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公務員のパワハラ-公務員がパワハラを起こしたと疑われた場合の懲戒手続きや刑事手続きについて解説

自衛隊や役所内でのパワハラなど、公務員のパワハラが問題となっています。このようなハラスメントは懲戒処分の対象になりますし、悪質なものは刑事事件となります。一方で、自身の指導がパワハラだと疑われることで、職場に居づらくなるなどのリスクが生じます。ここでは、公務員がハラスメントをした場合どうなるかについて解説します。
パワハラについて
パワーハラスメント(パワハラ)については、人事院規則にも明確な定義があります。
人事院規則10-16(パワー・ハラスメントの防止等)第2条では、「「パワー・ハラスメント」とは、職務に関する優越的な関係を背景として行われる、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動であって、職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、職員の人格若しくは尊厳を害し、又は職員の勤務環境を害することとなるようなものをいう。」と定めています。
この規則について、「人事院規則10―16(パワー・ハラスメントの防止等)の運用について(令和2年4月1日職職―141)」が定められています。
第2条関係
1 この条の「職務に関する優越的な関係を背景として行われる」言動とは、当該言動を受ける職員が当該言動の行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものをいう。典型的なものとして、次に掲げるものが挙げられる。
一 職務上の地位が上位の職員による言動
二 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な状況下で行われるもの
三 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
2 この条の「業務上必要かつ相当な範囲を超える」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに業務上必要性がない又はその態様が相当でないものをいい、例えば、次に掲げるものが含まれる。なお、このような言動に該当するか否かは、具体的な状況(言動の目的、当該言動を受けた職員の問題行動の有無並びにその内容及び程度その他当該言動が行われた経緯及びその状況、業務の内容及び性質、当該言動の態様、頻度及び継続性、職員の属性及び心身の状況、当該言動の行為者との関係性等)を踏まえて総合的に判断するものとする。
一 明らかに業務上必要性がない言動
二 業務の目的を大きく逸脱した言動
三 業務の目的を達成するための手段として不適当な言動
四 当該行為の回数・時間、当該言動の行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
「業務上必要かつ相当な範囲を超える言動」には、業務とは無関係な話や、殊更に他の職員のいる前でさらしものにしたり、人格攻撃をするケースがよく見受けられます。厳しい叱責であっても、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません。
「職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、職員の人格若しくは尊厳を害し、又は職員の勤務環境を害することとなるようなものをいう。」については、平均的な労働者がどうなるかを基準に判断されます。単に相手が不快に思ったらパワハラになると言うわけではありません。
懲戒処分
公務員がその職務に関してパワハラやセクハラをすると、非違行為をしたとして、重い懲戒処分を受けることになります。
人事院の「懲戒処分の指針」によると、「1 一般服務関係」において、「(15)パワー・ハラスメント」の「ア 著しい精神的又は身体的な苦痛を与えたもの」は停職・減給・戒告の対象となります。「イ 指導、注意等を受けたにもかかわらず、繰り返したもの」は戒告では済まされず、停職又は減給とより重くなります。「ウ 強度の心的ストレスの重責による精神疾患に罹患させたもの」は免職・停職・減給の対象となり、もっとも重い懲戒免職もありえます。
これらの事案について処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断するものとしています。
犯罪・刑事責任
パワハラに該当する行為であっても、その態様や状況によって様々なものがあり、行政庁内の懲戒処分にとどまらず、民事責任、さらには刑事責任を負う行為もあります。
相手に暴行したり怪我を負わせた場合、暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)に問われる可能性があります。殴るなどの有形力の行使によって怪我をさせただけでなく、強いストレスを与えて相手を精神疾患に罹患させた場合も、傷害罪になりえます。個室に数名しかいない状況で叱責するようなものではなく、大勢の人がいる場所で侮辱したり人格を否定するような罵倒をすれば、侮辱罪(刑法231条)や名誉毀損罪(230条)が成立する可能性があります。
また、懲戒処分において、「これらの事案について処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断する」と書きましたが、刑事事件として処理される場合、さらに懲戒処分も重くなる可能性があります。上述の人事院の「懲戒処分の指針」では「3 公務外非行関係」で「(3)傷害 人の身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。」と定めていますが、ハラスメントにより人を傷害させたといえるときは、これと同等以上の処分を受けることにもなります。
パワハラの調査
パワハラの事実があったかどうかについては、所属官庁による調査が行われます。
国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)が、刑事事件になるようなケースの場合、刑事手続きが終わってから所属官庁が調査を始め得ることが多いです。
調査中も基本的に今まで通り仕事ができますが、被害者とされる職員との接触を避けるため、配置換えされることもあります。
事情聴取については、刑事手続きと同様に黙秘権がありますが、偏見に基づいた決めつけや、圧迫的な事情聴取が行われることがあります。
また、人格攻撃に及ぶ場合もあります。
調査自体がパワハラに該当するような場合もあります。
このような調査が行われた場合、公務災害の申請や国家賠償請求も検討する必要があります。また、このような調査に基づき真実に基づかない事実認定がされたり、不当に重い処分が下された場合、再調査請求や審査請求といった不服申立て、取消訴訟などの訴訟手続きも検討する必要があります。
このような違法・不当な調査を受ける恐れがあるときは、弁護士に依頼して、違法・不当な調査を防ぎ、正しい事実認定をするよう求めていくことも考えられます。
まとめ
このように、公務員がパワハラを起こした疑いが生じた場合、懲戒処分や刑罰などの他、多くの不利益が科される可能性があります。
公務員でパワハラをしたと疑われている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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公務員の方であれば、懲戒事由には様々なものがあり、職場内のトラブルやパワハラ、セクハラなども公務員生命を左右しかねない大ごとになることをお分かりのことと思います。
今回は、最近のニュースを参考に、どう職場で立ち回っていくかを考えて頂き、懲戒が問題になってしまっている方に関しましては、弁護士を入れて対応するかを考えて頂けると良いかと思います。
関係ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/dc5b2f53ee6b2b7efc7f25d41209625747d9eff0
(Yahoo!ニュース。令和6年10月15日閲覧)
以下、引用文
岡山県新見市は11日、非正規職員にパワハラ行為をしたとして、市長部局の30代と20代の主事級男性職員2人を10日付で減給10分の1(6カ月)の懲戒処分にしたと発表した。
市によると、主事級職員2人は4~6月、同じ部署の非正規職員2人に対し、日常的にあいさつを無視したり、他の職員がいる前で大声で注意したりして精神的苦痛を与えたという。
6月末に非正規職員の1人が総務課に申告し、市が事実確認していた。主事級職員はいずれも行為を認めており、非正規職員2人は既に退職している。
戎斉市長は「公務員としての倫理観と自覚を欠いた言語道断の行為。再発防止に向けて法令順守の徹底を図る」とコメントした。
関係法令について
パワハラ(パワー・ハラスメント)に関する関係法令は、以下の通りです。紹介するのは国家公務員関係ですが、各自治体にも類似した運用をするところが多いと思われます。
人事院規則10-16(パワー・ハラスメントの防止等)
(定義)
第二条 この規則において、「パワー・ハラスメント」とは、職務に関する優越的な関係を背景として行われる、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動であって、職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、職員の人格若しくは尊厳を害し、又は職員の勤務環境を害することとなるようなものをいう。
懲戒処分の指針について
第2 標準例
1 一般服務関係
(15) パワー・ハラスメント
ア パワー・ハラスメント(人事院規則10―16(パワー・ハラスメントの防止等)第2条に規定するパワー・ハラスメントをいう。以下同じ。)を行ったことにより、相手に著しい精神的又は身体的な苦痛を与えた職員は、停職、減給又は戒告とする。
イ パワー・ハラスメントを行ったことについて指導、注意等を受けたにもかかわらず、パワー・ハラスメントを繰り返した職員は、停職又は減給とする。
ウ パワー・ハラスメントを行ったことにより、相手を強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹(り)患させた職員は、免職、停職又は減給とする。
人事院規則10-16(パワー・ハラスメントの防止等)の運用について
(令和2年4月1日職職―141)
第2条関係
1 この条の「職務に関する優越的な関係を背景として行われる」言動とは、当該言動を受ける職員が当該言動の行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものをいう。典型的なものとして、次に掲げるものが挙げられる。
一 職務上の地位が上位の職員による言動
二 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な状況下で行われるもの
三 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
2 この条の「業務上必要かつ相当な範囲を超える」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに業務上必要性がない又はその態様が相当でないものをいい、例えば、次に掲げるものが含まれる。なお、このような言動に該当するか否かは、具体的な状況(言動の目的、当該言動を受けた職員の問題行動の有無並びにその内容及び程度その他当該言動が行われた経緯及びその状況、業務の内容及び性質、当該言動の態様、頻度及び継続性、職員の属性及び心身の状況、当該言動の行為者との関係性等)を踏まえて総合的に判断するものとする。
一 明らかに業務上必要性がない言動
二 業務の目的を大きく逸脱した言動
三 業務の目的を達成するための手段として不適当な言動
四 当該行為の回数・時間、当該言動の行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
弁護活動
ニュースの事例については、正規職員と非正規職員という点で優越的な関係があるとされた可能性が高いです。また、3カ月程度にわたってあいさつを無視する、というところなどについて、業務上必要がない、回数等について態様が社会通念に照らして許容される範囲を超えたとされる可能性が高いです。ただし、何をもって大声で、何をもって注意なのかというところは詳しくわかりませんし、懲戒の対象となった人の言い分も詳しくはわかりません。
また、パワハラが成立するとしても、懲戒処分が適切かどうかという問題があります。パワハラの期間が短かったり、職務への影響が大きくなかったなど懲戒対象者に有利な事情があるにもかかわらず重い懲戒処分が下されようとしているのであれば、これに反論して適切な処分に持って行く必要があります。既に不当な懲戒処分がされたのであれば、これを取消す必要があります。
ただし、パワハラなどで懲戒になりやすくなっているのはおそらくですが事実でしょうし、メディアやSNS等の影響もあるからなのかパワハラであるとして関係部署に報告を行うハードルも低くなっていることは言えるでしょう。
心配になっていることがある方や、実際に懲戒処分がされるかされないかが問題になってしまっている方は、一度弁護士への相談をされた方がよいかも知れません。相手方の言っていることが事実無根なのか、それとも相談者様のご認識が歪んでしまっているのかをはっきりさせることができると思いますし、事実無根であればそれに沿った供述が出来るようにし、場合によっては証拠収集なども出来る可能性があります。
まとめ
このように、普通に仕事をしていると思っていても、思わぬところについてパワハラだと指摘されるリスクが出てきます。実際にこの記事をお読みの方には、仕事の人間関係でお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合に、どう動いていくのか、何をどう主張するのか、弁護士と一緒に考えていくことで、良い結果が得られるかもしれません。文字数の都合で省略した内容についても、実際に相談に来ていただければご説明できます。
パワハラの関係でお悩みの公務員の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
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自衛隊内でのセクハラ、役所内でのパワハラなど、公務員のハラスメントが問題となっています。このようなハラスメントは懲戒処分の対象になりますし、悪質なものは刑事事件となってしまいます。ここでは、公務員がハラスメントをした場合どうなるかについて解説します。
ハラスメントについて
ハラスメントは人間の尊厳を侵害する行為を指しますが、代表的なものはパワーハラスメント(パワハラ)とセクシャルハラスメント(セクハラ)です。
パワハラとは、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業関係が害されるものであり、①~③までの要素のすべてを満たすものをいいます。①優越的な関係とは、上司や部下という関係が一般的ですが、部下であっても代替できない資格・技能を有していたり、多数の部下が共同して業務に支障が出るようにする場合も、優越的な関係を背景としたといえます。②については、厳しい叱責であっても、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません。これを越えた、業務とは無関係な話や、殊更に他の職員のいる前でさらしものにしたり、人格攻撃に至れば、業務上必要かつ相当な範囲を超えたとされます。③については、①や②該当する言動が行われれば、その対象となった者の心身に不調をきたしますし、職場内も対象になった者に不当な対応をする雰囲気になったりするため、該当することになるでしょう。
セクハラとは、「他の者(職員以外も含む)を不快にさせる職場における性的な言動」又は「職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動」をいいます。「性的な言動」とは、①性的な関心や欲求に基づくものをいい、②性別により役割を分担すべきとする意識に基づく言動、③性的指向や性自認に関する偏見に基づく言動も含まれます。性的な内容の発言や性的な行動のことをいいます。性的な関心や欲求に基づくものの具体例としては、性的な事実関係を尋ねることや性的な内容のうわさを流すこと、性的な冗談やからかいのほか、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すこと、不同意性交や不同意わいせつ行為、性的な関係を強要することや、必要なく身体に触れること、わいせつ図画を配布・掲示すること等があります。職員間においては、場所・時間の限定はなく、「職員以外の者」との関係では「職場・勤務時間内(超過勤務時間も含む)」に限られますが、「職場」とは「職務に従事する場所」をいい、庁舎内に限らず出張先等も該当します。
懲戒処分
公務員がその職務に関してパワハラやセクハラをすると、非違行為をしたとして、重い懲戒処分を受けることになります。
国家公務員については、「防止リーフレット」や「義務違反防止ハンドブック」に、ハラスメントの防止や懲戒処分の指針について記載されています。また、人事院の「懲戒処分の指針」にも、ハラスメントをした場合の懲戒処分について定められています。
人事院の「懲戒処分の指針」によると、「1 一般服務関係」において、「 (14)セクシュアル・ハラスメント(他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動)」の「ア 暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし、又は職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつな行為をした職員」は、免職又は停職となります。「イ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した」職員は、停職又は減給となります。この場合においてわいせつな言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したことにより相手が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職又は停職とより重い処分となります。「ウ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った」職員は、減給又は戒告となります。
「(15)パワー・ハラスメント」の「ア 著しい精神的又は身体的な苦痛を与えたもの」は停職・減給・戒告の対象となります。「イ 指導、注意等を受けたにもかかわらず、繰り返したもの」は戒告では済まされず、停職又は減給とより重くなります。「ウ 強度の心的ストレスの重責による精神疾患に罹患させたもの」は免職・停職・減給の対象となり、もっとも重い懲戒免職もありえます。
これらの事案について処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断するものとしています。
犯罪・刑事責任
パワハラやセクハラに含まれる行為であっても、その態様や状況によって様々なものがあり、行政庁内の懲戒処分にとどまらず、民事責任、さらには刑事責任を負う行為もあります。
相手に暴行したり怪我を負わせた場合、暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)に問われる可能性があります。殴るなどの有形力の行使によって怪我をさせただけでなく、強いストレスを与えて相手を精神疾患に罹患させた場合も、傷害罪になりえます。個室に数名しかいない状況で叱責するようなものではなく、大勢の人がいる場所で侮辱したり人格を否定するような罵倒をすれば、侮辱罪(刑法231条)や名誉毀損罪(230条)が成立する可能性があります。
セクハラについても態様によっては、不同意性交等(刑法第177条第1項)や不同意わいせつ(刑法第176条第1項)に該当します。刑法第176条第1項の「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」にさせる事由として挙げられている「八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。」は、まさに職場での上下関係を利用したハラスメントです。その他、わいせつな図画の配布がわいせつ物頒布等罪(刑法第175条)に該当する可能性があります。
また、懲戒処分において、「これらの事案について処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断する」と書きましたが、刑事事件として処理される場合、さらに懲戒処分も重くなる可能性があります。上述の人事院の「懲戒処分の指針」では「3 公務外非行関係」で「(3)傷害 人の身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。」と定めていますが、ハラスメントにより人を傷害させたといえるときは、これと同等以上の処分を受けることにもなります。
なお、国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)が、起訴される前に懲戒処分を下されることもあります。
公務員のパワハラについては、次の記事もご覧ください。
まとめ
このように、公務員がハラスメントを起こした場合、懲戒処分や刑罰など多くの不利益が科される可能性があります。ご自身の言動がハラスメントに当たるかお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
公務員のパワハラと犯罪-公務員がパワハラを起こした場合の懲戒処分や刑罰をはじめとしたその他の処分について解説

自衛隊内でのパワハラなど、公務員のハラスメントが問題となっています。このようなパワハラは懲戒処分の対象になりますし、悪質なものは刑事事件となってしまいます。ここでは、公務員がハラスメントをした場合どうなるかについて解説します。
パワハラとは
パワーハラスメント(パワハラ)とは、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業関係が害されるものであり、①~③までの要素のすべてを満たすものをいいます。①優越的な関係とは、上司や部下という関係が一般的ですが、部下であっても代替できない資格・技能を有していたり、多数の部下が共同して業務に支障が出るようにする場合も、優越的な関係を背景としたといえます。②については、厳しい叱責であっても、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません。これを越えた、業務とは無関係な話や、殊更に他の職員のいる前でさらしものにしたり、人格攻撃に至れば、業務上必要かつ相当な範囲を超えたとされます。③については、①や②に該当する言動が行われれば、その対象となった者の心身に不調をきたしますし、職場内も対象になった者に不当な対応をする雰囲気になったりするため、該当することになるでしょう。
懲戒処分
公務員がその職務に関してパワハラをすると、非違行為をしたとして、重い懲戒処分を受けることになります。
国家公務員については、「人事院ハラスメント防止リーフレット」や「義務違反防止ハンドブック」に、ハラスメントの防止や懲戒処分の指針について記載されています。また、人事院の懲戒処分の指針にも、パワハラなどをした場合の懲戒処分について定められています。
人事院の懲戒処分の指針によると、「1 一般服務関係」において、「(15)パワー・ハラスメント」の「ア 著しい精神的又は身体的な苦痛を与えたもの」は停職・減給・戒告の対象となります。「イ 指導、注意等を受けたにもかかわらず、繰り返したもの」は戒告では済まされず、停職又は減給とより重くなります。「ウ 強度の心的ストレスの重責による精神疾患に罹患させたもの」は免職・停職・減給の対象となり、もっとも重い懲戒免職もありえます。これらの事案について処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断するものとしています。
参考
人事院ハラスメント防止リーフレット
「義務違反防止ハンドブック」
懲戒処分の指針について
犯罪・刑事責任
パワハラに含まれる行為であっても、その態様や状況によって様々なものがあり、行政庁内の懲戒処分にとどまらず、民事責任、さらには刑事責任を負う行為もあります。
相手に暴行したり怪我を負わせた場合、暴行罪(刑法第208条)や傷害罪(刑法第204条)に問われる可能性があります。殴るなどの有形力の行使によって怪我をさせただけでなく、強いストレスを与えて相手を精神疾患に罹患させた場合も、傷害罪になりえます。個室に数名しかいない状況で叱責するようなものではなく、大勢の人がいる場所で侮辱したり人格を否定するような罵倒をすれば、侮辱罪(刑法第231条)や名誉毀損罪(刑法第230条)が成立する可能性があります。
また、懲戒処分において、「これらの事案について処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断する」と書きましたが、刑事事件として処理される場合、さらに懲戒処分も重くなる可能性があります。上述の人事院の懲戒処分の指針では「3 公務外非行関係」で「(3)傷害 人の身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。」と定めていますが、パワハラで人を傷害させたといえるときは、これと同等以上の処分を受けることにもなります。
なお、国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)が、起訴される前に懲戒処分を下されることもあります。
公務員のパワハラについては、次の記事もご覧ください。
まとめ
このように、公務員がパワハラを起こした場合、懲戒処分や刑罰など多くの不利益が科される可能性があります。ご自身の言動がパワハラに当たるかお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
公務員とハラスメント
パワハラやセクハラへの対処はあらゆる組織・企業で喫緊の課題となっています。公務員は国民・市民の模範となる立場であり、ハラスメント対策は一層重要となっています。近年は自衛隊内でのセクハラなど、公務員組織内でも大きな問題となっています。ハラスメントもその内容によっては、犯罪となりえます。
ここでは、公務員とハラスメントについて説明します。
パワハラ
パワーハラスメント(パワハラ)とは、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業関係が害されるものであり、①~③までの要素のすべてを満たすものをいいます。客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません。
仕事でミスをした部下を指導する場合であっても、殊更に他の職員のいる前でさらしものにしたり、人格を否定するような罵倒をすれば、パワハラに該当する可能性があります。
パワハラに含まれる行為であっても、その態様や状況によって様々なものがあり、不適切な行為から、民事責任を負う行為、さらには刑事責任を負う行為もあります。相手に暴行したり怪我を負わせた場合、暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)に問われる可能性があります。殴るなどの有形力の行使によって怪我をさせただけでなく、強いストレスを与えて相手を精神疾患に罹患させた場合も、傷害罪になりえます。
個室に数名しかいない状況で叱責するようなものではなく、大勢の人がいる場所で侮辱したり人格を否定するような罵倒をすれば、侮辱罪(刑法231条)や名誉毀損罪(230条)が成立する可能性があります。
セクハラ
セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、職場において行われる、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されることをいいます。異性間に限らず同性間でもセクハラになりえます。性的な言葉を投げかけたり、執拗に食事に誘ってきたり、相手の胸や尻などセンシティブな部位に触る等の行為が該当します。
セクハラもパワハラと同様に、態様や状況によっては犯罪になり得ます。セクハラの中でも悪質なものは、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪に該当する行為でしょう。
令和5年7月13日より改正刑法が施行され、強制わいせつ罪は不同意わいせつ罪(刑法176条)に、強制性交等罪は不同意性交等罪(刑法177条)に改められました。この改正により、暴行・脅迫による場合だけでなく、不同意を示せないような状況を強いられてわいせつ行為や性交等をされた被害者も保護できるようになりました。
不同意わいせつ罪、不同意性交等罪は、次に掲げる行為や事由により、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、」わいせつな行為や性交等をした場合に成立します。
①暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
②心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
③アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
④睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
⑤同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
⑥予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
⑦虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
⑧経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
セクハラの場合、特に⑧の「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。」がよく見られます。例えば、自分の要求に従わなければ昇進等で不利益が及ぶことを示唆して性交等に及ぶ場合です。その他、③の「アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること」としては、お酒を飲んで昏睡にまでは至らずとも酩酊状態で同意しない意思を表明することが困難な状況に乗じて性交等をする場合が考えられます。⑥の「予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること」としては、事前に告げていたところとは違う場所に連れていって性交する場合などが考えられます。
不同意性交等罪は5年以上の懲役、不同意わいせつ罪は6月以上10年以下の懲役に処されます。
刑事事件化した場合
公務員の場合は、刑事事件として起訴されると、強制的に休職させられることがあります(地方公務員法第28条第2項第2号、国家公務員法第79条第2号)。休職中は仕事ができませんし、給与は支給されません(国家公務員法第80条第4項参照)。
そして、裁判の結果、有罪の判決を言い渡され、禁錮以上の刑に処されると、失職してしまいます(地方公務員法第28条第4項・第16条第1号、国家公務員法第条第76条・第38条第1号)。
懲戒処分
公務員がその職務に関してハラスメントをすると、非違行為をしたとして、重い懲戒処分を受けることになります。
国家公務員の服務の基本的な事項が載せられています。「義務違反防止ハンドブック」には、懲戒処分の指針についての記載も載せられています。
この指針によると、「1 一般服務関係」において、「(14)セクシュアル・ハラスメント」の「ア 強制わいせつ、上司等の影響力利用による性的関係・わいせつな行為」は免職または停職という重い懲戒処分が定められています。また、「ウ 意に反することを認識の上でのわいせつな言辞等の性的な言動」は減給又は戒告になりますが、「イ 意に反することを認識の上でのわいせつな言辞等の性的な言動の繰り返し」は停職又は減給という比較的重い処分ですし、その中でも「執拗な繰り返しにより強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患させたもの」は免職または停職という重い懲戒処分となります。
また、「(15)パワー・ハラスメント」の「ア 著しい精神的又は身体的な苦痛を与えたもの」は停職・減給・戒告の対象となりますが、「イ 指導、注意等を受けたにもかかわらず、繰り返したもの」は戒告では済まされず、停職又は減給とより重くなります。「ウ 強度の心的ストレスの重責による精神疾患に罹患させたもの」は免職・停職・減給の対象となり、もっとも重い懲戒免職もありえます。
なお、国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)が、起訴される前に懲戒処分を下されることもあります。
参考
人事院ハラスメント防止リーフレット
ハラスメントを起こしてしまったら
ハラスメントが発覚すれば、調査を受けることになり、内容によっては懲戒処分を受けることになります。
被害者に対しては真摯に謝罪し償いをするべきでしょう。不法行為とみなされるほどの態様であれば被害者に損害賠償請求権が発生するため、当事者同士で話し合って謝罪し弁償をして解決する示談(和解)はより重要となります。刑事事件となった場合でも、被害者と示談が成立すれば、起訴猶予となる可能性が高まります。
示談については、加害者本人が被害者と交渉しても被害者の精神的負担が大きく交渉を拒絶されることも多いため、円滑な交渉のために弁護士に依頼するのが良いでしょう。その他にも、人事院の調査や警察・検察の捜査などに適切に対応するためにも、弁護士の援助が重要になります。
まとめ
このように、公務員のハラスメントは重い懲戒処分となる可能性が高く、刑罰を科される可能性があり、適切な対応が必要となります。このような事態になったときは、なるべく早く、公務員のハラスメント事件に精通した弁護士に相談するのが良いでしょう。
