公務員が刑事事件を起こしたり、起こした疑いをかけられて起訴、つまり公判請求をされると、多くの場合「起訴休職」などと言って、被告人となった公務員は裁判期間中休職させられることになります。
以下、公務員が公判請求され刑事裁判にかけられた場合の流れや対処について説明します。
事案
国家公務員Aさんは、普段は真面目に仕事はしているものの、プライベートでは自分の性欲を満たすために盗撮行為や痴漢行為を繰り返していた。手口としては警察に発見しにくい場所を選んで行うなど、容易には発覚しにくいもので、Aさんは自身の犯行が警察等に発覚することなく長年にわたって痴漢や盗撮行為を繰り返していた。
ある日、そのようなAさんの努力もむなしく、Aさんは電車内での痴漢と盗撮行為により現行犯逮捕されてしまった。逮捕されてから数日は、私選弁護人と家族の尽力により、職場に事件を起こしたことや逮捕されたことが発覚することはなかった。現行犯逮捕された事件については、示談が成立して不起訴になる可能性に賭けたいというAさんの意向で、私選弁護人が示談に動いた。結局、示談が成立はしたものの、あまりにも過去の余罪が多かったこともあり、検察官は現行犯逮捕された事件で起訴することを決定した。
起訴されたことで、警察から監督官庁に通報がなされ、Aさんは起訴休職を命じられることになった。
(上記はフィクションであり、弊所を含めた特定の法律事務所や、特定の人物、団体等とは一切関係ありません。)
関連法令
第二十八条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
② 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを休職することができる。
二 刑事事件に関し起訴された場合
(本人の意に反する休職の場合)
第七十九条 職員が、左の各号の一に該当する場合又は人事院規則で定めるその他の場合においては、その意に反して、これを休職することができる。
一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合
二 刑事事件に関し起訴された場合
(休職の効果)
第八十条 前条第一号の規定による休職の期間は、人事院規則でこれを定める。休職期間中その事故の消滅したときは、休職は当然終了したものとし、すみやかに復職を命じなければならない。
④ 休職者は、職員としての身分を保有するが、職務に従事しない。休職者は、その休職の期間中、給与に関する法律で別段の定めをしない限り、何らの給与を受けてはならない。
(刑事裁判との関係)
第八十五条 懲戒に付せらるべき事件が、刑事裁判所に係属する間においても、人事院又は人事院の承認を経て任命権者は、同一事件について、適宜に、懲戒手続を進めることができる。(以下略)
国家公務員、地方公務員問わず、公務員の場合、起訴されると、刑事裁判での認否に関わらず、強制的に休職させられることがあります。もちろん、休職中は仕事ができませんし、原則として給与は支給されません(国家公務員法第80条第4項参照)。
また、刑事裁判は有罪判決が下るまで無罪推定として被告人を扱うのが大原則なのですが、国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)。そのため、特に事案がある程度単純で本人が罪を認めている事件などであれば、起訴されたり判決が出る前に懲戒手続がすすめられ、懲戒処分が下されることがあります。
対処法
このように、示談をすれば通常不起訴となる可能性が高い部類の事件であっても、常習性の程度やその他情状によっては、不起訴となることなく、起訴されてしまうことも有り得ます。
もちろん通常通りの刑事弁護活動や示談交渉の能力も重要ですが、公務員の方の事件の場合、民間で働いている方が事件を起こした場合では考えられないような手続もあります。刑事事件や懲戒手続で良い結果を出していくためには、刑事弁護だけではなく、懲戒手続等にも熟知した弁護士が必要です。
刑事事件を起こしてしまうと、どうしても弁護人だけが頼りになってしまうところがあります。安心のできる刑事弁護を受けたい公務員の方や、そのご家族の方は、ぜひ一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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