管理に関する法律は第1条で「この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。」としています。そして、行政文書の管理について、保存(第6条)や移管・廃棄(第7条)などについて定めています。もっとも、この法律に違反したからといって、罰則はありません。

公務員については、文書の破棄などをすると、懲戒処分の対象となります。国家公務員に関する「懲戒処分の指針」の「第2 標準例 1 一般含む関係」では、次のとおり定められています。

(13) 公文書の不適正な取扱い

ア 公文書を偽造し、若しくは変造し、若しくは虚偽の公文書を作成し、又は公文書を毀棄した職員は、免職又は停職とする。

イ 決裁文書を改ざんした職員は、免職又は停職とする。

ウ 公文書を改ざんし、紛失し、又は誤って廃棄し、その他不適正に取り扱ったことにより、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。

裁判所における文書の保護

行政以外の公文書の保護については、三権の独立の観点から、それぞれ独自に定めています。公文書等の管理に関する法律でも、附則抄第13条で「国会及び裁判所の文書の管理の在り方については、この法律の趣旨、国会及び裁判所の地位及び権能等を踏まえ、検討が行われるものとする。」としています。

裁判所の文書の管理については、最高裁判所が定めています。

参照

標準文書保存期間基準(保存期間表)

その他「司法行政文書の管理」についてはこちらをご覧ください。

裁判所の職員が違反した場合、国家・地方公務員とは別に、裁判所が自らの指針・基準にのっとって懲戒処分を行います。

公文書を破棄した場合の刑罰

公文書の破棄や改ざんについては、一般的な事件と同じく刑法により処罰されます。

公用文書等毀棄罪

公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、公用文書等毀棄罪に当たり、3月以上7年以下の懲役に処されます(刑法第258条)。

公文書偽造等罪

行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書を偽造した者は、公文書偽造罪に問われ、1年以上10年以下の懲役を科されます(刑法第155条第1項)。公文書を変造した者も、同様に処罰されます(刑法第155条第2項)。

無印公文書を偽造又は変造した場合は、3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処されます(刑法第155条第3項)。

虚偽公文書作成等罪

公務員が、自分自身で作成できる文書であっても、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造した場合は、虚偽公文書作成罪(刑法第156条)が成立します。有印公文書の場合、1年以上10年以下の懲役に処されます。無印公文書の場合、3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処されます。

公文書偽造等罪は公務員以外でも犯すことができますが、虚偽公文書作成罪自体公務員でなければできない犯罪です。もっとも、公務員と共同して罪を犯したのであれば、公務員の身分がなくても、共犯となります(刑法第65条第1項・60条)。

まとめ

公務員は公文書について厳正に保存せねばならず、意図的に廃棄したり改ざんすれば、重い刑罰や懲戒処分を受けることになります。

公務員の方で公文書の保護についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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