公務員の公益通報―公務員が公益通報をする場合に考慮するべきことについて解説

公務員であっても、内部での贈収賄などの汚職、深刻なパワハラなど告発するべき不祥事に遭遇するかもしれません。しかし、このような場合、そもそも守秘義務に違反してしまうのではないか、組織から報復を受けるのではないかと心配するかもしれません。ここでは、公務員の公益通報について解説します。

公益通報の主体

公益通報者保護法は、第2条第1項で、「公益通報」について、「次の各号に掲げる者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく、当該各号に定める事業者(法人その他の団体及び事業を行う個人をいう。以下同じ。)(以下「役務提供先」という。)又は当該役務提供先の事業に従事する場合におけるその役員(法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法令(法律及び法律に基づく命令をいう。以下同じ。)の規定に基づき法人の経営に従事している者(会計監査人を除く。)をいう。以下同じ。)、従業員、代理人その他の者について通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている旨を、当該役務提供先若しくは当該役務提供先があらかじめ定めた者(以下「役務提供先等」という。)、当該通報対象事実について処分(命令、取消しその他公権力の行使に当たる行為をいう。以下同じ。)若しくは勧告等(勧告その他処分に当たらない行為をいう。以下同じ。)をする権限を有する行政機関若しくは当該行政機関があらかじめ定めた者(次条第二号及び第六条第二号において「行政機関等」という。)又はその者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生若しくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者(当該通報対象事実により被害を受け又は受けるおそれがある者を含み、当該役務提供先の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある者を除く。次条第三号及び第六条第三号において同じ。)に通報すること」と定めています。

公益通報者保護法第2条第1項1号の「労働者」とは、労働基準法第9条に定める「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者」をいいます。公務員も原則として労働者に該当します。

公務員の守秘義務との関係

国家公務員は、国家公務員法100条1項において、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と定められています。地方公務員についても、地方公務員法で同様に定められています(地方公務員法34条1項)。これらの規定に違反して秘密を洩らしたときは、いずれも1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(国家公務員法109条12号、地方公務員法60条2号)。

それでは、職務上知ってしまった事実については、違法不当なことであっても、誰にも言えないのでしょうか。

国家公務員法の「秘密」とは、「非公知の事項であつて、実質的にもそれを秘密として保護するに価すると認められるもの」とされています(昭和52年12月19日最高裁第二小法廷決定(徴税トラの巻事件))。

また、いわゆる外務省秘密漏洩事件(昭和53年5月31日最高裁第一小法廷決定)では、「政府が右のいわゆる密約によつて憲法秩序に抵触するとまでいえるような行動をしたものではないのであつて、違法秘密といわれるべきものではなく、この点も外交交渉の一部をなすものとして実質的に秘密として保護するに値するものである。したがつて・・・秘密にあたる」と判示されています。

これらの判例が示しているように、憲法秩序に抵触したり違法なものではなく、実質的に秘密として保護に値するものが「秘密」として保護されます。

したがって、違法な事実はもはや守秘義務の対象となる「秘密」とはいえないでしょう。

また、公務員は、職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならないと定められています(刑事訴訟法239条2項)。職務上知った違法な事実については、むしろ通報することが求められます。

よって、公務員が職上違法な事実を発見したときは、その是正のために公益通報をすることができます。

参照

○公益通報者保護法を踏まえた国の行政機関の通報対応に関するガイドライン

overview_220127_0002.pdf (caa.go.jp)

○行政機関向けQ&A(内部の職員等からの通報)

行政機関向けQ&A(内部の職員等からの通報) | 消費者庁 (caa.go.jp)

弁護士に相談を

このように公務員であっても法律上公益通報をすることができます。一方で、問題となっている具体的な事実を通報することが公益通報となるのか、法律上は可能といっても本当に大丈夫なのか、不安になることもあるかと思います。このようなときは弁護士にご相談ください。

弁護士もまた守秘義務を負っています(弁護士法第23条・弁護士職務基本規程第23条、刑法第134条第1項)。弁護士に相談いただいた内容が漏れることはありません。

お話しいただいた情報を基に、ご懸念の事実を公益通報できるのか、違法に不利益を科された場合どのようにするべきなのか、アドバイスさせていただきます。

公益通報についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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