事件別―交通事故

事例

国家公務員であるAさんは、自身の車を運転し交差点で右折しようとしたところ、右折先にある横断歩道を歩行者Bさんが横断していることに気付かずに、自身の車でBさんを轢き、Bさんに怪我をさせてしまいました(現時点では、Bさんの怪我の程度は不明です)。なお、現時点で、Aさんは逮捕されていません。(フィクションです)

解説

⑴ 過失運転致傷罪の成立

Aさんは前方不注意により、自身の車でBさんを轢いてしまうという過失行為によって、Bさんに怪我をさせていることから、過失運転致死傷罪(自動車の運転による人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」といいます)5条)が成立します。その法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。

⑵ 逮捕を回避したい

Aさんは逮捕されていませんが、たとえば、Bさんの怪我の程度が極めて重いものであったり、事例とは異なり、Aさんが事故後、警察や救急車を呼ばずにその場を離れる、いわゆるひき逃げ(道路交通法(以下「道交法」といいます)72条1項前段。法律上救護義務違反と呼ばれ、これも処罰の対象とされています(道交法117条1項))をしてしまったなど、場合によっては逮捕される可能性が高いことがあります。

逮捕されてしまうと、一定期間以上仕事を休まざるを得なくなりますし、報道されるリスクもあります。つまり、逮捕されると、職場に知られる可能性が出てきます。そこで、交通事故をしてしまった場合、逮捕を回避する必要があります。具体的には、被害者と示談交渉をしたり、ひき逃げ事案であれば自ら出頭するといった方法が考えられます。

交通事故を起こしてしまった場合、逮捕の可能性がどれくらいあるのか、逮捕されるのを回避するためにどのような必要があるのかなどについて、早い段階で弁護士に相談する必要があります。

⑶ 懲役刑を回避したい

Aさんに対しどのような刑事処分がなされるかは、Bさんの怪我の程度などによりますし、先ほど話したように、ひき逃げなど別の犯罪も成立するかどうかによって、懲役刑となる可能性が出てきます。

公務員が懲役刑となった場合、仮に執行猶予が付いたとしても、欠格事由に該当し、職を失ってしまいます(国家公務員法76条、38条1号。地方公務員については地方公務員法28条4項、16条1号を参照)。

そこで、公務員の場合、欠格事由との関係では、不起訴や罰金刑にとどまるような活動をしていくことが重要になってきます。具体的には、被害者と示談をしたり、免許の取消しが予想される事案においては車を処分したりといったことが考えられます。

どういった刑事処分が予想され、どういった対応をしていくかという点について、一度弁護士に相談する必要があります。

⑷ 懲戒処分を受ける可能性がある

Aさんが欠格事由に該当しなかった場合においても、事件のことが職場に知られてしまうと、懲戒処分を受ける可能性があります(国家公務員法82条1項3号。地方公務員については地方公務員法29条1項3号を参照)。

国家公務員の懲戒処分の基準として、「懲戒処分の指針」(平成12年3月31日職職―68)が発せられており、その中で、「ア 人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。」、「イ 人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。」とされています。

Aさんは、Bさんの怪我の程度に応じ、こうした基準に従って、懲戒処分を受ける可能性があります。そこで、事件のことを職場に知られないようにすることを目指す必要があります。

事件のことが職場に知られる可能性としては、たとえば、捜査機関から職場に対して身元確認のための連絡がいくということが考えられます。それに対しては、弁護士が介入し、捜査機関に対し、職場に連絡する必要がないことを説明するといったことが考えられます。

また、事件のことが職場に知られ、懲戒処分を受けるかどうかが問題になった場合においても、先ほどの基準はあくまで基準であり、実際には様々な事情を考慮して判断されます。

たとえば、被害者の怪我が軽傷であった場合、そうした事情を職場に説明した上で、示談が成立しているのであればその点についても職場にきちんと報告するといった対応をし、職を失うことを避けるような活動をしていく必要があります。

最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心に扱う弁護士が依頼者を手厚くにサポートします。交通事故を起こし、今後どうなるのかとご心配な公務員の方は、まずは弊所までご相談ください。

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