公務員の方々は、身分もしっかりしており、普段から問題を起こすような人は少ないです。
そんな公務員の方々でも、気の緩みから車の運転で失敗し、犯罪を行ってしまうことがあります。
今回は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が、公務員で多い車の運転に関する犯罪について解説いたします。
過失運転致死傷罪
車を運転して人に衝突する人身事故を起こし、不注意の過失が認められたら、過失運転致死傷罪が成立します。
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金となります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)第5条)。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができます。
自動車の運転上必要な注意とは、運転者が自動車を運転する上で守るべき注意義務をいいます。
発生した死傷事故から見て、どのような措置を取っていれば当該事故の発生を回避することができたかを、事故の具体的状況に即して検討することになります。
運転者に対してそのような措置を講じるべき義務を課すことが可能で相当かどうかを検討して、義務を怠っていると評価されたら、犯罪が成立することになります。
公務員の方でも、普段の車の運転でミスをし、事故を起こして取り返しの付かないことをしたと後悔するケースが少なくありません。
公判請求されて裁判となったら、罰金刑の可能性はほぼないので、執行猶予が付いても懲役・禁錮となり、失職することになります。
公判請求されるかどうかは、過失や怪我の大きさを中心に総合的に判断されることになります。
ここで、特に警察の取調べで、殊更大きく過失・不注意が評価されるように、刑事から不当な誘導がなされることがあります。
在宅事件であっても弁護士を付けて、取調べにきちんと対応するべきです。
飲酒運転
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはなりません(道路交通法第65条第1項)。
違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合においてアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある酒に酔った状態にあったものは、5年以下の懲役又は100円以下の罰金となります(道路交通法第117条の2第1項第1号)。
違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあったものは、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(道路交通法第117条の2の2第1項第3号)。
政令で定める身体に保有するアルコールの程度は、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラムとされています(道路交通法施行令第44条の3)。
公務員の方でも、普段から飲酒運転をしているわけでなくても、気の緩みから飲酒運転をしてしまうことがあります。
飲酒運転をするつもりがなくて飲食をした後に、飲酒の影響から気が緩み、飲酒運転をしてしまうケースもあります。
飲酒運転をしていたこと自体を覚えておらず、気が付いたら逮捕されて警察署の留置場にいた、ということもあります。
轢き逃げ
交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければなりません(道路交通法第72条第1項前段)。
車両等の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があった場合において、人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、この義務に違反したら、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります(道路交通法第117条第2項)。
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む)の警察官に交通事故発生日時等(当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置)を報告しなければなりません(道路交通法第72条第1項後段)。
この報告をしなかったら、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金となります(道路交通法第119条第1項第17号)。
普段から真面目に仕事をしているような公務員の方が、轢き逃げで逃走などするわけがない、と思われるかもしれません。
しかし、いざ事故を起こしてしまったら、パニックになって冷静でいられなくなり、反射的な判断でその場を逃走してしまうことがあります。
また、本人は逃走する意図がなかったとしても、車を止められる場所を探していたら事故現場からある程度離れてしまい、轢き逃げとして逃走を疑われてしまうこともあります。
無免許・無車検・無保険
無免許
何人も、公安委員会の運転免許を受けないで、自動車を運転してはなりません(道路交通法第64条第1項)。
法令の規定による運転の免許を受けている者でなければ運転し、又は操縦することができないこととされている車両等を当該免許を受けないで(法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。)又は国際運転免許証等を所持しないで運転した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(道路交通法第117条の2の2第1項第1号)。
無車検
自動車は、国土交通大臣の行う検査を受け、有効な自動車検査証の交付を受けているものでなければ、これを運行の用に供してはなりません(道路運送車両法第58条第1項)。
違反したら、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります(道路運送車両法第108条第1号)。
無保険
自動車は、自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはなりません(自動車損害賠償保障法第5条)。
違反行為をした者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(自動車損害賠償保障法第86条の3第1項第1号)。
これらについては、うっかりして対応を失念していた、というケースがあります。
悪質性が殊更大きく評価されないように、取調べは慎重に対応することが必要です。
スピード違反
車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度を超える速度で進行してはなりません(道路交通法第22条第1項)。
自動車及び原動機付自転車が高速自動車国道の本線車道並びにこれに接する加速車線及び減速車線以外の道路を通行する場合の最高速度は、自動車にあっては60キロメートル毎時、原動機付自転車にあっては30キロメートル毎時、とされております(道路交通法施行令第11条)。
違反したら、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金となります(道路交通法第118条第1項第1号)。
過失により違反したら、3月以下の禁錮又は10万円以下の罰金となります(道路交通法第118条第3項)。
スピード違反の程度が大きければ、公判請求されてしまいます。
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