Posts Tagged ‘収賄’
公務員と贈答品-公務員の贈答品の受取りが倫理規定等に抵触するかどうかについて解説

現在公務員として在職している方であれば、仕事に関係する人からの贈答品の受取り等(お菓子、お酒、あるいは食事をもてなされることなど)については、厳しい対応がなされることを理解されていると思います。比較的人口の多い自治体などの公務員であれば、そもそも仕事の関係者などから贈答品を贈る等と言う話自体が出ないこともあるでしょう。
しかし、比較的人口の少ない自治体の公務員ですとか、国家公務員でも比較的人口の少ない地域では、贈答品を贈るような話が出るかもしれませんし、状況によっては断る理由に困ることもあるかも知れません。
倫理規定に絡めた説明と、懲戒処分が問題になったときの対処法を説明したいと思います。
関係法令について
関係法令は、以下の通りです。紹介するのは国家公務員倫理規定ですが、各自治体にも類似した規程が設けられています。
第三条
第1項 職員は、次に掲げる行為を行ってはならない。
一 利害関係者から金銭、物品又は不動産の贈与(せん別、祝儀、香典又は供花その他これらに類するものとしてされるものを含む。)を受けること。
二 利害関係者から金銭の貸付け(業として行われる金銭の貸付けにあっては、無利子のもの又は利子の利率が著しく低いものに限る。)を受けること。
三 利害関係者から又は利害関係者の負担により、無償で物品又は不動産の貸付けを受けること。
四 利害関係者から又は利害関係者の負担により、無償で役務の提供を受けること。
五 利害関係者から未公開株式(金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されておらず、かつ、同法第六十七条の十一第一項の店頭売買有価証券登録原簿に登録されていない株式をいう。)を譲り受けること。
六 利害関係者から供応接待を受けること。
七 利害関係者と共に遊技又はゴルフをすること。
八 利害関係者と共に旅行(公務のための旅行を除く。)をすること。
九利害関係者をして、第三者に対し前各号に掲げる行為をさせること。
「利害関係者」とは、「許認可等」を受けて行う事務をする個人・会社、受けようとする個人・会社などを言います(国家公務員倫理規程第2条第1項各号)。
ただし、国家公務員倫理規程第3条第2項のように、利害関係者が相手であっても出来る行為が規定されています。
第三条
第2項 前項の規定にかかわらず、職員は、次に掲げる行為を行うことができる。
一 利害関係者から宣伝用物品又は記念品であって広く一般に配布するためのものの贈与を受けること。
二 多数の者が出席する立食パーティー(飲食物が提供される会合であって立食形式で行われるものをいう。以下同じ。)において、利害関係者から記念品の贈与を受けること。
三 職務として利害関係者を訪問した際に、当該利害関係者から提供される物品を使用すること。
四 職務として利害関係者を訪問した際に、当該利害関係者から提供される自動車(当該利害関係者がその業務等において日常的に利用しているものに限る。)を利用すること(当該利害関係者の事務所等の周囲の交通事情その他の事情から当該自動車の利用が相当と認められる場合に限る。)。
五 職務として出席した会議その他の会合において、利害関係者から茶菓の提供を受けること。
六 多数の者が出席する立食パーティーにおいて、利害関係者から飲食物の提供を受けること。
七 職務として出席した会議において、利害関係者から簡素な飲食物の提供を受けること。
ごく簡素なもの、当該職員に限らずに提供されるものが許されていると考えてよいでしょう。
更なる例外規定として、
第四条
第1項 職員は、私的な関係(職員としての身分にかかわらない関係をいう。以下同じ。)がある者であって、利害関係者に該当するものとの間においては、職務上の利害関係の状況、私的な関係の経緯及び現在の状況並びにその行おうとする行為の態様等にかんがみ、公正な職務の執行に対する国民の疑惑や不信を招くおそれがないと認められる場合に限り、前条第一項の規定にかかわらず、同項各号(第九号を除く。)に掲げる行為を行うことができる。
公務員としての職務以外の経緯での関係がある相手方について、例外的に倫理規定違反としない趣旨になります。
弁護活動
以上のように、倫理規定違反にあたるかどうかは、受け取った物や便益の内容、受け取った状況、受け取った相手方との関係性によって決定されてくると言えます。贈答品に関することが問題になった時点で職場に居づらい状態となり、結果として退職を余儀なくされる可能性はありますが、最悪の場合退職金も無くなるなど、懲戒処分が行われることによるデメリットは大きいと言えます。
贈答品の受取り等で問題になった際は、そもそも受取りの事実があるのか、何を受け取ったのか、どういう状況で受け取ったのか、相手方とどういう関係であったのか、事前の相談(国家公務員倫理規程第4条第2項 職員は、前項の公正な職務の執行に対する国民の疑惑や不信を招くおそれがないかどうかを判断することができない場合においては、倫理監督官(略)に相談し、その指示に従うものとする。)を行ったのかなど、聴聞などで主張していくことで、懲戒処分を防ぐことができる可能性があります。
まとめ
このように、賄賂にまで当たらなかったとしても、物の受取りだけで公務員としての職を追われるリスクが出てきます。実際にこの記事をお読みの方には、仕事の関係者から物を受け取ってしまってお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合に、どう動いていくのか、何をどう主張するのか、弁護士と一緒に考えていくことで、良い結果が得られるかもしれません。文字数の都合で省略した内容についても、実際に相談に来ていただければご説明できます。
贈答品の関係でお悩みの公務員の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
こちらの記事もご覧ください
賄賂(わいろ)って何?ー公務員の賄賂罪について解説

刑法197条1項前段は、「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。」としています(単純収賄罪)。
このブログでは、刑法でいう賄賂とは、どういうものを指すのか解説します。
【賄賂の目的物】
賄賂とは、公務員の職務行為に対する対価としての不正な報酬をいいます。
賄賂の典型的な目的物としては、金銭が真っ先に思いつくでしょうし、ニュースでは職務行為の対価として物品を受取ったという収賄罪の事案もよく見かけます。
それでは、形が無いものについてはどうなのでしょうか。
判例によれば、「賄賂は、財物のみに限らず、又有形たると無形たるとを問はず、苟も人の需用若くは慾望を充たすに足るべき一切の利益を包含するものとす」とされています。
判例が賄賂になるとしてきた利益には、債務の肩代わり、芸者の花代などの饗応接待、ゴルフクラブの会員権、値上がり確実な未公開株式を一般人では買えないような公開価格で取得できる利益、思うように土地を売却できない状況で土地を時価相当額で買取ってもらった場合の換金の利益といった財産的利益のほか、就職のあっせんの約束、異性間の情交などがあります。
【社交儀礼の贈与は賄賂にあたるのか】
日本には、お中元、お歳暮などの季節の贈り物、手土産、餞別、お祝いといった様々な呼び方での贈答が文化としてあります。
このような社交儀礼としての贈与は、賄賂にあたるのでしょうか。
例えば、贈与が多少公務員の職務と関連していても、受取る側の公務員が、送った側の人との間で元々私的な交友関係があり、主にそのような関係に基づきされた贈与であれば、賄賂にはあたりません。
問題となるのは、職務行為との対価関係はあるけれど、贈り物の金額、価値といった程度が社交儀礼の範囲にとどまる場合です。
判例は、社交上の儀礼程度の中元・歳暮といった贈物であっても、職務に関して収受される以上、収賄罪が成立するとし、基本的には、職務行為との対価関係さえあれば、金額の多寡を問わず社交儀礼程度の贈与も賄賂にあたるとしてきました。
なお、公立中学校の教諭が新しく担任となった生徒の親から、5000円分の贈答用小切手を受取った事例で、最高裁は、その親が元々季節の贈答や学年初めの挨拶を慣行としていたことから、この小切手の贈与は父兄からの慣行的儀礼として行われたと考える余地があり、担任教諭としての教育指導という職務行為そのものに関する対価的給付と断ずることはできないとし、収賄罪の成立を否定していますが、この判例は、贈り物の金額が社交儀礼の範囲にとどまるからということだけでなく、父兄の慣行などの諸事情を考慮し、職務行為に対する対価であることを否定したものと思われます。
【政治献金と賄賂】
一般的に政治献金と言われる、政治家個人や、後援会・政党といった政治団体への寄付は、時に賄賂との境界が問題となります。
金品を受け取った側が、「政治献金として受取ったので、賄賂ではない」と主張することはよくあります。
政治献金が賄賂にあたるか否かの問題は、寄付の目的・趣旨、金額、人的関係等の諸事情を考慮した上で、結局は、政治家の職務との対価関係があるか否かがポイントとなります。
判例は、献金者の利益にかなう政治活動を一般的に期待して行われるだけなら賄賂にはあたらないとする一方、政治家の職務権限の行使に関して具体的な利益を期待する趣旨なら賄賂にあたるとしています。
なお、政治献金については、政治資金規正法により、寄附者が個人か企業などの団体か、寄附先が政治家個人か政党等の政治団体かに応じた規制や、届出の義務などの規制がされており、この点からも注意が必要です。
【収賄罪関係でご心配の際は】
他人から受取る金品そのほかの利益が賄賂にあたるかどうかは、時に判断が難しいことがあります。
賄賂を受取ってしまったのではないかとご心配の方、賄賂とは思わず受取ったものが賄賂にあたるとして収賄の容疑をかけられた方は、専門的見地からのアドバイスができる弁護士にご相談ください。
こちらの記事もご覧ください
日本の公務員に関する贈収賄罪についてー贈収賄罪の各種類型について解説

公務員犯罪の代表格として,贈収賄罪があります。
ニュースでも大きく報道されております。
今回は,日本の公務員に関する贈収賄罪について解説いたします。
収賄罪(刑法第197条第1項前段)
公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、収賄罪が成立します。
5年以下の懲役となります。
受託収賄罪(刑法第197条第1項後段)
公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときにおいて,請託を受けたときは,受託収賄罪が成立します。
請託とは,公務員がその職務に関する事項について依頼を受けてこれを承諾することをいいます。
7年以下の懲役となります。
事前収賄罪(刑法第197条第2項)
公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、事前収賄罪が成立します。
5年以下の懲役となります。
第三者供賄罪(刑法第197条の2)
公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは,第三者供賄罪が成立します。
5年以下の懲役となります。
加重収賄罪(刑法第197条の3第1項・第2項)
公務員が収賄罪・受託収賄罪・事前収賄罪・第三者供賄罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、加重収賄罪が成立します。
公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、加重収賄罪が成立します。
1年以上の有期懲役となります。
事後収賄罪(刑法第197条の3第3項)
公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、事後収賄罪が成立します。
5年以下の懲役となります。
あっせん収賄罪(刑法第197条の4)
公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、あっせん収賄罪が成立します。
5年以下の懲役となります。
没収及び追徴(刑法第197条の5)
犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収されます。
その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴されます。
贈賄罪(刑法第198条)
上記の各種収賄罪に関する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をしたら、贈賄罪となります。
3年以下の懲役又は250万円以下の罰金となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,贈収賄罪を含めた公務員犯罪事件をこれまで多数扱ってきました。
贈収賄事件に関わってしまった方,逮捕されてしまった方のご家族は,ぜひ当事務所まで相談・依頼をしてください。
初回法律相談は無料です。
有料の初回接見についても,迅速に対応させていただきます。
特に,贈収賄を行っていないにも関わらず,警察から犯行を疑われている場合は,ぜひ早めに相談・依頼をしてください。
犯行を否定していても,警察は取調べにおいて圧力や誘導で認めさせようとしてきます。
そんな言い分は通じない,証拠はもうそろっている,反省していないのか,罪が重くなるぞ,勤務先や家族に対しても徹底的に調べ上げることになるぞ,等と言って脅してきます。
プロである警察に対して,素人の一般人が対抗するのは非常に厳しく難しいです。
当事務所は刑事弁護に精通した弁護士がそろっております。
弁護士によるサポートを受けながら,毅然として対抗していかなければなりません。
まずは無料の法律相談を早めに受けてみてください。
懇切丁寧に対応させていただきます。
こちらの記事もご覧ください
加重収賄罪と弁護活動-加重収賄罪の意味、加重収賄罪が疑われたときの弁護活動、懲戒処分
東京オリンピックの汚職事件-組織委員会理事がみなし公務員として収賄罪で起訴された事件について解説
東京オリンピックの汚職事件-組織委員会理事が収賄罪で起訴された事件で問題となる賄賂について解説
東京オリンピックの汚職事件-組織委員会理事が収賄罪で起訴された事件で問題となる賄賂について解説

東京オリンピックのテスト大会の受注企業が談合したとして多くの関係者が逮捕・起訴された事件や、IOC委員への贈答品疑惑など、東京オリンピックをめぐる汚職事件はまだ終わりそうにありません。日本において最初に捜査が始まったのは組織委理事の関与する贈収賄で、組織委理事や大企業の幹部が逮捕され、起訴されました。また、元総理大臣をはじめ多くの人々が事情聴取を受けたとされています。その中では様々な人や組織から利益が提供されています。ここでは、何が賄賂に当たるかについて解説します。
「賄賂」とは
刑法第197条以下に規定される「賄賂」は、公務員の職務行為と対価関係にある利益を言います。この対価関係は、職務行為に対するものであれば足り、個々の職務行為と賄賂との間に対価関係のあることは必要とされていません(昭和33年9月30日最高裁第三小法廷判決)。職務に関するものであれば、交付時期や利益の多寡にかかわらず、賄賂となります。
賄賂の内容は金銭に限られず、人の欲望や需要を満たす一切の利益が含まれます。判例では、芸妓の演芸や、酒食の饗応、異性間の情交、公私の職務等の有利な地位の保証、株式の取得の利益、など、様々なものが賄賂と認定されています。このような利益を公務員に提供すれば公務員の職務の公正は害され、あるいは公務員の職務の公正に対する社会の信頼は損なわれてしまうため、処罰する必要があります。
職務行為との対価
名目が委託費用など別のものであっても、公務員の職務行為と対価関係にある利益であれば賄賂に該当します。
東京オリンピックの贈収賄事件についても、既に元理事に賄賂を供与したとして起訴されていた者についての判決(東京地裁令和5年7月12日判決)によれば、元理事が代表取締役を務める会社との間のコンサルティング契約に基づき毎月のコンサルティングフィーを支払う形で行われたことについて、賄賂に該当することを前提に、被告人が違法性の認識を有していたかについて検討しています。
一方で、賄賂は職務行為との対価である必要がありますので、職務とは無関係な利益の提供は賄賂には当たりません。参考人として聴取を受けた元総理大臣は贈賄で有罪判決を受けた企業幹部の属する会社から現金の提供を受けたという報道がありましたが、これは病気に対する見舞金の可能性もあると言われていました。
また、単なる社交儀礼上の贈答は「賄賂」にあたりません。
賄賂に当たるか
「賄賂」に該当することも犯罪を構成する事実ですので、検察官が証明する必要があります。証明の程度は、合理的な疑いを超えるものでなければなりません。職務と関係ないものである可能性や社交儀礼の趣旨で贈られた可能性があれば、有罪とすることはできません。
先ほど、職務に関するものであれば、交付時期や利益の多寡にかかわらず、賄賂となると書きましたが、そもそも職務に関するかどうかを判断するにあたって、交付時期や利益の多寡にも注目せざるを得ません。その他、当事者の従前の関係や他にそのような利益を提供される理由があったといえるかどうかなどが考慮されます。
東京オリンピック組織委員会元理事は、コンサル契約に基づいてコンサル料が支払われたもので賄賂ではないと主張しているそうですが、これまでの収支はどうであったか、コンサル依頼があったとしてもそれ自体職務に関係するものか、依頼があった後の活動実態はどうだったか、などを考慮して、賄賂かどうかが判断されるでしょう。
贈収賄事件についてはこちらの記事もご覧ください。
まとめ
このように、事件によっては自身が受け取ったものが「賄賂」となるのかが重大な問題となります。ご自身の行ったことが収賄にあたるかどうかお悩みの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
東京オリンピックの汚職事件-組織委員会理事がみなし公務員として収賄罪で起訴された事件について解説

東京オリンピックのテスト大会の受注企業が談合したとして多くの関係者が逮捕・起訴された事件や、IOC委員への贈答品疑惑など、東京オリンピックをめぐる汚職事件はまだ終わりそうにありません。日本において最初に捜査が始まったのは組織委理事の関与する贈収賄で、組織委理事や大企業の幹部が逮捕され、起訴されました。オリンピック組織委員会自体は民間団体とされていますが、ここでは、組織委理事の行為が収賄に問われている理由について解説します。
「公務員」に当たるか
刑法第197条第1項は、「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。」と定めています。
この「公務員」については、刑法第7条第1項に定められています。同条項では「この法律において『公務員』とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう。」と定められています。
「法令」には、法律や条例だけでなく、行政内部の通達や訓令も含まれます。
「公務に従事する」とは、職務権限の定めがある必要はなく、その公務に従事する資格が上記の「法令」に根拠を有し、これにより公務を行うことをいいます。
「公務」は必ずしも公権力の行使など強制力を行使するものに限られません。
「議員、委員、その他の職員」が刑法上の公務員に当たり、単に機械的、肉体的な業務に従事する者は含まれません。「議員」は国会議員や地方議会の議員、「委員」とは、国又は地方公共団体において任命、委嘱、選挙等により一定の事務を委任・嘱託される非常勤の者をいいます。「その他の職員」とは、議員、委員のほか、国又は地方公共団体の期間として公務に従事するすべての者をいいます。
刑法第7条にこのように定義されているほか、特別法では、その職務の性質を鑑みて、刑法やその他の罰則については公務員とみなす規定が設けられています。これを「みなし公務員規定」といいます。
オリンピックの組織委員会の役員や職員についても、次のように「みなし公務員規定」が定められています。
令和三年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法
(組織委員会の役員及び職員の地位)
第二十八条 組織委員会の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
この規定により、組織員会の理事も「法令により公務に従事する職員」すなわち公務員として扱われます。
刑法第7条やみなし公務員規定により「公務員」に当たる者が賄賂罪に該当する行為を行えば、この罪に問われます。
なお、報道によれば、起訴された元理事はみなし公務員だとは知らなかった旨供述していたとのことです。しかしながら、法律を知らなかったとしても、そのことによって罪を犯す意思がなかったとすることはできないと定められています(刑法第38条第1項)。犯罪の成立には故意が必要ですが、故意とは犯罪事実(構成要件該当事実)を認識・認容していたことをいいます。
自身が「みなし公務員」であるという犯罪事実を認識・認容していたといえるためには、自分がどのような職業についているかを認識・認容していたかが重要となります。
公共サービス改革法の公共サービスに従事していた者が「みなし公務員」として収賄の罪に問われた事件(神戸地裁令和元年7月5日判決)では、国家公務員倫理教本を教材とした講習が行われるなどしてみなし公務員となる実質的根拠となる事実を認識していたと認められるから、収賄罪の主体としての立場に関する故意に欠けることはないとされました。
東京オリンピックの贈収賄事件についても、既に元理事に賄賂を供与したとして起訴されていた者についての判決(東京地裁令和5年7月12日判決)によれば、「組織委員会が公益財団と認定され、多くの公的な資金や人員(公務員)が投入されていたことは周知の事実であり、被告人において、同大会に係る特別措置法のみなし公務員規定を知っていたか否かにかかわらず、組織委員会の理事が公的立場にあり、その職務に関して金銭の支払をすれば違法の評価を受けることは当然に認識し得たといえる。」とされています。
贈収賄事件についてはこちらの記事もご覧ください。
まとめ
このように、事件によっては自身が「みなし公務員」となるのか、故意があったといえるのかが重大な問題となります。ご自身の行ったことが収賄にあたるかどうかお悩みの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
加重収賄罪と弁護活動-加重収賄罪の意味、加重収賄罪が疑われたときの弁護活動、懲戒処分

【事例(フィクション)】
県職員として勤務する公務員のAさんは、所属部署の仕事を通じて親しくなった業者に、県の内部資料を横流しし、その謝礼として高級飲食店で接待を受けたという容疑で逮捕されました。
Aさんに前科前歴はありません。
【加重収賄罪とは】
公務員特有の犯罪として、加重収賄罪というものがあります。
公務員が、その職務上不正な行為をしたことに関し、賄賂を収受したときは、加重収賄罪として、1年以上の懲役に処されます(刑法197条の3第2項)。
事例の容疑でいうと、県の内部資料の横流しは県職員の職務上不正な行為ですし、その後謝礼として受けた高級飲食店での接待は賄賂にあたるので、Aさんがその後起訴されて有罪判決となれば、加重収賄罪の刑罰を受けることになります。
加重収賄罪以外の贈収賄事件や汚職事件についてはこちらをご覧ください。
汚職の罪
【弁護活動】
賄賂を受け取ったという犯罪には、賄賂を渡すという贈賄をした人も必ず存在し、両者間での口裏合わせその他の罪証隠滅行為を懸念し、裁判所が勾留決定をすることが多いです。
事案の性質上、被疑者の方の早期の身柄解放はなかなか難しいことが多いですが、起訴後の保釈請求等、弁護士としては身柄解放の努力をしていくこととなります。
また、逮捕勾留されやすく、身体拘束下で取調べがされることが多い犯罪であるからこそ、こまめに接見をして取調べ対応について適切なアドバイスをする弁護士の存在は必要不可欠です。
起訴された場合の公判活動については、被告人の方が加重収賄をしたことに間違いないのであれば、酌んでもらうべき情状を弁護士がしっかり主張し、執行猶予や減刑を目指します。
事例の場合であれば、横流しされた内部資料の重要性や、実際に県に生じた不利益の程度等にもよりますが、一般的には、事案の中で悪質ではない点、県への被害弁償の努力、失職等の社会的制裁を受けたこと、情状証人による監督の約束等の情状面をしっかり主張立証して、執行猶予を求める方針になろうかと思います。
一方、加重収賄罪にあたることを争う場合、例えば自分は内部資料の横流しをしていないとして無罪を主張する場合は、弁護士において証拠を精査し、関係者の証言の穴を突いたり、被告人にとって有利な事実を主張立証し、冤罪を阻止することを目指します。
【刑罰以外の処分等】
公務員の方は、起訴されると、休職をさせられることがあります(地方公務員法28条2項2号、国家公務員法79条2号)。
そして起訴され、有罪判決で禁錮以上の刑となれば、執行猶予が付いたとしても、失職することになります(地方公務員法28条4項・16条1号、国家公務員法76条・38条1号)。
事例の場合、加重収賄罪には懲役という禁固以上の刑しかないので、有罪判決なら失職となります。
また、公務員の方が犯罪にあたる行為をすると、刑事罰とは別に懲戒処分を受けることにもなります。
懲戒処分は、重い順に、免職、停職、減給、戒告と種類があります。
事例のような加重収賄罪にあたる行為をしてしまった場合は、懲戒免職は避けられないでしょう。
もっとも、冤罪の場合は、嫌疑不十分の不起訴や無罪判決を得られれば、懲戒免職を避けられる可能性があります(判断者が異なるので一概には言えませんが。)。
懲戒処分についてはこちらもご覧ください。
【おわりに】
加重収賄罪は、一般的に、国民・住民の公務員への信用を大きく損なう重大事件として扱われており、同罪の疑いをかけられた被疑者・被告人の方は、身体拘束、刑事罰、懲戒処分等のリスクは非常に大きいといえます。
こういったリスクを回避・軽減するためには、弁護士による適切なアドバイスや活動が必要です。
実際に加重収賄行為をしてしまった方も、冤罪の方も、できるだけ早めに弁護士に相談することをおすすめします。
汚職の罪
公務員は全体の奉仕者として、公共の利益のために職務を行うものであり、一般国民が持てないような職権を持ち、逮捕のように国民の権利利益に強制的に介入する公権力の行使などを行います。このような公務員がその職権を濫用すれば、公務の適正が害され、公務に対する国民の信頼も損なわれてしまいます。そのため、公務員が職権を濫用することに対しては、重い刑罰が科されます。
この記事では、公務員の汚職について解説します。
職権濫用罪
職権を濫用して国民の権利利益を侵害した場合、害悪が重く、公務の適正を害するため、職権乱用を処罰する規定が定められています。特に人の身体を強制的に拘束する権限を濫用した場合は、害悪が甚大であるため、より重く処罰されます。
公務員職権濫用
公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、公務員職権濫用罪が成立し、2年以下の懲役又は禁錮に処されます(刑法193条)。
「職権」とは公務員の一般的職務権限に属する行為を指します。「濫用」とは、この職権の行使に仮託して、実質的、具体的に違法・不当な行為をすることをいいます。
公務員職権濫用罪は2年以下の懲役に処すると定められており、3年以下の懲役に処される強要罪(刑法223条)より刑罰が軽くなっています。これは、公務の適正の確保という抽象的な利益を保護法益とするためです。
公務員職権濫用罪に該当する行為でも、暴行や、生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した場合は、強要罪のみが成立するとされています。強要罪の場合は、未遂罪も処罰されます(刑法223条3項)。
特別公務員職権濫用
裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、6月以上10年以下の懲役又は禁錮に処されます(刑法194条)。
本罪の主体は、裁判官、検察官、検察事務官、警察官、のほか、裁判所書記官などが該当します。
これらの公務員は刑事司法に関して職務上逮捕等により人を拘束する権限を有しています。このような職権を濫用することは害悪が甚大であるため、逮捕監禁罪(刑法220条。3月以上7年以下の懲役)よりも刑罰が重くなっています。
特別公務員暴行陵虐
裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、特別公務員暴行陵虐罪が成立し、7年以下の懲役又は禁錮に処されます(刑法195条1項)。法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、同様に処罰されます(刑法195条2項)。
1項の罪の主体も、特別公務員職権濫用罪と同じく、裁判官、検察官、検察事務官、警察官、裁判所書記官などが該当しますが、人を逮捕監禁する権限を有しない者も対象になります。
暴行とは暴行罪などと同じく身体に対する不法な有形力の行使をいいます。
陵辱とは辱める行為や精神的に苦痛を与える行為、加虐とは苦しめる行為や身体に対する直接の有形力の行使以外の肉体的な苦痛を加える行為などをいいます。わいせつ行為など、暴行以外の方法で精神的又は肉体的に苦痛を与える行為が該当します。
2項の「法令により拘禁された者」とは、逮捕や勾留されている者など、法令上の規定に基づいて公権力により拘禁されている者をいいます。このような者を「看取又は護送する者」が本罪の主体となります。
特別公務員職権濫用罪や特別公務員暴行陵虐罪を犯し、よって人を死傷させた場合は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断されます(刑法196条)。
傷害罪は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金(刑法204条)、傷害致死罪は3年以上の有期懲役(刑法205条)に処されます。
特別公務員職権濫用罪は6月以上10年以下と、短期については傷害罪より重いため、特別行員職権濫用致傷罪の場合は6月以上15年以下の刑が科されます。
その他の致傷罪は1月以上15年以下の懲役、致死罪は3年以上20年以下の懲役となります。
賄賂罪
公務員がその職務に関し賄賂を収受し、またはその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処されます(刑法197条1項)。
賄賂罪の保護法益は、「公務員の職務の公正とこれに対する社会一般の信頼」とされています(平成7年2月22日最高裁大法廷判決等)。公務員の職務は法令に則り、施策の必要性等を慎重に検討され、公正に行われなければなりません。このような公務員の職務を賄賂で歪められるのは許されないことです。また、公務員の職務が賄賂で左右できるものだと社会一般の人々に思われてしまうこと自体、社会一般の人々の公務員の職務への信頼を損なうものとなり、行政処分への不服従などをもたらしかねず、社会の根幹を揺るがすものとなります。そのため、賄賂罪は厳しく処罰されるのです。
収賄にあたって請託を受けた場合は、職務と賄賂との対価関係がより明白となり、職務の公正に対する社会の信頼を害する程度が高まるため、受託収賄罪が成立し、7年以下の懲役と刑が重くなります。
公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、またはその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合、事前収賄罪が成立し、5年以下の懲役に処されます(刑法197条2項)。
公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、またはその供与の要求若しくは約束をしたときは、第三者供賄罪が成立し、5年以下の懲役に処されます(刑法197条の2)。
公務員が単純収賄や受託収賄、事前収賄、第三者供賄の罪を犯し、その結果不正な行為をし、または相当の行為をしなかったときは、加重収賄罪が成立し、1年以上の有期懲役に処されます(刑法第197条の3第1項)。公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、もしくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、同様に処されます(刑法第197条の3第2項)。賄賂を受け取ったうえで不正な行為をしたり相当な行為をしなかったのですから、職務の公正を現実に害しており、職務の公正に対する社会の信頼を大きく害しているため、このように重い処罰となっています。
公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、またはその要求若しくは約束をしたときは、事後収賄罪が成立し、5年以下の懲役に処されます((刑法第197条の3第3項)。
公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、またはその要求若しくは約束をしたときは、あっせん収賄罪が成立し5年以下の懲役に処されます(刑法第197条の4)。
賄賂の没収
犯人や賄賂であることを認識している第三者が受け取った賄賂は没収します。費消されたり、接待など性質上没収できない場合は、その価額を金銭的に評価して没収します(刑法第197条の5)。これは賄賂を収受した者たちに不正な利益を残さないようにするためです。
おわりに
以上のように、公務員の汚職事件は重い刑罰を科される可能性が高いです。そのため、早期に弁護士に相談して対応を決めるべきです。
賄賂罪
東京オリンピックにおける贈収賄など、公務員の収賄事件は大変な問題とみられています。
ここでは、賄賂罪について説明します。
賄賂はなぜ許されないのか
賄賂罪の保護法益(刑罰を科すことで守ろうとする利益)は、「公務員の職務の公正とこれに対する社会一般の信頼」とされています(平成7年2月22日最高裁大法廷判決等)。公務員の職務は法令に則り、施策の必要性等を慎重に検討され、公正に行われなければなりません。このような公務員の職務を賄賂で歪められるのは許されないことです。また、公務員の職務が賄賂で左右できるものだと社会一般の人々に思われてしまうこと自体、社会一般の人々の公務員の職務への信頼を損なうものとなり、行政処分への不服従などをもたらしかねず、社会の根幹を揺るがすものとなります。そのため、賄賂罪は厳しく処罰されるのです。
「職務」にあたるか
上記の通り、賄賂罪の保護法益は「公務員の職務の公正とこれに対する社会一般の信頼」です。賄賂を受け取る際に特定の職務について依頼を受けたことや実際に公務員の職務が賄賂に影響されたかどうかは犯罪の成立を左右しません。「賄賂を受け取っても不正をしたわけではないから問題ない」というようなことはありません。これらの事情は、賄賂を受けるにあたって請託を受けた場合(受託収賄罪)や賄賂を受けとって実際に不正行為を行った場合(加重収賄罪)の成否に当たって考慮されます。これらの行為は、「公務員の職務の公正とこれに対する社会一般の信頼」を害する程度がより大きいため、単純収賄よりも重く処罰されます。
もっとも、賄賂罪の保護法益が「公務員の職務の公正とこれに対する社会一般の信頼」である以上、公務員の職務と無関係に公務員に利益を供与しただけでは賄賂罪は成立しません。
賄賂は公務員の「職務」「に関し」収受される必要があります。
賄賂罪の「職務」とは、公務員がその地位に伴い公務として取り扱うべき一切の職務を指します。当該公務員に独立の決裁権は必要ではなく、補助的な職務でも成立します。実際に行った行為が違法だからといって「職務」でなくなるわけでもありません。また、法令上公務員の一般的職務権限に属する行為であれば、具体的事情の下その行為を適法に行うことができたかどうかは問われません。また、具体的に担当する職務でなくとも、法令に定められた一般的職務権限内にあれば職務に当たります。現在その職務を担当していないからといって無関係とはいえません。また、法令に明記された職務だけでなく、これに当然に含まれあるいは付随する行為も「職務」に含まれます。
また、公務員の職務そのものではなくとも、職務に密接に関連する行為も賄賂罪の「職務」に含まれます。
「賄賂」にあたるか
賄賂罪の「賄賂」は職務行為と対価関係にある利益のことをいいます。金銭に限られず、人の欲望や需要を満たす一切の利益をいいます。職務行為との対価である必要がありますので、単なる社交儀礼上の贈答は「賄賂」にあたりません。
なお、賄賂を実際に受け取る「収受」だけでなく、賄賂の供与を求める「要求」をしたり、賄賂の申し込みを承諾する「約束」をした場合でも、収賄罪は成立します。
刑罰
単純収賄罪の刑罰は5年以下の懲役です。罰金刑がなく、重いものとなっています。
受託収賄
収賄にあたって請託を受けた場合は、7年以下の懲役と刑が重くなります。
「請託」とは、公務員がその職務に関する事項について依頼を受けてこれを承諾することを言います。
請託があった場合に刑罰が重くなるのは、一定の職務について依頼を受け承諾することで、職務と賄賂との対価関係がより明白となり、職務の公正に対する社会の信頼を害する程度が高まるからです。
事前収賄
公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、またはその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合、5年以下の懲役に処されます(刑法197条2項)。
公務員になる前に賄賂を収受等していて、公務員となってしまうと、やはり職務の公正及び職務の公正に対する社会の信頼を害しますので、現職の公務員が収賄した場合と同様に処罰されます。もっとも、ただ賄賂といえるものを収受等しただけでは、職務とのかかわりが薄いため、一定の職務について依頼を受け承諾する「請託を受け」た場合のみ処罰することとしています。
第三者供賄
公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、またはその供与の要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処されます(刑法197条の2)。
公務員自らが賄賂を受けるのに代えて第三者に賄賂を受けさせるような場合も、職務の公正及び職務の公正に対する社会の信頼を害するため、処罰されます。もっとも、公務員本人が賄賂を受けていないため、職務と賄賂の関連性が希薄になるため、請託を受けることが要件となっています。
無論、第三者が仲介役となっているだけで公務員本人が賄賂を受け取っているといえる場合は単純収賄や受託収賄が成立します。また、公務員が保証人となっている主債務者の金銭債務の立替弁済をした場合など、公務員自身に利益をもたらしているといえる場合は第三者供賄ではなく単純収賄や受託収賄が成立します。
加重収賄
公務員が単純収賄や受託収賄、事前収賄、第三者供賄の罪を犯し、その結果不正な行為をし、または相当の行為をしなかったときは、1年以上の有期懲役に処されます(刑法第197条の3第1項)。公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、もしくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、同様に処されます(刑法第197条の3第2項)。有期懲役は20年以下ですので(刑法第12条第1項)、1年以上20年以下と非常に重い刑罰となっています。賄賂を受け取ったうえで不正な行為をしたり相当な行為をしなかったのですから、職務の公正を現実に害しており、職務の公正に対する社会の信頼を大きく害しているため、このように重い処罰となっています。
この「不正な行為をし、または相当の行為をしなかった」とは、積極的若しくは消極的行為によりその職務に反する一切の行為を指します。不正な行為によって国等に損害を与える必要はありません。公務員の自由裁量の範囲内であっても不当な処分をした場合も該当するとされています。
事後収賄
公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、またはその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処されます((刑法第197条の3第3項))。在職中に請託を受けて不正を行い、退職してからその見返りとして賄賂を収受等すれば、やはり職務の公正や職務の公正に対する社会の信頼を害するため、処罰の対象となります。退職してから賄賂を収受等するため、在職中の職務と賄賂との対価関係が希薄であることから、在職中の請託や不正行為も要件となっています。なお、在職中に請託を受けて職務上不正な行為をするだけでなく、賄賂の要求や約束をし、退職後に受け取っていた場合、加重収賄罪も成立し、より重い加重収賄罪で処罰されます。
あっせん収賄
公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、またはその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処されます(刑法第197条の4)。
「あっせん」とは贈賄者と他の公務員との間に立って仲介の労をとることをいいます。このような、公務員が他の公務員の職に関しあっせんをして謝礼を受け取る「口利き」を処罰するために定められています。自身の職務に関することではないので、請託を受けて、職務上不正な行為をさせ又は相当な行為をさせないようあっせんする必要があります。
賄賂の没収
犯人や賄賂であることを認識している第三者が受け取った賄賂は没収します。費消されたり、接待など性質上没収できない場合は、その価額を金銭的に評価して没収します(刑法第197条の5)。
これは賄賂を収受した者たちに不正な利益を残さないようにするためです。
まとめ
収賄については厳しい処罰が予定され、また利益も没収されます。これは職務の公正とそれに対する社会の信頼を守るために定められています。
