公務員の持続化給付金詐欺―公務員が詐欺に加担した場合について解説

経済産業省のキャリア官僚が持続化給付金詐欺を主導した事件は社会を震撼させました。

ここでは、公務員の詐欺事件について解説します。

詐欺

人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処されます(刑法第246条第1項)。持続化給付金詐欺では、学生や会社員など自分が事業を行っていないのに事業の売り上げがあるように装うなど、自身が支給される用件があるかのように申請して国を欺き、給付金を受け取ることで財物の交付を受けることが典型的な態様です。自分以外の学生や会社員などに申請のやり方を指示して申請させ、手数料などと称して給付金の一部を受け取れば、共犯者(刑法第60条)として同様の責任を負います。こうした指示者は、大勢の人を誘い込んで給付金申請を指示し、手数料などで給付金の大半を手にしており、何千万円もの被害を与えています。

このような誘いに乗ってしまった人については、発覚したとしても、1件だけだったり、指示役に渡してしまった分を含めた給付金全額を返還したりしていれば、逮捕されずに捜査が進む場合が多いです。一方で、詐欺の件数が多い場合、逮捕されることもあります。

詐欺には罰金刑がありませんので、略式手続き(刑事訴訟法第461条以下)により書類審査のみで即日裁判を終了するということはできず、起訴されれば、休職となってしまいます(国家公務員法第79条第2号、地方公務員法第28条第2号)。

有罪判決の場合必ず懲役刑となりますので、禁錮以上の刑に処されたとして失職してしまいます(国家公務員法第76条・第38条第1号、地方公務員法第28条第4項・第16条第1号)。

なお、地方公務員の場合は、条例に特別の定めがある場合は、禁錮以上の刑に処されたとしても失職せずに済むこともあります(地方公務員法第28条第4項)。地方公務員となる前の事件であれば対象外とするところもありますが、多くは過失の事件で執行猶予となった場合としており、過失運転致傷事件を想定しています。詐欺は故意の犯罪なので、条例による失職の例外となることは多くないでしょう。

懲戒処分

犯罪に該当する行為を行えば、非違行為をしたとして、懲戒処分を受けます。

国家公務員については、人事院の定める「懲戒処分の指針」に基づいて懲戒処分が下されます。

懲戒処分の指針」の「第2 標準例」の「2 公金官物取扱い関係」において、「(3) 詐取 人を欺いて公金又は官物を交付させた職員は、免職とする。」と、非常に重い処分が定められています。

公金又は官物に該当しなくても、詐欺に該当する行為は、重い処分が下されます。「懲戒処分の指針」の「第2 標準例」の「3 公務外非行行為」では、「(8) 詐欺・恐喝 人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員は、免職又は停職とする。」と定められています。多くの場合免職となります。

地方公務員についても、自治体などが同様の処分基準を定めており、これに基づいて懲戒処分が行われます。

示談・被害弁償

詐欺のような被害者がいる犯罪では、被害者に謝罪をして弁償し、示談をすることが重要となります。示談に成功すれば、前科がないのであれば、不起訴(起訴猶予)となることが多いです。

もっとも、持続化給付金詐欺のように国や公共団体が被害者の場合、基本的には示談には応じません。被害金額を弁償するにとどまることが多いです。これでも、前科がないことや被害金額が少ないことなどを考慮して、起訴猶予となることもあります。

また、示談や弁償をしたからといって犯罪行為が消えるわけではありませんから、刑罰は下されなくても、懲戒処分を受けることになります。もっとも、示談や弁償をしたことは懲戒処分の判断にあたり有利に考慮されます。

まとめ

このように、持続化給付金詐欺などに加担してしまうと、重い刑罰や懲戒処分を受けることになります。詐欺についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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