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公務員の交通違反-公務員が交通違反をしたときの流れについて解説

2025-02-16

年末年始は今尚お酒を飲む機会が多く、飲酒運転もしばしば見られます。飲酒運転は重大な交通事故につながるおそれが高く、厳しく処罰されます。全体の奉仕者である公務員がこのような飲酒運転をすれば、重い懲戒処分が下されます。また、飲酒運転に限らず、交通事故を起こしたときに適切な対応をしなければ、さらに被害が拡大しかねません。このようなことも公務員としては許されないことです。ここでは、公務員が交通違反をしてしまった場合にどうなるかについて解説します。

飲酒運転(酒酔い運転・酒気帯び運転)
何人も、酒気を帯びて車両等(道路交通法第2条第1項第17号)を運転してはなりません(同法第65条第1項)。
この規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)にあった者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(酒酔い運転。道路交通法第117条の2第1項第1号)。
その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあった者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(酒気帯び運転。道路交通法第117条の2の2第1項第3号)。「身体に政令で定める程度」は道路交通法施行令にて定められており、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラムです(道路交通法施行令第44条の3)。
また、自分が飲酒運転をしなくても処罰されることがあります。酒気帯び運転することとなるおそれがある者に車両等を提供すること(道路交通法第65条第2項)や、酒類を提供したり飲酒をすすめること(同法第65条第3項)も禁止されています。車両等の提供をした者は、運転者が酒酔い運転をした場合は5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処され(同法第117条の2第1項第2号)、酒気帯び運転をした場合は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(同法第117条の2の2第1項第4号)。酒類を提供したり飲酒をすすめた者は、運転者が酒酔い運転をした場合は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処され(同法第117条の2の2第1項第5号)、酒気帯び運転をした場合は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます(同法第117条の3の2第2号)。

過失運転致死傷・危険運転致死傷
交通事故を起こして、物損のみならず人を死傷させる人身事故を起こした場合は、より重く処罰されます。このような罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)で定められています。

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処されます。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができます(自動車運転処罰法第5条)。

自動車事故の中でも危険な運転をして起こした人身事故は、危険運転と定められています。アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為を行う(自動車運転処罰法第2条第1号)等の危険運転を行い、よって人を死傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処します(自動車運転処罰法第2条)。
アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処します(自動車運転処罰法第3条第1項)。
また、自動車運転処罰法は、このような飲酒運転の発覚を妨げるような行為をした場合を「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱」として処罰しています。アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役に処します(自動車運転処罰法第4条)。

いずれも、無免許運転の場合はさらに重い処罰が下されます(自動車運転処罰法第6条)。

措置義務違反・報告義務違反
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(運転者等)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければなりません(措置義務(救護義務):道路交通法第72条第1項前段)。
また、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含みます)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければなりません(報告義務:同法第72条第1項後段)。
措置義務違反をした者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます(同法第117条の5第1項)。
報告義務違反をした者は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処されます(同法第119条第1項第17号)。
自身の運転に起因して交通事故が起こり死傷者が出た場合で、措置義務に違反したときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(同法第117条第2項)。

懲戒処分
交通事故や交通違反をした場合、重い懲戒処分を下されます。
国家公務員に関する「懲戒処分の指針について」では、「第2 標準例」「4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係」にて、次のように定めています。免職もあり得る、非常に重い処分が定められています。

4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係
(1) 飲酒運転
ア 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。
イ 酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職)とする。
ウ 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。
(2) 飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの)
ア 人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。
イ 人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
(3) 飲酒運転以外の交通法規違反
著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は、停職、減給又は戒告とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こして措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
(注) 処分を行うに際しては、過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとする。

失職
公務員は禁錮以上の刑に処せられると当然失職となります(国家公務員法第76条・第38条第1号、地方公務員法第28条第4項・第16条第1号)。地方公務員の場合、地方公務員法第28条第4項により、条例に定める場合は失職とならないという例外を定めることができます。過失による交通事故などを失職の例外として定めている公共団体もあります。飲酒運転をしていた場合は例外に当たらないとする公共団体は多いです。

まとめ
以上のように、公務員が交通事故・交通違反をしてしまうと重大な結果に至ることになります。
公務員の方で交通事故・交通違反にお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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公務員とアルコールー公務員がアルコールで失敗して犯罪をしてしまったらご相談ください

2025-01-26

普段は真面目に働いて生活している公務員の方でも、アルコール・飲酒により失敗して犯罪を行ってしまうことがあります。
今回は、アルコールが原因で行ってしまうことが多い犯罪を解説します。

飲酒運転
飲酒運転自体は、道路交通法に規定されております。
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはなりません。
違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)にあったものは、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。
違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において身体に血液一ミリリットルにつき〇・三ミリグラム又は呼気一リットルにつき〇・一五ミリグラム以上にアルコールを保有する状態にあったものは、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律では、危険運転致死傷が規定されております。
アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処されることになります。
アルコールの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコールの影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処されることになります。
過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪も規定されております。
アルコールの影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコールの影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコールを摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコールの濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役に処されることになります。
飲酒運転により、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、過失運転致死傷罪として7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金となります。
飲酒運転で人身事故を起こし、救護措置や警察への連絡をせずに逃げたら、更に轢き逃げとなり、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります。

性犯罪
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、不同意わいせつ罪が成立し、6月以上10年以下の懲役刑に処されます(刑法第176条第1項)。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、不同意わいせつ罪が成立します(第2項)。
16歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、不同意わいせつ罪が成立します(第3項)。
不同意わいせつ罪の各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものである性交等をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、不同意性交等罪が成立し、5年以上の懲役刑に処されます(刑法第177条第1項)。
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、不同意性交等罪が成立します(第2項)。
16歳未満の者に対し、性交等をした者も、不同意性交等罪が成立します(第3項)。
公然とわいせつな行為をした者は、公然わいせつ罪が成立し、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処されます(刑法第174条)。

住居侵入
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、住居侵入罪として3年以下の懲役又は10万円以下の罰金となります(刑法第130条)。

窃盗
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(刑法第235条)。

暴行・傷害
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、暴行罪として2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料となります(刑法第208条)。
人の身体を傷害した者は、傷害罪として15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(刑法第204条)。

器物損壊
他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料となります(刑法第261条)。

ぜひ当事務所の弁護士にご相談ください
アルコールで失敗して犯罪を行ってしまったら、失職や懲戒処分となる可能性があります。
ぜひ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
今後の対応について、丁寧にご説明いたします。

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公務員と飲酒―公務員が飲酒して事件を起こしてしまった場合について解説

公務員の懲戒ーインターネット書き込みでの懲戒免職のケースを解説

2025-01-14

公務員の方であれば、何らかの犯罪行為を行ったことで検挙されれば、多くの場合それが職場に発覚し、懲戒処分を受けるのはお分かりかと思います。しかし、犯罪行為以外でも懲戒処分になるリスクがあることはご存知でしょうか?
 今回は、インターネット上での書き込みで懲戒処分になる場合について、実際の事例を交えてご説明していきたいと思います。
 
実際の事例
https://news.yahoo.co.jp/articles/9eb6ab0b4c3f6183b46a10e27d95a5f1795e3e69
(Yahoo!ニュース。令和6年12月15日閲覧。)

インターネットで他人に対する不適切な書き込みを行ったとして、大分県佐伯市の45歳の男性職員が12月11日付で、懲戒処分を受けました。
減給10分の1、1か月の懲戒処分となったのは大分県にある佐伯市役所の弥生振興局地域振興課に勤務する45歳の男性副主幹です。
佐伯市によりますと男性職員は水道課に所属していた2023年9月、勤務時間外にインターネット上で公務員としてふさわしくない他人に対する不適切な書き込みを行ったということです。
2024年に入り外部の人から情報提供があり、市が調べて発覚しました。
市は被害者保護の観点から書き込みの内容などは明らかに出来ないとしていて、「市民の信頼に応えるため綱紀の保持を徹底する」話しています。

関係法令
 そもそも、侮辱や名誉毀損にあたるかどうかと、公務員としての不適切な投稿にあたるかどうかは、相当の隔たりがあると考えられます。
 侮辱や名誉毀損については具体的に他人を特定して、社会的評価を下げる具体的事実の指摘や、社会的評価を下げる言葉を発するようなことを行わなければならないのですが、「不適切な行為」を評価するに当たっては具体的に誰に言うのか、という点はあまり関係がなくなってくると考えられます。
処分基準については、人事院の「懲戒処分の指針について」が参考になります。
実際の処分基準は各自治体などで違いますが、概ね同じような基準が設けられていることが多いです。

1 一般服務関係
(4) 勤務態度不良
勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。

2 公金官物取扱い関係
(10) コンピュータの不適正使用
職場のコンピュータをその職務に関連しない不適正な目的で使用し、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。

「3 公務外非行関係」で名誉毀損や侮辱は列挙されていませんが、法定刑の近いものと比較して減給~停職あたりが考えられるところです。

弁護活動
 犯罪に当たらない行為でも不適切とされた場合、懲戒処分が行われる可能性があることがご理解いただけたと思います。今回紹介した事案だと、勤務中のパソコン不正利用なども関わっていると考えられます。実際の事案においては、書き込みの具体的内容、書き込みの方法や時間、発覚の経緯、職場における具体的な職務内容や立場が処分内容に相当関わってくると考えられます。
 実際に、職場での聴き取りでどういった内容を答えるか、どういった点を主張していくか、などは弁護士がサポートに入った方がより分かりやすいでしょう。特に、実際の書き込みについては犯罪に当たるかどうかが微妙で、職務時間外などでもないような場合、供述や主張次第で処分が変わる可能性もあるので、弁護士に相談する意味が大きくなってきます。

まとめ
具体的な犯罪行為に当たるかどうかが怪しい場合でも、懲戒手続に当たっては注意して臨んだ方が良いことが分かっていただけたと思います。なんてことはない、どうせこの処分になることは決まっている、と思わずに、一度弁護士に相談する等をしていく必要があります。
刑事事件にあたることをしていない場合でも、懲戒処分を受けるのではないかとお悩みの公務員の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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公務員の懲戒処分と刑事事件―不起訴でも懲戒免職となる場合について解説

公務員と賭博-オンラインカジノ問題を基に公務員の賭博について解説

2024-12-24

東京高検の検事長がコロナ禍において、新聞記者と賭けマージャンをしていたことが大きな問題となりました。
一方で、一般の公務員でも、オンラインカジノなどにより安易に賭博に関わることが可能な状態となっています。
ここでは、賭博問題について解説します。

賭博
賭博(とばく)については、刑法の「第二十三章 賭と博及び富くじに関する罪」にて、次のように定めています。
(賭博)
第百八十五条 賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭かけたにとどまるときは、この限りでない。
(常習賭博及び賭博場開張等図利)
第百八十六条 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
(富くじ発売等)
第百八十七条 富くじを発売した者は、二年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。
2 富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
3 前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二十万円以下の罰金又は科料に処する。

「賭博」とは、勝敗が偶然の事情に左右されるもので、その勝敗により財物や財産上の利益の得喪が行われることをいいます。賭博は国民に怠惰浪費の弊風を生じさせ、勤労の美風を害するばかりでなく、暴行その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあるとして、禁止されています(最高裁昭和25年11月22日大法廷判決)。
関係者が即時に娯楽のために消費できる「一時の娯楽に供する物」を賭けたにとどまる場合は、犯罪にはなりません。

オンラインカジノは、国外のカジノが合法な国・地域の企業が運営し、合法な国・地域にサーバーがあることが多いです。賭博は国外犯ではありません(刑法第2条・第3条・第4条)ので、日本国外のカジノが合法な国・地域内のカジノなどで賭博を行う限りでは違法ではありません。しかし、オンラインカジノのように賭博行為自体を日本で行っていれば、日本の法により取り締まりを受けます(刑法第1条第1項)。

近年の問題:マネーロンダリングのおそれ
特にオンラインカジノは、マネーロンダリングに利用されるおそれもあります。
マネーロンダリング(Money Laundering:資金洗浄)とは、一般に、犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関等による収益の発見や検挙等を逃れようとする行為をいいます。このような行為を放置すると、犯罪による収益が、将来の犯罪活動や犯罪組織の維持・強化に使用され、組織的な犯罪を助長するとともに、これが移転して事業活動に用いられることにより健全な経済活動に重大な悪影響を与えることになります。

懲戒処分
先述の最高裁の指摘の通り、賭博は勤労という社会道徳を損ねるだけでなく、他の犯罪に繋がるおそれもありますので、全体の奉仕者である公務員としては厳に慎まなければなりません。
国家公務員の懲戒に関する「懲戒処分の指針」では、「3 公務外非行関係」に「  (9) 賭博 ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。」「 イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。」と定められています。賭博をすれば、懲戒処分の対象となり、将来に影響を与えることになります。

まとめ
このように、公務員が賭博を行うと、刑罰を科され懲戒処分を受けるなど大変な不利益をこうむります。
公務員の方でご自身の行ったことが違法な賭博でないかお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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公務員の犯罪と懲戒処分-公務員が犯罪を行ったら懲戒処分を受ける可能性があります

2024-12-18

公務員の方が犯罪を行ってしまったら、勤務先から懲戒処分を受ける可能性があります。
懲戒処分としては、免職、停職、減給、戒告があります。
免職は、職員の身分が失われ、失職することになります。
停職は、職員としての身分を保有させたまま、一定の期間、職務に従事させない処分で、その間の給与は支払われません。
減給は、一定の額を給与から減額する処分です。
戒告は、その責任を確認して将来を戒める処分で、注意されることになります。
懲戒処分を受けた事実は、公表されることがあります。

懲戒処分については、処分基準が定められております。
例えば、人事院では、「懲戒処分の指針について」により、懲戒処分がより一層厳正に行われるよう、任命権者が懲戒処分に付すべきと判断した事案について、処分量定を決定するに当たっての参考に供することを目的として、懲戒処分の指針を作成しました。
具体的な処分量定の決定に当たっては、
① 非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
② 故意又は過失の度合いはどの程度であったか
③ 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
④ 他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
⑤ 過去に非違行為を行っているか
等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとされます。
個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる処分の種類以外とすることもあり得るところとされています。
例えば、標準例に掲げる処分の種類より重いものとすることが考えられる場合として、
① 非違行為の動機若しくは態様が極めて悪質であるとき又は非違行為の結果が極めて重大であるとき
② 非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき
③ 非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき
④ 過去に類似の非違行為を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがあるとき
⑤ 処分の対象となり得る複数の異なる非違行為を行っていたとき
があります。
また、例えば、標準例に掲げる処分の種類より軽いものとすることが考えられる場合として、
① 職員が自らの非違行為が発覚する前に自主的に申し出たとき
② 非違行為を行うに至った経緯その他の情状に特に酌量すべきものがあると認められるとき
があります。
懲戒処分を受ける可能性を想定しながら、捜査・取調べへの対応や被害者への対応を具体的にどうするかを検討しなければなりません。

公務員の方が犯罪を行ってしまった場合、勤務先から懲戒処分を受けて、今後の人生にとって大きな悪影響を及ぼす不利益を受ける可能性があります。
早い段階から弁護士に相談し、対応を検討する必要があります。
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捜査・取調べへの対応や、被害者への対応などについて、具体的にどのようにすればいいか、懇切丁寧に説明させていただきます。
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公務員の懲戒処分と刑事事件-不起訴でも懲戒免職となる場合について解説

公務員と刑事事件-盗撮での懲戒免職事件を基に解説

2024-12-15

公務員の方であれば、盗撮が犯罪行為にあたり、それが職場に発覚すれば懲戒処分を受けるのはお分かりかと思います。しかし、懲戒免職にまでなるようなイメージはないのではないでしょうか。
 今回は、盗撮で懲戒免職になる場合について、実際の事例を交えてご説明していきたいと思います。
 
実際の事例
https://news.yahoo.co.jp/articles/23aca77c5d078a755d0a5b8956004e4f59f7929d
(Yahoo!ニュース。令和6年11月26日閲覧。)

埼玉県さいたま市は22日、同市岩槻区の商業施設で女性を盗撮したなどとして、岩槻区役所保険年金課の男性課長補佐(53)を地方公務員法に基づき、免職の懲戒処分にしたと発表した。
 市人事課などによると、男性課長補佐は8月16日午後0時10分ごろ、東武岩槻駅前の商業施設「ワッツ東館」で女性のスカート内にスマートフォンを差し入れ、下着などを盗撮。同日、性的姿態撮影処罰法違反の容疑で岩槻署に逮捕された。区役所は同施設内にあり、昼休憩中の犯行だった。同日朝にも岩槻駅構内で別の女性に同様の盗撮行為をしたとして立件されていた。
 男性課長補佐は9月26日付で不起訴処分となったが、市の調査などで、7月中旬から約20件の余罪を認めたため、市は常習性があると判断。管理監督する立場である点も考慮し、処分を決めた。男性課長補佐は「業務上の悩みや私生活でのストレスが膨らみ、ストレスを解消したい気持ちで犯行に及んでしまった」と動機を述べているという。

関係法令

懲戒処分も一方的に不利益を科す処分ですので、公正な基準に基づいて行われます。処分基準については、国家公務員の懲戒処分に関する人事院の「懲戒処分の指針について」が参考になります。

3 公務外非行関係
(14) 盗撮行為
  公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けていない状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減給 とする。

事例のような地方公務員の場合は、実際の処分基準は各自治体などで違いますが、概ね同じような基準が設けられていることが多いです。しかし、盗撮や痴漢については、免職も処分に挙げているところが多く見られます。

弁護活動
 基本的に、上記のように国家公務員の盗撮に関しては懲戒免職までは懲戒処分の基準に入らないことが多いと言えます。
 しかし、ニュース記事のように、刑事事件自体は不起訴処分となっていても、常習性が深いと判断され、現状の職務的地位を重くとらえられると、地方公務員の場合は懲戒免職となる危険もあります。
 処分軽減のポイントとしては、市や県、国の聴き取りでどういった内容を答えるか、と言ったところや、実際に調査などにおいてどういった主張をしていくか、と言うところにかかってきます。当然、御自身でも対応可能な範囲はありますが、どう話したらどう影響するのか、どう主張すれば処分軽減につながるかなどは弁護士がサポートに入った方がより分かりやすいでしょう。特に、前科も特に無く、事件自体は不起訴になっているような場合、供述や主張次第で処分が変わる可能性もあるので、より弁護士が関与する意味が大きくなるでしょう。

まとめ
盗撮のように処分基準上懲戒免職が予定されていない場合でも、懲戒免職処分がなされるかもしれないことがお分かりいただけたと思います。可能な限り処分を軽減し、特に懲戒免職を防ぐ意味でも、弁護士に相談する意味が出てきます。
盗撮その他の事件を起こしてお悩みの公務員の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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公務員の懲戒処分の流れ-公務員が罪を犯した場合の懲戒処分の内容や手続きの流れについて解説

公務員と飲酒-公務員が飲酒して事件を起こしてしまった場合について解説

2024-12-07

年末年始ともなると、公務員の方も忘年会などで飲酒する機会が多くなると思われます。飲み過ぎて酩酊し、事件を起こした場合、処分を受けることになります。
ここでは、公務員の飲酒にまつわる事件について解説します。

刑事事件
酔っ払っていたことを理由に、よく起きるのが傷害・暴行事件です。
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円に処されます(刑法第204条)。
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処されます(刑法第208条)。
「酔っ払っていてよく憶えていない」からといって、故意が否定されることはありません。
事件当時、過度の酩酊により事理弁識が困難になっていたとえる場合、心神喪失又は心身耗弱とされ、責任能力が否定又は軽減されることがあります(刑法第39条第1項・第2項)。しかし、酔って自分が人に危害を加えるだろうと予測できる状況なのに敢えて飲酒したような場合、責任の減免が認められない可能性があります。
暴行にとどまる場合、前科がなければ不起訴(起訴猶予)で済む可能性が高いです。
一方、傷害の場合、傷害の程度が重いと、前科がなくても起訴される可能性があります。全治2週間以上の傷害の場合、略式請求(刑事訴訟法第461条以下)ではなく公判請求される可能性もあります。
暴行・傷害いずれにおいても、起訴を避け又は罰金などの軽い処分にとどめるには、被害者と示談を成立させることが重要となります。示談において支払う示談金では、暴行・傷害行為に対する精神慰謝料や治療代のほか、傷害を負わされたため仕事できなかった間の休業損害や、後遺障害が発生したときの逸失利益などを支払うことになります。

飲酒して車を運転してしまった場合、それ自体が犯罪となります。
酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができない状態で運転した場合)で車両等を運転した酒酔い運転の場合、5年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます(道路交通法第117条の2第1項第1号)。
身体に保有するアルコールの程度が、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラム(道路交通法施行令第44条の3)で車両等を運転した酒気帯び運転の場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます(道路交通法第117条の2の2第1項第3号)。

懲戒処分
飲酒酩酊により他人に被害を与えたり、飲酒運転などをすると、非違行為をしたとして、懲戒処分を受けることになります。

国家公務員の懲戒に関する、人事院の「懲戒処分の指針について」の、「3 公務外非行関係」では、「 (11) 酩酊による粗野な言動等 酩酊して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をした職員は、減給又は戒告とする。」とされています。

飲酒運転をした場合は非常に厳しい処分となっており、
「4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係」
「 (1) 飲酒運転
ア 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。
イ 酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職)とする。
ウ 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。」
と定めています。

こちらの記事もご覧ください。
公務員と粗暴犯-公務員が暴行・傷害事件を起こしてしまった場合の弁護活動について解説

まとめ
このように、公務員が飲酒酩酊して事件を起こした場合、刑事・懲戒と重い処分を下される可能性があります。
公務員の方で飲酒にまつわる問題でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

公務員が自首をするときの注意-公務員が自首をする場合について解説

2024-12-04

公務員といえども、犯罪を行ってしまい、逮捕されることがあります。
公務員が逮捕された場合、一般の人より実名報道される可能性が高くなります。
実名報道により、勤務先に事件が知られてしまい、懲戒処分を受けることになります。
実名報道によって、公務員の方ご本人だけでなく、家族の生活が壊れてしまいます。
もちろん、公務員が逮捕・勾留され、仕事に行けなくなり、結果として勤務先に事件が知られてしまうことになります。
公務員が逮捕によって受ける不利益は非常に大きいです。
そこで、状況次第では自首を検討することになります。
自首をすれば、逮捕されずに在宅捜査で進められることがあります。
しかし、とにかく警察に行って犯行を伝えるということではいけません。
慎重に自首をしないと、結局は逮捕されてしまうことになります。
刑事弁護に精通した弁護士に相談・依頼したうえで、慎重に対応することになります。

自首とは
刑法第42条第1項では、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」と規定されております。
自首は、犯人が捜査機関に対して自発的に自己の犯罪事実を申告し、その訴追を含む処分を求めることをいいます。
任意的な刑の減軽事由とされており、必ず減軽されることにはなりません。
自首で刑が減軽される根拠は、犯罪の捜査や犯人の処罰を容易にさせ、人の改悛・反省による非難・責任の減少にあります。
自首は、捜査機関に対する犯罪事実の申告を、自ら進んで自発的に行う必要があります。
申告の動機としては、必ずしも反省悔悟に出たものであることを要しません。
申告の内容としては、自己の犯罪事実の申告でなければなりません。
その申告は、犯行の重要部分を殊更隠したり、虚偽の事実を申告するものであってはなりません。
自首が成立するためには、一罪を構成する事実全体についての申告がなされなければなりません。
申告には、自己の訴追を含む処分を求める趣旨が明示的又は黙示的に含まれていることを要します。
捜査機関に対する申告であることが必要です。
口頭による場合、犯人自身により検察官又は司法警察員の面前で犯罪事実の申告がされなければなりません。
電話による自首は、これが直ちに口頭による自首となるものではありませんが、直ちに司法警察員の面前に出頭しようとしている場合は、全体として自首とみることができます。
捜査機関に発覚する前の申告であることが必要です。
発覚とは、犯罪事実及び犯人の発覚をいいます。
犯罪事実が全く発覚していない場合はもちろん、犯罪事実は発覚していても犯人が誰であるかが発覚していない場合も、発覚する前に含まれます。

自首をどのようにするべきか
自首は刑の任意的・裁量的減軽事由です。
現実には、自首によっても裁判ではほとんど刑が減刑されないことが多いです。
しかし、自首をすることによって、証拠隠滅や逃亡のおそれを低くし、逮捕の可能性が小さくなる可能性があります。
逮捕されないことで、実名報道されるリスクも減ります。
反省の態度を示しながら、捜査に協力することを示すことで、むやみに勤務先に知られるリスクも低くなる可能性があります。自ら自首をしたことで、懲戒処分においても有利な事情として考慮されます。
そこで、弁護士に相談し、今回の事件内容であれば自首をすることで逮捕される可能性が低くなるかを検討します。
自首をすると判断したら、そのための準備をします。
事前に自首の上申書を作成し、本人の誓約書や家族の身元引受書を用意します。
警察に電話して、これから自首をすることを説明します。
弁護士と一緒に警察署に行き、自首の上申書、誓約書、身元引受書等を提出します。
本人が取調べを受けている最中は、弁護士は警察署内等で待機します。
自首はとにかくすればいいというものではないので、刑事弁護に精通した弁護士に相談・依頼してください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、公務員の方が自首をするケースをこれまでに多く扱ってきました。
初回面談は無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

こちらの記事もご覧ください
公務員犯罪と自首-自首とは、自首の流れ、自首のメリット・デメリット、公務員が自主をする際の注意

公務員の職権濫用-公務員が自身の職権を濫用した場合に成立する犯罪について解説

2024-11-29

公務員の中には一般国民が持てないような強力な権限を持ち、逮捕のように国民の権利利益を強制的に制約することもできます。このような公務員がその職権を濫用すれば、公務の適正が害され、公務に対する国民の信頼も損なわれてしまいます。
近年では、警察官や刑務所職員の収容者への対応や、検察官の侮辱的な取調べが問題となっています。
ここでは、公務員が職権を濫用した場合に成立する犯罪について解説します。

職権濫用罪
職権を濫用して国民の権利利益を侵害した場合、害悪が重く、公務の適正を害するため、職権乱用を処罰する規定が定められています。特に人の身体を強制的に拘束する職権を濫用した場合は、害悪が甚大であるため、より重く処罰されます。

公務員職権濫用
公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、公務員職権濫用罪が成立し、2年以下の懲役又は禁錮に処されます(刑法第193条)。
「職権」とは公務員の一般的職務権限に属する行為を指します。「濫用」とは、この職権の行使に仮託して、実質的、具体的に違法・不当な行為をすることをいいます。
公務員職権濫用罪は2年以下の懲役に処すると定められており、3年以下の懲役に処される強要罪(刑法第223条)より刑罰が軽くなっています。これは、公務の適正の確保という抽象的な利益を保護法益としており、また暴行や脅迫のような害悪の程度の強い行為を用いなくても犯罪が成立しうるためです。一方で、公務員職権濫用罪に該当する行為でも、暴行や、生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した場合は、強要罪のみが成立するとされています。強要罪の場合は、公務員職権濫用罪と違い未遂罪も処罰されます(刑法第223条第3項)。

特別公務員職権濫用
裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、6月以上10年以下の懲役又は禁錮に処されます(刑法第194条)。
本罪の主体は、裁判官、検察官、検察事務官、警察官、のほか、裁判所書記官などが該当します。
これらの公務員は刑事司法に関して職務上逮捕等により人を拘束する権限を有しています。このような職権を濫用することは害悪が甚大であるため、一般人でも行える逮捕監禁罪(刑法第220条。3月以上7年以下の懲役)よりも刑罰が重くなっています。

特別公務員暴行陵虐
裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、特別公務員暴行陵虐罪が成立し、7年以下の懲役又は禁錮に処されます(刑法第195条第1項)。法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、同様に処罰されます(刑法第195条第2項)。
第1項の罪の主体は、特別公務員職権濫用罪と同じく、裁判官、検察官、検察事務官、警察官、裁判所書記官などが該当しますが、人を逮捕監禁する権限を有しない者も対象になります。
暴行とは暴行罪などと同じく身体に対する不法な有形力の行使をいいます。
陵辱とは辱める行為や精神的に苦痛を与える行為、加虐とは苦しめる行為や身体に対する直接の有形力の行使以外の肉体的な苦痛を加える行為などをいいます。わいせつ行為など、暴行以外の方法で精神的又は肉体的に苦痛を与える行為が該当します。
第2項の「法令により拘禁された者」とは、逮捕や勾留されている者など、法令上の規定に基づいて公権力により拘禁されている者をいいます。このような者を「看取又は護送する者」が本罪の主体となります。

特別公務員職権濫用等致死傷
特別公務員職権濫用罪や特別公務員暴行陵虐罪を犯し、よって人を死傷させた場合は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断されます(刑法第196条)。
禁錮より懲役刑の方が重いです(刑法第9条・第10条第1項)。傷害罪は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金(刑法第204条)、傷害致死罪は3年以上の有期懲役(刑法第205条)に処されます。特別公務員職権濫用罪は6月以上10年以下と、短期については傷害罪より重いため、特別公務員職権濫用致傷罪の場合は6月以上15年以下の懲役刑が科されます。
特別公務員暴行陵虐罪は7年以下の懲役又は禁錮と、傷害罪より軽いため、特別公務員暴行陵虐致傷罪は1月以上15年以下の懲役刑が科されます。
致死罪はどちらも3年以上20年以下の懲役となります。

懲戒処分
国家公務員の懲戒処分の基準である「懲戒処分の指針について」では、このような職権濫用については標準例に載せられていません。しかし、「懲戒処分の指針について」では、「なお、標準例に掲げられていない非違行為についても、懲戒処分の対象となり得るものであり、これらについては標準例に掲げる取扱いを参考としつつ判断する。」とされています。このような職権濫用は公務員と公務に対する国民の信頼を大きく損ねますので、強い非難に値し、重い懲戒処分が下されるでしょう。

おわりに
以上のように、公務員が職権濫用をすると、重い刑罰や懲戒処分を下される可能性が高いです。そのため、早期に弁護士に相談して対応を決めるべきです。
公務員の方で職権濫用が心配な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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汚職の罪

公務員と性的トラブルー公務員の不同意性交等罪について解説

2024-11-25

これまでに強姦罪・強制性交等罪とされていた条文が、不同意性交等罪に改正されました。
相手との性行為について、安易に相手の同意があったと主張しても、簡単には認められないことが明確に示されることになりました。
このような性的なトラブルは公務員でも例外ではありません。
不同意性交等罪は重罪で、原則として5年以上の有期懲役で刑務所に入ることになります(刑法第177条第1項)。
相手の同意があると思って性行為に及んでも、後に相手が被害を訴えて、警察の捜査・取調べを受けることになり、逮捕されることがあります。
公務員が逮捕されたら、実名報道される可能性は高いです。
長期間身体拘束されて、起訴されて有罪となれば、公務員としての地位も失うことになります。

不同意性交等罪は、以下の各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて性交等をした者に成立します。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
性交等は、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものをいいます。
婚姻関係の有無にかかわらず成立します。
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、不同意性交等罪が成立します。
16歳未満の者に対し、性交等をした者も、不同意性交等罪が成立します。この場合、不同意事由は関わりません(刑法第77条第3項)。

相手が同意していた、根拠をもって相手が同意していると思っていたら、犯罪は成立しません。
しかし、相手が同意していなかったと被害を訴えている状況で、こちらの主張を通すのは困難が伴います。
警察は必ずしも適正・公平に取調べをしてはくれません。
圧力をかけ、こちらに不利に誘導してきます。
取調べに対して慎重に対応する必要があり、刑事弁護に精通した弁護士がサポートしていかなければなりません。
起訴されてしまったら、無罪を主張していくことになります。
一度起訴されてしまうと高い確率で有罪となってしまいます。
証拠を深く分析して対応することになります。

相手が同意していなかったり、相手が同意していると安易に考えて行動してしまったら、被害者に対して示談交渉をする必要があります。
検察官が起訴をする前の、早い段階で示談を成立させなければなりません。
弁護士を通じて被害者に接触し、誠意をもって謝罪と被害弁償の話をし、示談を求めていくことになります。

相手が16歳未満であれば、不同意事由に関わらず犯罪となりますが、相手が16歳未満であることを知らなかったら不同意性交等罪は成立しません。
年齢について知っていなかったとしても、警察は違法・不当な取調べでこちらに不利に話を誘導してくることがあります。
公務員とはいえ刑事手続きについては素人であり、プロの警察官に対抗するのは非常に難しいです。
プロの弁護士のサポートを受けながら対応することになります。

当事務所では公務員の男女間トラブルの刑事事件をこれまでに多数扱ってきました。
経験のある弁護士が対応させていただきます。
ぜひお気軽にご相談ください。

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公務員と不同意わいせつ罪ー不同意わいせつ事件で相談・依頼される公務員の方が増えております

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