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公務員の性犯罪事件-公務員が性犯罪事件を起こしたら当事務所の弁護士に相談してください
公務員が性犯罪事件を起こして刑事事件として捜査されるケースは少なくありません。
当事務所へも、多数の公務員の方が、起こしてしまった性犯罪事件についてご相談・ご依頼をされております。
最近のネットニュースでも、公務員が盗撮をして逮捕された、公務員が公然わいせつをして逮捕された、公務員が痴漢をして逮捕された、等と多数報道されております。
その身分の重要性から、実名報道されることも珍しくありません。
公務員が性犯罪事件を起こしてしまったら、失うものが非常に大きくなります。
公務員の懲戒処分
公務員が性犯罪事件を起こしてしまったら、懲戒処分を受けることになります。
「懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職―68)(人事院事務総長発)」では、人事院が、懲戒処分の量定を決定するに当たっての参考に供することを目的として、懲戒処分の指針を作成しております。
性犯罪関係については、以下のように記載されております。
「(12) 淫行
18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して淫行をした職員は、免職又は停職とする。
(13) 痴漢行為
公共の場所又は乗物において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。
(14) 盗撮行為
公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けていない状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減給とする。」
これはあくまで代表的な事例を選び、それぞれにおける標準的な懲戒処分の種類を掲げたものです。
具体的な処分量定の決定に当たっては、
① 非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
② 故意又は過失の度合いはどの程度であったか
③ 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
④ 他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
⑤ 過去に非違行為を行っているか
等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとする、とされております。
そのため、実際の犯行がどのようなもので、被害者がどれだけの損害を受けて、どれだけ誠意をもって被害者等に対応しているか、等が具体的に確認されることになります。
取調べ対応
取調べでは、とにかく反省して認めて話せばいいということではありません。
特に警察は、犯罪の内容をより悪質性が大きく見せるように、取調べで誘導してきます。
実際にした犯行より、より悪い内容にされてしまいます。
個人の性癖等を詳しく話させ、いかに犯人の性癖が異常で普通でないかを過剰に強調させる調書を作成してきます。
こちらが少しでも抵抗したり否定したりしたら、「お前は反省していない」「被害者に対して申し訳ないと思わないのか」「裁判で不利になるぞ」「そう来るなら徹底的に調べるぞ」等と言って威圧してきます。
プロの警察官に対し、素人が毅然と対応するのは難しいです。
刑事弁護に精通した弁護士を付けて、慎重に対応していく必要があります。
釈放活動
逮捕されたら、裁判所に対して釈放を求めていくことになります。
釈放は簡単には認められません。
逃亡や証拠隠滅のおそれがあるということで、勾留となって身体拘束が継続されてしまいます。
刑事弁護に精通した弁護士を通じて、状況を分析して説得的に訴えていかないと、釈放が認められるのは難しいです。
被害者対応
被害者に対して、早急に謝罪と被害弁所のお話をして、示談の成立を目指すことになります。
精神的・肉体的損害を受けた被害者に対して、慎重に対応する必要があります。
謝罪にしても、方法を間違えたら、被害者が更に傷ついて逆効果になってしまうことがあります。
お金の交渉だけでなく、接触禁止等の再発防止策も具体的に話して説得していくことになります。
ぜひ当事務所へご相談を
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、これまでに公務員の性犯罪事件について多数扱ってきました。
取調べ対応・釈放活動・示談活動等、多くの経験・実績があり、自身があります。
刑事弁護はどの弁護士でもいいというわけではなく、人生を大きく左右する事件について、刑事弁護に精通した弁護士を選んで対応したほうがいいです。
弁護士による無料面談を実施しておりますので、お気軽にご連絡ください。
有料の接見についても、迅速に対応させていただきます。
まずは早めにご連絡してください。
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公務員が性犯罪を起こしたらご相談を―公務員の起こし得る性犯罪について解説
公務員の盗撮事件-公務員が盗撮をしてしまった場合の流れについて解説
学校の教師が生徒の着替えを盗撮したり、トイレにカメラを仕掛けるなど、教育関係者の性犯罪が問題となっています。国公立の学校の教職員は公務員であるため、公務員として懲戒処分の対象となります。
ここでは、公務員が盗撮をしてしまった場合について解説します。
盗撮をしたときに成立する犯罪
性的姿態等撮影罪
盗撮をした場合、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿態撮影等処罰法)第2条の性的姿態等撮影罪に該当することが考えられます。
令和5年7月13日に性的姿態撮影等処罰法が施行され、この日以降の盗撮については性的姿態等撮影罪として、従来の各都道府県が定める迷惑防止条例違反よりも重く処罰されるようになりました。
3年以上の懲役(刑法改正後は拘禁刑となります)又は300万円以下の罰金と、後述の迷惑防止条例よりも重い処罰となっています。
(性的姿態等撮影)
第二条次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロイに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
二刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
三行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
四正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為
2前項の罪の未遂は、罰する。
3前二項の規定は、刑法第百七十六条及び第百七十九条第一項の規定の適用を妨げない。
迷惑防止条例違反
上記の性的姿態等撮影罪に該当しないと判断されても、各都道府県が定める迷惑防止条例違反に該当する可能性があります。
埼玉県迷惑行為防止条例第2条の2第1項第1号では、盗撮については次のように定めています。
(卑わいな行為の禁止)
第二条の二 何人も、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
一 次に掲げる場所又は乗物にいる人の通常衣服その他の身に着ける物(以下この条において「衣服等」という。)で覆われている下着又は身体を写真機、ビデオカメラその他の機器(衣服等を透かして見ることができるものを含む。以下この号において「写真機等」という。)を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置すること。
イ 住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所又は公共の乗物(イに該当するものを除く。)
ハ 学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イ又はロに該当するものを除く。)
このような盗撮行為をすると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(第12条第1項第1号)。
児童ポルノ製造
盗撮の対象が18歳未満の児童の場合、その性器や周辺部を撮影している画像は児童ポルノに該当し、盗撮は児童ポルノの製造に該当します。この場合、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条第3項・第7条第5項)。
その他の犯罪
盗撮をするとなると、更衣室やトイレに無断で侵入することが多くなります。このような目的で入ることは認められていないので、建造物侵入罪(刑法第130条)も成立することが多いです。3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます。ただ、これは盗撮の手段として行われていますので、性的姿態等撮影罪や児童ポルノ製造罪等結果である罪と比較してより重い方の刑により処断されます(刑法第54条第1項)。
被害者との示談
刑事事件において起訴を免れたり(起訴猶予)、起訴されても罰金などの軽い処分を目指すのであれば、被害者との示談は欠かせません。
もっとも、盗撮されたと特定された方が被害者になりますので、事件によっては膨大な数の被害者が出ることもあります。また、学校での盗撮事件では、学校の教師や児童の保護者がそもそも示談に応じないということも珍しくありません。
性犯罪関係の懲戒処分
公務員が犯罪行為をすると、非違行為をしたとして、重い懲戒処分を受けることになります。
国家公務員の懲戒に関する、人事院の「懲戒処分の指針について」によると、「3 公務外非行関係」において、「(14)盗撮行為」では「公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けていない状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減給 とする。」と定めています。
また、地方公務員については、各地方公共団体の機関が懲戒処分の指針を定めています。
自身の職務に関し、その職務上の立場を悪用した非違行為ほど、厳しい処分がされます。
例えば、「さいたま市職員の懲戒処分の指針について」では、「第2 標準例」「3 公務外非行関係」の「⑿わいせつ行為等」の「エ 盗撮行為」では、「公共の場所等において盗撮行為をした職員は、免職、停職又は減給とする。」と定められています。
懲戒処分においても、被害者と示談できたかどうかといった事情が考慮されます。
公務員の身分について
上記のように、盗撮行為に対しては重い懲戒処分が下されます。
公務員の場合、起訴されると、強制的に休職させられることがあります(地方公務員法第28条第2項第2号、国家公務員法第79条第2号)。休職中は仕事ができませんし、給与は支給されません(国家公務員法第80条第4項参照)。
国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)。そのため、起訴されたり判決が出る前に懲戒手続がすすめられ、懲戒処分が下されることがあります。
地方公共団体の職員でも、捜査中に教育委員会等の担当者が被疑者に接見して事情を聴取し、起訴の前後に懲戒処分を下すこともあります。
裁判の結果、有罪の判決を言い渡され、禁錮以上の刑に処されると、失職してしまいます(地方公務員法第28条第4項・第16条第1号、国家公務員法第76条・第38条第1号)。地方公務員の場合は、「条例に特別の定めがある場合」には失職とならないとすることができます。しかし、通勤中の交通事故や執行猶予付きの禁錮にとどまる場合にのみ失職させないことができるという場合が多いです。性犯罪の場合、懲役刑が多いですし、上記のように事案によっては免職となるほど重いとみなされている類型であるため、原則通り失職することになるでしょう。
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公務員と性犯罪
まとめ
このように、公務員の盗撮は重い処分が下されることになります。
公務員の方で盗撮でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
公務員の人身事故への対応-公務員が人身事故を起こしたら弁護士にご相談ください
公務員が人身事故を起こしてしまったら、刑事処分だけでなく、懲戒や失職のおそれがあります。
起訴されて裁判となったら、罰金処分の可能性はほとんどなく、執行猶予が付いても禁固以上の判決となったら、公務員の身分を失うことになります。
勤務先の懲戒処分により、戒告・減給・停職・免職となる可能性があります。
特に、飲酒運転やひき逃げ等では、重い懲戒処分がなされることになります。
懲戒処分を行うに際しては、過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとされています。
人生を大きく左右することであり、人身事故を起こしてしまったらすぐに弁護士に対応を相談してください。
過失運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)では、以下のように規定されております。
「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」
検察官は、起訴して正式裁判にするか、略式起訴して罰金処分にするか、不起訴にするか、総合的に考慮して判断します。
前科前歴が多かったり、過失・注意義務違反の程度が大きかったり、被害者の怪我の程度が大きければ、重い処分が想定されます。
捜査の過程では特に、過失・注意義務違反の程度が大きな問題となってきます。
警察官が取調べで、大きな過失・注意義務違反を認めさせるように、違法・不当な働きかけをしてくることが珍しくありません。
こちら側に不利な方向で、威圧されたり、誘導されたりすることがあります。
証拠はそろっているから明らかだ、そんな言い訳は通用しないぞ、反省していないのか、ごまかしたら不利になるぞ、等と言って圧力をかけてきます。
威圧してこなかったとしても、こちらに不利になるように話を進めてくることは珍しくありません。
これまでにも、取調べにきちんと対応していたら、正式裁判にまではならなかったと思われる事件もありました。
取調べで毅然とした対応をして、注意義務違反が過剰に大きく評価されないようにしなければなりません。
しかし、素人である一般の人が、プロである警察官に毅然とした対応をすることは非常に難しいです。
そこで、取調べについて、弁護士を付けて対応していく必要があります。
取調べで具体的にどのように話すかを打ち合わせし、違法・不当な働きかけがあったら抗議や黙秘で対抗することになります。
被害者へは誠意ある対応をしなければなりません。
すぐに加入している任意保険会社へ連絡し、賠償について対応をお願いすることになります。
被害者への謝罪等もしなければならないかもしれません。
そのうえで、任意保険の賠償金とは別に、お見舞金としての性質の示談金をお支払いして示談を成立させることが必要になるかもしれません。
示談金をお支払いして示談が成立したら、刑事処分と懲戒処分で有利に評価される可能性が高まります。
被害者に対して誠意を持って謝罪と話し合いをしていく必要があります。
そのためには、刑事事件について経験と能力のある弁護士に依頼することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、公務員の自動車による人身事故の事件もこれまでに数多く扱って解決してきました。
他の一般的な事務所の弁護士では指摘されないが重要な部分についてもしっかりと検討し、対応していきます。
まずは無料の面談でご相談ください。
逮捕された場合は、有料の接見対応をご依頼できますので、ご家族の方はご連絡ください。
刑事事件ではスピードが重要ですので、なるべく早くご相談されることをお勧めいたします。
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公務員の人身事故-公務員が人身事故の交通犯罪を行ってしまったらご相談ください
公務員と贈答品-公務員の贈答品の受取りが倫理規定等に抵触するかどうかについて解説
現在公務員として在職している方であれば、仕事に関係する人からの贈答品の受取り等(お菓子、お酒、あるいは食事をもてなされることなど)については、厳しい対応がなされることを理解されていると思います。比較的人口の多い自治体などの公務員であれば、そもそも仕事の関係者などから贈答品を贈る等と言う話自体が出ないこともあるでしょう。
しかし、比較的人口の少ない自治体の公務員ですとか、国家公務員でも比較的人口の少ない地域では、贈答品を贈るような話が出るかもしれませんし、状況によっては断る理由に困ることもあるかも知れません。
倫理規定に絡めた説明と、懲戒処分が問題になったときの対処法を説明したいと思います。
関係法令について
関係法令は、以下の通りです。紹介するのは国家公務員倫理規定ですが、各自治体にも類似した規程が設けられています。
第三条
第1項 職員は、次に掲げる行為を行ってはならない。
一 利害関係者から金銭、物品又は不動産の贈与(せん別、祝儀、香典又は供花その他これらに類するものとしてされるものを含む。)を受けること。
二 利害関係者から金銭の貸付け(業として行われる金銭の貸付けにあっては、無利子のもの又は利子の利率が著しく低いものに限る。)を受けること。
三 利害関係者から又は利害関係者の負担により、無償で物品又は不動産の貸付けを受けること。
四 利害関係者から又は利害関係者の負担により、無償で役務の提供を受けること。
五 利害関係者から未公開株式(金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されておらず、かつ、同法第六十七条の十一第一項の店頭売買有価証券登録原簿に登録されていない株式をいう。)を譲り受けること。
六 利害関係者から供応接待を受けること。
七 利害関係者と共に遊技又はゴルフをすること。
八 利害関係者と共に旅行(公務のための旅行を除く。)をすること。
九利害関係者をして、第三者に対し前各号に掲げる行為をさせること。
「利害関係者」とは、「許認可等」を受けて行う事務をする個人・会社、受けようとする個人・会社などを言います(国家公務員倫理規程第2条第1項各号)。
ただし、国家公務員倫理規程第3条第2項のように、利害関係者が相手であっても出来る行為が規定されています。
第三条
第2項 前項の規定にかかわらず、職員は、次に掲げる行為を行うことができる。
一 利害関係者から宣伝用物品又は記念品であって広く一般に配布するためのものの贈与を受けること。
二 多数の者が出席する立食パーティー(飲食物が提供される会合であって立食形式で行われるものをいう。以下同じ。)において、利害関係者から記念品の贈与を受けること。
三 職務として利害関係者を訪問した際に、当該利害関係者から提供される物品を使用すること。
四 職務として利害関係者を訪問した際に、当該利害関係者から提供される自動車(当該利害関係者がその業務等において日常的に利用しているものに限る。)を利用すること(当該利害関係者の事務所等の周囲の交通事情その他の事情から当該自動車の利用が相当と認められる場合に限る。)。
五 職務として出席した会議その他の会合において、利害関係者から茶菓の提供を受けること。
六 多数の者が出席する立食パーティーにおいて、利害関係者から飲食物の提供を受けること。
七 職務として出席した会議において、利害関係者から簡素な飲食物の提供を受けること。
ごく簡素なもの、当該職員に限らずに提供されるものが許されていると考えてよいでしょう。
更なる例外規定として、
第四条
第1項 職員は、私的な関係(職員としての身分にかかわらない関係をいう。以下同じ。)がある者であって、利害関係者に該当するものとの間においては、職務上の利害関係の状況、私的な関係の経緯及び現在の状況並びにその行おうとする行為の態様等にかんがみ、公正な職務の執行に対する国民の疑惑や不信を招くおそれがないと認められる場合に限り、前条第一項の規定にかかわらず、同項各号(第九号を除く。)に掲げる行為を行うことができる。
公務員としての職務以外の経緯での関係がある相手方について、例外的に倫理規定違反としない趣旨になります。
弁護活動
以上のように、倫理規定違反にあたるかどうかは、受け取った物や便益の内容、受け取った状況、受け取った相手方との関係性によって決定されてくると言えます。贈答品に関することが問題になった時点で職場に居づらい状態となり、結果として退職を余儀なくされる可能性はありますが、最悪の場合退職金も無くなるなど、懲戒処分が行われることによるデメリットは大きいと言えます。
贈答品の受取り等で問題になった際は、そもそも受取りの事実があるのか、何を受け取ったのか、どういう状況で受け取ったのか、相手方とどういう関係であったのか、事前の相談(国家公務員倫理規程第4条第2項 職員は、前項の公正な職務の執行に対する国民の疑惑や不信を招くおそれがないかどうかを判断することができない場合においては、倫理監督官(略)に相談し、その指示に従うものとする。)を行ったのかなど、聴聞などで主張していくことで、懲戒処分を防ぐことができる可能性があります。
まとめ
このように、賄賂にまで当たらなかったとしても、物の受取りだけで公務員としての職を追われるリスクが出てきます。実際にこの記事をお読みの方には、仕事の関係者から物を受け取ってしまってお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合に、どう動いていくのか、何をどう主張するのか、弁護士と一緒に考えていくことで、良い結果が得られるかもしれません。文字数の都合で省略した内容についても、実際に相談に来ていただければご説明できます。
贈答品の関係でお悩みの公務員の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
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公務員のハラスメントと懲戒処分・犯罪-公務員がハラスメントを起こした場合の懲戒処分や刑罰について解説
自衛隊内でのセクハラ、役所内でのパワハラなど、公務員のハラスメントが問題となっています。このようなハラスメントは懲戒処分の対象になりますし、悪質なものは刑事事件となってしまいます。ここでは、公務員がハラスメントをした場合どうなるかについて解説します。
ハラスメントについて
ハラスメントは人間の尊厳を侵害する行為を指しますが、代表的なものはパワーハラスメント(パワハラ)とセクシャルハラスメント(セクハラ)です。
パワハラとは、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業関係が害されるものであり、①~③までの要素のすべてを満たすものをいいます。①優越的な関係とは、上司や部下という関係が一般的ですが、部下であっても代替できない資格・技能を有していたり、多数の部下が共同して業務に支障が出るようにする場合も、優越的な関係を背景としたといえます。②については、厳しい叱責であっても、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません。これを越えた、業務とは無関係な話や、殊更に他の職員のいる前でさらしものにしたり、人格攻撃に至れば、業務上必要かつ相当な範囲を超えたとされます。③については、①や②該当する言動が行われれば、その対象となった者の心身に不調をきたしますし、職場内も対象になった者に不当な対応をする雰囲気になったりするため、該当することになるでしょう。
セクハラとは、「他の者(職員以外も含む)を不快にさせる職場における性的な言動」又は「職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動」をいいます。「性的な言動」とは、①性的な関心や欲求に基づくものをいい、②性別により役割を分担すべきとする意識に基づく言動、③性的指向や性自認に関する偏見に基づく言動も含まれます。性的な内容の発言や性的な行動のことをいいます。性的な関心や欲求に基づくものの具体例としては、性的な事実関係を尋ねることや性的な内容のうわさを流すこと、性的な冗談やからかいのほか、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すこと、不同意性交や不同意わいせつ行為、性的な関係を強要することや、必要なく身体に触れること、わいせつ図画を配布・掲示すること等があります。職員間においては、場所・時間の限定はなく、「職員以外の者」との関係では「職場・勤務時間内(超過勤務時間も含む)」に限られますが、「職場」とは「職務に従事する場所」をいい、庁舎内に限らず出張先等も該当します。
懲戒処分
公務員がその職務に関してパワハラやセクハラをすると、非違行為をしたとして、重い懲戒処分を受けることになります。
国家公務員については、「防止リーフレット」や「義務違反防止ハンドブック」に、ハラスメントの防止や懲戒処分の指針について記載されています。また、人事院の「懲戒処分の指針」にも、ハラスメントをした場合の懲戒処分について定められています。
人事院の「懲戒処分の指針」によると、「1 一般服務関係」において、「 (14)セクシュアル・ハラスメント(他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動)」の「ア 暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし、又は職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつな行為をした職員」は、免職又は停職となります。「イ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した」職員は、停職又は減給となります。この場合においてわいせつな言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したことにより相手が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職又は停職とより重い処分となります。「ウ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った」職員は、減給又は戒告となります。
「(15)パワー・ハラスメント」の「ア 著しい精神的又は身体的な苦痛を与えたもの」は停職・減給・戒告の対象となります。「イ 指導、注意等を受けたにもかかわらず、繰り返したもの」は戒告では済まされず、停職又は減給とより重くなります。「ウ 強度の心的ストレスの重責による精神疾患に罹患させたもの」は免職・停職・減給の対象となり、もっとも重い懲戒免職もありえます。
これらの事案について処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断するものとしています。
犯罪・刑事責任
パワハラやセクハラに含まれる行為であっても、その態様や状況によって様々なものがあり、行政庁内の懲戒処分にとどまらず、民事責任、さらには刑事責任を負う行為もあります。
相手に暴行したり怪我を負わせた場合、暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)に問われる可能性があります。殴るなどの有形力の行使によって怪我をさせただけでなく、強いストレスを与えて相手を精神疾患に罹患させた場合も、傷害罪になりえます。個室に数名しかいない状況で叱責するようなものではなく、大勢の人がいる場所で侮辱したり人格を否定するような罵倒をすれば、侮辱罪(刑法231条)や名誉毀損罪(230条)が成立する可能性があります。
セクハラについても態様によっては、不同意性交等(刑法第177条第1項)や不同意わいせつ(刑法第176条第1項)に該当します。刑法第176条第1項の「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」にさせる事由として挙げられている「八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。」は、まさに職場での上下関係を利用したハラスメントです。その他、わいせつな図画の配布がわいせつ物頒布等罪(刑法第175条)に該当する可能性があります。
また、懲戒処分において、「これらの事案について処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断する」と書きましたが、刑事事件として処理される場合、さらに懲戒処分も重くなる可能性があります。上述の人事院の「懲戒処分の指針」では「3 公務外非行関係」で「(3)傷害 人の身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。」と定めていますが、ハラスメントにより人を傷害させたといえるときは、これと同等以上の処分を受けることにもなります。
なお、国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)が、起訴される前に懲戒処分を下されることもあります。
公務員のパワハラについては、次の記事もご覧ください。
まとめ
このように、公務員がハラスメントを起こした場合、懲戒処分や刑罰など多くの不利益が科される可能性があります。ご自身の言動がハラスメントに当たるかお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
就職前の犯罪行為-就職前の犯罪行為が公務員の職にどのような影響を及ぼすかについて解説
現在公務員として在職している人が犯罪行為を行い、警察に逮捕されて裁判で有罪になった場合に、懲戒処分を受けることは公務員の皆様であれば容易に想像できるかと思います。
では、公務員になる前に犯罪行為を行い、それが立件されて公訴時効にかかる見込みがない場合はどうなるのでしょうか?
法的な説明と、懲戒処分等に対する対処をご説明したいと思います。
関係法令について
公務員の犯罪についての関係法令は以下の通りです。
(欠格条項)
第三十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則で定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。
一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
(懲戒の場合)
第八十二条 職員が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該職員に対し、懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
三国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
(欠格条項)
第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。
一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
(懲戒)
第二十九条 職員が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該職員に対し、懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
三全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
国家公務員法、地方公務員法どちらも、「職員が」非行に走った場合に懲戒をすることができると定めているので、就職前の犯罪行為によって直接的に懲戒処分をすることができるわけではありません。
しかし、
(欠格による失職)
第七十六条 職員が第三十八条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、人事院規則で定める場合を除くほか、当然失職する。
(降任、免職、休職等)
第二十八条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
4 職員は、第十六条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、条例に特別の定めがある場合を除くほか、その職を失う。
とあるので、公務員になった後に懲役・禁錮の有罪判決を受けるとどちらも当然失職します。
弁護活動
ここまで説明してきたように、公務員として行ったわけではない犯罪についても、直接的な懲戒の理由にはならないまでも、刑事裁判にかけられてしまえば当然失職の理由になります。結局公務員になる前の犯罪行為が分かってしまえば職場には居づらくなってしまうわけですが、発覚していなければ、まだ在職の余地はあります。そのため、公務員の方にあっては一般の方より一層刑事処分に関して気を配る必要があります。被害者がいるけれどもまだ警察に被害届などを出していない、というケースなら、なおのこと弁護活動が効果を発揮する可能性があります。
また、職場によっては懲戒処分などをちらつかせてくる可能性があるのですが、基本的には懲戒処分にはならないと考えられるので、そのような場合は職場に対して懲戒の事由には該当しない旨申し入れていくことも考えていく必要はあります。
いずれにしても、まずは公務員になる前の犯罪行為について心当たりがある段階か、警察の捜査が入った初めの段階で弁護士に相談することが有効でしょう。
まとめ
このように、公務員が就職前に行った犯罪行為でも、失職等のリスクが生じていることになります。実際にこの記事をお読みの方には、就職前に行ってしまった犯罪行為でお悩みの方もいるかもしれません。
そのような場合に、どう動いていくのか、何をどう主張するのか、弁護士と一緒に考えていくことで、良い結果が得られるかもしれません。
公務員になる前の犯罪行為でお悩みの公務員の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
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公務員の懲戒免職-公務員が非違行為を起こして懲戒免職になるケースについて解説
公務員の公益通報―公務員が公益通報をする場合に考慮するべきことについて解説
公務員であっても、内部での贈収賄などの汚職、深刻なパワハラなど告発するべき不祥事に遭遇するかもしれません。しかし、このような場合、そもそも守秘義務に違反してしまうのではないか、組織から報復を受けるのではないかと心配するかもしれません。ここでは、公務員の公益通報について解説します。
公益通報の主体
公益通報者保護法は、第2条第1項で、「公益通報」について、「次の各号に掲げる者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく、当該各号に定める事業者(法人その他の団体及び事業を行う個人をいう。以下同じ。)(以下「役務提供先」という。)又は当該役務提供先の事業に従事する場合におけるその役員(法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法令(法律及び法律に基づく命令をいう。以下同じ。)の規定に基づき法人の経営に従事している者(会計監査人を除く。)をいう。以下同じ。)、従業員、代理人その他の者について通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている旨を、当該役務提供先若しくは当該役務提供先があらかじめ定めた者(以下「役務提供先等」という。)、当該通報対象事実について処分(命令、取消しその他公権力の行使に当たる行為をいう。以下同じ。)若しくは勧告等(勧告その他処分に当たらない行為をいう。以下同じ。)をする権限を有する行政機関若しくは当該行政機関があらかじめ定めた者(次条第二号及び第六条第二号において「行政機関等」という。)又はその者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生若しくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者(当該通報対象事実により被害を受け又は受けるおそれがある者を含み、当該役務提供先の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある者を除く。次条第三号及び第六条第三号において同じ。)に通報すること」と定めています。
公益通報者保護法第2条第1項1号の「労働者」とは、労働基準法第9条に定める「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者」をいいます。公務員も原則として労働者に該当します。
公務員の守秘義務との関係
国家公務員は、国家公務員法100条1項において、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と定められています。地方公務員についても、地方公務員法で同様に定められています(地方公務員法34条1項)。これらの規定に違反して秘密を洩らしたときは、いずれも1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(国家公務員法109条12号、地方公務員法60条2号)。
それでは、職務上知ってしまった事実については、違法不当なことであっても、誰にも言えないのでしょうか。
国家公務員法の「秘密」とは、「非公知の事項であつて、実質的にもそれを秘密として保護するに価すると認められるもの」とされています(昭和52年12月19日最高裁第二小法廷決定(徴税トラの巻事件))。
また、いわゆる外務省秘密漏洩事件(昭和53年5月31日最高裁第一小法廷決定)では、「政府が右のいわゆる密約によつて憲法秩序に抵触するとまでいえるような行動をしたものではないのであつて、違法秘密といわれるべきものではなく、この点も外交交渉の一部をなすものとして実質的に秘密として保護するに値するものである。したがつて・・・秘密にあたる」と判示されています。
これらの判例が示しているように、憲法秩序に抵触したり違法なものではなく、実質的に秘密として保護に値するものが「秘密」として保護されます。
したがって、違法な事実はもはや守秘義務の対象となる「秘密」とはいえないでしょう。
また、公務員は、職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならないと定められています(刑事訴訟法239条2項)。職務上知った違法な事実については、むしろ通報することが求められます。
よって、公務員が職上違法な事実を発見したときは、その是正のために公益通報をすることができます。
参照
○公益通報者保護法を踏まえた国の行政機関の通報対応に関するガイドライン
overview_220127_0002.pdf (caa.go.jp)
○行政機関向けQ&A(内部の職員等からの通報)
行政機関向けQ&A(内部の職員等からの通報) | 消費者庁 (caa.go.jp)
弁護士に相談を
このように公務員であっても法律上公益通報をすることができます。一方で、問題となっている具体的な事実を通報することが公益通報となるのか、法律上は可能といっても本当に大丈夫なのか、不安になることもあるかと思います。このようなときは弁護士にご相談ください。
弁護士もまた守秘義務を負っています(弁護士法第23条・弁護士職務基本規程第23条、刑法第134条第1項)。弁護士に相談いただいた内容が漏れることはありません。
お話しいただいた情報を基に、ご懸念の事実を公益通報できるのか、違法に不利益を科された場合どのようにするべきなのか、アドバイスさせていただきます。
公益通報についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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公務員による未成年者に対する性犯罪―公務員から未成年者に対して成立し得る性犯罪について解説
公務員が未成年者に対して性犯罪を行い、逮捕されたとの報道が少なくありません。
公務員という地位の重要性から、実名報道されることも多いです。
職場に知られたら懲戒処分を受けることになります。教職員がした場合や、児童売春の場合、免職となることも多いです。
起訴されて執行猶予でも禁錮以上の判決を受けたら、自動失職となります。
淫行条例違反
18歳未満の者と性行為・わいせつ行為をしたら、各都道府県の淫行条例(青少年健全育成条例)違反となります。
児童買春
お金を渡す約束をして18歳未満の者と性行為・わいせつ行為をしたら、児童買春となります(児童売春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条第2項・第4条)。
迷惑防止条例違反
いわゆる痴漢として、各地方公共団体の迷惑防止条例違反の成立が問題になります。
各地方公共団体によって成立要件は異なりますが、一般的には、正当な理由がないのに、公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し、著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせるような方法で、衣服等の上から、又は直接身体に触れることをしたら、迷惑防止条例違反となります。
服の上からお尻を触ったりすることが典型例です。
常習性が認められたら、より重く処罰されます。
不同意わいせつ罪
不同意わいせつ罪は、迷惑防止条例違反より程度の高い行為が対象になります。
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をしたら、不同意わいせつ罪が成立します(刑法第176条)。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
服の上からでも胸や女性器等を触った場合に問題となります。
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をしたら、不同意わいせつ罪が成立します。
医療行為や宗教行為等と偽ったり、暗闇の中で恋人等と勘違いさせたりして、わいせつな行為をすることが典型例です。
16歳未満の者に対し、わいせつな行為をしたら、同意があっても不同意わいせつ罪が成立します。
ここでは、相手が16歳未満であることを知っていたかが問題となります。
16歳未満であることを知らなかったら、犯罪は成立しません。
不同意性交等罪
不同意わいせつ罪に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交等をしたら、不同意性交等罪が成立します(刑法第177条)。
性交等は、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものをいいます。
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をしたら、不同意性交等罪が成立します。
医療行為や宗教行為等と偽ったり、暗闇の中で恋人等と勘違いさせたりして、性交等をすることが典型例です。
16歳未満の者に対し、性交等をしたら、同意があっても不同意性交等罪が成立します。
ここでは、相手が16歳未満であることを知っていたかが問題となります。
16歳未満であることを知らなかったら、犯罪は成立しません。
監護者わいせつ罪・監護者性交等罪
18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて、わいせつな行為をしたら監護者わいせつ罪、性交等をしたら監護者性交等罪が成立します(刑法第179条)。
16歳未満の者に対する面会要求等罪
わいせつの目的で、16歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為をしたら、犯罪が成立します(刑法第182条)。
一 威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求すること。
二 拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求すること。
三 金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求すること。
よってわいせつの目的で当該16歳未満の者と面会をした者は、更に重く処罰されます。
16歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為を要求した者は、犯罪が成立します。
一 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。
盗撮
正当な理由がないのに、ひそかに、人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分を撮影したら、性的姿態等撮影罪が成立します(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第2条)。
わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態も対象になります。
多くはスカート内の盗撮が問題となっておりますが、トイレや着替えを盗撮する場合も問題となります。
不同意わいせつ罪にいう不同意の状態で撮影しても、性的姿態等撮影罪が成立します。
行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて撮影しても、性的姿態等撮影罪が成立します。
正当な理由がないのに、16歳未満の者を対象として撮影したら、同意があったとしても性的姿態等撮影罪が成立します。
公務員が未成年に対して性犯罪をしてしまったら、すぐにご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、経験豊富な弁護士が多数所属しております。
初回面談は無料ですので、お気軽にご相談ください。
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公務員の持続化給付金詐欺―公務員が詐欺に加担した場合について解説
経済産業省のキャリア官僚が持続化給付金詐欺を主導した事件は社会を震撼させました。
ここでは、公務員の詐欺事件について解説します。
詐欺
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処されます(刑法第246条第1項)。持続化給付金詐欺では、学生や会社員など自分が事業を行っていないのに事業の売り上げがあるように装うなど、自身が支給される用件があるかのように申請して国を欺き、給付金を受け取ることで財物の交付を受けることが典型的な態様です。自分以外の学生や会社員などに申請のやり方を指示して申請させ、手数料などと称して給付金の一部を受け取れば、共犯者(刑法第60条)として同様の責任を負います。こうした指示者は、大勢の人を誘い込んで給付金申請を指示し、手数料などで給付金の大半を手にしており、何千万円もの被害を与えています。
このような誘いに乗ってしまった人については、発覚したとしても、1件だけだったり、指示役に渡してしまった分を含めた給付金全額を返還したりしていれば、逮捕されずに捜査が進む場合が多いです。一方で、詐欺の件数が多い場合、逮捕されることもあります。
詐欺には罰金刑がありませんので、略式手続き(刑事訴訟法第461条以下)により書類審査のみで即日裁判を終了するということはできず、起訴されれば、休職となってしまいます(国家公務員法第79条第2号、地方公務員法第28条第2号)。
有罪判決の場合必ず懲役刑となりますので、禁錮以上の刑に処されたとして失職してしまいます(国家公務員法第76条・第38条第1号、地方公務員法第28条第4項・第16条第1号)。
なお、地方公務員の場合は、条例に特別の定めがある場合は、禁錮以上の刑に処されたとしても失職せずに済むこともあります(地方公務員法第28条第4項)。地方公務員となる前の事件であれば対象外とするところもありますが、多くは過失の事件で執行猶予となった場合としており、過失運転致傷事件を想定しています。詐欺は故意の犯罪なので、条例による失職の例外となることは多くないでしょう。
懲戒処分
犯罪に該当する行為を行えば、非違行為をしたとして、懲戒処分を受けます。
国家公務員については、人事院の定める「懲戒処分の指針」に基づいて懲戒処分が下されます。
「懲戒処分の指針」の「第2 標準例」の「2 公金官物取扱い関係」において、「(3) 詐取 人を欺いて公金又は官物を交付させた職員は、免職とする。」と、非常に重い処分が定められています。
公金又は官物に該当しなくても、詐欺に該当する行為は、重い処分が下されます。「懲戒処分の指針」の「第2 標準例」の「3 公務外非行行為」では、「(8) 詐欺・恐喝 人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員は、免職又は停職とする。」と定められています。多くの場合免職となります。
地方公務員についても、自治体などが同様の処分基準を定めており、これに基づいて懲戒処分が行われます。
示談・被害弁償
詐欺のような被害者がいる犯罪では、被害者に謝罪をして弁償し、示談をすることが重要となります。示談に成功すれば、前科がないのであれば、不起訴(起訴猶予)となることが多いです。
もっとも、持続化給付金詐欺のように国や公共団体が被害者の場合、基本的には示談には応じません。被害金額を弁償するにとどまることが多いです。これでも、前科がないことや被害金額が少ないことなどを考慮して、起訴猶予となることもあります。
また、示談や弁償をしたからといって犯罪行為が消えるわけではありませんから、刑罰は下されなくても、懲戒処分を受けることになります。もっとも、示談や弁償をしたことは懲戒処分の判断にあたり有利に考慮されます。
まとめ
このように、持続化給付金詐欺などに加担してしまうと、重い刑罰や懲戒処分を受けることになります。詐欺についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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公務員の人身事故ー公務員が人身事故の交通犯罪を行ってしまったらご相談ください
普段は真面目な公務員の方でも、自動車で人身事故を起こしてしまい、刑事事件に発展してしまうと、懲戒の対象になります。
懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職―68)(人事院事務総長発)では、以下のように規定されております。
「4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係
(1) 飲酒運転
ア 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。
イ 酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職)とする。
ウ 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。
(2) 飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの)
ア 人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。
イ 人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
(3) 飲酒運転以外の交通法規違反
著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は、停職、減給又は戒告とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こして措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
(注) 処分を行うに際しては、過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとする。」
特に、起訴されて執行猶予が付いたとしても禁固以上の刑事処分を受けたら、公務員の身分は自動的に失われることになってしまいます。
人身事故によって公務員が失うものが非常に大きいため、慎重な対応が必要になります。
過失運転致死傷罪
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、過失運転致死傷罪が成立します(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)。
7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処されます。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができます。
その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、無免許運転による加重として、10年以下の懲役に処されます。
刑事処分は、過失の大きさや損害の大きさ等を総合的に考慮して判断されます。
損害が大きくても、過失が小さければ、正式起訴まではされない可能性があります。
弁護士が事故現場に行き、状況を分析して、過失についてこちら側に有利な主張ができないか検討することになります。
しかし、特に警察の取調べでは、過失・不注意の程度が大きく評価されるように話を誘導されることが少なくありません。
警察が適正で公平な取調べをするとは限りません。
警察官は時に、脅したり、威圧したり、不当に誘導したり、騙したりしてきます。
反省していないのか、被害者に申し訳ないと思わないのか、証拠はもうそろっているからそんなことを言っても無駄だ、今回の状況ではこういう判断になると決まっている、などと言って圧力をかけてきます。
その結果、不注意の程度を大きくされ、過剰によそ見をしていた、過剰にスピードを出していた、という内容の供述調書が作成されてしまうことになります。
素人である一般人が、プロの警察官に毅然とした態度で取調べに応じることは難しいです。
刑事弁護に精通した弁護士を付けて対応するべきです。
警察は弁護士の存在を非常に気にしており、弁護士が付いているかいないかで態度が大きく異なります。
また、任意保険に加入していたら、被害弁償は保険会社が対応することになります。
しかし、保険会社の被害弁償は、被害者の損害についての賠償金に関するものではありますが、「刑事処分を求めない」「厳罰を求めない」等の文言を入れた示談書を作成するようなことはありません。
そこで、保険会社の被害弁償とは別に、お見舞金的な金銭をお支払いし、被害者と示談を締結する交渉が考えられます。
弁護士を通じて、誠意をもって被害者と話し合い、示談を求めていきます。
起訴前に示談が成立したら、起訴猶予になる可能性があります。
事故が生じた直後から迅速な対応が必要になってきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、これまでに公務員の人身事故事件を多数扱ってきました。
豊富な経験がありますので、刑事弁護に精通した弁護士にぜひご相談ください。
迅速な対応が必要になりますから、お気軽に無料の面談をご依頼ください。
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公務員が交通事故において注意することー公務員が交通事故を起こした場合について解説
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