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公務員の懲戒免職処分-公務員が懲戒免職になるケースについて解説

公務員は全体の奉仕者であり、国民生活を守る立場にあります。このような公務員が違法・不当な行為をすることは、公務を妨げ、国民の信頼を裏切ることになります。このような場合、その公務員は懲戒処分を受け、場合によっては免職となります。
ここでは、公務員が懲戒免職となるケースについて解説します。
懲戒処分
公務員の懲戒処分は、国家公務員については、人事院が「懲戒処分の指針」を定めており、これに基づいて懲戒処分が行われます。
地方公務員の懲戒処分については、各地方公共団体が懲戒処分の指針や基準を定めており、これに基づいて懲戒処分が行われます。
国家公務員についての「懲戒処分の指針」では、懲戒処分の基本事項について以下のように定めています。
第1 基本事項
本指針は、代表的な事例を選び、それぞれにおける標準的な懲戒処分の種類を掲げたものである。
具体的な処分量定の決定に当たっては、
① 非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
② 故意又は過失の度合いはどの程度であったか
③ 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
④ 他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
⑤ 過去に非違行為を行っているか
等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとする。
懲戒処分の具体例
「懲戒処分の指針」の「第2 標準例」において、各非違行為の標準的な懲戒処分について定めています。
財産犯
窃盗や横領、詐欺(詐取)については免職や停職となります。公金や官物が対象の場合は、免職となります。
わいせつ行為
痴漢行為や盗撮行為については、国家公務員の「懲戒処分の指針」では、停職又は減給と定められています。しかし、地方公務員については、各地方公共団体の定める指針・基準では、免職まで含めている場合が多いです。
教職員の場合、その生徒を対象にわいせつ行為を行えば、免職となります。
交通違反
交通違反の中でも、飲酒運転は危険性の高い行為として、特に重い懲戒処分が下されます。また、事故後の措置義務違反も、被害者の保護や更なる事故の発生を防ぐためのものであり、これを怠ると重い処分を受けます。
国家公務員に関する「懲戒処分の指針」でも、
○酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。
○酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職)とする。
○飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。
○人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。
○人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
と定められています。
飲酒運転や措置義務違反をすると、重い懲戒処分を下されます。
まとめ
このように、公務員の懲戒処分は、想像よりも重く定められています。
公務員の方で懲戒免職にならないか不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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公務員の懲戒処分と刑事事件―不起訴でも懲戒免職となる場合について解説
公務員の交通犯罪-公務員が交通犯罪をしてしまったらご相談ください

交通犯罪としては、人身事故、轢き逃げ、飲酒運転、スピード違反、等があります。
公務員が交通犯罪を行ってしまったら、その不利益は大きなものになります。
逮捕されたら、公務員としての地位から、実名報道される可能性が高いです。
職場に知られたら、懲戒処分を受けることになります。
起訴されて正式裁判となり、執行猶予が付いたとしても禁錮以上の判決が確定したら、自動的に失職することになります。
交通犯罪を起こしてしまったら、刑事弁護に精通した弁護士にすぐに相談・依頼してください。
迅速な対応が求められます。
警察の取調べに対しては慎重に対応しなければなりません。
警察が適正・公平な取調べをすると期待してはいけません。
警察は、こちらに不当に不利に話を持って行こうとします。
不注意・過失等を殊更に大きくしようとしてきます。
そのためには、威圧したり、脅したり、嘘を付いたり、話を盛ったり、騙したり、ありとあらゆる方法でこちらに不利に誘導してきます。
なので、警察の取調べに対しては慎重になり、毅然とした対応が求められます。
しかし、公務員といえども刑事手続きに関しては素人であり、プロの警察官に対抗するのは非常に難しいです。
そのため、刑事弁護に精通した弁護士に相談・依頼するべきです。
違法・不当な警察の取調べに対して、黙秘したり、抗議したり、その他の方法で対抗することになります。
不当な内容の供述調書が作成されないようにしなければなりません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事弁護に精通した弁護士が多数所属しており、警察の取調べへの適切な対応方法を心得ております。
逮捕されたとしても、比較的軽い内容の交通犯罪であれば、勾留されずにすぐに釈放となることが多いです。
しかし、内容が比較的重かったり、事実を否定しているようなケースでは、すぐに釈放されずに勾留され、身体拘束が長引いてしまうことがあります。
弁護士を通じて釈放を求めていくことになりますが、釈放は簡単には認められません。
証拠隠滅や逃亡のおそれが比較的簡単に認められやすく、そのまま勾留となってしまいます。
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釈放活動には自信がありますので、ぜひ相談・依頼してください。
被害者がいる事件では、早急に被害者へ謝罪や被害弁償をしていくことになります。
正当な理由なく放置していると、被害者の損害が大きくなり、怒りの感情も大きくなってしまいます。
被害者へ誠意ある対応が求められます。
しかし、とにかく謝罪すればいいということではなく、謝罪方法によっては被害者を余計に不快にさせ、逆効果となってしまう可能性があります。
謝罪についても、慎重な対応が必要となります。
また、任意保険に入っていれば、賠償は保険会社が対応することになります。
ただ、状況次第では、保険会社の賠償とは別にお見舞金としての性質のお金をお渡しして示談すれば、不起訴などの有利な結果となる可能性があります。
被害者への慎重な対応をするためには、刑事弁護に精通した弁護士に早急に相談・依頼するべきです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、公務員の交通犯罪事件の刑事弁護の実績が豊富な事務所です。
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弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、どんなに厳しい事件でも、依頼者の人生が好転して前向きになれるよう、全力でサポートいたします。
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公務員の交通違反-公務員が交通違反をしたときの流れについて解説
公務員の交際トラブルー公務員が男女トラブルで刑事事件を起こしてしまったら相談してください

男女トラブルで刑事事件を起こしてしまった公務員の方は、すぐにご相談ください。
迅速な対応をしないと、大きな悪影響を生じる可能性があります。
逮捕されたら、実名報道される可能性が低くありません。
勤務先に知られたら、懲戒処分を受けることになります。
起訴されたら、執行猶予が付いても禁固以上で公務員の地位を失うことになります。
<性犯罪>
不同意わいせつ罪(刑法第176条)
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、不同意わいせつ罪が成立し、6月以上10年以下の懲役刑に処されることになります。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、不同意わいせつ罪が成立します。
16歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、不同意わいせつ罪が成立します。
不同意性交等罪(刑法第177条)
不同意わいせつ罪に規定されている各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交等をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、不同意性交等罪が成立し、5年以上の有期懲役刑に処されます。
性交等は、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものをいいます。
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、不同意性交等罪が成立します。
16歳未満の者に対し、性交等をした者も、不同意性交等罪が成立します。
<暴力犯罪>
傷害罪(刑法第204条)
人の身体を傷害した者は、傷害罪が成立し、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。
暴行罪(刑法第208条)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処されます。
<財産犯>
窃盗罪(刑法第235条)
他人の財物を窃取した者は、窃盗罪が成立し、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。
詐欺罪(刑法第246条)
人を欺いて財物を交付させた者は、詐欺罪が成立し、10年以下の懲役に処されます。
人を欺いて財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、詐欺罪が成立します。
警察の取調べ対応は非常に重要です。
警察が適正で公平な取調べをして当然だと過剰に期待してはいけません。
警察はできるだけ重い刑事処分を与えるために、こちらに不利な方向で話を進めようとしてきます。
そのためには、威圧したり、脅したり、騙したり、話を盛ったりして誘導してきます。
公務員とはいえ素人である一般人が、プロの警察に毅然と対応することは非常に難しいです。
刑事弁護に精通した弁護士を立てて対応していく必要があります。
被害者に対して、謝罪や被害弁償をし、示談の交渉をする必要があります。
当事者同士では、感情的になってしまい、話がまとまらなくなる可能性があります。
また、被害感情が強いと、多額の賠償を請求してくることもあります。
刑事弁護に精通した弁護士を立てて、誠意を持って冷静に話し合っていく必要があります。
公務員の方の場合、懲戒処分にも気を付ける必要があります。刑事手続きにおいて示談や不起訴を勝ち取れば、不当に重い懲戒処分を回避できます。また、不当な調査や誤った事実認定をされないよう、弁護士に弁護を依頼することも検討するべきです。
男女トラブルで刑事事件を起こしてしまったら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回の相談は無料となっておりますので、お気軽にご相談ください。
迅速な対応が必要となりますので、なるべく早くご連絡してください。
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公務員と秘密情報の保護-公務員が秘密情報を漏洩したり悪用してしまった場合について解説

公務員は国や地方公共団体の国民・住民の個人情報を扱ったり、重要な政策上の情報を扱っています。これらの情報は、プライバシーに係る情報や、政策の円滑な遂行や公平性のために秘密にするべき情報があります。こうした情報を悪用して不正な利益を得たり、漏洩すれば厳しい制裁を受けます
ここでは、公務員の情報の保護について説明します。
公務員の秘密情報の保護
国家公務員法・地方公務員法
国家公務員は、国家公務員法100条1項において、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と定められています。
地方公務員についても、地方公務員法で同様に定められています(地方公務員法34条1項)。
これらの規定に違反して秘密を洩らしたときは、いずれも1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(国家公務員法109条12号、地方公務員法60条2号)。
個人情報保護法
個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)は、個人情報(第2条第1項第1号)について、「デジタル社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにし、個人情報を取り扱う事業者及び行政機関等についてこれらの特性に応じて遵守すべき義務等を定めるとともに、個人情報保護委員会を設置することにより、行政機関等の事務及び事業の適正かつ円滑な運営を図り、並びに個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的」としています(第1条)。
個人情報保護法は、国の責務として、「この法律の趣旨にのっとり、国の機関、地方公共団体の機関、独立行政法人等、地方独立行政法人及び事業者等による個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な施策を総合的に策定し、及びこれを実施する責務を有」すると定めています(第4条)。
行政機関等の職員若しくは職員であった者が、正当な理由がないのに、個人の秘密に属する事項が記録された第60条第2項第1号(保有個人情報を含む情報の集合物であって、一定の事務の目的を達成するために特定の保有個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの)に係る個人情報ファイル(その全部又は一部を複製し、又は加工したものを含む。)を提供したときは、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(第176条)。
行政機関等の職員がその職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する事項が記録された文書、図画又は電磁的記録を収集したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(第181条)。
懲戒処分
秘密情報の悪用や漏洩に対しては厳しい懲戒処分が下されます。
人事院の「懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職―68)」の「第2 標準例」、「1 一般服務関係」では、次のように定められています。
(8) 秘密漏えい
ア 職務上知ることのできた秘密を故意に漏らし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。この場合において、自己の不正な利益を図る目的で秘密を漏らした職員は、免職とする。
イ 具体的に命令され、又は注意喚起された情報セキュリティ対策を怠ったことにより、職務上の秘密が漏えいし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。
(12) 個人の秘密情報の目的外収集
その職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する事項が記録された文書等を収集した職員は、減給又は戒告とする。
まとめ
以上のように、公務員には厳格な秘密保持の義務があり、情報を漏洩したり悪用すれば違反すれば厳しい処分を受けます。
公務員の方で情報の扱いに問題がないか不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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公務員の情報の取り扱いについて-公務員の秘密情報の保護や違反した場合の刑罰について解説
公務員のパワハラ-公務員がパワハラを起こしたと疑われた場合の懲戒手続きや刑事手続きについて解説

自衛隊や役所内でのパワハラなど、公務員のパワハラが問題となっています。このようなハラスメントは懲戒処分の対象になりますし、悪質なものは刑事事件となります。一方で、自身の指導がパワハラだと疑われることで、職場に居づらくなるなどのリスクが生じます。ここでは、公務員がハラスメントをした場合どうなるかについて解説します。
パワハラについて
パワーハラスメント(パワハラ)については、人事院規則にも明確な定義があります。
人事院規則10-16(パワー・ハラスメントの防止等)第2条では、「「パワー・ハラスメント」とは、職務に関する優越的な関係を背景として行われる、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動であって、職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、職員の人格若しくは尊厳を害し、又は職員の勤務環境を害することとなるようなものをいう。」と定めています。
この規則について、「人事院規則10―16(パワー・ハラスメントの防止等)の運用について(令和2年4月1日職職―141)」が定められています。
第2条関係
1 この条の「職務に関する優越的な関係を背景として行われる」言動とは、当該言動を受ける職員が当該言動の行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものをいう。典型的なものとして、次に掲げるものが挙げられる。
一 職務上の地位が上位の職員による言動
二 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な状況下で行われるもの
三 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
2 この条の「業務上必要かつ相当な範囲を超える」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに業務上必要性がない又はその態様が相当でないものをいい、例えば、次に掲げるものが含まれる。なお、このような言動に該当するか否かは、具体的な状況(言動の目的、当該言動を受けた職員の問題行動の有無並びにその内容及び程度その他当該言動が行われた経緯及びその状況、業務の内容及び性質、当該言動の態様、頻度及び継続性、職員の属性及び心身の状況、当該言動の行為者との関係性等)を踏まえて総合的に判断するものとする。
一 明らかに業務上必要性がない言動
二 業務の目的を大きく逸脱した言動
三 業務の目的を達成するための手段として不適当な言動
四 当該行為の回数・時間、当該言動の行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
「業務上必要かつ相当な範囲を超える言動」には、業務とは無関係な話や、殊更に他の職員のいる前でさらしものにしたり、人格攻撃をするケースがよく見受けられます。厳しい叱責であっても、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません。
「職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、職員の人格若しくは尊厳を害し、又は職員の勤務環境を害することとなるようなものをいう。」については、平均的な労働者がどうなるかを基準に判断されます。単に相手が不快に思ったらパワハラになると言うわけではありません。
懲戒処分
公務員がその職務に関してパワハラやセクハラをすると、非違行為をしたとして、重い懲戒処分を受けることになります。
人事院の「懲戒処分の指針」によると、「1 一般服務関係」において、「(15)パワー・ハラスメント」の「ア 著しい精神的又は身体的な苦痛を与えたもの」は停職・減給・戒告の対象となります。「イ 指導、注意等を受けたにもかかわらず、繰り返したもの」は戒告では済まされず、停職又は減給とより重くなります。「ウ 強度の心的ストレスの重責による精神疾患に罹患させたもの」は免職・停職・減給の対象となり、もっとも重い懲戒免職もありえます。
これらの事案について処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断するものとしています。
犯罪・刑事責任
パワハラに該当する行為であっても、その態様や状況によって様々なものがあり、行政庁内の懲戒処分にとどまらず、民事責任、さらには刑事責任を負う行為もあります。
相手に暴行したり怪我を負わせた場合、暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)に問われる可能性があります。殴るなどの有形力の行使によって怪我をさせただけでなく、強いストレスを与えて相手を精神疾患に罹患させた場合も、傷害罪になりえます。個室に数名しかいない状況で叱責するようなものではなく、大勢の人がいる場所で侮辱したり人格を否定するような罵倒をすれば、侮辱罪(刑法231条)や名誉毀損罪(230条)が成立する可能性があります。
また、懲戒処分において、「これらの事案について処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断する」と書きましたが、刑事事件として処理される場合、さらに懲戒処分も重くなる可能性があります。上述の人事院の「懲戒処分の指針」では「3 公務外非行関係」で「(3)傷害 人の身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。」と定めていますが、ハラスメントにより人を傷害させたといえるときは、これと同等以上の処分を受けることにもなります。
パワハラの調査
パワハラの事実があったかどうかについては、所属官庁による調査が行われます。
国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)が、刑事事件になるようなケースの場合、刑事手続きが終わってから所属官庁が調査を始め得ることが多いです。
調査中も基本的に今まで通り仕事ができますが、被害者とされる職員との接触を避けるため、配置換えされることもあります。
事情聴取については、刑事手続きと同様に黙秘権がありますが、偏見に基づいた決めつけや、圧迫的な事情聴取が行われることがあります。
また、人格攻撃に及ぶ場合もあります。
調査自体がパワハラに該当するような場合もあります。
このような調査が行われた場合、公務災害の申請や国家賠償請求も検討する必要があります。また、このような調査に基づき真実に基づかない事実認定がされたり、不当に重い処分が下された場合、再調査請求や審査請求といった不服申立て、取消訴訟などの訴訟手続きも検討する必要があります。
このような違法・不当な調査を受ける恐れがあるときは、弁護士に依頼して、違法・不当な調査を防ぎ、正しい事実認定をするよう求めていくことも考えられます。
まとめ
このように、公務員がパワハラを起こした疑いが生じた場合、懲戒処分や刑罰などの他、多くの不利益が科される可能性があります。
公務員でパワハラをしたと疑われている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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公務員のハラスメントと懲戒処分・犯罪-公務員がハラスメントを起こした場合の懲戒処分や刑罰について解説
公務員による盗撮事件ー公務員が盗撮事件を起こしたらご相談ください

公務員が盗撮事件を起こして逮捕されたというニュースが少なくありません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所でも、多くの公務員の方の盗撮事件の相談・依頼を受けてきました。
特に、最近は法改正の影響もあり、盗撮事件への捜査や刑事処分が厳しくなっております。
公務員が逮捕されたら、その地位の重要性から、実名報道される可能性が低くありません。
盗撮事件が勤務先に知られたら、懲戒処分を受けることになります。
事件が起きた後の取調べや示談活動に対して、迅速に慎重に対応していかなければなりません。
公務員という立場から、人生に大きな悪影響が生じてしまうことになってしまいます。
盗撮は、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」で犯罪として規定されております。
この法律は、性的な姿態を撮影する行為、これにより生成された記録を提供する行為等を処罰するとともに、性的な姿態を撮影する行為により生じた物を複写した物等の没収を可能とし、あわせて、押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等の措置をすることによって、性的な姿態を撮影する行為等による被害の発生及び拡大を防止することを目的としております。
盗撮行為は、性的姿態等撮影罪として規定されております。
3年以下の懲役刑又は300万円以下の罰金に処されることになります。
正当な理由がないのに、ひそかに、性的姿態等を撮影する行為です。
性的姿態等とは、人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分をいいます。
わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態も、性的姿態等に含まれます。
性交等は、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものをいいます。
不同意わいせつ罪(刑法第176条第1項)の条文に掲げる以下の行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為も、性的姿態等撮影罪となります。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為も、性的姿態等撮影罪となります。
正当な理由がないのに、13歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は13歳以上16歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為も、性的姿態等撮影罪となります。
公務員が盗撮をすると、刑事処分だけでなく懲戒処分も受けます。
国家公務員の「懲戒処分の指針」では停職又は減給と定められています。
地方公務員の場合、免職もあり得ます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、公務員の方の盗撮事件について、多くの相談・依頼を受け、解決に導いてきました。
初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
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公務員の暴力事件-公務員が暴行・傷害事件を起こしてしまった場合の処分について解説

公務員でも日常生活でトラブルに巻き込まれたり、酔っぱらって暴行事件を起こしてしまうこともあります。公務員が暴行や傷害事件を起こすと、刑罰だけでなく懲戒処分の対象となります。ここでは、公務員が暴行・傷害事件を起こしてしまった場合の処分について解説します。
刑事処分
暴行・傷害
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円に処されます(刑法第204条)。よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処されます(刑法第205条)。
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処されます(刑法第208条)。
暴行は人の身体に対する有形力の行使をいいます。殴ったり蹴ったりするのが典型的な行為です。
傷害は、人の生理的機能を害することをいい、必ずしも暴行を必要としません。騒音や暴言で心身に不調をきたすことによっても傷害が成立することがあります。
過失傷害
過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処されます(刑法第209条第1項)。過失により人を死亡させたものは、50万円以下の罰金に処されます(刑法第210条)。業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処されます(業務上過失致死傷)。重大な過失により人を死傷させた者も同様の刑を科されます(重過失致死傷、刑法第211条)。
弁護活動
暴行にとどまる場合、前科がなければ不起訴(起訴猶予)で済む可能性が高いです。
一方、傷害や業務上過失致傷、重過失致傷の場合、傷害の程度が重いと、前科がなくても起訴される可能性があります。全治2週間以上の傷害や人が亡くなった場合、略式請求(刑事訴訟法第461条以下)ではなく公判請求される可能性もあります。
いずれにおいても、起訴を避け又は罰金などの軽い処分にとどめるには、被害者や遺族と示談を成立させることが重要となります。示談において支払う示談金では、精神慰謝料や治療代のほか、傷害を負わされたため仕事できなかった間の休業損害や、後遺障害が発生したときの逸失利益などを支払うことになります。
懲戒処分
公務員が他人に暴行したり傷害を負わせると、非違行為をしたとして、懲戒処分を受けることになります。
国家公務員の懲戒に関する、人事院の「懲戒処分の指針について」によると、「1 一般服務関係」において、「(5)職場内秩序を乱す行為」では、「ア 他の職員に対する暴行により職場の秩序を乱した職員は、停職又は減給とする」と定めています。また、「(15)パワーハラスメント」では、「ウ パワーハラスメントを行ったことにより、相手を強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹(り)患させた職員は、免職、停職又は減給とする。」と定めています。
「3 公務外非行関係」においても、「(3)傷害」では、「人の身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。」と定めています。「(4)暴行・けんか」では、「暴行を加え、又はけんかをした職員が人を傷害するに至らなかったときは、減給又は戒告とする。」と定めています。
過失致死傷など標準例に掲げられていない非違行為であっても、懲戒処分の対象となり、標準例に掲げる取り扱いを参考としつつ判断されます。
公務員の身分に関する手続き
公務員の場合、起訴されると、強制的に休職させられることがあります(地方公務員法第28条第2項第2号、国家公務員法第79条第2号)。休職中は仕事ができませんし、給与は支給されません(国家公務員法第80条第4項参照)。
国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)。そのため、起訴されたり判決が出る前に懲戒手続がすすめられ、懲戒処分が下されることがあります。
裁判の結果、有罪の判決を言い渡され、禁錮以上の刑に処されると、失職してしまいます(地方公務員法第28条第4項・第16条第1号、国家公務員法第条第76条・第38条第1号)。地方公務員の場合は、「条例に特別の定めがある場合」には失職とならないとすることができます。しかし、過失のある場合や、通勤中の交通事故や執行猶予付きの禁錮にとどまる場合にのみ失職させないことができるという場合が多いです。故意の暴行や傷害は例外とはならないでしょう。
特に傷害以上の結果が生じた事件の場合、略式手続きで罰金刑でなければ、公判請求されて休職となり、懲役刑となって失職となる可能性が高いといえます。そのため、前述の示談を成立させることが重要となります。
まとめ
このように、暴行・傷害事件であっても、怪我の程度が重い場合は職を失う可能性があります。公務員の方で暴行・傷害事件を起こしてしまいお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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公務員と粗暴犯-公務員が暴行・傷害事件を起こしてしまった場合の弁護活動について解説
公務員と談合-公務員の入札談合への関与について解説

談合は昔から問題となってきました。特に、公共事業においては、本来談合を規制するべき立場であるはずの公務員が予定価格を教えるなどして談合に関与することもあります。本来公の入札等の公正を保持するべき公務員自らこのような談合に関与しては、入札等の公正を確保できず、行政への信頼を損ねることになります。ここでは、公務員が談合に関与した場合の刑事処分や懲戒処分について解説します。
入札談合等関与行為防止法
事業者が談合をすれば、刑法の談合罪(刑法第96条の6第2項。3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金又は併科)や独占禁止法の不当な取引制限禁止の違反(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第2条第6項・第3条・第89条第1項第1号。5年以下の懲役又は500万円以下の罰金)に該当します。
公務員が談合の唆しや情報提供など談合に関与した場合、「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」(入札談合等関与行為防止法)により規制されます。。この法律は、「公正取引委員会による各省各庁の長等に対する入札談合等関与行為を排除するために必要な改善措置の要求、入札談合等関与行為を行った職員に対する損害賠償の請求、当該職員に係る懲戒事由の調査、関係行政機関の連携協力等入札談合等関与行為を排除し、及び防止するための措置について定めるとともに、職員による入札等の公正を害すべき行為についての罰則を定め」ています(同法第1条)。
「職員」(同法第2条第5項。国若しくは地方公共団体の職員又は特定法人(同法第2条第2項に定められており、国や地方公共団体が持ち分の多数を有して実質支配している法人)の役員若しくは職員)が、その所属する国等が入札等により行う売買、貸借、請負その他の契約の締結に関し、その職務に反し、事業者その他の者に談合を唆すこと、事業者その他の者に予定価格その他の入札等に関する秘密を教示すること又はその他の方法により、当該入札等の公正を害すべき行為を行ったときは、5年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処されます(同法第8条)。
懲戒処分
懲戒処分の内容
公務員が談合等に関与した場合、重い懲戒処分を下されます。国家公務員に関する、人事院の「懲戒処分の指針について」によれば、「第2 標準例 1 一般服務関係 (11)入札談合等に関与する行為」において「国が入札等により行う契約の締結に関し、その職務に反し、事業者その他の者に談合を唆すこと、事業者その他の者に予定価格等の入札等に関する秘密を教示すること又はその他の方法により、当該入札等の公正を害すべき行為を行った職員は、免職又は停職とする。」と定められています。
懲戒事由の調査
公務員の入札談合等の関与に対しては、厳しい調査が行われます。
公正取引委員会は、入札談合等の事件についての調査の結果、当該入札談合等につき入札談合等関与行為があると認めるときは、各省各庁の長等に対し、当該入札談合等関与行為を排除するために必要な入札及び契約に関する事務に係る改善措置を講ずべきことを求めることができます(入札談合等関与行為防止法第3条第1項)。この求めがあったときは、各省各庁の長等は、当該入札談合等関与行為を行った職員に対して懲戒処分をすることができるか否かについて必要な調査を行わなければなりません(同法第5条第1項本文)。当該求めを受けた各省各庁の長、地方公共団体の長、行政執行法人の長又は特定地方独立行政法人の理事長が、当該職員の任命権を有しない場合(当該職員の任命権を委任した場合を含む。)は、当該職員の任命権を有する者(当該職員の任命権の委任を受けた者を含む。)である任命権者に対し、この求めがあった旨を通知し(同法第5条第1項ただし書き)、この通知を受けた任命権者は、当該入札談合等関与行為を行った職員に対して懲戒処分をすることができるか否かについて必要な調査を行わなければなりません(同法第5条第2項)。そして、各省各庁の長等又は任命権者は、この調査の結果を公表しなければなりません(同法第5条第4項)。入札談合等関与行為をすれば、所属する組織に知られて懲戒処分になるうえ、公表されてしまいます。
まとめ
このように、公務員が入札談合に関与すると、刑事、懲戒処分とも重い処分を科されます。
公務員の方で入札談合に関与してしまいお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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官製談合
公務員の交通違反-公務員が交通違反をしたときの流れについて解説

年末年始は今尚お酒を飲む機会が多く、飲酒運転もしばしば見られます。飲酒運転は重大な交通事故につながるおそれが高く、厳しく処罰されます。全体の奉仕者である公務員がこのような飲酒運転をすれば、重い懲戒処分が下されます。また、飲酒運転に限らず、交通事故を起こしたときに適切な対応をしなければ、さらに被害が拡大しかねません。このようなことも公務員としては許されないことです。ここでは、公務員が交通違反をしてしまった場合にどうなるかについて解説します。
飲酒運転(酒酔い運転・酒気帯び運転)
何人も、酒気を帯びて車両等(道路交通法第2条第1項第17号)を運転してはなりません(同法第65条第1項)。
この規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)にあった者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(酒酔い運転。道路交通法第117条の2第1項第1号)。
その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあった者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(酒気帯び運転。道路交通法第117条の2の2第1項第3号)。「身体に政令で定める程度」は道路交通法施行令にて定められており、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラムです(道路交通法施行令第44条の3)。
また、自分が飲酒運転をしなくても処罰されることがあります。酒気帯び運転することとなるおそれがある者に車両等を提供すること(道路交通法第65条第2項)や、酒類を提供したり飲酒をすすめること(同法第65条第3項)も禁止されています。車両等の提供をした者は、運転者が酒酔い運転をした場合は5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処され(同法第117条の2第1項第2号)、酒気帯び運転をした場合は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(同法第117条の2の2第1項第4号)。酒類を提供したり飲酒をすすめた者は、運転者が酒酔い運転をした場合は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処され(同法第117条の2の2第1項第5号)、酒気帯び運転をした場合は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます(同法第117条の3の2第2号)。
過失運転致死傷・危険運転致死傷
交通事故を起こして、物損のみならず人を死傷させる人身事故を起こした場合は、より重く処罰されます。このような罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)で定められています。
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処されます。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができます(自動車運転処罰法第5条)。
自動車事故の中でも危険な運転をして起こした人身事故は、危険運転と定められています。アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為を行う(自動車運転処罰法第2条第1号)等の危険運転を行い、よって人を死傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処します(自動車運転処罰法第2条)。
アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処します(自動車運転処罰法第3条第1項)。
また、自動車運転処罰法は、このような飲酒運転の発覚を妨げるような行為をした場合を「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱」として処罰しています。アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役に処します(自動車運転処罰法第4条)。
いずれも、無免許運転の場合はさらに重い処罰が下されます(自動車運転処罰法第6条)。
措置義務違反・報告義務違反
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(運転者等)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければなりません(措置義務(救護義務):道路交通法第72条第1項前段)。
また、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含みます)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければなりません(報告義務:同法第72条第1項後段)。
措置義務違反をした者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます(同法第117条の5第1項)。
報告義務違反をした者は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処されます(同法第119条第1項第17号)。
自身の運転に起因して交通事故が起こり死傷者が出た場合で、措置義務に違反したときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(同法第117条第2項)。
懲戒処分
交通事故や交通違反をした場合、重い懲戒処分を下されます。
国家公務員に関する「懲戒処分の指針について」では、「第2 標準例」「4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係」にて、次のように定めています。免職もあり得る、非常に重い処分が定められています。
4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係
(1) 飲酒運転
ア 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。
イ 酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職)とする。
ウ 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。
(2) 飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの)
ア 人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。
イ 人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
(3) 飲酒運転以外の交通法規違反
著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は、停職、減給又は戒告とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こして措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
(注) 処分を行うに際しては、過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとする。
失職
公務員は禁錮以上の刑に処せられると当然失職となります(国家公務員法第76条・第38条第1号、地方公務員法第28条第4項・第16条第1号)。地方公務員の場合、地方公務員法第28条第4項により、条例に定める場合は失職とならないという例外を定めることができます。過失による交通事故などを失職の例外として定めている公共団体もあります。飲酒運転をしていた場合は例外に当たらないとする公共団体は多いです。
まとめ
以上のように、公務員が交通事故・交通違反をしてしまうと重大な結果に至ることになります。
公務員の方で交通事故・交通違反にお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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公務員と交通違反
公務員とアルコールー公務員がアルコールで失敗して犯罪をしてしまったらご相談ください

普段は真面目に働いて生活している公務員の方でも、アルコール・飲酒により失敗して犯罪を行ってしまうことがあります。
今回は、アルコールが原因で行ってしまうことが多い犯罪を解説します。
飲酒運転
飲酒運転自体は、道路交通法に規定されております。
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはなりません。
違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)にあったものは、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。
違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において身体に血液一ミリリットルにつき〇・三ミリグラム又は呼気一リットルにつき〇・一五ミリグラム以上にアルコールを保有する状態にあったものは、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律では、危険運転致死傷が規定されております。
アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処されることになります。
アルコールの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコールの影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処されることになります。
過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪も規定されております。
アルコールの影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコールの影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコールを摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコールの濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役に処されることになります。
飲酒運転により、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、過失運転致死傷罪として7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金となります。
飲酒運転で人身事故を起こし、救護措置や警察への連絡をせずに逃げたら、更に轢き逃げとなり、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります。
性犯罪
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、不同意わいせつ罪が成立し、6月以上10年以下の懲役刑に処されます(刑法第176条第1項)。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、不同意わいせつ罪が成立します(第2項)。
16歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、不同意わいせつ罪が成立します(第3項)。
不同意わいせつ罪の各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものである性交等をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、不同意性交等罪が成立し、5年以上の懲役刑に処されます(刑法第177条第1項)。
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、不同意性交等罪が成立します(第2項)。
16歳未満の者に対し、性交等をした者も、不同意性交等罪が成立します(第3項)。
公然とわいせつな行為をした者は、公然わいせつ罪が成立し、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処されます(刑法第174条)。
住居侵入
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、住居侵入罪として3年以下の懲役又は10万円以下の罰金となります(刑法第130条)。
窃盗
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(刑法第235条)。
暴行・傷害
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、暴行罪として2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料となります(刑法第208条)。
人の身体を傷害した者は、傷害罪として15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(刑法第204条)。
器物損壊
他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料となります(刑法第261条)。
ぜひ当事務所の弁護士にご相談ください
アルコールで失敗して犯罪を行ってしまったら、失職や懲戒処分となる可能性があります。
ぜひ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
今後の対応について、丁寧にご説明いたします。
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