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公務員の犯罪と懲戒処分-公務員が犯罪を行ったら懲戒処分を受ける可能性があります
公務員の方が犯罪を行ってしまったら、勤務先から懲戒処分を受ける可能性があります。
懲戒処分としては、免職、停職、減給、戒告があります。
免職は、職員の身分が失われ、失職することになります。
停職は、職員としての身分を保有させたまま、一定の期間、職務に従事させない処分で、その間の給与は支払われません。
減給は、一定の額を給与から減額する処分です。
戒告は、その責任を確認して将来を戒める処分で、注意されることになります。
懲戒処分を受けた事実は、公表されることがあります。
懲戒処分については、処分基準が定められております。
例えば、人事院では、「懲戒処分の指針について」により、懲戒処分がより一層厳正に行われるよう、任命権者が懲戒処分に付すべきと判断した事案について、処分量定を決定するに当たっての参考に供することを目的として、懲戒処分の指針を作成しました。
具体的な処分量定の決定に当たっては、
① 非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
② 故意又は過失の度合いはどの程度であったか
③ 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
④ 他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
⑤ 過去に非違行為を行っているか
等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとされます。
個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる処分の種類以外とすることもあり得るところとされています。
例えば、標準例に掲げる処分の種類より重いものとすることが考えられる場合として、
① 非違行為の動機若しくは態様が極めて悪質であるとき又は非違行為の結果が極めて重大であるとき
② 非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき
③ 非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき
④ 過去に類似の非違行為を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがあるとき
⑤ 処分の対象となり得る複数の異なる非違行為を行っていたとき
があります。
また、例えば、標準例に掲げる処分の種類より軽いものとすることが考えられる場合として、
① 職員が自らの非違行為が発覚する前に自主的に申し出たとき
② 非違行為を行うに至った経緯その他の情状に特に酌量すべきものがあると認められるとき
があります。
懲戒処分を受ける可能性を想定しながら、捜査・取調べへの対応や被害者への対応を具体的にどうするかを検討しなければなりません。
公務員の方が犯罪を行ってしまった場合、勤務先から懲戒処分を受けて、今後の人生にとって大きな悪影響を及ぼす不利益を受ける可能性があります。
早い段階から弁護士に相談し、対応を検討する必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、公務員の懲戒処分を含めて刑事弁護に精通した弁護士が多数所属しております。
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公務員の懲戒処分と刑事事件-不起訴でも懲戒免職となる場合について解説
公務員と刑事事件-盗撮での懲戒免職事件を基に解説
公務員の方であれば、盗撮が犯罪行為にあたり、それが職場に発覚すれば懲戒処分を受けるのはお分かりかと思います。しかし、懲戒免職にまでなるようなイメージはないのではないでしょうか。
今回は、盗撮で懲戒免職になる場合について、実際の事例を交えてご説明していきたいと思います。
実際の事例
https://news.yahoo.co.jp/articles/23aca77c5d078a755d0a5b8956004e4f59f7929d
(Yahoo!ニュース。令和6年11月26日閲覧。)
埼玉県さいたま市は22日、同市岩槻区の商業施設で女性を盗撮したなどとして、岩槻区役所保険年金課の男性課長補佐(53)を地方公務員法に基づき、免職の懲戒処分にしたと発表した。
市人事課などによると、男性課長補佐は8月16日午後0時10分ごろ、東武岩槻駅前の商業施設「ワッツ東館」で女性のスカート内にスマートフォンを差し入れ、下着などを盗撮。同日、性的姿態撮影処罰法違反の容疑で岩槻署に逮捕された。区役所は同施設内にあり、昼休憩中の犯行だった。同日朝にも岩槻駅構内で別の女性に同様の盗撮行為をしたとして立件されていた。
男性課長補佐は9月26日付で不起訴処分となったが、市の調査などで、7月中旬から約20件の余罪を認めたため、市は常習性があると判断。管理監督する立場である点も考慮し、処分を決めた。男性課長補佐は「業務上の悩みや私生活でのストレスが膨らみ、ストレスを解消したい気持ちで犯行に及んでしまった」と動機を述べているという。
関係法令
懲戒処分も一方的に不利益を科す処分ですので、公正な基準に基づいて行われます。処分基準については、国家公務員の懲戒処分に関する人事院の「懲戒処分の指針について」が参考になります。
3 公務外非行関係
(14) 盗撮行為
公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けていない状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減給 とする。
事例のような地方公務員の場合は、実際の処分基準は各自治体などで違いますが、概ね同じような基準が設けられていることが多いです。しかし、盗撮や痴漢については、免職も処分に挙げているところが多く見られます。
弁護活動
基本的に、上記のように国家公務員の盗撮に関しては懲戒免職までは懲戒処分の基準に入らないことが多いと言えます。
しかし、ニュース記事のように、刑事事件自体は不起訴処分となっていても、常習性が深いと判断され、現状の職務的地位を重くとらえられると、地方公務員の場合は懲戒免職となる危険もあります。
処分軽減のポイントとしては、市や県、国の聴き取りでどういった内容を答えるか、と言ったところや、実際に調査などにおいてどういった主張をしていくか、と言うところにかかってきます。当然、御自身でも対応可能な範囲はありますが、どう話したらどう影響するのか、どう主張すれば処分軽減につながるかなどは弁護士がサポートに入った方がより分かりやすいでしょう。特に、前科も特に無く、事件自体は不起訴になっているような場合、供述や主張次第で処分が変わる可能性もあるので、より弁護士が関与する意味が大きくなるでしょう。
まとめ
盗撮のように処分基準上懲戒免職が予定されていない場合でも、懲戒免職処分がなされるかもしれないことがお分かりいただけたと思います。可能な限り処分を軽減し、特に懲戒免職を防ぐ意味でも、弁護士に相談する意味が出てきます。
盗撮その他の事件を起こしてお悩みの公務員の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
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公務員の懲戒処分の流れ-公務員が罪を犯した場合の懲戒処分の内容や手続きの流れについて解説
公務員と飲酒-公務員が飲酒して事件を起こしてしまった場合について解説
年末年始ともなると、公務員の方も忘年会などで飲酒する機会が多くなると思われます。飲み過ぎて酩酊し、事件を起こした場合、処分を受けることになります。
ここでは、公務員の飲酒にまつわる事件について解説します。
刑事事件
酔っ払っていたことを理由に、よく起きるのが傷害・暴行事件です。
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円に処されます(刑法第204条)。
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処されます(刑法第208条)。
「酔っ払っていてよく憶えていない」からといって、故意が否定されることはありません。
事件当時、過度の酩酊により事理弁識が困難になっていたとえる場合、心神喪失又は心身耗弱とされ、責任能力が否定又は軽減されることがあります(刑法第39条第1項・第2項)。しかし、酔って自分が人に危害を加えるだろうと予測できる状況なのに敢えて飲酒したような場合、責任の減免が認められない可能性があります。
暴行にとどまる場合、前科がなければ不起訴(起訴猶予)で済む可能性が高いです。
一方、傷害の場合、傷害の程度が重いと、前科がなくても起訴される可能性があります。全治2週間以上の傷害の場合、略式請求(刑事訴訟法第461条以下)ではなく公判請求される可能性もあります。
暴行・傷害いずれにおいても、起訴を避け又は罰金などの軽い処分にとどめるには、被害者と示談を成立させることが重要となります。示談において支払う示談金では、暴行・傷害行為に対する精神慰謝料や治療代のほか、傷害を負わされたため仕事できなかった間の休業損害や、後遺障害が発生したときの逸失利益などを支払うことになります。
飲酒して車を運転してしまった場合、それ自体が犯罪となります。
酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができない状態で運転した場合)で車両等を運転した酒酔い運転の場合、5年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます(道路交通法第117条の2第1項第1号)。
身体に保有するアルコールの程度が、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラム(道路交通法施行令第44条の3)で車両等を運転した酒気帯び運転の場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます(道路交通法第117条の2の2第1項第3号)。
懲戒処分
飲酒酩酊により他人に被害を与えたり、飲酒運転などをすると、非違行為をしたとして、懲戒処分を受けることになります。
国家公務員の懲戒に関する、人事院の「懲戒処分の指針について」の、「3 公務外非行関係」では、「 (11) 酩酊による粗野な言動等 酩酊して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をした職員は、減給又は戒告とする。」とされています。
飲酒運転をした場合は非常に厳しい処分となっており、
「4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係」
「 (1) 飲酒運転
ア 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。
イ 酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職)とする。
ウ 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。」
と定めています。
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公務員と粗暴犯-公務員が暴行・傷害事件を起こしてしまった場合の弁護活動について解説
まとめ
このように、公務員が飲酒酩酊して事件を起こした場合、刑事・懲戒と重い処分を下される可能性があります。
公務員の方で飲酒にまつわる問題でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
公務員が自首をするときの注意-公務員が自首をする場合について解説
公務員といえども、犯罪を行ってしまい、逮捕されることがあります。
公務員が逮捕された場合、一般の人より実名報道される可能性が高くなります。
実名報道により、勤務先に事件が知られてしまい、懲戒処分を受けることになります。
実名報道によって、公務員の方ご本人だけでなく、家族の生活が壊れてしまいます。
もちろん、公務員が逮捕・勾留され、仕事に行けなくなり、結果として勤務先に事件が知られてしまうことになります。
公務員が逮捕によって受ける不利益は非常に大きいです。
そこで、状況次第では自首を検討することになります。
自首をすれば、逮捕されずに在宅捜査で進められることがあります。
しかし、とにかく警察に行って犯行を伝えるということではいけません。
慎重に自首をしないと、結局は逮捕されてしまうことになります。
刑事弁護に精通した弁護士に相談・依頼したうえで、慎重に対応することになります。
自首とは
刑法第42条第1項では、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」と規定されております。
自首は、犯人が捜査機関に対して自発的に自己の犯罪事実を申告し、その訴追を含む処分を求めることをいいます。
任意的な刑の減軽事由とされており、必ず減軽されることにはなりません。
自首で刑が減軽される根拠は、犯罪の捜査や犯人の処罰を容易にさせ、人の改悛・反省による非難・責任の減少にあります。
自首は、捜査機関に対する犯罪事実の申告を、自ら進んで自発的に行う必要があります。
申告の動機としては、必ずしも反省悔悟に出たものであることを要しません。
申告の内容としては、自己の犯罪事実の申告でなければなりません。
その申告は、犯行の重要部分を殊更隠したり、虚偽の事実を申告するものであってはなりません。
自首が成立するためには、一罪を構成する事実全体についての申告がなされなければなりません。
申告には、自己の訴追を含む処分を求める趣旨が明示的又は黙示的に含まれていることを要します。
捜査機関に対する申告であることが必要です。
口頭による場合、犯人自身により検察官又は司法警察員の面前で犯罪事実の申告がされなければなりません。
電話による自首は、これが直ちに口頭による自首となるものではありませんが、直ちに司法警察員の面前に出頭しようとしている場合は、全体として自首とみることができます。
捜査機関に発覚する前の申告であることが必要です。
発覚とは、犯罪事実及び犯人の発覚をいいます。
犯罪事実が全く発覚していない場合はもちろん、犯罪事実は発覚していても犯人が誰であるかが発覚していない場合も、発覚する前に含まれます。
自首をどのようにするべきか
自首は刑の任意的・裁量的減軽事由です。
現実には、自首によっても裁判ではほとんど刑が減刑されないことが多いです。
しかし、自首をすることによって、証拠隠滅や逃亡のおそれを低くし、逮捕の可能性が小さくなる可能性があります。
逮捕されないことで、実名報道されるリスクも減ります。
反省の態度を示しながら、捜査に協力することを示すことで、むやみに勤務先に知られるリスクも低くなる可能性があります。自ら自首をしたことで、懲戒処分においても有利な事情として考慮されます。
そこで、弁護士に相談し、今回の事件内容であれば自首をすることで逮捕される可能性が低くなるかを検討します。
自首をすると判断したら、そのための準備をします。
事前に自首の上申書を作成し、本人の誓約書や家族の身元引受書を用意します。
警察に電話して、これから自首をすることを説明します。
弁護士と一緒に警察署に行き、自首の上申書、誓約書、身元引受書等を提出します。
本人が取調べを受けている最中は、弁護士は警察署内等で待機します。
自首はとにかくすればいいというものではないので、刑事弁護に精通した弁護士に相談・依頼してください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、公務員の方が自首をするケースをこれまでに多く扱ってきました。
初回面談は無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
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公務員犯罪と自首-自首とは、自首の流れ、自首のメリット・デメリット、公務員が自主をする際の注意
公務員の職権濫用-公務員が自身の職権を濫用した場合に成立する犯罪について解説
公務員の中には一般国民が持てないような強力な権限を持ち、逮捕のように国民の権利利益を強制的に制約することもできます。このような公務員がその職権を濫用すれば、公務の適正が害され、公務に対する国民の信頼も損なわれてしまいます。
近年では、警察官や刑務所職員の収容者への対応や、検察官の侮辱的な取調べが問題となっています。
ここでは、公務員が職権を濫用した場合に成立する犯罪について解説します。
職権濫用罪
職権を濫用して国民の権利利益を侵害した場合、害悪が重く、公務の適正を害するため、職権乱用を処罰する規定が定められています。特に人の身体を強制的に拘束する職権を濫用した場合は、害悪が甚大であるため、より重く処罰されます。
公務員職権濫用
公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、公務員職権濫用罪が成立し、2年以下の懲役又は禁錮に処されます(刑法第193条)。
「職権」とは公務員の一般的職務権限に属する行為を指します。「濫用」とは、この職権の行使に仮託して、実質的、具体的に違法・不当な行為をすることをいいます。
公務員職権濫用罪は2年以下の懲役に処すると定められており、3年以下の懲役に処される強要罪(刑法第223条)より刑罰が軽くなっています。これは、公務の適正の確保という抽象的な利益を保護法益としており、また暴行や脅迫のような害悪の程度の強い行為を用いなくても犯罪が成立しうるためです。一方で、公務員職権濫用罪に該当する行為でも、暴行や、生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した場合は、強要罪のみが成立するとされています。強要罪の場合は、公務員職権濫用罪と違い未遂罪も処罰されます(刑法第223条第3項)。
特別公務員職権濫用
裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、6月以上10年以下の懲役又は禁錮に処されます(刑法第194条)。
本罪の主体は、裁判官、検察官、検察事務官、警察官、のほか、裁判所書記官などが該当します。
これらの公務員は刑事司法に関して職務上逮捕等により人を拘束する権限を有しています。このような職権を濫用することは害悪が甚大であるため、一般人でも行える逮捕監禁罪(刑法第220条。3月以上7年以下の懲役)よりも刑罰が重くなっています。
特別公務員暴行陵虐
裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、特別公務員暴行陵虐罪が成立し、7年以下の懲役又は禁錮に処されます(刑法第195条第1項)。法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、同様に処罰されます(刑法第195条第2項)。
第1項の罪の主体は、特別公務員職権濫用罪と同じく、裁判官、検察官、検察事務官、警察官、裁判所書記官などが該当しますが、人を逮捕監禁する権限を有しない者も対象になります。
暴行とは暴行罪などと同じく身体に対する不法な有形力の行使をいいます。
陵辱とは辱める行為や精神的に苦痛を与える行為、加虐とは苦しめる行為や身体に対する直接の有形力の行使以外の肉体的な苦痛を加える行為などをいいます。わいせつ行為など、暴行以外の方法で精神的又は肉体的に苦痛を与える行為が該当します。
第2項の「法令により拘禁された者」とは、逮捕や勾留されている者など、法令上の規定に基づいて公権力により拘禁されている者をいいます。このような者を「看取又は護送する者」が本罪の主体となります。
特別公務員職権濫用等致死傷
特別公務員職権濫用罪や特別公務員暴行陵虐罪を犯し、よって人を死傷させた場合は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断されます(刑法第196条)。
禁錮より懲役刑の方が重いです(刑法第9条・第10条第1項)。傷害罪は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金(刑法第204条)、傷害致死罪は3年以上の有期懲役(刑法第205条)に処されます。特別公務員職権濫用罪は6月以上10年以下と、短期については傷害罪より重いため、特別公務員職権濫用致傷罪の場合は6月以上15年以下の懲役刑が科されます。
特別公務員暴行陵虐罪は7年以下の懲役又は禁錮と、傷害罪より軽いため、特別公務員暴行陵虐致傷罪は1月以上15年以下の懲役刑が科されます。
致死罪はどちらも3年以上20年以下の懲役となります。
懲戒処分
国家公務員の懲戒処分の基準である「懲戒処分の指針について」では、このような職権濫用については標準例に載せられていません。しかし、「懲戒処分の指針について」では、「なお、標準例に掲げられていない非違行為についても、懲戒処分の対象となり得るものであり、これらについては標準例に掲げる取扱いを参考としつつ判断する。」とされています。このような職権濫用は公務員と公務に対する国民の信頼を大きく損ねますので、強い非難に値し、重い懲戒処分が下されるでしょう。
おわりに
以上のように、公務員が職権濫用をすると、重い刑罰や懲戒処分を下される可能性が高いです。そのため、早期に弁護士に相談して対応を決めるべきです。
公務員の方で職権濫用が心配な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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汚職の罪
公務員と性的トラブルー公務員の不同意性交等罪について解説
これまでに強姦罪・強制性交等罪とされていた条文が、不同意性交等罪に改正されました。
相手との性行為について、安易に相手の同意があったと主張しても、簡単には認められないことが明確に示されることになりました。
このような性的なトラブルは公務員でも例外ではありません。
不同意性交等罪は重罪で、原則として5年以上の有期懲役で刑務所に入ることになります(刑法第177条第1項)。
相手の同意があると思って性行為に及んでも、後に相手が被害を訴えて、警察の捜査・取調べを受けることになり、逮捕されることがあります。
公務員が逮捕されたら、実名報道される可能性は高いです。
長期間身体拘束されて、起訴されて有罪となれば、公務員としての地位も失うことになります。
不同意性交等罪は、以下の各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて性交等をした者に成立します。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
性交等は、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものをいいます。
婚姻関係の有無にかかわらず成立します。
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、不同意性交等罪が成立します。
16歳未満の者に対し、性交等をした者も、不同意性交等罪が成立します。この場合、不同意事由は関わりません(刑法第77条第3項)。
相手が同意していた、根拠をもって相手が同意していると思っていたら、犯罪は成立しません。
しかし、相手が同意していなかったと被害を訴えている状況で、こちらの主張を通すのは困難が伴います。
警察は必ずしも適正・公平に取調べをしてはくれません。
圧力をかけ、こちらに不利に誘導してきます。
取調べに対して慎重に対応する必要があり、刑事弁護に精通した弁護士がサポートしていかなければなりません。
起訴されてしまったら、無罪を主張していくことになります。
一度起訴されてしまうと高い確率で有罪となってしまいます。
証拠を深く分析して対応することになります。
相手が同意していなかったり、相手が同意していると安易に考えて行動してしまったら、被害者に対して示談交渉をする必要があります。
検察官が起訴をする前の、早い段階で示談を成立させなければなりません。
弁護士を通じて被害者に接触し、誠意をもって謝罪と被害弁償の話をし、示談を求めていくことになります。
相手が16歳未満であれば、不同意事由に関わらず犯罪となりますが、相手が16歳未満であることを知らなかったら不同意性交等罪は成立しません。
年齢について知っていなかったとしても、警察は違法・不当な取調べでこちらに不利に話を誘導してくることがあります。
公務員とはいえ刑事手続きについては素人であり、プロの警察官に対抗するのは非常に難しいです。
プロの弁護士のサポートを受けながら対応することになります。
当事務所では公務員の男女間トラブルの刑事事件をこれまでに多数扱ってきました。
経験のある弁護士が対応させていただきます。
ぜひお気軽にご相談ください。
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公務員と不同意わいせつ罪ー不同意わいせつ事件で相談・依頼される公務員の方が増えております
公務員の懲戒処分と刑事事件-不起訴でも懲戒免職となる場合について解説
公務員の方であれば、刑事事件を起こして裁判を受け、何らかの刑罰を受ければ懲戒処分を受け、場合によっては懲戒免職となることをお分かりかと思います。
また、懲戒処分の重さも基本的には刑事処分の重さに比例しますし、そのこともおそらく想像がつくと思います。
しかし、刑事事件で不起訴処分となっても懲戒免職となるケースがあります。
今回は、最近のニュースを参考に、不起訴処分でも懲戒免職になる例について解説したいと思います。
関係ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/9d8b57bb8e1877f37def9738a8d1f4f042eeefce
(Yahoo!ニュース。令和6年10月23日閲覧)
以下、引用文
去年10月、北海道北見市で大麻を使用したとして、20代の男性消防士が懲戒免職となりました。
~中略~
北見地区消防組合によりますと、懲戒免職となった20代の男性消防士は、去年10月、北見市内で違法薬物と認識しながら大麻を譲り受けて使用したということです。
男性消防士は、今年5月31日付けで不起訴となっていましたが、北見地区消防組合は、その後の内部調査で男性消防士が大麻を使用したことを認めたことなどから、免職処分としました。
北見地区消防本部山田敏文消防長は「職員の不祥事により地域住民の信頼を大きく損ねたことを深くお詫び申し上げます。公務員である以前に社会人としてあってはならない行為であり、職員一人一人の倫理観の醸成を図るとともに、再発防止に取り組み、地域住民の信頼回復に努めてまいります」とコメントしています。
関係法令について
関係法令は、以下の通りです。紹介するのは国家公務員関係ですが、各自治体にも類似した運用をするところが多いと思われます。
懲戒処分の指針について
第2 標準例
3 公務外非行関係
(10) 麻薬等の所持等
麻薬、大麻、あへん、覚醒剤、危険ドラッグ等の所持、使用、譲渡等をした職員は、免職とする。
懲戒処分の基準においては、刑事処分での確定判決を要件としていません。また、明確に法律に違反することも要件とはしていません。
したがって、処分権者が、十分な事実が揃っていると判断し、公務員として相応しくないと判断すれば、懲戒処分は行われることになります。
弁護活動
ニュースの事例については、「内部調査」となっていますが、処分を受けた男性職員から何らかの聴き取りを行っていることが考えられます。その聞き取りが、誰に相談する間もなく行われ、対応が上手くいっていない可能性があります。
弁護士がついていれば、ウソをつくなどをお助けすることはできませんが、懲戒処分がなるべくされないような対応が可能かもしれません。さらに、捜査段階から弁護士が関わることができれば、より懲戒処分がなされない可能性が高くなるでしょう。
捜査機関や、職場は、あなたがなるべくだれにも相談していない状態で証言・証拠を取って来ようとします。そのため、心当たりがあるのであれば早めに弁護士に相談することが重要です。
まとめ
麻薬関係だけではなく、その他の関係の事件でも、不起訴になったのに処分を受ける、という可能性が出てくるかもしれません。例えば、18歳以上の異性だと思って性的な関係を持ったのに、実は18歳未満だった、というような場合もあるでしょう。そのほか、警察では自分に有利な主張が出来ていた人でも、職場での聴き取りでは自分に不利なことを言ってしまうかもしれません。
そのような場合に、どう動いていくのか、何をどう主張するのか、弁護士と一緒に考えていくことで、良い結果が得られる可能性が上がります。
刑事処分と懲戒処分の関係でお悩みの公務員の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
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公務員と懲戒処分-公務員がパパ活でお金を払って女性に会う行為をしていた場合について解説
公務員の情報の取り扱いについて-公務員の秘密情報の保護や違反した場合の刑罰について解説
公務員が職場の秘密情報を漏らしたり、資料を紛失することがしばしば問題となります。
ここでは、公務員の情報の取り扱いについて解説します。
公務員の情報の取り扱い
文書の保護
「公文書等の管理に関する法律」は第1条で「この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。」としています。そして、行政文書の管理について、保存(第6条)や移管・廃棄(第7条)などについて定めています。もっとも、この法律に違反したからといって、罰則はありません。
一方で、公文書を意図的に破棄したりすると、犯罪に該当します。
公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、公用文書等毀棄罪に当たり、3月以上7年以下の懲役に処されます(刑法第258条)。
また、公文書を紛失したからといって偽物をつくったりすれば処罰されます。
行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書を偽造した者は、公文書偽造罪に問われ、1年以上10年以下の懲役を科されます(刑法第155条第1項)。公文書を変造した者も、同様に処罰されます(刑法第155条第2項)。
無印公文書を偽造又は変造した場合は、3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処されます(刑法第155条第3項)。
情報の保護
国家公務員は、国家公務員法100条1項において、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と定められています。
地方公務員についても、地方公務員法で同様に定められています(地方公務員法34条1項)。
これらの規定に違反して秘密を洩らしたときは、いずれも1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(国家公務員法109条12号、地方公務員法60条2号)。
懲戒処分
公務員については、秘密漏洩や文書の破棄などをすると、懲戒処分の対象となります。国家公務員に関する「懲戒処分の指針」の「第2 標準例 1 一般含む関係」では、次のとおり定められています。
(8) 秘密漏えい
ア 職務上知ることのできた秘密を故意に漏らし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。この場合において、自己の不正な利益を図る目的で秘密を漏らした職員は、免職とする。
イ 具体的に命令され、又は注意喚起された情報セキュリティ対策を怠ったことにより、職務上の秘密が漏えいし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。
(13) 公文書の不適正な取扱い
ア 公文書を偽造し、若しくは変造し、若しくは虚偽の公文書を作成し、又は公文書を毀棄した職員は、免職又は停職とする。
イ 決裁文書を改ざんした職員は、免職又は停職とする。
ウ 公文書を改ざんし、紛失し、又は誤って廃棄し、その他不適正に取り扱ったことにより、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。
まとめ
公務員は公文書について厳正に保存せねばならず、意図的に廃棄したり改ざんすれば、重い刑罰や懲戒処分を受けることになります。不注意で持ち出したり紛失しても、懲戒処分の対象となります。秘密漏洩などがあればより重い処分を受けます。
公務員の方で文書や秘密情報の扱いでお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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公務員と公文書の保護ー公務員の公文書の保護や違反した場合の刑罰について解説
公務員の性犯罪と面会要求―公務員の十六歳未満の者に対する面会要求等罪について解説
公務員による性犯罪事件は少なくありません。
ネットニュースでも逮捕された多数の公務員による性犯罪事件が報道されています。
公務員はその地位の重要性から、実名報道されることが多いです。
当事務所へも、公務員の方が性犯罪事件を起こして相談・依頼されるケースが多数あります。
最近は、警察がサイバーパトロールをして、ネット上から性犯罪事件を発見し、犯人特定まで行くケースも増えてきました。
「十六歳未満の者に対する面会要求等罪」が新設され、インターネットに書き込んで被害者へ面会を要求しただけで犯罪とされるようになりました。
そこから、更に重大な犯罪が発覚し、逮捕となることも珍しくありません。
昔にネットに書き込んだことについて、結構な時間が経過してからいきなり自宅に警察が来て捜査・取調べを受け、スマートフォンやパソコンが押収され、逮捕されることもあります。
安易な気持ちで行ってしまったことにより、勤務先から懲戒処分や免職となってしまい、公務員としてのこれまでの平穏な生活が壊れてしまいます。
十六歳未満の者に対する面会要求等罪は刑法第182条に定められており、わいせつの目的で、16歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者に成立します。
一 威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求すること。
二 拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求すること。
三 金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求すること。
更にわいせつの目的で当該16歳未満の者と実際に面会をした者は、より重く処罰されます。
16歳未満の者と実際に会い、わいせつな行為をしたら不同意わいせつ罪、性交等をしたら不同意性交等罪が成立します。
相手が16歳未満であれば、同意があっても無効とされ、犯罪が成立します。
特に不同意性交等罪は5年以上の有期懲役刑という重い犯罪で、執行猶予が認められる可能性は低く、実刑で長期間刑務所に入ることになります。
16歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為を要求した者も、犯罪が成立します。
一 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。
実際にこれらの映像を送信させたら、不同意わいせつ罪が成立します。
公務員が犯罪を行ってしまった場合、懲戒処分を受けるなど、失うものが非常に大きく、その人や家族の人生に甚大な悪影響が生じます。
人生に取り返しの付かないことになってしまうかもしれません。
このような公務員犯罪の特質を踏まえたうえで、専門家による適切で素早い対応が必要になります。
公務員犯罪事件の弁護活動には、特殊で高度な知識と経験が求められ、どの弁護士に依頼するかによって、人生が大きく左右されることも多くあります。
公務員の方が十六歳未満の者に対する面会要求等罪を行ってしまったら、すぐに弁護士に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、公務員による性犯罪事件をこれまでに多数扱って解決に導いており、実績があります。
懲戒処分や免職のリスクに具体的にどのように対応すればいいか、具体的に分析したうえで解決に導いていきます。
取調べ対応、釈放対応、被害者対応、裁判対応等、検討しなければならないことは多岐に渡ります。
公務員による性犯罪事件について精通している弁護士が対応させていただきます。
まずは無料の面談を受けてみてください。
逮捕された場合は、家族等が有料の初回接見サービスを依頼されることができます。
迅速に熱心に対応させていただきます。
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刑事弁護は迅速な対応が必要となりますので、なるべく早くご連絡をお願いいたします。
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公務員による未成年者に対する性犯罪―公務員から未成年者に対して成立し得る性犯罪について解説
公務員とパワハラ-公務員の行為がどこからがパワハラになるのかについて解説
公務員の方であれば、懲戒事由には様々なものがあり、職場内のトラブルやパワハラ、セクハラなども公務員生命を左右しかねない大ごとになることをお分かりのことと思います。
今回は、最近のニュースを参考に、どう職場で立ち回っていくかを考えて頂き、懲戒が問題になってしまっている方に関しましては、弁護士を入れて対応するかを考えて頂けると良いかと思います。
関係ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/dc5b2f53ee6b2b7efc7f25d41209625747d9eff0
(Yahoo!ニュース。令和6年10月15日閲覧)
以下、引用文
岡山県新見市は11日、非正規職員にパワハラ行為をしたとして、市長部局の30代と20代の主事級男性職員2人を10日付で減給10分の1(6カ月)の懲戒処分にしたと発表した。
市によると、主事級職員2人は4~6月、同じ部署の非正規職員2人に対し、日常的にあいさつを無視したり、他の職員がいる前で大声で注意したりして精神的苦痛を与えたという。
6月末に非正規職員の1人が総務課に申告し、市が事実確認していた。主事級職員はいずれも行為を認めており、非正規職員2人は既に退職している。
戎斉市長は「公務員としての倫理観と自覚を欠いた言語道断の行為。再発防止に向けて法令順守の徹底を図る」とコメントした。
関係法令について
パワハラ(パワー・ハラスメント)に関する関係法令は、以下の通りです。紹介するのは国家公務員関係ですが、各自治体にも類似した運用をするところが多いと思われます。
人事院規則10-16(パワー・ハラスメントの防止等)
(定義)
第二条 この規則において、「パワー・ハラスメント」とは、職務に関する優越的な関係を背景として行われる、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動であって、職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、職員の人格若しくは尊厳を害し、又は職員の勤務環境を害することとなるようなものをいう。
懲戒処分の指針について
第2 標準例
1 一般服務関係
(15) パワー・ハラスメント
ア パワー・ハラスメント(人事院規則10―16(パワー・ハラスメントの防止等)第2条に規定するパワー・ハラスメントをいう。以下同じ。)を行ったことにより、相手に著しい精神的又は身体的な苦痛を与えた職員は、停職、減給又は戒告とする。
イ パワー・ハラスメントを行ったことについて指導、注意等を受けたにもかかわらず、パワー・ハラスメントを繰り返した職員は、停職又は減給とする。
ウ パワー・ハラスメントを行ったことにより、相手を強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹(り)患させた職員は、免職、停職又は減給とする。
人事院規則10-16(パワー・ハラスメントの防止等)の運用について
(令和2年4月1日職職―141)
第2条関係
1 この条の「職務に関する優越的な関係を背景として行われる」言動とは、当該言動を受ける職員が当該言動の行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものをいう。典型的なものとして、次に掲げるものが挙げられる。
一 職務上の地位が上位の職員による言動
二 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な状況下で行われるもの
三 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
2 この条の「業務上必要かつ相当な範囲を超える」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに業務上必要性がない又はその態様が相当でないものをいい、例えば、次に掲げるものが含まれる。なお、このような言動に該当するか否かは、具体的な状況(言動の目的、当該言動を受けた職員の問題行動の有無並びにその内容及び程度その他当該言動が行われた経緯及びその状況、業務の内容及び性質、当該言動の態様、頻度及び継続性、職員の属性及び心身の状況、当該言動の行為者との関係性等)を踏まえて総合的に判断するものとする。
一 明らかに業務上必要性がない言動
二 業務の目的を大きく逸脱した言動
三 業務の目的を達成するための手段として不適当な言動
四 当該行為の回数・時間、当該言動の行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
弁護活動
ニュースの事例については、正規職員と非正規職員という点で優越的な関係があるとされた可能性が高いです。また、3カ月程度にわたってあいさつを無視する、というところなどについて、業務上必要がない、回数等について態様が社会通念に照らして許容される範囲を超えたとされる可能性が高いです。ただし、何をもって大声で、何をもって注意なのかというところは詳しくわかりませんし、懲戒の対象となった人の言い分も詳しくはわかりません。
また、パワハラが成立するとしても、懲戒処分が適切かどうかという問題があります。パワハラの期間が短かったり、職務への影響が大きくなかったなど懲戒対象者に有利な事情があるにもかかわらず重い懲戒処分が下されようとしているのであれば、これに反論して適切な処分に持って行く必要があります。既に不当な懲戒処分がされたのであれば、これを取消す必要があります。
ただし、パワハラなどで懲戒になりやすくなっているのはおそらくですが事実でしょうし、メディアやSNS等の影響もあるからなのかパワハラであるとして関係部署に報告を行うハードルも低くなっていることは言えるでしょう。
心配になっていることがある方や、実際に懲戒処分がされるかされないかが問題になってしまっている方は、一度弁護士への相談をされた方がよいかも知れません。相手方の言っていることが事実無根なのか、それとも相談者様のご認識が歪んでしまっているのかをはっきりさせることができると思いますし、事実無根であればそれに沿った供述が出来るようにし、場合によっては証拠収集なども出来る可能性があります。
まとめ
このように、普通に仕事をしていると思っていても、思わぬところについてパワハラだと指摘されるリスクが出てきます。実際にこの記事をお読みの方には、仕事の人間関係でお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合に、どう動いていくのか、何をどう主張するのか、弁護士と一緒に考えていくことで、良い結果が得られるかもしれません。文字数の都合で省略した内容についても、実際に相談に来ていただければご説明できます。
パワハラの関係でお悩みの公務員の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
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公務員のパワハラと犯罪―公務員がパワハラを起こした場合の懲戒処分や刑罰をはじめとしたその他の処分について解説