市役所職員の刑事事件-市職員の置引きのケースを基に、置引き事件の弁護活動について解説

【事例(フィクション)】

市役所に勤務するAさんは、商業施設のトイレの個室に入った際、前にその個室を利用した人が置き忘れた財布を見つけ、それをトイレから持ち出し、中の現金を抜いて財布は捨ててしまいました。

一方財布を置き忘れた人(被害者)は、その後すぐに置き忘れに気付いてトイレに戻りましたが、既にAさんが財布を持ち去った後でした。

被害者の通報により警察が捜査をし、Aさんが犯人だと特定されました。

Aさんは逮捕はされませんでしたが、窃盗の容疑で在宅捜査中です。

Aさんに前科前歴はありません。

【被疑者の方が市役所職員の場合のリスク】

市役所職員は、地方公務員となります。

市役所職員の方が刑事事件の被疑者となった場合、刑事手続き上の逮捕・勾留や刑事罰のリスクだけでなく、地方公務員法上の懲戒処分や、失職等のリスクにもさらされることとなってしまいます。

以下、弁護活動も含め、順に説明していきます。

【事例の置引きの刑事罰】

被害者が置き忘れた物の置引きについて、その物が被害者の占有を離れていると評価される場合は占有離脱物横領罪(刑法254条)、被害者の占有の下にあると評価される場合は窃盗罪(刑法235条)が成立します。

事例では、財布を置き忘れた被害者がすぐに置き忘れに気付いてトイレに戻っており、こういう場合、財布は未だ被害者の占有の下にあると評価され窃盗罪が成立することが多いです。

窃盗罪は、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」とされています。

被害金額等、他の事情にもよるので一概には言えませんが、Aさんのように置き忘れられた財布を窃取したという場合、前科前歴がなければ、罰金刑になることが多いです。

【弁護活動】

①示談交渉

Aさんの場合、財布を窃取したのは事実なので、示談交渉が非常に重要です。

示談交渉のやり方について、通常被疑者本人は被害者の連絡先を教えてもらえないことが多かったり、仮に直接連絡できたとしても当事者同士だともめてしまうリスクがあるので、弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士を通じて、被害者の方に謝罪と賠償の意向を伝え、弁護士において具体的な示談条件について交渉していくのがよいでしょう。

被害者の方に示談を受けていただければ、前科前歴のないAさんの場合、不起訴となる(前科を回避できる)可能性が高いです。

②取調べへの対応

Aさんは逮捕はされなかったとはいえ、在宅捜査という形で今後警察官、検察官の取調べを受けていくことになります。

取調べ対応は今後の刑事処分等にも影響し得るので、対応について弁護士が継続的にアドバイスをすることが大切です。

【刑事罰以外の処分等】

地方公務員の方は、起訴されると、休職をさせられることがあります(地方公務員法28条2項2号)。

そして起訴され、有罪判決で禁錮以上の刑となれば、執行猶予が付いたとしても、失職することになります(地方公務員法28条4項・16条1号)。

事例の場合、先述のとおり、有罪判決であっても罰金刑の可能性が高く、この規定による失職の可能性は低そうです。

もっとも、地方公務員の方が犯罪にあたる行為をすると、刑事罰とは別に懲戒処分を受けることにもなります。

懲戒処分は、重い順に、免職、停職、減給、戒告と種類があります。

各地方公共団体が公表している懲戒処分の指針によると、公務外非行の類型ごとに処分基準が定められており、他人の財物を窃取した職員は免職又は停職とされているものが多く見られます。

これだけ見るとAさんの場合、免職か停職になってしまいそうですが、懲戒処分の指針においては、非行の重大性や悪質性、その他様々な事情を考慮するとされており、非行の類型ごとに定められている基準より軽くなることも、逆に重くなることもあり得ます。

Aさんの場合、事情次第で免職・停職より懲戒処分が軽くなる可能性もあります。

例えば非違行為後の対応といった、弁護活動における示談交渉と絡む考慮要素もありますので、懲戒処分のリスク軽減のためにも、弁護士に相談することをおすすめします。

こちらの記事もご覧ください

公務員の懲戒処分

【おわりに】

置引き窃盗の容疑をかけられた市役所職員の方は、刑事罰、懲戒処分等のリスクにさらされますが、こういったリスクを回避・軽減するためには、弁護士による適切なアドバイスや活動が必要ですので、できるだけ早めに弁護士に相談することをおすすめします。

置引きをしてしまいお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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