公務員が職場の秘密情報を漏らしたり、資料を紛失することがしばしば問題となります。
ここでは、公務員の情報の取り扱いについて解説します。
公務員の情報の取り扱い
文書の保護
「公文書等の管理に関する法律」は第1条で「この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。」としています。そして、行政文書の管理について、保存(第6条)や移管・廃棄(第7条)などについて定めています。もっとも、この法律に違反したからといって、罰則はありません。
一方で、公文書を意図的に破棄したりすると、犯罪に該当します。
公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、公用文書等毀棄罪に当たり、3月以上7年以下の懲役に処されます(刑法第258条)。
また、公文書を紛失したからといって偽物をつくったりすれば処罰されます。
行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書を偽造した者は、公文書偽造罪に問われ、1年以上10年以下の懲役を科されます(刑法第155条第1項)。公文書を変造した者も、同様に処罰されます(刑法第155条第2項)。
無印公文書を偽造又は変造した場合は、3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処されます(刑法第155条第3項)。
情報の保護
国家公務員は、国家公務員法100条1項において、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と定められています。
地方公務員についても、地方公務員法で同様に定められています(地方公務員法34条1項)。
これらの規定に違反して秘密を洩らしたときは、いずれも1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(国家公務員法109条12号、地方公務員法60条2号)。
懲戒処分
公務員については、秘密漏洩や文書の破棄などをすると、懲戒処分の対象となります。国家公務員に関する「懲戒処分の指針」の「第2 標準例 1 一般含む関係」では、次のとおり定められています。
(8) 秘密漏えい
ア 職務上知ることのできた秘密を故意に漏らし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。この場合において、自己の不正な利益を図る目的で秘密を漏らした職員は、免職とする。
イ 具体的に命令され、又は注意喚起された情報セキュリティ対策を怠ったことにより、職務上の秘密が漏えいし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。
(13) 公文書の不適正な取扱い
ア 公文書を偽造し、若しくは変造し、若しくは虚偽の公文書を作成し、又は公文書を毀棄した職員は、免職又は停職とする。
イ 決裁文書を改ざんした職員は、免職又は停職とする。
ウ 公文書を改ざんし、紛失し、又は誤って廃棄し、その他不適正に取り扱ったことにより、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。
まとめ
公務員は公文書について厳正に保存せねばならず、意図的に廃棄したり改ざんすれば、重い刑罰や懲戒処分を受けることになります。不注意で持ち出したり紛失しても、懲戒処分の対象となります。秘密漏洩などがあればより重い処分を受けます。
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