懲戒手続

懲戒手続について

公務員が犯罪等を行ってしまった場合、懲戒処分を受ける可能性があります。

公務員の懲戒処分は、非違行為を職員が行った場合に、使用者として有する権限に基づき、その責任を確認し、公務員関係における秩序を維持するため、公務員関係からの排除を限度として行う秩序罰です。

懲戒処分は、免職停職減給戒告があります。

免職は、職員の身分を剥奪し、公務員関係から排除する処分です。

停職は、一定の期間、職員としての身分を保有させたまま職務に従事させない処分で、その間の給与は不支給となります。

減給は、一定の額を給与から減ずる処分です。

戒告は、その責任を確認し、及びその将来を戒める処分です。

このほかに、懲戒処分に付された者に対して、退職手当、給与、共済年金等のそれぞれの制度に関する法令において、手当の不支給又は減額、昇給査定における取扱い等の措置が定められております。

懲戒処分にはあたらなくても、職員の自覚と反省を促すための実務上の措置として、訓告、厳重注意、口頭注意、等が行われることがあります。

懲戒処分は、刑事裁判の結果が出る前でも、本人が罪を認めているときは、行うことができます。

公務員に対する懲戒処分は、当該非違行為に係る事実関係を十分に把握するため、職員から話を聞き、調査のうえで判断されます。

懲戒処分は、処分内容が記載された懲戒処分書と、処分理由が記載された処分説明書を併せて職員に交付します。

処分は、公表されることがあります。

職員に懲戒事由があるときに、懲戒処分を行うか、いかなる処分を選ぶか、については懲戒権者の裁量に任されています。

懲戒処分を受けた人は、国家公務員の場合は人事院に対して、地方公務員の場合は人事委員会又は公平委員会に対して、審査請求をすることもできます。

審査請求に対する裁決が出た後は、処分についての取消しの訴えを裁判所に起こすことができます。

しかし、裁判所は、懲戒権者の裁量権を尊重しますので、それが社会観念上著しく妥当を欠き裁量権を濫用したと認められる場合でなければ違法とはなりません。

人事院によると、令和4年に懲戒処分を受けた一般職の国家公務員は234人でした。

処分数を多い順に府省等別にみると、

  • 法務省(39人)
  • 国税庁(32人)
  • 国土交通省(31人)
  • 厚生労働省(26人)
  • 海上保安庁(26人)

となっています。

処分数を処分の種類別にみると、

  • 免職17人
  • 停職49人
  • 減給118人
  • 戒告50人

となっています。

処分数を多い順に処分の事由別にみると、

  • 公務外非行関係(89人)
  • 一般服務関係(62人)
  • 交通事故・交通法規違反関係(37人)
  • 通常業務処理関係(17人)
  • 横領等関係(11人)

となっています。

人事院では、国家公務員の場合、懲戒処分がより一層厳正に行われるよう、任命権者が懲戒処分に付すべきと判断した事案について、処分量定を決定するに当たっての参考に供することを目的として、以下のような懲戒処分の指針が示されています。

公平性が重視されながら、個別の事情を考慮して、懲戒処分の内容が決まることになります。

各地方公共団体でも、懲戒処分の指針が示されています。

懲戒処分の指針

第1 基本事項

本指針は、代表的な事例を選び、それぞれにおける標準的な懲戒処分の種類を掲げたものである。

具体的な処分量定の決定に当たっては、

  1. 非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
  2. 故意又は過失の度合いはどの程度であったか
  3. 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
  4. 他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
  5. 過去に非違行為を行っているか

等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとする。

個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる処分の種類以外とすることもあり得るところである。例えば、標準例に掲げる処分の種類より重いものとすることが考えられる場合として、

  1. 非違行為の動機若しくは態様が極めて悪質であるとき又は非違行為の結果が極めて重大であるとき
  2. 非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき
  3. 非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき
  4. 過去に類似の非違行為を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがあるとき
  5. 処分の対象となり得る複数の異なる非違行為を行っていたとき

がある。また、例えば、標準例に掲げる処分の種類より軽いものとすることが考えられる場合として、

  1. 職員が自らの非違行為が発覚する前に自主的に申し出たとき
  2. 非違行為を行うに至った経緯その他の情状に特に酌量すべきものがあると認められるとき

がある。

なお、標準例に掲げられていない非違行為についても、懲戒処分の対象となり得るものであり、これらについては標準例に掲げる取扱いを参考としつつ判断する。

第2 標準例

1 一般服務関係

(1) 欠 勤 正当な理由なく10日以内の間勤務を欠いた職員は、減給又は戒告とする。
正当な理由なく11日以上20日以内の間勤務を欠いた職員は、停職又は減給とする。
正当な理由なく21日以上の間勤務を欠いた職員は、免職又は停職とする。
(2) 遅刻・早退 勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた職員は、戒告とする。
(3) 休暇の虚偽申請 病気休暇又は特別休暇について虚偽の申請をした職員は、減給又は戒告とする。
(4) 勤務態度不良 勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。
(5) 職場内秩序を乱す行為 他の職員に対する暴行により職場の秩序を乱した職員は、停職又は減給とする。
他の職員に対する暴言により職場の秩序を乱した職員は、減給又は戒告とする。
(6) 虚偽報告 事実をねつ造して虚偽の報告を行った職員は、減給又は戒告とする。
(7) 違法な職員団体活動 国家公務員法第98条第2項前段の規定に違反して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をした職員は、減給又は戒告とする。
国家公務員法第98条第2項後段の規定に違反して同項前段に規定する違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおった職員は、免職又は停職とする。
(8) 秘密漏えい 職務上知ることのできた秘密を故意に漏らし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。この場合において、自己の不正な利益を図る目的で秘密を漏らした職員は、免職とする。
具体的に命令され、又は注意喚起された情報セキュリティ対策を怠ったことにより、職務上の秘密が漏えいし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。
(9) 政治的目的を有する文書の配布 政治的目的を有する文書を配布した職員は、戒告とする。
(10) 兼業の承認等を得る手続のけ怠 営利企業の役員等の職を兼ね、若しくは自ら営利企業を営むことの承認を得る手続又は報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員等を兼ね、その他事業若しくは事務に従事することの許可を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする。
(11) 入札談合等に関与する行為 国が入札等により行う契約の締結に関し、その職務に反し、事業者その他の者に談合を唆すこと、事業者その他の者に予定価格等の入札等に関する秘密を教示すること又はその他の方法により、当該入札等の公正を害すべき行為を行った職員は、免職又は停職とする。
(12) 個人の秘密情報の目的外収集 その職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する事項が記録された文書等を収集した職員は、減給又は戒告とする。
(13) 公文書の不適正な取扱い 公文書を偽造し、若しくは変造し、若しくは虚偽の公文書を作成し、又は公文書を毀棄した職員は、免職又は停職とする。
決裁文書を改ざんした職員は、免職又は停職とする。
公文書を改ざんし、紛失し、又は誤って廃棄し、その他不適正に取り扱ったことにより、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。

(14) セクシュアル・ハラスメント

 

(他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動)

暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし、又は職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつな行為をした職員は、免職又は停職とする。

相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した職員は、停職又は減給とする。

 

この場合においてわいせつな言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したことにより相手が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職又は停職とする。

相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員は、減給又は戒告とする。
(15) パワー・ハラスメント パワー・ハラスメント(人事院規則10―16(パワー・ハラスメントの防止等)第2条に規定するパワー・ハラスメントをいう。以下同じ。)を行ったことにより、相手に著しい精神的又は身体的な苦痛を与えた職員は、停職、減給又は戒告とする。
パワー・ハラスメントを行ったことについて指導、注意等を受けたにもかかわらず、パワー・ハラスメントを繰り返した職員は、停職又は減給とする。
パワー・ハラスメントを行ったことにより、相手を強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹(り)患させた職員は、免職、停職又は減給とする。

(注)(14)及び(15)に関する事案について処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断するものとする。

2 公金官物取扱い関係

(1) 横 領 公金又は官物を横領した職員は、免職とする。
(2) 窃 取 公金又は官物を窃取した職員は、免職とする。
(3) 詐 取 人を欺いて公金又は官物を交付させた職員は、免職とする。
(4) 紛 失 公金又は官物を紛失した職員は、戒告とする。
(5) 盗 難 重大な過失により公金又は官物の盗難に遭った職員は、戒告とする。
(6) 官物損壊 故意に職場において官物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。
(7) 失 火 過失により職場において官物の出火を引き起こした職員は、戒告とする。
(8) 諸給与の違法支払・不適正受給 故意に法令に違反して諸給与を不正に支給した職員及び故意に届出を怠り、又は虚偽の届出をするなどして諸給与を不正に受給した職員は、減給又は戒告とする。
(9) 公金官物処理不適正 自己保管中の公金の流用等公金又は官物の不適正な処理をした職員は、減給又は戒告とする。
(10) コンピュータの不適正使用 職場のコンピュータをその職務に関連しない不適正な目的で使用し、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。

3 公務外非行関係

(1) 放 火 放火をした職員は、免職とする。
(2) 殺 人 人を殺した職員は、免職とする。
(3) 傷 害 人の身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。
(4) 暴行・けんか 暴行を加え、又はけんかをした職員が人を傷害するに至らなかったときは、減給又は戒告とする。
(5) 器物損壊 故意に他人の物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。
(6) 横 領 自己の占有する他人の物を横領した職員は、免職又は停職とする。
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した職員は、減給又は戒告とする。
(7) 窃盗・強盗 他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した職員は、免職とする。
(8) 詐欺・恐喝 人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員は、免職又は停職とする。
(9) 賭 博 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
常習として賭博をした職員は、停職とする。
(10) 麻薬等の所持等 麻薬、大麻、あへん、覚醒剤、危険ドラッグ等の所持、使用、譲渡等をした職員は、免職とする。
(11) 酩酊による粗野な言動等 酩酊して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をした職員は、減給又は戒告とする。
(12) 淫 行 18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して淫行をした職員は、免職又は停職とする。
(13) 痴漢行為 公共の場所又は乗物において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。
(14) 盗撮行為 公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けていない状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減給とする。

4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係

(1) 飲酒運転 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。
酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職)とする。
飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。
(2) 飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの 人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。
人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
(3) 飲酒運転以外の交通法規違反 著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は、停職、減給又は戒告とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こして措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。

(注) 処分を行うに際しては、過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとする。

5 監督責任関係

(1) 指導監督不適正 部下職員が懲戒処分を受ける等した場合で、管理監督者としての指導監督に適正を欠いていた職員は、減給又は戒告とする。
(2) 非行の隠ぺい、黙認 部下職員の非違行為を知得したにもかかわらず、その事実を隠ぺいし、又は黙認した職員は、停職又は減給とする。

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