Archive for the ‘未分類’ Category
公務員と痴漢ー公務員が痴漢をしてしまった場合に成立する犯罪について解説
公務員の方で、痴漢事件を起こしてしまい、当事務所に相談・依頼されるケースが少なくありません。
日頃のストレスから、常習的に電車内等で行ってしまっている方もいます。
アルコールで酔ってしまい、女性に痴漢をしてしまうこともあります。
迷惑防止条例違反
いわゆる痴漢としては、各地方公共団体で作成されている条例の迷惑行為防止条例違反が問題になりやすいです。
服の上からでもお尻を触ったりするときに問題となります。
例えば、北海道迷惑行為防止条例では、以下のように規定されております。
「(卑わいな行為の禁止)
第2条の2 何人も、正当な理由がないのに、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し、著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をすること。
ア 衣服等の上から、又は直接身体に触れること。
(罰則)
第11条 第2条の2、第6条又は第9条第1項の規定のいずれかに違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2 常習として、第2条の2、第6条又は第9条第1項の規定のいずれかに違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。」
不同意わいせつ罪
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、不同意わいせつ罪(刑法第176条第1項)が成立します。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
いわゆる痴漢としての不同意わいせつ罪は、服の上からでも胸や女性器等を触った場合に問題となります。
6月以上10年以下の懲役刑に処されることになり、罰金刑はありません。
痴漢事件を起こしたら
痴漢をしてしまったら、現行犯であればその場で逮捕、もしくは後に自宅や職場に警察官が来て令状逮捕されることがあります。
逮捕・勾留により、長期間身体拘束される可能性があります。
公務員という立場を重視され、一般の人では実名報道されないとしても、公務員として実名報道されてしまうことも少なくありません。
起訴されて刑事裁判を受けることになり、懲役刑の刑事処分となったら、執行猶予が付いたとしても自動失職となってしまいます。
不同意わいせつ罪では罰金刑がないため、基本的に起訴されて正式裁判となります。
迷惑行為防止条例違反で略式罰金処分となったとしても、勤務先から懲戒処分を受けることになります。
人事院が公表している「懲戒処分の指針について」では、「公共の場所又は乗物において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。」と規定されております。
地方公共団体の場合さらに厳しい基準が設けられており、免職となることも多々あります。
痴漢事件を起こしてしまった公務員の方は、ぜひ早めに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談してください。
初回面談は無料です。
逮捕された場合は、有料の初回接見サービスがありますので、ご依頼いただけたらなるべく早く対応させていただきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、公務員の痴漢事件をこれまでに多数扱ってきました。
経験と実績が豊富な弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にぜひご相談ください。
こちらの記事もご覧ください
公務員と薬物-公務員が薬物事件を起こしてしまった場合の流れについて解説
覚せい剤、コカイン、大麻などの違法薬物については、使ったり、所持したりすることが法律で禁止されています。一般の人でも、このような違法薬物の所持、使用で検挙されて有罪となった場合、当然ながら刑罰を受け、場合によっては職場を解雇されたり、事件が実名報道されてしまうかもしれません。
では、公務員が薬物事件を起こした場合に、一般の人と違うところや一般の人よりも気をつけるべきことはあるのでしょうか?
以下、公務員が薬物事件を起こしてしまった場合の流れや対処について説明します。
事案
国家公務員Aさんは、普段は真面目に仕事をしているものの、数年前に悪い友達から誘われたのをきっかけに、覚醒剤を使用するようになっていた。だいたい、1カ月に2回くらいの頻度で、覚醒剤をあぶって吸引する方法で使用していた。
ある日、Aさんは、覚醒剤を使っていた仲間の一人が逮捕されたことを知った。その仲間の一人が自分のことを警察で話すかどうかは分からないが、絶対に話さない保証はないとAさんは思った。また、その仲間の携帯電話に、覚醒剤に関するAさんとのLINEメッセージが残っていることは明らかだった。
ある日、自分も捕まるのではないか、と心配になったAさんは、今後の対応について相談をするため、法律事務所を訪れた。
(上記はフィクションであり、弊所を含めた特定の法律事務所や、特定の人物、団体等とは一切関係ありません。)
関連法令
第四十一条の二 覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第四十二条第五号に該当する者を除く。)は、十年以下の懲役に処する。
3 公務外非行関係
(10) 麻薬等の所持等
麻薬、大麻、あへん、覚醒剤、危険ドラッグ等の所持、使用、譲渡等をした職員は、免職とする。
(欠格による失職)
第七十六条 職員が第三十八条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、人事院規則で定める場合を除くほか、当然失職する。
(欠格条項)
第三十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則で定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。
一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
(降任、免職、休職等)
第二十八条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、
4 職員は、第十六条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、条例に特別の定めがある場合を除くほか、その職を失う。
(欠格条項)
第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。
一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
まず、覚醒剤を自分が使うために所持していた、譲受をした、と言う場合、多くは執行猶予付きの懲役刑となります。つまり、覚醒剤を所持、譲受をしただけでは、基本的に直ちに刑務所に行くことはありません。また、起訴された後は、保釈と言って、保釈保証金を用意できれば起訴後比較的早い段階で留置場から出ることもできるでしょう。
しかし、懲戒処分の指針によれば、薬物の所持等は免職になります。法定刑には懲役しかないので、裁判で有罪となれば国家公務員でも地方公務員でも当然失職となります。
これに加えて、一般人ならば、薬物の単純所持や譲受だけでは報道などをされる可能性が低いですが、公務員であれば、報道がされてしまう可能性が非常に高くなります。
対処法
一般の方でも、刑事裁判にかけられて有罪となってしまえば、仕事をクビになることは多いかもしれません。今回のようなケースだと、公務員の方に特有のリスクとしては、むしろ報道なのかもしれません。裁判の場でも、「公務員という法を特に遵守すべき立場にあったのにもかかわらず、犯罪行為をしたことは厳しい非難に値する」などと言われてしまい、一般の人よりも量刑が重くなる可能性がありますが、余程所持量が多くない限り、本来執行猶予となるものが実刑とまでなってしまう可能性は高くありません。
実名報道を防ぐという意味では、逮捕・勾留されてしまう前に退職する等の方法のほか、弁護士の方から実名報道を防ぐよう捜査機関等に働きかけるというのが考えられます。個別の事案によってその他に有効な方法があるかも知れませんので、一度弁護士に相談をすることをお勧めします。
もちろん、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談・ご依頼いただければ、身柄解放、裁判対応などについても、十分な質と量をご提供することができます。
刑事事件、薬物事件を起こしてしまってお悩みの公務員の方や、そのご家族の方は、ぜひ一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
こちらの記事もご覧ください
公務員の懲戒処分の流れー公務員が罪を犯した場合の懲戒処分の内容や手続きの流れについて解説
公務員と各種性犯罪―ニュース記事を基に、公務員に成立する可能性のある性犯罪について解説
公務員という立場でありながら、性犯罪事件を起こしてしまうケースがあります。
ネットニュースでも、以下のような記事があります。
※一部情報を修正しております。
「公務員を逮捕 ホームで痴漢疑い
駅のホームで面識のない10代の女性の下半身を触ったとして、迷惑防止条例違反の疑いで、公務員の男を現行犯逮捕していたことが分かった。認否を明らかにしていない。
逮捕容疑は、駅のホームを歩いていた女性の下半身を触った疑い。
2人はいずれも帰宅途中で、男は電車から降りた後に女性を触ったとみられる。駅員から110番があった。」
「盗撮目的で女子トイレに侵入した疑い 市職員の男を逮捕
女子トイレに侵入した疑いで、市職員の男が逮捕されました。警察は盗撮目的とみて捜査しています。
市職員の男は、女子トイレに侵入した疑いがもたれています。
警察などによりますと、女子トイレに、小型カメラが仕掛けられているのを、他の利用者が発見し警察に通報。
関係者への事情聴取などの結果、容疑者の男が浮上しました。容疑者の男は調べに対し、容疑を認めています。
警察は小型カメラを回収する目的で女子トイレに侵入したとみて余罪などを捜査しています。」
「更衣中の女性を盗撮した疑い 公務員の男逮捕 「画像が出回っている」と施設関係者が通報
更衣中の女性を盗撮した疑いで警察は公務員の男を逮捕しました。
迷惑行為等防止条例違反(卑わいな行為の禁止)の疑いで逮捕されたのは、公務員の男です。
警察の調べによると男は施設の部屋の中で更衣中の女性を撮影した疑いが持たれています。
施設の関係者から「盗撮されたと思われる画像が出回っている」と警察に通報がありました。男は容疑を認めているということです。」
盗撮
盗撮は、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」で犯罪として規定されております。
正当な理由がないのに、ひそかに、盗撮をしたら、性的姿態等撮影罪が成立します。
対象となる性的姿態等は、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもので、
・人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)
・人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるもの)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
・わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態
です。
他人の裸や下着などを盗撮したら、犯罪が成立します。
性的姿態等撮影罪は、未遂罪も罰せられます。
盗撮等による性的影像記録を提供した者は、性的影像記録提供等罪が成立します。
性的影像記録を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、性的影像記録提供等罪が成立します。
盗撮データを拡散させる行為も犯罪となります。
性的影像記録提供等罪の行為をする目的で、性的影像記録を保管した者は、性的影像記録保管罪が成立します。
未成年者との性行為
18歳未満の未成年者と性行為やわいせつ行為をしたら、青少年健全育成条例違反・いわゆる淫行条例違反の犯罪となります。
対償を供与し、又はその供与の約束をして、18歳未満の児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせること)をすることをしたら、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」、いわゆる児童買春の犯罪が成立します。
相手が16歳未満であれば、相手の同意があったとしても、わいせつな行為をすれば不同意わいせつ罪(刑法第176条第3項)、性交等をすれば不同意性交等罪(刑法第177条第3項)が成立します。
痴漢・不同意わいせつ・不同意性交等
公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し、著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせるような方法で、衣服等の上から、又は直接身体に触れることをしたら、迷惑行為防止条例違反・いわゆる痴漢の犯罪が成立します。
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、不同意わいせつ罪が成立します(刑法第176条第1項)。上記の痴漢も、態様が悪質であれば不同意わいせつ罪となります。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
上記の各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものである性交等をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、不同意性交等罪が成立します(刑法第177条第1項)。
こちらの記事もご覧ください。
公務員の方で性犯罪についてお悩みの方は、弁護士法事あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
公務員の自動車の運転に関する犯罪-公務員で多い車の運転に関する犯罪について詳しく解説
公務員の方々は、身分もしっかりしており、普段から問題を起こすような人は少ないです。
そんな公務員の方々でも、気の緩みから車の運転で失敗し、犯罪を行ってしまうことがあります。
今回は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が、公務員で多い車の運転に関する犯罪について解説いたします。
過失運転致死傷罪
車を運転して人に衝突する人身事故を起こし、不注意の過失が認められたら、過失運転致死傷罪が成立します。
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金となります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)第5条)。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができます。
自動車の運転上必要な注意とは、運転者が自動車を運転する上で守るべき注意義務をいいます。
発生した死傷事故から見て、どのような措置を取っていれば当該事故の発生を回避することができたかを、事故の具体的状況に即して検討することになります。
運転者に対してそのような措置を講じるべき義務を課すことが可能で相当かどうかを検討して、義務を怠っていると評価されたら、犯罪が成立することになります。
公務員の方でも、普段の車の運転でミスをし、事故を起こして取り返しの付かないことをしたと後悔するケースが少なくありません。
公判請求されて裁判となったら、罰金刑の可能性はほぼないので、執行猶予が付いても懲役・禁錮となり、失職することになります。
公判請求されるかどうかは、過失や怪我の大きさを中心に総合的に判断されることになります。
ここで、特に警察の取調べで、殊更大きく過失・不注意が評価されるように、刑事から不当な誘導がなされることがあります。
在宅事件であっても弁護士を付けて、取調べにきちんと対応するべきです。
飲酒運転
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはなりません(道路交通法第65条第1項)。
違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合においてアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある酒に酔った状態にあったものは、5年以下の懲役又は100円以下の罰金となります(道路交通法第117条の2第1項第1号)。
違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあったものは、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(道路交通法第117条の2の2第1項第3号)。
政令で定める身体に保有するアルコールの程度は、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラムとされています(道路交通法施行令第44条の3)。
公務員の方でも、普段から飲酒運転をしているわけでなくても、気の緩みから飲酒運転をしてしまうことがあります。
飲酒運転をするつもりがなくて飲食をした後に、飲酒の影響から気が緩み、飲酒運転をしてしまうケースもあります。
飲酒運転をしていたこと自体を覚えておらず、気が付いたら逮捕されて警察署の留置場にいた、ということもあります。
轢き逃げ
交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければなりません(道路交通法第72条第1項前段)。
車両等の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があった場合において、人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、この義務に違反したら、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります(道路交通法第117条第2項)。
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む)の警察官に交通事故発生日時等(当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置)を報告しなければなりません(道路交通法第72条第1項後段)。
この報告をしなかったら、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金となります(道路交通法第119条第1項第17号)。
普段から真面目に仕事をしているような公務員の方が、轢き逃げで逃走などするわけがない、と思われるかもしれません。
しかし、いざ事故を起こしてしまったら、パニックになって冷静でいられなくなり、反射的な判断でその場を逃走してしまうことがあります。
また、本人は逃走する意図がなかったとしても、車を止められる場所を探していたら事故現場からある程度離れてしまい、轢き逃げとして逃走を疑われてしまうこともあります。
無免許・無車検・無保険
無免許
何人も、公安委員会の運転免許を受けないで、自動車を運転してはなりません(道路交通法第64条第1項)。
法令の規定による運転の免許を受けている者でなければ運転し、又は操縦することができないこととされている車両等を当該免許を受けないで(法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。)又は国際運転免許証等を所持しないで運転した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(道路交通法第117条の2の2第1項第1号)。
無車検
自動車は、国土交通大臣の行う検査を受け、有効な自動車検査証の交付を受けているものでなければ、これを運行の用に供してはなりません(道路運送車両法第58条第1項)。
違反したら、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります(道路運送車両法第108条第1号)。
無保険
自動車は、自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはなりません(自動車損害賠償保障法第5条)。
違反行為をした者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(自動車損害賠償保障法第86条の3第1項第1号)。
これらについては、うっかりして対応を失念していた、というケースがあります。
悪質性が殊更大きく評価されないように、取調べは慎重に対応することが必要です。
スピード違反
車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度を超える速度で進行してはなりません(道路交通法第22条第1項)。
自動車及び原動機付自転車が高速自動車国道の本線車道並びにこれに接する加速車線及び減速車線以外の道路を通行する場合の最高速度は、自動車にあっては60キロメートル毎時、原動機付自転車にあっては30キロメートル毎時、とされております(道路交通法施行令第11条)。
違反したら、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金となります(道路交通法第118条第1項第1号)。
過失により違反したら、3月以下の禁錮又は10万円以下の罰金となります(道路交通法第118条第3項)。
スピード違反の程度が大きければ、公判請求されてしまいます。
こちらの記事もご覧ください
公務員と告発義務
公務員という立場では、法令に関する業務を取り扱うことが多いため、犯罪とかかわる機会も多くあります。特に、犯罪について捜査する警察官や薬物を取り締まる麻薬取締官は違法薬物などを発見する機会が多いでしょう。一方で、こうした取締官以外の立場で違法薬物使用・所持などの犯罪に遭遇した場合はどうなるでしょうか。公務員という立場である以上、犯罪があると思われたら告発するべきでしょうか、それとも公務員は守秘義務を負っているため告発するべきではないのでしょうか。
違法薬物を発見した場合の告発義務
公務員の告発義務
公務員は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければなりません(刑事訴訟法239条2項)。国や地方公共団体が運営する国公立の病院の医師や、「精神保健及び精神障害福祉に関する法律」第6条第1項により都道府県に設置を義務付けられている精神保健福祉センターの職員は公務員ですので、職務を行う上で犯罪があると思料すれば告発する義務があります。
一方で、国家公務員、地方公務員とも、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と守秘義務が定められています(国家公務員法100条1項、地方公務員法34条1項)。これらの規定に違反して秘密を洩らしたときは、いずれも1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(国家公務員法109条12号、地方公務員法60条2号)。
また、医師や薬剤師等については、公務員であるか否かにかかわらず、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を洩らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます(刑法134条1項)。
このように告発義務と守秘義務が併存することがあり、いずれも違反すれば刑罰を科されるため、どのようにするべきかが問題となります。
判例
こうした問題点について、最高裁平成17年7月19日決定で、判断が示されました。事案は、被告人が重傷を負って国立病院の医療センターに送られ、医師は麻酔をかけて縫合手術をし、その際に採尿した尿を簡易検査したところ覚醒剤の成分が検出され、被告人の尿から覚醒剤反応があったことを警察官に通報したものでした。この事件では、被告人側は、医師が被告人から尿を採取して薬物検査をした行為は被告人の承諾なく強行された医療行為であり医療上の必要性もないと主張したうえで、医師が被告人の尿から覚醒剤反応が出たことを警察官に通報した行為は、医師の守秘義務に違反していると主張しました。
最高裁判所は「上記の事実関係の下では、同医師は、救急患者に対する治療の目的で、被告人から尿を採取し、採取した尿について薬物検査を行ったものであって、医療上の必要があったと認められるから、たとえ同医師がこれにつき被告人から承諾を得ていたと認められないとしても、同医師のした上記行為は、医療行為として違法であるとはいえない。」と判示しました。そして、「医師が、必要な治療又は検査の過程で採取した患者の尿から違法な薬物の成分を検出した場合に、これを捜査機関に通報することは、正当行為として許容されるものであって、医師の守秘義務に違反しないというべきである。」と判示し、医師が被告人の尿から覚醒剤反応が出たことを警察官に通報した行為は、医師の守秘義務に違反するものではないと判断しました。
告発義務があるか
まず、このような場合に告発義務があるのかどうかが問題となります。
刑事訴訟法では、「公務員又は公務員であつた者が保管し、又は所持する物について、本人又は当該公務所から職務上の秘密に関するものであることを申し立てたときは、当該監督官庁の承諾がなければ、押収をすることはできない。」と押収拒絶権を定めており(刑事訴訟法103条)、また、「公務員又は公務員であつた者が知り得た事実について、本人又は当該公務所から職務上の秘密に関するものであることを申し立てたときは、当該監督官庁の承諾がなければ証人としてこれを尋問することはできない。」(刑事訴訟法144条)と証言拒絶県が定められています。このように、公務員は職務上の秘密に関するものについては、押収や証言すら拒めるのですから、一般的には、公務員は職務上の秘密に関するものについては告発についても義務を負わないと考えられています。
上記の最高裁決定も、公務員の告発義務については特に問題としていません。
したがって、犯罪があると思料される情報であっても、公務員の職務上の秘密については告発義務がないと考えられます。
告発してはならないのか
上記のとおり公務員に告発義務がないとなると、次には、守秘義務を徹底する、つまり告発してはならないのかどうかが問題となります。
上記の掲載の判例のように、最高裁判所は医師が患者の尿から違法な薬物の成分を検出した場合に捜査機関に通報することは、正当行為として許容されるものだと判示しています。つまり秘密漏えいや守秘義務違反には当たらないとしています。
一般的には、「正当な行為」か否かは、行為の目的・手段・方法や、被侵害利益の有無、内容やその程度などを具体的に考慮して判断されています。判例の事案ですと、行為の目的は、犯罪事実を通報することで、捜査などの刑事司法手続きを開始することにあると考えられます。方法も、医療行為の過程で適法に採取した尿を検査した結果覚醒剤成分が検出されているため、問題がないといえます。尿に覚醒剤が含まれていたという情報は患者の重大なプライバシーにかかわる内容ですが、覚醒剤使用という重大な犯罪(10年以下の懲役)の捜査を始めることを考えると、通報することは正当な行為であったということでしょう。
なお、これはあくまでこの判例の事案における判断ですので、どのような場合でも「正当な行為」となるわけではないことに注意が必要です。前提となる行為が違法であったり、軽い刑の犯罪についての通報の場合は、判断が異なる可能性があります。
行政目的の通報義務
以上は捜査の開始という司法手続きと守秘義務が問題となりましたが、捜査を目的とせずあくまで行政目的により通報義務を課す場合もあります。
麻薬中毒者に対する措置
麻薬取締官、麻薬取締員、警察官及び海上保安官は、麻薬中毒者又はその疑いのある者を発見したときは、すみやかに、その者の氏名、住所、年齢及び性別並びにその者を麻薬中毒者又はその疑いのある者と認めた理由をその者の居住地の都道府県知事に通報しなければなりません(麻薬取締法第58条の3)。医師も、公務員か否かにかかわらず、診察の結果受診者が麻薬中毒者であると診断したときは、すみやかに、その者の氏名、住所、年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項をその者の居住地の都道府県知事に届け出なければならないとされています(麻薬取締法第58条の2)。
また、検察官は、麻薬中毒者若しくはその疑いのある被疑者について不起訴処分をしたとき、又は麻薬中毒者若しくはその疑いのある被告人について裁判(懲役若しくは禁錮の刑を言い渡し、その刑の全部の執行猶予の言渡しをせず、又は拘留の刑を言い渡す裁判を除きます。)が確定したときは、速やかに、その者の氏名、住所、年齢及び性別並びにその者を麻薬中毒者又はその疑いのある者と認めた理由をその者の居住地の都道府県知事に通報しなければなりません(麻薬取締法第58条の4)。矯正施設(刑事施設、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院をいう。)の長は、麻薬中毒者又はその疑いのある収容者を釈放するときは、あらかじめ、その者の氏名、帰住地、年齢及び性別、釈放の年月日、引取人の氏名及び住所並びにその者を麻薬中毒者又はその疑いのある者と認めた理由をその者の帰住地(帰住地がないか、又は帰住地が明らかでない者については、当該矯正施設の所在地とする。)の都道府県知事に通報しなければなりません(麻薬取締法第58条の5)。
これらは取り締まり目的ではなく、麻薬中毒者の保護や治療、矯正を適切に行うことができるように定められています。
まとめ
このように、違法薬物所持・使用などの犯罪に遭遇した場合に告発するべきかどうかについては、手続の目的や状況によって、慎重に対応する必要があります。