公務員と贈答品-公務員の贈答品の受取りが倫理規定等に抵触するかどうかについて解説

現在公務員として在職している方であれば、仕事に関係する人からの贈答品の受取り等(お菓子、お酒、あるいは食事をもてなされることなど)については、厳しい対応がなされることを理解されていると思います。比較的人口の多い自治体などの公務員であれば、そもそも仕事の関係者などから贈答品を贈る等と言う話自体が出ないこともあるでしょう。

 しかし、比較的人口の少ない自治体の公務員ですとか、国家公務員でも比較的人口の少ない地域では、贈答品を贈るような話が出るかもしれませんし、状況によっては断る理由に困ることもあるかも知れません。

 倫理規定に絡めた説明と、懲戒処分が問題になったときの対処法を説明したいと思います。

関係法令について

 関係法令は、以下の通りです。紹介するのは国家公務員倫理規定ですが、各自治体にも類似した規程が設けられています。

国家公務員倫理規程

第三条

第1項 職員は、次に掲げる行為を行ってはならない。

一 利害関係者から金銭、物品又は不動産の贈与(せん別、祝儀、香典又は供花その他これらに類するものとしてされるものを含む。)を受けること。

二 利害関係者から金銭の貸付け(業として行われる金銭の貸付けにあっては、無利子のもの又は利子の利率が著しく低いものに限る。)を受けること。

三 利害関係者から又は利害関係者の負担により、無償で物品又は不動産の貸付けを受けること。

四 利害関係者から又は利害関係者の負担により、無償で役務の提供を受けること。

五 利害関係者から未公開株式(金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されておらず、かつ、同法第六十七条の十一第一項の店頭売買有価証券登録原簿に登録されていない株式をいう。)を譲り受けること。

六 利害関係者から供応接待を受けること。

七 利害関係者と共に遊技又はゴルフをすること。

八 利害関係者と共に旅行(公務のための旅行を除く。)をすること。

九利害関係者をして、第三者に対し前各号に掲げる行為をさせること。

「利害関係者」とは、「許認可等」を受けて行う事務をする個人・会社、受けようとする個人・会社などを言います(国家公務員倫理規程第2条第1項各号)。

ただし、国家公務員倫理規程第3条第2項のように、利害関係者が相手であっても出来る行為が規定されています。

国家公務員倫理規程

第三条

第2項 前項の規定にかかわらず、職員は、次に掲げる行為を行うことができる。

一 利害関係者から宣伝用物品又は記念品であって広く一般に配布するためのものの贈与を受けること。

二 多数の者が出席する立食パーティー(飲食物が提供される会合であって立食形式で行われるものをいう。以下同じ。)において、利害関係者から記念品の贈与を受けること。

三 職務として利害関係者を訪問した際に、当該利害関係者から提供される物品を使用すること。

四 職務として利害関係者を訪問した際に、当該利害関係者から提供される自動車(当該利害関係者がその業務等において日常的に利用しているものに限る。)を利用すること(当該利害関係者の事務所等の周囲の交通事情その他の事情から当該自動車の利用が相当と認められる場合に限る。)。

五 職務として出席した会議その他の会合において、利害関係者から茶菓の提供を受けること。

六 多数の者が出席する立食パーティーにおいて、利害関係者から飲食物の提供を受けること。

七 職務として出席した会議において、利害関係者から簡素な飲食物の提供を受けること。

ごく簡素なもの、当該職員に限らずに提供されるものが許されていると考えてよいでしょう。

更なる例外規定として、

国家公務員倫理規程

第四条

第1項 職員は、私的な関係(職員としての身分にかかわらない関係をいう。以下同じ。)がある者であって、利害関係者に該当するものとの間においては、職務上の利害関係の状況、私的な関係の経緯及び現在の状況並びにその行おうとする行為の態様等にかんがみ、公正な職務の執行に対する国民の疑惑や不信を招くおそれがないと認められる場合に限り、前条第一項の規定にかかわらず、同項各号(第九号を除く。)に掲げる行為を行うことができる。

 公務員としての職務以外の経緯での関係がある相手方について、例外的に倫理規定違反としない趣旨になります。

弁護活動

 以上のように、倫理規定違反にあたるかどうかは、受け取った物や便益の内容、受け取った状況、受け取った相手方との関係性によって決定されてくると言えます。贈答品に関することが問題になった時点で職場に居づらい状態となり、結果として退職を余儀なくされる可能性はありますが、最悪の場合退職金も無くなるなど、懲戒処分が行われることによるデメリットは大きいと言えます。

 贈答品の受取り等で問題になった際は、そもそも受取りの事実があるのか、何を受け取ったのか、どういう状況で受け取ったのか、相手方とどういう関係であったのか、事前の相談(国家公務員倫理規程第4条第2項 職員は、前項の公正な職務の執行に対する国民の疑惑や不信を招くおそれがないかどうかを判断することができない場合においては、倫理監督官(略)に相談し、その指示に従うものとする。)を行ったのかなど、聴聞などで主張していくことで、懲戒処分を防ぐことができる可能性があります。

まとめ

このように、賄賂にまで当たらなかったとしても、物の受取りだけで公務員としての職を追われるリスクが出てきます。実際にこの記事をお読みの方には、仕事の関係者から物を受け取ってしまってお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。

そのような場合に、どう動いていくのか、何をどう主張するのか、弁護士と一緒に考えていくことで、良い結果が得られるかもしれません。文字数の都合で省略した内容についても、実際に相談に来ていただければご説明できます。

贈答品の関係でお悩みの公務員の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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