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公務員が交通犯罪をしてしまったらぜひご相談を―公務員が交通犯罪を起こした場合について解説

2024-06-05

普段は真面目な公務員の方でも、交通犯罪を行ってしまい、懲戒処分を受けてしまうことがあります。

起訴されて正式裁判となったら、罰金処分の可能性は低く、執行猶予でも禁錮以上の刑に処せられ、自動的に失職となることもあります。

人事院が示している「懲戒処分の指針について」では、以下のように規定されております。

「4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係

(1) 飲酒運転

ア 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。

イ 酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職)とする。

ウ 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。

(2) 飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの)

ア 人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。

イ 人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。

(3) 飲酒運転以外の交通法規違反

著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は、停職、減給又は戒告とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こして措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。

(注) 処分を行うに際しては、過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとする。」

飲酒運転

特に飲酒運転をすると重い処分となります。

酒酔い運転は、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で運転することです。

5年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります(道路交通法第65条・第117条の2第1項第1号)。

酒気帯び運転は、身体に保有するアルコールの程度が血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上で運転することです(道路交通法施行令第44条の3)。

3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(道路交通法第65条・第117条の2の2第1項第3号)。

飲酒運転をして人身事故を起こしたら、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪が成立します。

飲酒運転により、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、過失運転致死傷罪として7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金となります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)第5条)。

アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為をして人身事故を起こしたら、危険運転致死傷罪となります。

人を負傷させた者は15年以下の懲役となり、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役となります(自動車運転処罰法第2条第1号)。

人身事故を起こし、救護措置や警察への連絡をせずに逃げたら、更に轢き逃げとなり、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります(道路交通法第117条第2項)。

過失運転致死傷罪

過失運転致傷罪の「自動車の運転上必要な注意」とは、運転者が自動車を運転する上で守るべき注意義務をいいます。

発生した事故から見て、どのような措置を取っていれば事故の発生を回避することができたかを、事故の具体的状況に即して検討します。

運転者に対してそのような措置を講じるべき義務を課すことが、可能で相当かどうかを検討して、義務を怠っていると評価できる場合に、犯罪が成立することになります。

まずは、運転者に過失があるかどうかが検討されることになります。

人身事故が起きても、過失がなければ、犯罪とはなりません。

運転者に過失がなく、被害者に大きな過失があれば、運転者は刑事処分を受けません。

例えば、横断歩道の無い車道に急に歩行者が走ってきて衝突してしまったとしたら、歩行者の過失が大きく、運転者は衝突を回避することができなかったことから、犯罪は成立しないことになります。

致死傷という結果だけでなく、過失の評価が重要となります。

過失が大きければ、それだけ刑事処分も重いものとなります。

しかし、飲酒をした上で自動車を運転したとなれば、それ自体正常な運転に影響を及ぼすものであり、前方不注意や信号無視といった不注意をしやすくなってしまいます。

公務員の方が交通犯罪をしてしまったら、ぜひご相談ください。

懲戒処分や失職の可能性がある状態で、どのような対応をすればいいかをご説明いたします。

早い対応が必要となりますので、ぜひお気軽にお早めにご連絡ください。

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公務員と自動車による人身事故-公務員が自動車を運転中に人身事故を起こしてしまった場合について解説

公務員に多いお酒による犯罪-公務員のお酒が関わる犯罪について解説

2024-05-23

普段は真面目な公務員の方でも、お酒に酔って犯罪を行ってしまう事件が多いです。

当事務所にも、アルコールによる事件を起こしてしまって、数多くの相談・依頼を受けております。

暴力犯罪

お酒に酔って暴れて他人や物に暴力をしてしまうことがあります。

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、暴行罪として2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処されます(刑法第208条)。

人の身体を傷害した者は、傷害罪として15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(刑法第204条)。

身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、傷害致死罪として3年以上の有期懲役に処されます(刑法第205条)。

他人の物を損壊した者は、器物損壊罪として3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処されます(刑法第261条)。

性犯罪

アルコールで酔ってしまい、わいせつな性犯罪を行ってしまうことがあります。

公然とわいせつな行為をした者は、公然わいせつ罪として6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処されます(刑法第174条)。

次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、不同意わいせつ罪として6月以上10年以下の有期懲役刑に処されます(刑法第176条第1項)。

一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。

二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。

三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。

四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。

五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。

六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。

七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。

八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

上記各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものである性交等をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、不同意性交等罪として5年以上の有期懲役刑に処されます(刑法第177条第1項)。

飲酒運転

気の緩みから飲酒運転をしてしまい、発覚することが少なくありません。

酒気を帯びて車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)にあったものは、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(道路交通法第117条の2第1項第1号・第65条第1項)。

酒気を帯びて車両等を運転した者で、その運転をした場合において身体に保有するアルコールの程度が、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上であれば、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(道路交通法第117条の2の2第1項第3号・第65条第1項・道路交通法施行令第44条の3)。

飲酒運転の結果、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処されます(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)。

危険運転致死傷罪として、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処されます(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条第1号)。

また、飲酒運転をしてしまうと、免職など重い懲戒処分を下されてしまいます(参照:人事院「懲戒処分の指針について」)。

アルコールで人生を台無しにしてしまうことになります。

失職や懲戒解雇等で職を失ってしまうことになりかねません。

事件を起こしてしまったら、なるべく早いご相談をしてください。

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公務員の飲酒運転-公務員が飲酒運転をしたときに成立する犯罪や懲戒処分について解説

公立学校教員の刑事事件-公立学校教員の飲酒運転のケースを基に成立する犯罪や懲戒処分について解説

2024-05-20

【事例(フィクション)】

公立学校で教員として勤務するAさんは、飲酒をした後に自動車を運転してしまい、その後職務質問で警察から呼気検査を求められ、検査の結果、呼気中に基準値を超えるアルコールが検知され、酒気帯び運転で検挙されました。

Aさんは逮捕はされませんでしたが、在宅捜査中です。

Aさんは、酒気帯び状態で自動車の運転をしたことは認めています。

Aさんに前科前歴はありません。

【被疑者の方が公立学校教員の場合のリスク】

公立学校に勤務する教員は、地方公務員となります。

公立学校教員の方が刑事事件の被疑者となった場合、刑事手続き上の逮捕・勾留や刑事罰のリスクだけでなく、地方公務員法上の懲戒処分や、失職等のリスクにもさらされることとなってしまいます。

以下、弁護活動も含め、順に説明していきます。

【飲酒運転の刑事罰】

アルコール濃度が血液1mlにつき0.3mg又は呼気1リットルにつき0.15mg以上の状態で自動車を運転すると、酒気帯び運転として、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(道路交通法117条の2の2第1項第3号・道路交通法施行令44条の3)。

酒気帯び運転の場合、初犯は罰金となることが多いですが、身体のアルコール濃度、運転した理由、距離等の事情次第で悪質と判断されれば、初犯でも公判請求され、執行猶予が付く可能性が高いとはいえ懲役の前科がつくこともあり得ます。

なお、身体のアルコール濃度を問わず、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で自動車を運転すると、酒酔い運転として、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金というより重い刑に処されます(道路交通法117条の2第1項第1号)。

【弁護活動】

①今後のAさんの刑事処分が決まるにあたって、取調べ対応は重要です。できるだけ弁護士が取調べの初期からついて、継続的にアドバイスができるようにするのが望ましいです。

②検察官が起訴するかどうか、起訴の場合は略式起訴か公判請求かを決める前に、弁護士から、酌むべき事情を主張する意見書を提出し、刑事処分の軽減を図ることも考えられます。

③もしAさんが公判請求された場合は、弁護士が酌むべき事情を主張立証し、執行猶予が付いて実刑は回避できるように、また事情次第では懲役より軽い罰金となることを裁判所に求めるなどして、処罰軽減のため公判活動をすることになります。

【刑事罰以外の処分等】

地方公務員の方は、起訴されると、休職をさせられることがあります(地方公務員法28条2項2号)。

そして起訴され、有罪判決で禁錮以上の刑となれば、執行猶予が付いたとしても、失職することになります(地方公務員法28条4項・16条1号)。

事例の場合、Aさんに前科前歴はなく、一般的には罰金の可能性が高いので、そうなればこの規定による失職はありません。

しかし、上で述べたとおり、事情次第では初犯でも公判請求されて執行猶予付き懲役刑となることはあり得るので、油断はできません。

また、地方公務員の方が犯罪にあたる行為をすると、刑事罰とは別に懲戒処分を受けることにもなります。

懲戒処分は、重い順に、免職、停職、減給、戒告と種類があります。

東京都教育委員会が公表している「懲戒処分の指針」によると

「具体的な量定の決定に当たっては、

① 非違行為の態様、被害の大きさ及び司法の動向など社会的重大性の程度

② 非違行為を行った職員の職責、過失の大きさ及び職務への影響など信用失墜の度合い

③ 日常の勤務態度及び常習性など非違行為を行った職員固有の事情等のほか、適宜、非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとする。

個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる量定にかかわらず免職等の処分をすることもあり得る。」

としつつ、標準例では「酒気帯び運転をした職員は、免職又は停職とする。」とされています。

Aさんの場合、免職又は停職のリスクがあることとなりますが、上の指針からわかるとおり懲戒処分の選択は総合判断なので、あきらめずに処分軽減の余地があるか、弁護士に相談することをおすすめします。

【おわりに】

酒気帯び運転をしてしまった公立学校教員の方は、刑事罰、失職、懲戒処分等のリスクにさらされますが、こういったリスクを回避・軽減するためには、弁護士による適切なアドバイスや活動が必要ですので、できるだけ早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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公務員の飲酒運転-公務員が飲酒運転をしたときに成立する犯罪や懲戒処分について解説

公務員と特定秘密―特定秘密保護法を中心に公務員の秘密保持について解説

2024-05-16

国際情勢の複雑化や情報の重要性が増加するに従い、秘密情報の保護が重要になってきました。こうした秘密情報の漏洩に公務員が関与することも見受けられます。そこで、秘密情報の保護を徹底するため、特定秘密保護法などにより厳格な規制が行われています。ここでは、特定秘密保護法を中心に、公務員の秘密保持について解説します。

公務員の守秘義務一般について

国家公務員は、国家公務員法100条1項において、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と定められています。地方公務員についても、地方公務員法で同様に定められています(地方公務員法34条1項)。

この「秘密」とは、「非公知の事項であつて、実質的にもそれを秘密として保護するに価すると認められるもの」とされています(昭和52年12月19日最高裁第二小法廷決定(徴税トラの巻事件))。

また、いわゆる外務省秘密漏洩事件(昭和53年5月31日最高裁第一小法廷決定)では、「政府が右のいわゆる密約によつて憲法秩序に抵触するとまでいえるような行動をしたものではないのであつて、違法秘密といわれるべきものではなく、この点も外交交渉の一部をなすものとして実質的に秘密として保護するに値するものである。したがつて・・・秘密にあたる」と判示されています。

憲法秩序に抵触するような違法秘密でなく、実質的に秘密として保護に値するものが「秘密」として保護されます。

これらの規定に違反して秘密を洩らしたときは、いずれも1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(国家公務員法109条12号、地方公務員法60条2号)。

特定秘密保護法

先ほどの守秘義務は、公務員の扱う秘密全般に関するものです。

一方、「特定秘密の保護に関する法律(特定秘密保護法)」では、「国際情勢の複雑化に伴い我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大するとともに、デジタル社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される中で、我が国の安全保障(国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障することをいう。以下同じ。)に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要であることに鑑み、当該情報の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的」としています(特定秘密保護法第1条)。

特定秘密の指定等

特定秘密保護法では、「当該行政機関の所掌事務に係る別表に掲げる事項に関する情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるもの」が特定秘密として指定されます(特定秘密保護法3条1項)。

別表には以下の事項があげられています。

別表(第三条、第五条―第九条関係)

一 防衛に関する事項

イ 自衛隊の運用又はこれに関する見積り若しくは計画若しくは研究

ロ 防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報

ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力

ニ 防衛力の整備に関する見積り若しくは計画又は研究

ホ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物の種類又は数量

ヘ 防衛の用に供する通信網の構成又は通信の方法

ト 防衛の用に供する暗号

チ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階のものの仕様、性能又は使用方法

リ 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階のものの製作、検査、修理又は試験の方法

ヌ 防衛の用に供する施設の設計、性能又は内部の用途(ヘに掲げるものを除く。)

二 外交に関する事項

イ 外国の政府又は国際機関との交渉又は協力の方針又は内容のうち、国民の生命及び身体の保護、領域の保全その他の安全保障に関する重要なもの

ロ 安全保障のために我が国が実施する貨物の輸出若しくは輸入の禁止その他の措置又はその方針(第一号イ若しくはニ、第三号イ又は第四号イに掲げるものを除く。)

ハ 安全保障に関し収集した国民の生命及び身体の保護、領域の保全若しくは国際社会の平和と安全に関する重要な情報又は条約その他の国際約束に基づき保護することが必要な情報(第一号ロ、第三号ロ又は第四号ロに掲げるものを除く。)

ニ ハに掲げる情報の収集整理又はその能力

ホ 外務省本省と在外公館との間の通信その他の外交の用に供する暗号

三 特定有害活動の防止に関する事項

イ 特定有害活動による被害の発生若しくは拡大の防止(以下この号において「特定有害活動の防止」という。)のための措置又はこれに関する計画若しくは研究

ロ 特定有害活動の防止に関し収集した国民の生命及び身体の保護に関する重要な情報又は外国の政府若しくは国際機関からの情報

ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力

ニ 特定有害活動の防止の用に供する暗号

四 テロリズムの防止に関する事項

イ テロリズムによる被害の発生若しくは拡大の防止(以下この号において「テロリズムの防止」という。)のための措置又はこれに関する計画若しくは研究

ロ テロリズムの防止に関し収集した国民の生命及び身体の保護に関する重要な情報又は外国の政府若しくは国際機関からの情報

ハ ロに掲げる情報の収集整理又はその能力

ニ テロリズムの防止の用に供する暗号

適正評価

行政機関の職員や都道府県警察の職員等で、特定秘密の取扱いの業務を新たに行う見込みがある者は、行政機関の長や警察本部長により、特定秘密の取扱業務を行った場合にこれを洩らすおそれがないことについての評価を実施されることになります(特定秘密保護法第12条第1項・第15条第1項)。適正評価は、テロリズムと関連する事項や犯罪などに関する事項だけでなく、飲酒や経済的な状況などについても調査されます(同法第12条第2項各号・第15条第2項)。

行政機関の長などを除いて、この適正評価において特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを洩らすおそれがないと認められた者でなければ、特定秘密の取扱業務を行うことはできません(同法第11条)。

罰則

特定秘密の取り扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を洩らしたときは、10年以下の懲役に処され、情状によりさらに1000万円以下の罰金に処されます。特定秘密の取り扱いの業務に従事しなくなった後に漏らした場合も同様です(特定秘密保護法23条1項)。

また、行政機関の長が内閣に提示したり(同法4条5項)、外国の政府や国際機関に提供したり(9条)、国会両議院や裁判所など公益上必要の認められる相手に提供したり(10条)、内閣総理大臣が特定秘密の指定及び解除並びに適正評価の実施のため特定秘密である情報を含む資料の提出を求めること(18条4項後段)により、特定秘密が第三者に提供されることがあります。これらの提供の目的である業務により当該特定秘密を知得したものがその特定秘密を洩らしたときは、5年以下の懲役に処され、又は情状によりさらに500万円以下の罰金に処されます(同法23条2項)。

これらの罪は未遂も処罰します(同法23条3項)。また、過失により漏らした場合も処罰されます(23条1項の罪については2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金。23条2項の罪ついては1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金)。

懲戒処分

特定秘密をはじめとした秘密漏洩に対しては厳しい懲戒処分が下されます。

人事院の「懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職―68)」によると、「1 一般服務関係 イ 情報セキュリティ対策のけ怠による秘密漏えい」については、停職・減給・戒告処分の対象となります。「ア 故意の秘密漏えい」は免職又は停職となり、特に「自己の不正な利益を図る目的」の場合は、必ず免職となります。

秘密保持の例外

以上のように、特定秘密については、公務員は厳格に扱わなければなりません。

一方で、「特定秘密」と指定されたとしても、これを一切口外できないとなると、不当・違法な行為が行われているにもかかわらず秘密にされてしまい、かえって我が国や国民の利益を損ねてしまいかねません。

そもそも、「秘密」とは前述の「徴税トラの巻事件」や「外務省秘密漏洩事件」の判示のように実質的にもそれを秘密として保護するに値するものである必要があります。犯罪に該当したり憲法秩序を脅かすような重大な違反については、保護に値しないといえるでしょう。また、公務員は、職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならないと定められています(刑事訴訟法239条2項)。

したがって、「特定秘密」とされていても公務員が第三者に開示できる場合があると考えられます。

もちろん、「特定秘密」とされている以上、それを第三者に開示するとなると、大きなリスクに直面することになります。

このような状況でお悩みのときは弁護士にご相談ください。

弁護士もまた守秘義務を負っています(弁護士法第23条・弁護士職務基本規程第23条、刑法第134条第1項)。弁護士に相談いただいた内容が漏れることはありません。

お話しいただいた情報を基に、ご懸念の情報が「秘密」に該当するのか、開示できるあるいは開示するべき情報なのか、開示する場合どのようにするべきなのか、アドバイスさせていただきます。

「特定秘密」についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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公務員と秘密保持

公務員の起訴休職-公務員が事件を起こしてしまい、起訴された場合どうなるかについて解説

2024-05-10

公務員が刑事事件を起こしたり、起こした疑いをかけられて起訴、つまり公判請求をされると、多くの場合「起訴休職」などと言って、被告人となった公務員は裁判期間中休職させられることになります。

以下、公務員が公判請求され刑事裁判にかけられた場合の流れや対処について説明します。

事案

国家公務員Aさんは、普段は真面目に仕事はしているものの、プライベートでは自分の性欲を満たすために盗撮行為や痴漢行為を繰り返していた。手口としては警察に発見しにくい場所を選んで行うなど、容易には発覚しにくいもので、Aさんは自身の犯行が警察等に発覚することなく長年にわたって痴漢や盗撮行為を繰り返していた。

ある日、そのようなAさんの努力もむなしく、Aさんは電車内での痴漢と盗撮行為により現行犯逮捕されてしまった。逮捕されてから数日は、私選弁護人と家族の尽力により、職場に事件を起こしたことや逮捕されたことが発覚することはなかった。現行犯逮捕された事件については、示談が成立して不起訴になる可能性に賭けたいというAさんの意向で、私選弁護人が示談に動いた。結局、示談が成立はしたものの、あまりにも過去の余罪が多かったこともあり、検察官は現行犯逮捕された事件で起訴することを決定した。

起訴されたことで、警察から監督官庁に通報がなされ、Aさんは起訴休職を命じられることになった。

(上記はフィクションであり、弊所を含めた特定の法律事務所や、特定の人物、団体等とは一切関係ありません。)

関連法令

地方公務員法

第二十八条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。

② 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを休職することができる。

二 刑事事件に関し起訴された場合

国家公務員法

(本人の意に反する休職の場合)

第七十九条 職員が、左の各号の一に該当する場合又は人事院規則で定めるその他の場合においては、その意に反して、これを休職することができる。

一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合

二 刑事事件に関し起訴された場合

(休職の効果)

第八十条 前条第一号の規定による休職の期間は、人事院規則でこれを定める。休職期間中その事故の消滅したときは、休職は当然終了したものとし、すみやかに復職を命じなければならない。

④ 休職者は、職員としての身分を保有するが、職務に従事しない。休職者は、その休職の期間中、給与に関する法律で別段の定めをしない限り、何らの給与を受けてはならない。

(刑事裁判との関係)

第八十五条 懲戒に付せらるべき事件が、刑事裁判所に係属する間においても、人事院又は人事院の承認を経て任命権者は、同一事件について、適宜に、懲戒手続を進めることができる。(以下略)

国家公務員、地方公務員問わず、公務員の場合、起訴されると、刑事裁判での認否に関わらず、強制的に休職させられることがあります。もちろん、休職中は仕事ができませんし、原則として給与は支給されません(国家公務員法第80条第4項参照)。

また、刑事裁判は有罪判決が下るまで無罪推定として被告人を扱うのが大原則なのですが、国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)。そのため、特に事案がある程度単純で本人が罪を認めている事件などであれば、起訴されたり判決が出る前に懲戒手続がすすめられ、懲戒処分が下されることがあります。

対処法

このように、示談をすれば通常不起訴となる可能性が高い部類の事件であっても、常習性の程度やその他情状によっては、不起訴となることなく、起訴されてしまうことも有り得ます。

もちろん通常通りの刑事弁護活動や示談交渉の能力も重要ですが、公務員の方の事件の場合、民間で働いている方が事件を起こした場合では考えられないような手続もあります。刑事事件や懲戒手続で良い結果を出していくためには、刑事弁護だけではなく、懲戒手続等にも熟知した弁護士が必要です。

刑事事件を起こしてしまうと、どうしても弁護人だけが頼りになってしまうところがあります。安心のできる刑事弁護を受けたい公務員の方や、そのご家族の方は、ぜひ一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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公務員の懲戒処分の流れー公務員が罪を犯した場合の懲戒処分の内容や手続きの流れについて解説

公務員と自動車による人身事故-公務員が自動車を運転中に人身事故を起こしてしまった場合について解説

2024-05-07

普段は真面目に仕事をして生活している公務員の方々でも,自動車による人身事故を起こしてしまうことがあります。

公務員が人身事故を起こしてしまったら,失職や懲戒処分を受けることになります。

失職

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」には,以下のように規定されております。

「(過失運転致死傷)

第5条 自動車の運転上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は,七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし,その傷害が軽いときは,情状により,その刑を免除することができる。」

国家公務員法・地方公務員法では,執行猶予だとしても,禁錮以上の刑に処せられたら,公務員としての身分を失うと規定されております。

つまり,正式起訴されたら,罰金処分の可能性が低いことから,失職となってしまいます。

検察官は,正式起訴をするかどうかの判断で,注意義務違反の大きさと被害の大きさを総合的に考慮しています。

被害の大きさは基本的には客観的証拠に基づき評価されてくるので,争いの余地は小さいと思われます。

しかし,注意義務違反について,取調べで違法・不当な働きかけがあり,過剰に悪質性が大きい内容の供述調書が作成されてしまうことがあります。

警察官から取調べで,威圧されたり,誘導されたりすることが珍しくありません。

まずは取調べで毅然とした対応をして,注意義務違反が過剰に大きく評価されないようにしなければなりません。

そのためには,刑事事件について能力のある弁護士を付けて対応していく必要があります。

取調べで具体的にどのように話すかを打ち合わせし,違法・不当な働きかけがあったら抗議や黙秘で対抗することになります。

懲戒処分

刑事処分が罰金処分以下だったとしても,勤務先から懲戒処分を受けることになります。

人事院が示している「懲戒処分の指針について」では,以下のように記載されております。

「4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係

(1) 飲酒運転

ア 酒酔い運転をした職員は,免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ,又は人に傷害を負わせた職員は,免職とする。

イ 酒気帯び運転をした職員は,免職,停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ,又は人に傷害を負わせた職員は,免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は,免職)とする。

ウ 飲酒運転をした職員に対し,車両若しくは酒類を提供し,若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は,飲酒運転をした職員に対する処分量定,当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して,免職,停職,減給又は戒告とする。

 (2) 飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの)

ア 人を死亡させ,又は重篤な傷害を負わせた職員は,免職,停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は,免職又は停職とする。

イ 人に傷害を負わせた職員は,減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は,停職又は減給とする。

(3) 飲酒運転以外の交通法規違反

著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は,停職,減給又は戒告とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こして措置義務違反をした職員は,停職又は減給とする。

(注) 処分を行うに際しては,過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとする。」

飲酒運転や轢き逃げが加わると,特に重い処分となります。

懲戒処分では,過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとされておりますので,やはり個々の事故の状況の分析や被害者対応が必要になってきます。

被害者への傷害についても,重篤なものかどうかの評価を慎重にする必要があります。

過失の程度について,殊更重く評価されないように主張していかなければなりません。

事故後の対応等で一番重要なのは,被害者への賠償です。

任意保険で対人・対物無制限で補償されているかどうかがまず重要です。

そのうえで,任意保険の賠償金とは別に,示談金をお支払いして示談が成立したら,刑事処分と懲戒処分で有利に評価される可能性が高まります。

被害者に対して誠意を持って謝罪と話し合いをしていく必要があります。

そのためには,刑事事件について経験と能力のある弁護士に依頼することが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,公務員の自動車による人身事故の事件もこれまでに数多く扱って解決してきました。

まずは無料の面談でご相談ください。

刑事事件ではスピードが重要ですので,なるべく早くご相談されることをお勧めいたします。

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公務員と不同意性交等事件-公務員が不同意性交等事件を起こしてしまった場合について解説

2024-04-29

公務員だとしても、不同意性交等罪として問題が生じることがあります。

暴行・脅迫をすることだけでなく、肉体関係を持つ過程で被害者の同意がなかったとして問題となることがあります。

不同意性交等罪

不同意性交等罪の要件は、以下のとおりです(刑法第177条第1項・第176条第1項)。

①不同意わいせつ罪に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、

②同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、

③性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものである性交等をした者は、

④婚姻関係の有無にかかわらず、

5年以上の有期懲役刑に処されることになります。

①の不同意わいせつ罪には、以下が規定されております。

一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。

二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。

三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。

四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。

五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。

六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。

七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。

八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

暴行・脅迫がなくても、上記のような状況で安易に肉体関係を持ったら、②被害者の同意がないと評価される可能性があります。

同意があると思っていた、との主張が認められることは難しいと思われます。

③性交等の範囲も広がりました。

女性器内に指を入れるような行為も性交等に含まれます。

④夫婦間であっても、相手の同意を得ずに性交等をしたら、犯罪となる可能性があります。

行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、不同意性交等罪となります。

16歳未満の者に対し、性交等をした者も、被害者の同意があったとしても、不同意性交等罪となります。なお、13歳以上16歳未満の者については、行為者が被害者が生まれた日から5年以上前の日に生まれていた場合は、被害者の同意にかかわらず不同意性交等罪が成立します。

逮捕されたら

不同意性交等罪で公務員が逮捕されたら、その地位の重要性から、高い可能性で実名報道がなされると思われます。勤務先に知られ、懲戒処分を受けることになります。

逮捕・勾留の後に起訴され、裁判で有罪となったら、長期間の実刑で刑務所に入ることになります。前述のとおり不同意性交等は最低でも懲役刑ですので、有罪となると公務員は失職します(国家公務員法第76条・第38条第1号、地方公務員法第28条第4項・第16条第1号)。

懲戒処分

公務員の場合、犯罪を起こせば非違行為をしたとして懲戒処分の対象になります。

処分の内容は、それぞれの所属する団体の懲戒処分の基準により決定されます。

国家公務員の「懲戒処分の指針について」などのように、不同意性交等自体は記載されていないところもあります。もっとも、この「懲戒処分の指針について」でも、盗撮や痴漢が停職又は減給とされていることから、不同意性交等をすればより重い処分が下されるでしょう。

早めの対応が重要

逮捕後の被害者との示談活動も、起訴前に成立させて不起訴を求めたり、起訴後に成立させて実刑期間を短くさせたり、という観点から重要となります。

しかし何よりも、警察に被害届が出されて刑事事件化する前に動いて、被害者と交渉して示談が成立できるのであれば、逮捕や起訴等もなく事件が解決することになります。

もちろん、暴行や脅迫があれば、被害者の感情からして示談は難しいと思われます。

しかし、状況次第では、被害者の同意がない状況だったとしても、犯行の悪質性や加害者と被害者の関係性や被害者の考え等によっては、被害者が示談に応じてくれることもあります。

なので、早めに動いて、被害者に対して誠意ある態度を示し、謝罪と被害弁償金の支払いを行って、示談を求めていくことが重要です。

ぜひお早目のご相談を

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事弁護に強い弁護士が多数所属しております。

不同意性交等事件や公務員犯罪についても、これまで多数扱って解決に導いてきました。

早めの行動が重要ですので、ぜひ当事務所の無料面談に申し込んでいただけたらと思います。

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公務員の飲酒運転-公務員が飲酒運転をしたときに成立する犯罪や懲戒処分について解説

2024-04-22

飲酒運転は重大な交通事故につながるおそれが高く、厳しく処罰されます。全体の奉仕者である公務員が飲酒運転をすれば、重い懲戒処分が下されます。ここでは、公務員が飲酒運転をしてしまった場合にどうなるかについて解説します。

刑罰

道路交通法違反

何人も、酒気を帯びて車両等(道路交通法第2条第1項第17号)を運転してはなりません(道路交通法第65条第1項)。

この規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)にあった者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(酒酔い運転。道路交通法第117条の2第1項第1号)。

その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあった者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(酒気帯び運転。道路交通法第117条の2の2第1項第3号)。「身体に政令で定める程度」は道路交通法施行令にて定められており、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラムです(道路交通法施行令第44条の3)。

また、自分が飲酒運転をしなくても処罰されることがあります。酒気帯び運転することとなるおそれがある者に車両等を提供すること(道路交通法第65条第2項)や、酒類を提供したり飲酒をすすめること(道路交通法第65条第3項)も禁止されています。車両等の提供をした者は、運転者が酒酔い運転をした場合は5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処され(道路交通法第117条の2第1項第2号)、酒気帯び運転をした場合は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(道路交通法第117条の2の2第1項第4号)。酒類を提供したり飲酒をすすめた者は、運転者が酒酔い運転をした場合は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処され(道路交通法第117条の2の2第1項第5号)、酒気帯び運転をした場合は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます(道路交通法第117条の3の2第2号)。

危険運転致死傷

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)では、飲酒運転事故の中でも悪質なものが、危険運転と定められています。

アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為を行い、よって、人を死傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処します(自動車運転処罰法第2条第1号)。

アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処します(自動車運転処罰法第3条第1項)。

また、自動車運転処罰法は、このような飲酒運転の発覚を妨げるような行為をした場合を「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱」として処罰しています。アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役に処します(自動車運転処罰法第4条)。

懲戒処分

飲酒運転をした場合、重い懲戒処分を下されます。

国家公務員に関する「懲戒処分の指針について」では、「第2 標準例」「4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係」「⑴ 飲酒運転」にて、次のように定めています。

ア 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。

イ 酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職)とする。

ウ 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。

酒気帯び運転でも免職がありえます。

失職

また、公務員は禁錮以上の刑に処せられると当然失職となります(国家公務員法第76条・第38条第1号、地方公務員法第28条第4項・第16条第1号)。地方公務員の場合、地方公務員法第28条第4項により、条例に定める場合は失職とならないという例外を定めることができます。この場合でも、例外に当たるのは過失による交通事故などに限られており、飲酒運転をしていた場合は例外に当たらないとする公共団体は多いです。

まとめ

以上のように、公務員が飲酒運転をしてしまうと重大な結果に至ることになります。

公務員の方で飲酒運転にお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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公務員の盗撮事件―公務員が盗撮をした場合に成立する犯罪と懲戒処分について解説

2024-04-15

公務員の方でも、盗撮事件を起こすことが少なくありません。

公務員の方で盗撮事件を起こしてしまい、当事務所に相談・依頼をされることが多くあります。

盗撮は、スマートフォンカメラなどで手軽にできてしまうことから、安易な気持ちで犯行を行ってしまいます。

しかし、発覚されてしまったときに失うものが非常に大きいです。

ネットニュースでも、以下のような記事があります。

※一部情報を修正しております。

「懲戒処分…ホテルで女性を盗撮した部長、女性に気付かれ逮捕…示談成立、釈放され不起訴に 課長もトイレ盗撮、被害者が特定されず逮捕なし

県と市は、盗撮行為などをしたとして、地方公務員法に基づき、部長を停職6カ月、課長を停職1カ月の懲戒処分にしたと発表した。2人はいずれも行為を認め、深く反省しているという。

部長は、ホテルで、派遣型風俗店の女性を呼び出し、ハンディーカメラを設置して隠し撮りした。女性がカメラに気付いて通報し、性的姿態等撮影容疑で逮捕された。女性と示談が成立し、釈放され、翌日に不起訴処分となった。

課長は、飲食店の共用個室トイレに、盗撮目的で映像機器を設置した。客の通報により、警察の事情聴取を受けた。被害届の提出はなく、被害者が特定されていないものの、市は条例に抵触すると判断して処分した。

県と市は幹部職員の処分について、「信頼を大きく失墜させる行為で、深くおわび申し上げます。全職員に綱紀粛正を徹底し、信頼回復に努めてまいります」とコメントを出した。」

性的姿態等撮影罪

盗撮罪は、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」に定められております。

性的姿態等撮影罪として、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されることになります。

未遂も罰せられます。

正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる対象性的姿態等を撮影する行為が、性的姿態等撮影罪となります。

・人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるもの)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分

・わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態

不同意わいせつ罪に掲げる以下の行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為も、性的姿態等撮影罪となります。

・暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。

・心身の障害を生じさせること又はそれがあること。

・アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。

・睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。

・同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。

・予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。

・虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。

・経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為も、性的姿態等撮影罪となります。

正当な理由がないのに、13歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は13歳以上16歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為も、性的姿態等撮影罪となります。

失職・懲戒処分

禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者は、失職となります。

禁錮以上の刑に処せられなくても、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合等として、懲戒処分を受けることになります。

人事院で発表されている「懲戒処分の指針について」では、「公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けていない状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減給とする。」と示されております。

しかし、悪質性が重く評価されたりしたら、当然ですが懲戒免職の可能性もありえます。

公務員の方で、盗撮事件をおこしてしまったら、ぜひ当事務所へ相談・依頼をしてください。

当事務所が全力でサポートいたします。

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公務員と性犯罪

公務員と国家賠償-公立学校の生徒が教師の不適切な指導により重い障害を負った事件を基に、公務員と国家賠償について解説

2024-04-08

【事例】

2016年に、都立高校の水泳の授業中に教諭から無理な飛び込みの指示を受け、プールの底に頭を打ち付けて重いけがをしたとして、当時3年生だった元男子生徒が東京都に損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は3億8000万円あまりの賠償を命じる判決を言い渡しました。

2016年7月、東京・江東区の都立高校で水泳の授業中に、元男子生徒は、体育教諭からデッキブラシを越えてプールに飛び込むよう指示され、頭をプールの底に打ち付けて、首の頸髄を損傷し、両手足に重度のまひが残る大けがをしました。

元男子生徒と家族は「事故は担当教諭による不適切な体育指導が原因で起きた」「18歳の男子高校生が何の落ち度もないまま、突然、夢見ていた将来を奪われた精神的な苦痛は甚大だ」と訴えて、東京都に対し、およそ4億2800万円の損害賠償を求めて裁判を起こしていました。

裁判では都に賠償義務があることは争いがなく、金額が争点となっていましたが、東京地裁はきょうの判決で3億8000万円あまりの賠償を命じました。判決後、元男子生徒は「事故からおよそ8年が過ぎ、この間に母が亡くなり、大きな支えを失ってしまいました」とコメント。そのうえで、教諭からは直接の謝罪がなく、「判決が出ても許すことはできません」などとしています。

元男子生徒に危険な飛び込みの指示をした体育教諭は、その後、業務上過失傷害の罪に問われ、2021年に東京地裁から罰金100万円の判決が言い渡されています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8067d866f3bdcfa6439c7818248d9388de352dea

3月26日火曜日13:18配信

(個人名などは修正しています)

刑罰と懲戒処分

公務員が一般市民に被害を与えた場合、犯罪に当たれば刑罰を受けます。また、非違行為として任命権者から懲戒処分を受けます。

参照:東京都教育委員会「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/staff/personnel/duties/culpability_assessment.html

【事例】の教諭は業務上過失傷害(刑法第211条)の罪に問われ、罰金刑を科されています。

国家賠償

また、このような被害を与えれば、本来であれば被害者に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負うところです。しかしながら、公務員の行為により一般市民が損害を被った場合、それは国・公共団体の活動により損害を被ったといえ、国・公共団体が責任を負うべきともいえます。また、このような場合、被害者が損害をより確実に補填される必要があります。そこで、国家賠償法により、特別に賠償されます。

国家賠償法第1条第1項は「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」と定めています。

国家賠償法では「公権力の行使に当る公務員」と規定されていますが、私人の権利義務を一方的に変動させる権力的公務だけでなく、広く公務員の公務全般が対象になります。

「その職務を行うについて、」とは公務員の職務の遂行において生じたことを意味します。【事例】のように公立学校の教諭が授業中に起こした事件では該当することについてはあまり問題になりませんが、事案によっては「その職務を行うについて」といえるか問題となる場合があります。

警察官が、もっぱら自己の利益を図る目的で、制服を着て職務中であることを装って、被害者に不審尋問をして所持品を預かり、持っている拳銃で射殺した事件では、最高裁は「客観的に職務執行の外形をそなえる行為をしてこれによって、他人に損害を加えた場合には、国又は公共団体に損害賠償の責を負わしめ」ると判示しました(最二判昭和31年11月30日)。これにより、客観的に職務行為の外形を備える行為については、「その職務を行うについて」に該当することになります。

「違法」とは公務員が「職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく」行った場合をいます(最一判平成元年3月11日)。教諭は学校のプールのような到底飛び込みに適さないプールで、デッキブラシを超えてというような、愉快犯的なやり方で飛び込むよう指示をしたのですから、職務上尽くすべき注意義務を尽くしていないのは明らかでしょう。

「故意又は過失」は一般的な不法行為と同様に、過失がない場合までは責任を負わないというものです。

以上の要件を満たせば、公務員の所属する国又は公共団体が、被害者に賠償責任を負います。

国家賠償法第1条第2項では、「前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。」と定めています。公務員に故意又は重大な過失があったときは、被害者に賠償した国や公共団体から、賠償額分を請求されてしまいます。

前述のように、教諭は学校のプールのような到底飛び込みに適さないプールで、デッキブラシを超えてというような、愉快犯的なやり方で飛び込むよう指示をしたのですから、重大な過失があるとされるでしょう。

まとめ

このように、公務員が公務を行うにあたり一般市民に損害を与えると、国又は公共団体が賠償責任を負いますが、故意又は重過失があれば、公務員自身が賠償額を負担しなければならなくなります。

公務員の方で他人に被害を与えてしまい心配の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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公務員の犯罪

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