事例
東京都X区役所で働くAさんは、自宅近くのスーパーマーケットで、菓子パン2個を万引きし、現行犯逮捕されました。
なお、Aさんは、過去に、万引きで一度捕まりましたが、その際は刑事処分を受けずに済みました(前歴があるということです)。(フィクションです)
解説
⑴ 窃盗罪の成立
Aさんには、スーパーマーケットの菓子パン2個という「他人の物」を、スーパーマーケットの意思に反して取得している(「窃取」)ため、窃盗罪(刑法235条)が成立します。
⑵ 逮捕された場合には報道される可能性がある
Aさんは現行犯逮捕されています。Aさんが逮捕された場合、当然、仕事を一定期間休まざるを得なくなり、職場に事件のことを知られる可能性が高くなります。
また、公務員が逮捕された場合、社会全体としても関心が高いものとして、報道されるリスクが高いといえます。しかし、実際に報道されるかどうかは、報道機関ごとの判断になり、早期に釈放されれば、報道を避けられるかもしれません。
逮捕された場合には、早期に釈放を目指す必要があり、逮捕された場合には少しでも早く弁護士に相談する必要があります。
⑶ 有罪になるとどのようなことが予想されるのか
窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金で、Aさんには、万引きの前歴があるため、罰金刑が科される可能性があり、余罪があるなど事情によっては懲役刑となる可能性も否定できません。
Aさんは、懲役刑に処された場合、仮に執行猶予付きの判決であったとしても、公務員の職を失うことになります。
公務員の場合、欠格事由というものが定められており、これに該当してしまうと、当然に職を失います(地方公務員法28条4項。国家公務員については国家公務員法76条を参照)。
そして、懲役刑は、仮に執行猶予付きの判決であっても欠格事由に該当します(地方公務員法16条1号。国家公務員については国家公務員法38条1号を参照)。
そこで、公務員が窃盗を行ってしまった場合、欠格事由との関係では、不起訴や罰金刑にとどまることを目指していくことが重要になってきます。具体的には、被害者と示談をしていくといったことが考えられます。
もっとも、Aさんが身体拘束を受けた状態であると、自身で示談交渉を行うことは困難です。また、Aさんが釈放された状態であったとしても、被害者はスーパーマーケットということになりますが、示談交渉しようにもどの人に話をすればいいかを把握するのも容易ではありません。
そうした場合には、弁護士が介入し、捜査機関の協力を得ながら示談交渉をする必要があります。
また、公務員の場合、不起訴や罰金刑にとどまり、欠格事由に該当しなかったとしても、事件のことが職場に知られてしまうと、懲戒処分がなされる可能性があります(地方公務員法29条1項3号。国家公務員については国家公務員法82条1項3号を参照)。
Aさんが働いている東京都が公表している「懲戒処分の指針」においては、「公務外非行関係」(簡単にいえば、公務に関係がないもの)について、「他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。」とされています(第5・3⑺ア)ので、Aさんもこうした処分を受ける可能性があります。
そこで、そもそも職場に知られないための活動をしていく必要があります。
先ほど話したように、身体拘束されている場合には、早期の釈放を目指す必要があります。また、身体拘束を受けていない場合においても、捜査に積極的に協力し、職場に連絡する必要がないことなどを、捜査機関に説明し、早期に不起訴とするように働き掛けていくといったことが考えられます。
事件のことが職場に知られ、懲戒処分を受けるかが問題となった場合においても、実際にどのような懲戒処分を受けるかは、先ほど話したような基準をベースとしつつも、様々な事情を考慮して判断されます。
ここにいう考慮事情としては、被害者と示談ができているかどうかといった点も含まれると考えられるため、懲戒処分との関係でも、そうした活動をしていくという必要性があります。
最後に
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心に扱う弁護士が依頼者を最大限サポートします。
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