汚職事件

汚職事件について

汚職とは、公務員がその地位・職権・裁量権を利用して不正な行為をすることをいいます。

刑法では、第25章「汚職の罪」として、公務員職権濫用、特別公務員職権濫用、特別公務員暴行陵虐、収賄、受託収賄、事前収賄、第三者供賄、加重収賄、事後収賄、あっせん収賄、贈賄、等が定められています。

一般的には、汚職は贈収賄事件のことについて言われます。

贈収賄等の汚職事件は、政治・行政・経済等の奥底に潜在し、国民が信頼を寄せる公務の公正性を歪めることになり、社会の秩序を乱す重大な犯罪です。

「収賄罪」とは、公務員が、その職務に関して、賄賂を受け取ったり、賄賂を要求したり、約束した場合に成立する犯罪です。

公務員が請託を受けて、賄賂を受け取ったり、要求したり約束することで成立するのが「受託収賄罪」です。

ここでいう賄賂とは、公務員の職務に関する不正な報酬としての利益を意味します。

請託とは、公務員に対して、その職務に関し一定の職務行為をし、又はしないことを依頼することです。

そして公務員になろうとする者が、事前に請託を受けて賄賂を受け取ったりしていた場合には、公務員となった場合に「事前収賄罪」が成立します。

また請託を受けた公務員が、第三者に賄賂を供与させたり、賄賂の供与を要求、約束した場合は、「第三者供賄罪」となります。

更に、こういった収賄行為、供賄行為が、不正な行為や、相当な行為を怠ったことに対しての見返りとして行われた場合は、「加重収賄罪」となります。

公務員であった者が、不正な行為や、相当な行為を怠ったことに対して、公務員を辞めた後に賄賂を受け取る等した場合は、「事後収賄罪」となります。

「あっせん収賄罪」は、公務員が請託を受けて、他の公務員に対して不正な行為や、相当な行為を怠るように斡旋するなどして、賄賂を受け取る等することを規制した法律です。

各種収賄罪の対向する関係となる犯罪が「贈賄罪」です。

贈賄罪は、公務員に対して賄賂を渡す側の行為を規制した法律です

また、公務員の汚職としては、公金横領事件があります。

業務上自己の占有する他人の物を横領したとして、「業務上横領罪」が成立します。

最近でも、東京オリンピックをめぐる汚職事件が大きく報道されています。

組織委員会の理事を含む役員や職員は、「令和三年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法」により、みなし公務員となります。

そのため、組織委員会の役員らがスポンサー企業から受け取ったコンサルタント料等が賄賂にあたるとされた場合には、収賄罪が成立することになります。

また、海外で商取引を円滑に行うため、外国の公務員に対して賄賂を与えるケースがあります。

国際商取引における外国公務員への不正な利益供与が、国際商取引の競争条件を歪めているという認識の下、これを防止することを目的として、不正競争防止法に外国公務員贈賄罪が規定されています。

国際商取引において自分らの利益を得たり、維持するために、外国公務員に対して直接または第三者を通して、金銭等を渡したり申し出たりすると、犯罪となります。

刑法

公務員職権濫用

第百九十三条 公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、二年以下の懲役又は禁錮に処する。

特別公務員職権濫用

第百九十四条 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、六月以上十年以下の懲役又は禁錮に処する。

特別公務員暴行陵虐

第百九十五条 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、七年以下の懲役又は禁錮に処する。

2 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。

特別公務員職権濫用等致死傷

第百九十六条 前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

収賄、受託収賄及び事前収賄

第百九十七条 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。

2 公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の懲役に処する。

第三者供賄

第百九十七条の二 公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。

加重収賄及び事後収賄

第百九十七条の三 公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期懲役に処する。

2 公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。

3 公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。

あっせん収賄

第百九十七条の四 公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。

没収及び追徴

第百九十七条の五 犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。

贈賄

第百九十八条 第百九十七条から第百九十七条の四までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。

業務上横領

第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

不正競争防止法

外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止

第十八条 何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。

2 前項において「外国公務員等」とは、次に掲げる者をいう。

一 外国の政府又は地方公共団体の公務に従事する者

二 公共の利益に関する特定の事務を行うために外国の特別の法令により設立されたものの事務に従事する者

三 一又は二以上の外国の政府又は地方公共団体により、発行済株式のうち議決権のある株式の総数若しくは出資の金額の総額の百分の五十を超える当該株式の数若しくは出資の金額を直接に所有され、又は役員(取締役、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で事業の経営に従事しているものをいう。)の過半数を任命され若しくは指名されている事業者であって、その事業の遂行に当たり、外国の政府又は地方公共団体から特に権益を付与されているものの事務に従事する者その他これに準ずる者として政令で定める者

四 国際機関(政府又は政府間の国際機関によって構成される国際機関をいう。次号において同じ。)の公務に従事する者

五 外国の政府若しくは地方公共団体又は国際機関の権限に属する事務であって、これらの機関から委任されたものに従事する者

罰則

第二十一条 2 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

七 第十六条、第十七条又は第十八条第一項の規定に違反した者

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