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公務員と不同意わいせつ罪―不同意わいせつ事件で相談・依頼される公務員の方が増えております

法律改正の影響
昨年に強制わいせつ罪が不同意わいせつ罪に改正され、犯罪が成立しやすくなりました。
暴行・脅迫に限らず、被害者が同意しないと考えたり、その意思を示すのが困難な状態に乗じたと評価されれば、犯罪が成立するようになりました。
公務員という地位にあっても、軽い気持ちであったり、アルコールで酔っぱらった状態で、被害者に対してわいせつ行為をしてしまうケースが問題となってきます。
これまで以上に性犯罪に対する社会の態度が厳しいものになっているため、きちんとした対応が必要になります。
当事務所でも、不同意わいせつ事件を起こしてしまい、相談・依頼される公務員の方が増えております。
不同意わいせつ罪は罰金処分がないため、起訴されたら執行猶予でも失職することになります。
懲戒で免職・停職・減給・戒告になる可能性もあります。
不同意わいせつ罪について
刑法第176条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
*改正刑法の施行により禁錮刑と懲役刑が一本化されるまでは、懲役刑が処されます。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
不同意わいせつ罪は、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、」わいせつな行為をする犯罪です。
同意していないケースとして多数記載されておりますが、明確に同意している場合を除き、同意していないと評価されることになります。
相手が同意していると思った、と反論したとしても、明確に同意しているとの状況がなければ主張は認められません。
必要な活動
実際に相手が同意していない状況でわいせつ行為をしてしまったのであれば、被害者に対して示談交渉をする必要があります。
謝罪・接触禁止・口外禁止等を取り決めしたうえで、示談金を支払うことになります。
被害者が示談に応じていただけたら、起訴前であれば不起訴になる可能性が高まります。
実際にわいせつ行為をしていなかった、明確な同意があった、ということであれば、きちんと争っていく必要があります。
警察は、密室の取調べで、被害者が被害を訴えている、証拠があるから何を言っても無駄だ、お前は全然反省していない、被害者に対して申し訳ないと思わないのか、等と言って圧力をかけてくる可能性があります。
プロの警察に対して素人の一般人が対抗するのは非常に難しいです。
刑事弁護に精通した弁護士を立てて毅然と対抗していく必要があります。
不同意わいせつ事件が発生したら、すぐに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料で面談を実施させていただきます。
こちらの記事もご覧ください
公務員と性犯罪
公務員の不同意わいせつ事件と弁護活動-公務員が不同意わいせつ事件を起こした場合の弁護活動について解説
公務員と各種性犯罪―ニュース記事を基に、公務員に成立する可能性のある性犯罪について解説
公務員と各種性犯罪―ニュース記事を基に、公務員に成立する可能性のある性犯罪について解説

公務員という立場でありながら、性犯罪事件を起こしてしまうケースがあります。
ネットニュースでも、以下のような記事があります。
※一部情報を修正しております。
「公務員を逮捕 ホームで痴漢疑い
駅のホームで面識のない10代の女性の下半身を触ったとして、迷惑防止条例違反の疑いで、公務員の男を現行犯逮捕していたことが分かった。認否を明らかにしていない。
逮捕容疑は、駅のホームを歩いていた女性の下半身を触った疑い。
2人はいずれも帰宅途中で、男は電車から降りた後に女性を触ったとみられる。駅員から110番があった。」
「盗撮目的で女子トイレに侵入した疑い 市職員の男を逮捕
女子トイレに侵入した疑いで、市職員の男が逮捕されました。警察は盗撮目的とみて捜査しています。
市職員の男は、女子トイレに侵入した疑いがもたれています。
警察などによりますと、女子トイレに、小型カメラが仕掛けられているのを、他の利用者が発見し警察に通報。
関係者への事情聴取などの結果、容疑者の男が浮上しました。容疑者の男は調べに対し、容疑を認めています。
警察は小型カメラを回収する目的で女子トイレに侵入したとみて余罪などを捜査しています。」
「更衣中の女性を盗撮した疑い 公務員の男逮捕 「画像が出回っている」と施設関係者が通報
更衣中の女性を盗撮した疑いで警察は公務員の男を逮捕しました。
迷惑行為等防止条例違反(卑わいな行為の禁止)の疑いで逮捕されたのは、公務員の男です。
警察の調べによると男は施設の部屋の中で更衣中の女性を撮影した疑いが持たれています。
施設の関係者から「盗撮されたと思われる画像が出回っている」と警察に通報がありました。男は容疑を認めているということです。」
盗撮
盗撮は、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」で犯罪として規定されております。
正当な理由がないのに、ひそかに、盗撮をしたら、性的姿態等撮影罪が成立します。
対象となる性的姿態等は、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもので、
・人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)
・人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるもの)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
・わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態
です。
他人の裸や下着などを盗撮したら、犯罪が成立します。
性的姿態等撮影罪は、未遂罪も罰せられます。
盗撮等による性的影像記録を提供した者は、性的影像記録提供等罪が成立します。
性的影像記録を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、性的影像記録提供等罪が成立します。
盗撮データを拡散させる行為も犯罪となります。
性的影像記録提供等罪の行為をする目的で、性的影像記録を保管した者は、性的影像記録保管罪が成立します。
未成年者との性行為
18歳未満の未成年者と性行為やわいせつ行為をしたら、青少年健全育成条例違反・いわゆる淫行条例違反の犯罪となります。
対償を供与し、又はその供与の約束をして、18歳未満の児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせること)をすることをしたら、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」、いわゆる児童買春の犯罪が成立します。
相手が16歳未満であれば、相手の同意があったとしても、わいせつな行為をすれば不同意わいせつ罪(刑法第176条第3項)、性交等をすれば不同意性交等罪(刑法第177条第3項)が成立します。
痴漢・不同意わいせつ・不同意性交等
公共の場所又は公共の乗物にいる者に対し、著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせるような方法で、衣服等の上から、又は直接身体に触れることをしたら、迷惑行為防止条例違反・いわゆる痴漢の犯罪が成立します。
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、不同意わいせつ罪が成立します(刑法第176条第1項)。上記の痴漢も、態様が悪質であれば不同意わいせつ罪となります。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
上記の各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものである性交等をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、不同意性交等罪が成立します(刑法第177条第1項)。
こちらの記事もご覧ください。
公務員の方で性犯罪についてお悩みの方は、弁護士法事あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
消防士の刑事事件-消防士が痴漢事件を起こしたケースを基に、弁護活動や懲戒処分について解説

【事例(フィクション)】
消防署に消防士として勤務するAさんは、電車内で被害者のお尻を触ったという迷惑防止条例違反(痴漢)の容疑で、警察に逮捕されました。
Aさんに前科前歴はありません。
【被疑者の方が消防士の場合のリスク】
消防署に勤務する消防士は、地方公務員となります。
消防士の方が刑事事件の被疑者となった場合、刑事手続き上の逮捕・勾留や刑事罰のリスクだけでなく、地方公務員法上の懲戒処分や、失職等のリスクにもさらされることとなってしまいます。
以下、弁護活動も含め、順に説明していきます。
【迷惑防止条例違反(痴漢)の刑事罰】
いわゆる痴漢行為は、それぞれの都道府県において定められている迷惑防止条例違反にあたることが多く、罰金刑又は懲役刑に処すると定められています。
迷惑防止条例違反の事案は、初犯であれば罰金刑となることが多いです。
なお、痴漢行為は、行為の状況や程度次第では、より重い不同意わいせつ罪(刑法176条1項、6月以上10年以下の懲役刑(拘禁刑))にあたることもあります。
【弁護活動】
①まずは弁護士が接見といって、留置場に身体拘束されているAさんとの面会をして、事実確認や取調等の状況確認をし、取調べ対応等のアドバイスをすることが、今後の刑事処分のため重要な弁護活動です。
②Aさんは逮捕されましたが、この後勾留が決定してしまうと、10日間、さらに延長されると最長で20日間の身体拘束となります。
これに対しては、弁護士において、罪証隠滅や逃亡の可能性がないことを主張・疎明し、勾留の阻止を目指す活動(勾留の決定後であれば準抗告という勾留決定の取消しを求める不服申立て)をすることが考えられます。
③Aさんが容疑のとおり痴漢行為をしたことで間違いないのであれば、弁護士による示談交渉が非常に重要です。
交渉の結果、被害者の方に示談を受けていただければ、不起訴(起訴猶予)となり前科を回避できる可能性があります。
④Aさんが痴漢行為をしたとしても、重い不同意わいせつ罪ではなく、迷惑防止条例違反を適用するよう主張することが考えられます。
⑤Aさんは容疑のとおりの痴漢行為をしていない、いわゆる冤罪の場合は、弁護士が取調べ対応をしっかりサポートするなどしながら、まずは不起訴(嫌疑不十分)を目指します。
⑥冤罪であるにもかかわらず起訴されてしまった場合、Aさんは、有罪判決となれば罰金刑又は懲役刑となってしまいます。
弁護士としては、無罪判決の獲得のため、開示された証拠を精査して検察官の立証の穴を突くとともに、無罪であることを示す証拠があるか検討していきます。
【刑事罰以外の処分等】
地方公務員の方は、起訴されると、休職をさせられることがあります(地方公務員法28条2項2号)。
そして起訴され、有罪判決で禁錮以上の刑となれば、執行猶予が付いたとしても、失職することになります(地方公務員法28条4項・16条1号)。
事例の場合、Aさんに前科前歴はなく、有罪判決であっても罰金刑の可能性が高く、この規定による失職の可能性は低そうです。なお、不同意わいせつ罪の場合、罰金刑がありませんので、なおのこと起訴されないようにする必要があります。
もっとも、地方公務員の方が犯罪にあたる行為をすると、刑事罰とは別に懲戒処分を受けることにもなります。
懲戒処分は、重い順に、免職、停職、減給、戒告と種類があります。
東京都が公表している懲戒処分の指針によると
「具体的な量定の決定に当たっては、
① 非違行為の態様、被害の大きさ及び司法の動向など社会的重大性の程度
② 非違行為を行った職員の職責、過失の大きさ及び職務への影響など信用失墜の度合い
③ 日常の勤務態度及び常習性など非違行為を行った職員固有の事情等のほか、適宜、非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとする。
個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる量定にかかわらず免職等の処分をすることもあり得る。」
としつつ、標準例では「公共の乗物等において痴漢行為をした職員は、免職又は停職とする。」とされています。
Aさんの場合、痴漢行為が事実であれば免職のリスクがあることとなりますが、例えば「非違行為後の対応」といった、弁護活動における示談交渉と絡む考慮要素もありますので、リスク軽減のため、弁護士に相談することをおすすめします。
参考:懲戒処分の指針
公務員の性犯罪や懲戒処分については、こちらもご覧ください。
【おわりに】
迷惑防止条例違反(痴漢)の疑いをかけられた消防士の方は、身体拘束、刑事罰、懲戒処分等のリスクにさらされますが、こういったリスクを回避・軽減するためには、弁護士による適切なアドバイスや活動が必要です。
実際に痴漢行為をしてしまった方も、冤罪の方も、できるだけ早めに弁護士に相談することをおすすめします。
公務員の不同意わいせつ事件と弁護活動-公務員が不同意わいせつ事件を起こした場合の弁護活動について解説

【事例(フィクション)】
市職員として勤務する公務員のAさんは、路上で被害者の胸をいきなり揉むという不同意わいせつ行為をしたという容疑で、警察に逮捕されました。
Aさんに前科前歴はありません。
【不同意わいせつ罪とは】
刑法176条1項では、「次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、6月以上10年以下の拘禁刑(現在は懲役刑として扱われています。)に処する。」とされており、暴行脅迫等の事由が8つ定められています。
Aさんの容疑の内容である、胸をいきなり揉むという行為は、その行為自体が「暴行」(同項1号)とされることがありますし、また、「同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと」(同項5号)にも該当し得ます。
【弁護活動】
①まずは弁護士が接見といって、留置場に身体拘束されているAさんとの面会をして、事実確認や取調等の状況確認をし、取調べ対応等のアドバイスをすることが、今後の刑事処分のため重要な弁護活動です。
②Aさんは逮捕されましたが、この後勾留が決定してしまうと、10日間、さらに延長されると最長で20日間の身体拘束となります。
これに対しては、弁護士において、罪証隠滅や逃亡の可能性がないことを主張・疎明し、勾留の阻止を目指す活動(勾留の決定後であれば準抗告という勾留決定の取消しを求める不服申立て)をすることが考えられます。
③Aさんが容疑のとおり不同意わいせつ行為をしたことで間違いないのであれば、弁護士による示談交渉が非常に重要です。
交渉の結果、被害者の方に示談を受けていただければ、不起訴(起訴猶予)となり前科を回避できる可能性があります。
④Aさんは容疑のとおりの不同意わいせつ行為をしていない、いわゆる冤罪の場合は、弁護士が取調べ対応をしっかりサポートするなどしながら、まずは不起訴(嫌疑不十分)を目指します。
⑤起訴されてしまった場合、Aさんは、有罪判決となれば拘禁刑(懲役刑)となってしまいます。
Aさんが容疑を認めている場合は、弁護士は、拘禁刑(懲役刑)に執行猶予を付けて、実刑を回避することを目指し、情状に関する立証活動をします。
Aさんが冤罪の場合は、弁護士は、無罪判決の獲得のため、開示された証拠を精査して検察官の立証の穴を突くとともに、無罪であることを示す証拠があるか検討していきます。
【刑罰以外の処分等】
公務員の方は、起訴されると、休職をさせられることがあります(地方公務員法28条2項2号、国家公務員法79条2号)。
そして起訴され、有罪判決で禁錮以上の刑となれば、執行猶予が付いたとしても、失職することになります(地方公務員法28条4項・16条1号、国家公務員法76条・38条1号)。
事例の場合、不同意わいせつ罪には懲役刑という禁錮以上の刑(拘禁刑に統合されることが予定されています)しかないので、有罪判決なら失職となります。
また、公務員の方が犯罪にあたる行為をすると、刑事罰とは別に懲戒処分を受けることにもなります。
懲戒処分は、重い順に、免職、停職、減給、戒告と種類があります。
事例のような不同意わいせつ罪にあたる行為をしてしまった場合は、懲戒免職となってしまう可能性が十分考えられます。
もっとも、冤罪の場合は、嫌疑不十分の不起訴や無罪判決を得られれば、懲戒免職を避けられる可能性があります(判断者が異なるので一概には言えませんが。)。
公務員のかかわる性犯罪についてはこちらの記事もご覧ください
【おわりに】
不同意わいせつ罪は、起訴されれば罰金では済まない、決して軽くない事件ですから、同罪の疑いをかけられた被疑者・被告人の方は、身体拘束、刑事罰、懲戒処分等のリスクは非常に大きいといえます。
こういったリスクを回避・軽減するためには、弁護士による適切なアドバイスや活動が必要です。
実際に不同意わいせつ行為をしてしまった方も、冤罪の方も、できるだけ早めに弁護士に相談することをおすすめします。
公務員と性犯罪
性犯罪は被害者の性的自由や尊厳を著しく害するものとして強い非難に値します。国民の利益のために働く公務員が行った場合、より一層非難されます。しかしながら、一部の公務員についてはその権限や職務の性質上、性犯罪が行いやすくまた隠蔽されやすいところがあります。
性犯罪関係の懲戒処分
公務員がその職務に関してセクシュアル・ハラスメントをしたり、公務外で性犯罪をすると、非違行為をしたとして、重い懲戒処分を受けることになります。
国家公務員の服務の基本的な事項が載せられています。「義務違反防止ハンドブック」には、懲戒処分の指針についての記載も載せられています。
この指針によると、「1 一般服務関係」において、「(14)セクシュアル・ハラスメント」の「ア 強制わいせつ、上司等の影響力利用による性的関係・わいせつな行為」は免職または停職という重い懲戒処分が定められています。また、「ウ 意に反することを認識の上でのわいせつな言辞等の性的な言動」は減給又は戒告になりますが、「イ 意に反することを認識の上でのわいせつな言辞等の性的な言動の繰り返し」は停職又は減給という比較的重い処分ですし、その中でも「執拗な繰り返しにより強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患させたもの」は免職または停職という重い懲戒処分となります。
「3 公務外非行関係」においても、「(12)淫行」は免職または停職、「(13)痴漢行為」「(14)盗撮行為」は停職又は減給という比較的重い処分となっています。
公務員に関する性犯罪
特別行員暴行陵虐・同致死傷
公務員の中でも人の身体を拘束する権限を持つ者がその権限を利用して性暴力などを行えば、その公務の信用性を著しく害するため、このような行為を規制するため特別な規定が定められています。
特別公務員暴行陵虐
裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、特別公務員暴行陵虐罪が成立し、7年以下の懲役又は禁錮に処されます(刑法195条1項)。法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、同様に処罰されます(刑法195条2項)。
1項の罪の主体も、特別公務員職権濫用罪と同じく、裁判官、検察官、検察事務官、警察官、裁判所書記官などが該当しますが、人を逮捕監禁する権限を有しない者も対象になります。2項の「法令により拘禁された者」とは、逮捕や勾留されている者など、法令上の規定に基づいて公権力により拘禁されている者をいいます。このような者を「看取又は護送する者」が本罪の主体となります。
「暴行」とは暴行罪などと同じく身体に対する不法な有形力の行使をいいます。「陵辱」や「加虐」は他の犯罪ではあまり見かけない表現ですが、「陵辱」とは辱める行為や精神的に苦痛を与える行為、「加虐」とは苦しめる行為や身体に対する直接の有形力の行使以外の肉体的な苦痛を加える行為などをいいます。つまり、暴行以外の方法で精神的又は肉体的に苦痛を与える行為です。その典型的なものがわいせつ行為です。
特別公務員職権濫用等致死傷
特別公務員職権濫用罪や特別公務員暴行陵虐罪を犯し、よって人を死傷させた場合は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断されます(刑法196条)。
傷害罪は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金(刑法204条)、傷害致死罪は3年以上の有期懲役(刑法205条)に処されます。
特別公務員暴行陵虐罪より傷害罪のほうが長期・短期とも重いので、致傷罪は1月以上15年以下の懲役、致死罪は3年以上20年以下の懲役となります。
不同意わいせつ・不同意性交等
令和5年7月13日より改正刑法が施行され、強制わいせつ罪は不同意わいせつ罪(刑法176条)に、強制性交等罪は不同意性交等罪(刑法177条)に改められました。この改正により、暴行・脅迫による場合だけでなく、不同意を示せないような状況を強いられてわいせつ行為や性交等をされた被害者も保護できるようになりました。
不同意わいせつ、不同意性交等は、次に掲げる行為や事由により、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、」わいせつな行為や性交等をした場合に成立します。
①暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
②心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
③アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
④睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
⑤同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
⑥予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
⑦虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
⑧経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
公務員に限らず職場内の人間間での事件の場合、特に⑧の「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。」がよく見られます。例えば、自分の要求に従わなければ昇進等で不利益が及ぶことを示唆して性交等に及ぶ場合です。
さらに公務員の場合、市民に法的サービスを提供したり許認可権限を持つ立場ですので、職場内だけでなく、対外的にも、⑧の事由が問題となります。許認可権限を持つ場合はもちろん、実際には根拠法令がなかったり自身に権限がないにもかかわらず、自分の言う通りにしないと不利益処分を科すと示唆して、性交等に至れば不同意性交等罪に当たるでしょう。
不同意性交等罪は5年以上の懲役、不同意わいせつ罪は6月以上10年以下の懲役となります。
公務員の性犯罪に対する手続き
上記のように、セクシュアルハラスメントや性犯罪に対しては重い懲戒処分が下されます。
公務員の場合、起訴されると、強制的に休職させられることがあります(地方公務員法第28条第2項第2号、国家公務員法第79条第2号)。休職中は仕事ができませんし、給与は支給されません(国家公務員法第80条第4項参照)。
裁判の結果、有罪の判決を言い渡され、禁錮以上の刑に処されると、失職してしまいます(地方公務員法第28条第4項・第16条第1号、国家公務員法第条第76条・第38条第1号)が、国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)。そのため、起訴されたり判決が出る前に懲戒手続がすすめられ、懲戒処分が下されることがあります。
性犯罪の報道・公表
近年は自衛官や警察官、国公立学校の教師などの公務員の性犯罪をニュースで目にするようになっています。特に国民・市民を守るべき立場にある公務員の性犯罪は強く非難され、報道する必要性も高くなっています。
実名、住所、所属する組織、役職など、どこまで公表するかは報道機関が判断します。性犯罪の場合、加害者に関する情報により被害者が特定される可能性があるため、都道府県市町村名や所属する組織までにとどめて実名は報道しないことが見受けられます。
性犯罪に限りませんが、懲戒処分がなされた場合、所属官庁が公表することがあります。公表の指針も示されています。
「1 公表対象
次のいずれかに該当する懲戒処分は、公表するものとする。
(1)職務遂行上の行為又はこれに関連する行為に係る懲戒処分
(2)職務に関連しない行為に係る懲戒処分のうち、免職又は停職である懲戒処分
2 公表内容
事案の概要、処分量定及び処分年月日並びに所属、役職段階等の被処分者の属性に関する情報を、個人が識別されない内容のものとすることを基本として公表するものとする。
3 公表の例外
被害者又はその関係者のプライバシー等の権利利益を侵害するおそれがある場合等1及び2によることが適当でないと認められる場合は、1及び2にかかわらず、公表内容の一部又は全部を公表しないことも差し支えないものとする。
4 公表時期
懲戒処分を行った後、速やかに公表するものとする。ただし、軽微な事案については、一定期間ごとに一括して公表することも差し支えないものとする。
5 公表方法 記者クラブ等への資料の提供その他適宜の方法によるものとする。」
まとめ
このように、公務員の性犯罪は重い処分が下されるため、注意が必要です。
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