事例
東京都X区役所にて働くAさんは、SNS上で知り合った17歳の女児Bさんに対し、SNSのチャット機能を用いて、「3万円をあげるから、いまからホテルに行こう」と誘った上で、直接会い、一緒にラブホテルに入り、3万円を渡し、ラブホテルにて性行為に及んだ。(フィクションです)
解説
⑴ 児童買春とは
児童買春とは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下では「児童買春・児童ポルノ規制法」といいます)2条1項において、児童等に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、その児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせること)をすることとされています。
そして、同法4条では、「児童買春をした者は、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。」とされています(以下、同法4条違反のことを「児童買春の罪」といいます)。
Aさんは、ラブホテルにて、Bさんに対し、3万円という対償を供与し、性行為に及んでいることから、児童買春の罪が成立します。
⑵ 淫行条例違反とは
各都道府県には、いわゆる淫行条例と呼ばれる条例が定められています。
たとえば、東京都の場合、東京都青少年の健全な育成に関する条例18条の6において、「何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行ってはならない。」と定められており、この規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処するとされています(同条例24条の3)。
Aさんが、事例とは異なり、Bさんとお金のやり取りをせずに、性行為に及んだという場合、この淫行条例違反が成立することになります。
⑶ 逮捕される可能性がある
児童買春の容疑を掛けられた場合、児童との関係性や余罪の有無等の事情によっては逮捕される可能性があります。
Aさんが逮捕された場合、当然、仕事を一定期間休まざるを得なくなり、職場に事件のことを知られる可能性が高くなります。
また、公務員が逮捕された場合、社会全体としても関心が高いものとして、報道されるリスクが高いといえます。事件のことが報道された場合、職場に知られる可能性が高くなり、職場に知られると、後で説明するように懲戒処分を受ける可能性が出てきます。
もっとも、実際に報道されるかどうかは、報道機関ごとの判断になりますので、早期に釈放を目指す必要があります。
逮捕された場合には、早期に身体解放を目指す必要があり、逮捕された場合には少しでも早く弁護士に相談する必要があります。
⑷ 刑事処分を受けたらどうなるの
先ほど話したように、Aさんには児童買春の罪が成立しますので、罰金刑、悪質さや余罪の有無などによっては懲役刑となる可能性があります。Aさんが懲役刑となってしまうと、仮に執行猶予が付いたとしても、欠格事由に該当し、当然に職を失うことになります(地方公務員法28条4項。国家公務員については国家公務員法76条)。
そこで、Aさんとしては、欠格事由との関係では、起訴されないこと(不起訴)や罰金刑にとどまることを目指していくことが重要になります。具体的には、被害者の方に謝罪をした上で、示談をしていくといったことが考えられます。
もっとも、児童買春など児童に対する罪の場合には、行為の相手方である児童ではなく、社会全体の青少年ということになります。
そのため、行為の相手方である児童(実際には児童の親御さん)と示談を締結できたとしてもそれだけで不起訴となるとは限らず、示談できていること等を含めて検察官と不起訴処分に向けた交渉する必要があります。
また、示談交渉をするとしても、Aさんが身体拘束を受けた状態であれば、自身で示談交渉というのは困難ですし、性犯罪の場合、一般的には被害者が加害者から連絡を受けるのを良しとしないため、この点からもAさん自身で示談交渉を行うというのは困難であるといえます。
そこで、弁護士が介入し、児童(実際には親御さんとの交渉ということになると思われます)と示談交渉をしていく必要があります。
また、Aさんが児童買春の罪について、不起訴や罰金刑となった場合においても、職場に知られてしまうと、懲戒処分を受ける可能性があります。
東京都は、懲戒処分についての基準を公表しており、その中で、「18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して淫行をした職員は、免職とする。」とされています。
Aさんについても、職場に知られてしまうと、こうした処分がなされることが予想されます。
そこで、そもそも職場に知られないための活動をしていく必要があります。
先ほど話したように、身体拘束されている場合には、早期の釈放を目指す必要があります。また、身体拘束を受けていない場合においても、捜査に積極的に協力し、職場に連絡する必要がないことなどを、捜査機関に説明し、早期に不起訴とするように働き掛けていくといったことが考えられます。
事件のことが職場に知られ、懲戒処分を受けるかが問題となった場合においても、実際にどのような懲戒処分を受けるかは、先ほど話したような基準をベースとしつつも、様々な事情を考慮して判断されることになります。
ここで考慮される事情には、児童側と示談ができているかどうかといった点も含まれると考えられます。よって、懲戒処分を受ける可能性が出てきた場合、職場に対し、そうした事情をきちんと説明していく必要があります。
最後に
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