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公務員と交通違反

2023-09-16

近年では地方議会の議員が無免許運転をしていたことが発覚して大きな非難を浴びるなど、公務員による交通法規の違反がしばしば問題となっています。

公務員が交通違反をした場合、その内容によっては刑事事件として捜査・裁判の対象となり、また所属する官庁から重い懲戒処分を下される可能性があります。

ここでは、公務員と交通違反について解説します。

公務員と交通法規違反

交通法規は誰もが守るべきものですが、公務員の場合、「全体の奉仕者」として法令を遵守しなければならない立場であるため、その交通法規違反はより強い非難に値するでしょう。公務員の懲戒処分の根拠となる「非違行為」の典型例としても交通法規違反があげられています。

交通違反と報道

交通事故や交通法規違反があったとしても、これが報道されるかどうかは、違反者の属性や事件の重大性などを考慮して報道機関が判断します。交通違反者が公務員だからといって、当然に報道されるわけではありません。もっとも、公務員は「全体の奉仕者」としてみられているのですから、交通違反が発覚した場合は強い非難を受けることになります。

重い懲戒処分

交通法規違反が重大な場合、免許停止などの行政処分を受けますが、公務員の場合、これとは別に所属する官庁より懲戒処分を受ける可能性があります。

公務員の交通法規違反は、人事院の定める「懲戒処分の指針」の標準例にも掲げられている、典型的な非違行為であり、懲戒処分を受ける可能性は高いといえます。特に飲酒運転(道路交通法65条1項)と交通事故後の措置義務違反(道路交通法72条1項前段)に対しては、重い処分が下されます。飲酒運転は自己のみならず一般市民の生命・身体・財産に重大な危険を招きかねない運転ですので、国民・市民の模範たるべき公務員としては強く非難される行動です。また、措置義務違反は、交通事故を起こしても救護等をせずにその場を立ち去る行為であり、全体の奉仕者たる公務員の立場に反する行為といえます。

人事院の「懲戒処分の指針」によれば、酒酔い運転はそれだけで免職又は停職という重い処分ですし、これにより人を死傷させた場合、必ず免職処分が下されます。酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とされ、免職の可能性もあります。人を死傷させた場合は、免職又は停職とされます。事故後の救護を怠るなどの措置義務違反もした場合は、必ず免職となります。また、飲酒運転をした公務員に対し、運転した車両を提供したり、酒類を提供したり、飲酒を勧めたり、飲酒したことを知りながら同乗した公務員も、飲酒運転をした本人に対する処分や飲酒運転への関与の程度等を考慮して、懲戒処分が下されます。

飲酒運転以外の交通法規違反であっても、人身事故や著しい速度超過等の悪質な交通法規違反に対しては、懲戒処分が下されます。措置義務違反をしていた場合、さらに重い処分が下されます。

懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職―68)

第2 標準例

4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係

(1) 飲酒運転

ア 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。

イ 酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職)とする。

ウ 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。

(2) 飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの)

ア 人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。

イ 人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。

(3) 飲酒運転以外の交通法規違反

 著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は、停職、減給又は戒告とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こして措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。

(注) 処分を行うに際しては、過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとする。

参考

人事院 懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職―68)

https://www.jinji.go.jp/kisya/1609/1202000_H12shokushoku68.html

なお、本稿では議員の交通違反をあげていますが、これらの国会議員、地方議会議員には国家公務員法や地方公務員法の適用はなく、また議員は独立した存在であり、これに対する懲戒は各議会の権限ですので、一般の国家公務員や地方公務員のような懲戒処分は受けません。それぞれの議会において辞職勧告決議などにより議員自らの身を処することを求められます。議会としての処分は、公務員のような一般的な指針ではなくそれぞれの議会で判断されます。国会議員、地方議会議員とも、議員の身分は強く保障されており、除名処分といった議員の地位を剥奪するような重い処分は、他の議員の多数の同意が必要となります。国会議員の場合は出席議員の3分の2以上の多数による同意が必要になります(国会法122条4号・憲法58条2項)。地方議会議員の場合は、議会の議員の3分の2以上の者が出席し、その4分の3以上の者の同意が必要となります(地方自治法135条1項4号・3項。。死亡事故や飲酒運転など重大な交通法規違反について刑事裁判で有罪判決が下されるような状況でない限り行われないでしょう。

刑事手続との関係

交通違反が刑事事件として捜査されている間でも、就業は可能です。事件発生後の捜査中も仕事を続けることができます。刑事事件として捜査されるような交通法規違反でも、多くの場合は、刑事事件については略式手続により罰金のみで終了することもあります。

しかしながら、公判請求された場合、公務員だと強制的に休職させられることがあります(地方公務員法第28条第2項第2号、国家公務員法第79条第2号)。休職中は仕事ができませんし、給与は支給されません(国家公務員法第80条第4項参照)。

そして、裁判の結果、有罪の判決を言い渡され、禁錮以上の刑に処されると、失職してしまいます(地方公務員法第28条第4項・第16条第1号、国家公務員法第条第76条・第38条第1号)。

国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)。そのため、重大な事件では判決が出る前に懲戒手続がすすめられ、懲戒処分が下されることがあります。

議員の場合は、公職選挙法では禁錮以上の刑に処された者は選挙権・被選挙権を喪失する(公職選挙法11条1項2号)と定められており、被選挙権を失った場合職を失います(国会法109条、地方自治法127条1項)ので、議会から除名されなかったとしても禁錮以上の刑に処された場合は議員の地位を失うことになります。。

参照

国家公務員法

(刑事裁判との関係)

第八十五条 懲戒に付せらるべき事件が、刑事裁判所に係属する間においても、人事院又は人事院の承認を経て任命権者は、同一事件について、適宜に、懲戒手続を進めることができる。この法律による懲戒処分は、当該職員が、同一又は関連の事件に関し、重ねて刑事上の訴追を受けることを妨げない。

まとめ

このように、公務員が交通法規違反をすると懲戒処分を受ける可能性があります。とくに、飲酒運転や救護等の措置義務違反があったときには、職を失う可能性が高まります。

公務員と秘密保持

2023-09-11

公務員は国や地方公共団体の国民・住民の個人情報を扱ったり、重要な政策上の情報を扱っています。こうした情報が洩れれば、国民・市民のプライバシーを害する事態になりかねません。また、入札など利害関係企業に不正に利用される虞もあります。さらには、外交や安全保障において重大な損害を加えかねない可能性があります。このような事態を防ぐため、公務員はその秘密の保持について厳格に規制されています。

ここでは、公務員の秘密保持について説明します。

公務員の守秘義務

国家公務員は、国家公務員法100条1項において、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と定められています。

地方公務員についても、地方公務員法で同様に定められています(地方公務員法34条1項)。

これらの規定に違反して秘密を洩らしたときは、いずれも1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(国家公務員法109条12号、地方公務員法60条2号)。

特定秘密保護法

「特定秘密の保護に関する法律(特定秘密保護法)」では、防衛や外交など重要な事項について、「当該行政機関の所掌事務に係る別表に掲げる事項に関する情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるもの」を特定秘密として指定するものとしています(特定秘密保護法3条1項)。

別表には以下の事項があげられています。

別表(第三条、第五条―第九条関係)

 防衛に関する事項

 自衛隊の運用又はこれに関する見積り若しくは計画若しくは研究

 防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報

 ロに掲げる情報の収集整理又はその能力

 防衛力の整備に関する見積り若しくは計画又は研究

 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物の種類又は数量

 防衛の用に供する通信網の構成又は通信の方法

 防衛の用に供する暗号

 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階のものの仕様、性能又は使用方法

 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段階のものの製作、検査、修理又は試験の方法

 防衛の用に供する施設の設計、性能又は内部の用途(ヘに掲げるものを除く。)

 外交に関する事項

 外国の政府又は国際機関との交渉又は協力の方針又は内容のうち、国民の生命及び身体の保護、領域の保全その他の安全保障に関する重要なもの

 安全保障のために我が国が実施する貨物の輸出若しくは輸入の禁止その他の措置又はその方針(第一号イ若しくはニ、第三号イ又は第四号イに掲げるものを除く。)

 安全保障に関し収集した国民の生命及び身体の保護、領域の保全若しくは国際社会の平和と安全に関する重要な情報又は条約その他の国際約束に基づき保護することが必要な情報(第一号ロ、第三号ロ又は第四号ロに掲げるものを除く。)

 ハに掲げる情報の収集整理又はその能力

 外務省本省と在外公館との間の通信その他の外交の用に供する暗号

 特定有害活動の防止に関する事項

 特定有害活動による被害の発生若しくは拡大の防止(以下この号において「特定有害活動の防止」という。)のための措置又はこれに関する計画若しくは研究

 特定有害活動の防止に関し収集した国民の生命及び身体の保護に関する重要な情報又は外国の政府若しくは国際機関からの情報

 ロに掲げる情報の収集整理又はその能力

 特定有害活動の防止の用に供する暗号

 テロリズムの防止に関する事項

 テロリズムによる被害の発生若しくは拡大の防止(以下この号において「テロリズムの防止」という。)のための措置又はこれに関する計画若しくは研究

 テロリズムの防止に関し収集した国民の生命及び身体の保護に関する重要な情報又は外国の政府若しくは国際機関からの情報

 ロに掲げる情報の収集整理又はその能力

 テロリズムの防止の用に供する暗号

特定秘密の取り扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を洩らしたときは、10年以下の懲役に処され、情状によりさらに1000万円以下の罰金に処されます。特定秘密の取り扱いの業務に従事しなくなった後に漏らした場合も同様です(特定秘密保護法23条1項)。

また、行政機関の長が内閣に提示したり(同法4条5項)、外国の政府や国際機関に提供したり(9条)、国会両議院や裁判所など公益上必要の認められる相手に提供したり(10条)、内閣総理大臣が特定秘密の指定及び解除並びに適正評価の実施のため特定秘密である情報を含む資料の提出を求めること(18条4項後段)により、特定秘密が第三者に提供されることがあります。これらの提供の目的である業務により当該特定秘密を知得したものがその特定秘密を洩らしたときは、5年以下の懲役に処され、又は情状によりさらに500万円以下の罰金に処されます(同法23条2項)。

これらの罪は未遂も処罰します(同法23条3項)。また、過失により漏らした場合も処罰されます(23条1項の罪については2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金。23条2項の罪ついては1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金)。

秘密にあたるか

以上のように、公務員が職務上取り扱う秘密を洩らした場合は重い処罰が下されます。しかし、そもそもその情報が「秘密」でなければなりません。

昭和52年12月19日最高裁第二小法廷決定(徴税トラの巻事件)において、最高裁判所は「国家公務員法一〇〇条一項の文言及び趣旨を考慮すると、同条項にいう「秘密」であるためには、国家機関が単にある事項につき形式的に秘扱の指定をしただけでは足りず、右「秘密」とは、非公知の事項であつて、実質的にもそれを秘密として保護するに価すると認められるものをいうと解すべき」としました。この事件では「営業庶業等所得標準率表」及び「所得業種目別効率表」を漏らしたことが問題となりましたが、「いずれも本件当時いまだ一般に了知されてはおらず、これを公表すると、青色申告を中心とする申告納税制度の健全な発展を阻害し、脱税を誘発するおそれがあるなど税務行政上弊害が生ずるので一般から秘匿されるべきものであるというのであつて、これらが同条項にいわゆる「秘密」にあたる」と判断しました。

昭和53年5月31日最高裁第一小法廷決定(外務省秘密漏洩事件)では、いわゆる沖縄返還協定に関する会談の概要が記載された電信文案を、記者が外務省の職員に提供させたことが、秘密漏洩(国家公務員法109条12号・100条1項)をそそのかした罪(同法111条)に当たるかどうかが問題となりました。この事件で、最高裁は「その内容は非公知の事実であるというのである。そして、条約や協定の締結を目的とする外交交渉の過程で行われる会談の具体的内容については、当事国が公開しないという国際的外交慣行が存在するのであり、これが漏示されると相手国ばかりでなく第三国の不信を招き、当該外交交渉のみならず、将来における外交交渉の効果的遂行が阻害される危険性があるものというべきであるから、本件第一〇三四号電信文案の内容は、実質的にも秘密として保護するに値するものと認められる。右電信文案中に含まれている原判示対米請求権問題の財源については、日米双方の交渉担当者において、円滑な交渉妥結をはかるため、それぞれの対内関係の考慮上秘匿することを必要としたもののようであるが、わが国においては早晩国会における政府の政治責任として討議批判されるべきであつたもので、政府が右のいわゆる密約によつて憲法秩序に抵触するとまでいえるような行動をしたものではないのであつて、違法秘密といわれるべきものではなく、この点も外交交渉の一部をなすものとして実質的に秘密として保護するに値するものである。したがつて右電信文案に違法秘密に属する事項が含まれていると主張する所論はその前提を欠き、右電信文案国家公務員法一〇九条一二号、一〇〇条一項にいう秘密にあたる」としました。

以上の判例のように、秘密保持の対象となる情報は、実質的に秘密として保護に値するものであることが必要です。

懲戒処分

秘密漏洩に対しては厳しい懲戒処分が下されます。

人事院の「懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職―68)」によると、「1 一般服務関係 イ 情報セキュリティ対策のけ怠による秘密漏えい」については、停職・減給・戒告処分の対象となります。「ア 故意の秘密漏えい」は免職又は停職となり、特に「自己の不正な利益を図る目的」の場合は、必ず免職となります。

参照

懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職―68)

https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.html

秘密保持の例外

公務員が職務上知った情報が「秘密」に該当するとしても、これを一切口外できないとなると、不当・違法な行為が行われているにもかかわらず秘密にされてしまい、かえって国民・住民の利益を損ねてしまいかねません。

そもそも、「秘密」とは上記の「徴税トラの巻事件」や「外務省秘密漏洩事件」の判示のように実質的にもそれを秘密として保護するに値するものである必要があります。犯罪に該当したり憲法秩序を脅かすような重大な違反については、秘密情報として保護に値しないといえるでしょう。また、公務員は、職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならないと定められています(刑事訴訟法239条2項)。

したがって、公務員がその職務に関する情報を第三者に開示できる場合があります。

参照

行政機関向けQ&A(内部の職員等からの通報)

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/faq/faq_011/

まとめ

以上のように、公務員には厳格な秘密保持の義務があり、違反すれば厳罰に処されます。

一方で、犯罪に該当するような重大な違法に関わる情報であれば、然るべき第三者に提供することが要請されます。

公務員とハラスメント

2023-09-04

パワハラやセクハラへの対処はあらゆる組織・企業で喫緊の課題となっています。公務員は国民・市民の模範となる立場であり、ハラスメント対策は一層重要となっています。近年は自衛隊内でのセクハラなど、公務員組織内でも大きな問題となっています。ハラスメントもその内容によっては、犯罪となりえます。

ここでは、公務員とハラスメントについて説明します。

パワハラ

パワーハラスメント(パワハラ)とは、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業関係が害されるものであり、①~③までの要素のすべてを満たすものをいいます。客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません。

仕事でミスをした部下を指導する場合であっても、殊更に他の職員のいる前でさらしものにしたり、人格を否定するような罵倒をすれば、パワハラに該当する可能性があります。

パワハラに含まれる行為であっても、その態様や状況によって様々なものがあり、不適切な行為から、民事責任を負う行為、さらには刑事責任を負う行為もあります。相手に暴行したり怪我を負わせた場合、暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)に問われる可能性があります。殴るなどの有形力の行使によって怪我をさせただけでなく、強いストレスを与えて相手を精神疾患に罹患させた場合も、傷害罪になりえます。

個室に数名しかいない状況で叱責するようなものではなく、大勢の人がいる場所で侮辱したり人格を否定するような罵倒をすれば、侮辱罪(刑法231条)や名誉毀損罪(230条)が成立する可能性があります。

セクハラ

セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、職場において行われる、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されることをいいます。異性間に限らず同性間でもセクハラになりえます。性的な言葉を投げかけたり、執拗に食事に誘ってきたり、相手の胸や尻などセンシティブな部位に触る等の行為が該当します。

セクハラもパワハラと同様に、態様や状況によっては犯罪になり得ます。セクハラの中でも悪質なものは、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪に該当する行為でしょう。

令和5年7月13日より改正刑法が施行され、強制わいせつ罪は不同意わいせつ罪(刑法176条)に、強制性交等罪は不同意性交等罪(刑法177条)に改められました。この改正により、暴行・脅迫による場合だけでなく、不同意を示せないような状況を強いられてわいせつ行為や性交等をされた被害者も保護できるようになりました。

不同意わいせつ罪、不同意性交等罪は、次に掲げる行為や事由により、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、」わいせつな行為や性交等をした場合に成立します。

①暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。

②心身の障害を生じさせること又はそれがあること。

③アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。

④睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。

⑤同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。

⑥予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。

⑦虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。

⑧経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

セクハラの場合、特に⑧の「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。」がよく見られます。例えば、自分の要求に従わなければ昇進等で不利益が及ぶことを示唆して性交等に及ぶ場合です。その他、③の「アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること」としては、お酒を飲んで昏睡にまでは至らずとも酩酊状態で同意しない意思を表明することが困難な状況に乗じて性交等をする場合が考えられます。⑥の「予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること」としては、事前に告げていたところとは違う場所に連れていって性交する場合などが考えられます。

不同意性交等罪は5年以上の懲役、不同意わいせつ罪は6月以上10年以下の懲役に処されます。

刑事事件化した場合

公務員の場合は、刑事事件として起訴されると、強制的に休職させられることがあります(地方公務員法第28条第2項第2号、国家公務員法第79条第2号)。休職中は仕事ができませんし、給与は支給されません(国家公務員法第80条第4項参照)。

そして、裁判の結果、有罪の判決を言い渡され、禁錮以上の刑に処されると、失職してしまいます(地方公務員法第28条第4項・第16条第1号、国家公務員法第条第76条・第38条第1号)。

懲戒処分

公務員がその職務に関してハラスメントをすると、非違行為をしたとして、重い懲戒処分を受けることになります。

国家公務員の服務の基本的な事項が載せられています。「義務違反防止ハンドブック」には、懲戒処分の指針についての記載も載せられています。

https://www.jinji.go.jp/ichiran/ichiran_fukumu_choukai.html

この指針によると、「1 一般服務関係」において、「(14)セクシュアル・ハラスメント」の「ア 強制わいせつ、上司等の影響力利用による性的関係・わいせつな行為」は免職または停職という重い懲戒処分が定められています。また、「ウ 意に反することを認識の上でのわいせつな言辞等の性的な言動」は減給又は戒告になりますが、「イ 意に反することを認識の上でのわいせつな言辞等の性的な言動の繰り返し」は停職又は減給という比較的重い処分ですし、その中でも「執拗な繰り返しにより強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患させたもの」は免職または停職という重い懲戒処分となります。

また、「(15)パワー・ハラスメント」の「ア 著しい精神的又は身体的な苦痛を与えたもの」は停職・減給・戒告の対象となりますが、「イ 指導、注意等を受けたにもかかわらず、繰り返したもの」は戒告では済まされず、停職又は減給とより重くなります。「ウ 強度の心的ストレスの重責による精神疾患に罹患させたもの」は免職・停職・減給の対象となり、もっとも重い懲戒免職もありえます。

なお、国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)が、起訴される前に懲戒処分を下されることもあります。

参考

人事院ハラスメント防止リーフレット

https://www.jinji.go.jp/sekuhara/harassmentboushi.pdf

ハラスメントを起こしてしまったら

ハラスメントが発覚すれば、調査を受けることになり、内容によっては懲戒処分を受けることになります。

被害者に対しては真摯に謝罪し償いをするべきでしょう。不法行為とみなされるほどの態様であれば被害者に損害賠償請求権が発生するため、当事者同士で話し合って謝罪し弁償をして解決する示談(和解)はより重要となります。刑事事件となった場合でも、被害者と示談が成立すれば、起訴猶予となる可能性が高まります。

示談については、加害者本人が被害者と交渉しても被害者の精神的負担が大きく交渉を拒絶されることも多いため、円滑な交渉のために弁護士に依頼するのが良いでしょう。その他にも、人事院の調査や警察・検察の捜査などに適切に対応するためにも、弁護士の援助が重要になります。

まとめ

このように、公務員のハラスメントは重い懲戒処分となる可能性が高く、刑罰を科される可能性があり、適切な対応が必要となります。このような事態になったときは、なるべく早く、公務員のハラスメント事件に精通した弁護士に相談するのが良いでしょう。

公務員の犯罪

2023-07-03

公務員は全体の奉仕者として、公共の利益のために職務を行うものであり、高い倫理観が求められ、一般市民の模範となることを期待されています。そのため、このような公務員が犯罪をしたという疑いが生じれば、社会の期待を裏切ったものとして、世間から非常に厳しい目を向けられます。

この記事では、公務員が犯罪を起こしてしまった、あるいはその疑いをかけられた場合の流れについて解説します。

公務員が犯罪の嫌疑をかけられた場合

公務員に犯罪の嫌疑をかけられた場合、以下のような問題が考えられます。

報道される

犯罪の嫌疑をかけられ被疑者(容疑者)として捜査の対象となった場合、被疑者は実名で報道されることがあります。特に被疑者が逮捕された場合は、実名報道される可能性がさらに高まります。実際に実名報道されるかどうかは、事件の重大性や社会的な関心の程度、報道されることによる被疑者の名誉やプライバシーへの影響等を考慮して判断されます。その判断は、報道機関に情報提供をする警察や検察、警察や検察から情報の提供を受けた各報道機関それぞれが行います。

最初に述べたとおり、公務員には高い倫理観が求められ、一般市民の模範となることを期待されています。公務員が犯罪の嫌疑をかけられていることは、この期待が揺るがされているといえます。そのため、公務員の犯罪は一般市民にとって重大な関心事であり、その情報の公開には高い公益性が認められるため、一般の人々よりも実名が報道される可能性が高いといえます。

また、嫌疑をかけられている犯罪の種類や規模、内容にもよりますが、公務員による犯罪は捜査の進展が逐次報道される可能性があります

休職・失職

被疑者が公務員の場合、起訴されると、強制的に休職させられることがあります(地方公務員法第28条第2項第2号、国家公務員法第79条第2号)。休職中は仕事ができませんし、給与は支給されません(国家公務員法第80条第4項参照)。

そして、裁判の結果、有罪の判決を言い渡され、禁錮以上の刑に処されると、失職してしまいます(地方公務員法第28条第4項・第16条第1号、国家公務員法第条第76条・第38条第1号)。

重い量刑

繰り返し述べていますが、公務員は全体の奉仕者として、高い倫理観が求められています。そのような公務員が犯罪を起こしたとあれば、国民の信頼を裏切るものとなります。そのため、刑事裁判においても、公務員が罪を犯したと認められた場合、その刑は重くなる傾向があります。

もっとも、公務員だからといって当然に一般人よりも刑罰が重くなるわけではありません。職権濫用罪や収賄罪等の汚職の罪は、犯罪の性質上職務の公正を害したり、公務への信用を毀損したりするものであるため、重い刑罰が定められています。これら以外の罪については、勤務外に職務とは無関係に起こした事件であれば、「公務員でありながら」「国民の信頼を裏切る」「強い非難に値する」などと指摘はされるものの、一般市民の場合と比べてそれほど量刑に違いは現れません。一方、詐欺や横領など一般市民でも行うことができる種類の犯罪であっても、職場内での地位を利用した犯罪であったり、自己の職務に関係する業務に関して行った犯罪などであれば、公務を利用した背信的なものとして強く非難され、刑も重くなります。

懲戒処分

刑事手続以外においても、犯罪を起こしたことを理由として、懲戒処分を科されることになります。懲戒処分には、戒告、減給、停職、免職があります(地方公務員法第29条第1項、国家公務員法第82条第1項)。懲戒事由としては「(国民)全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合」(地方公務員法第29条第1項第3号、国家公務員法第82条第1項第3号)とされるでしょう。

なお、国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国歌公務員法第85条)。

公務員犯罪の弁護活動

公務員の弁護活動の重要性

公務員であっても他の一般市民と同じ権利を有しており、それは刑事手続であっても同様です。公務員にも黙秘権があります(憲法第38条第1項・刑事訴訟法第198条第2項)し、供述録取書の増減変更申立てもすることができます(刑事訴訟法第198条第4項)。弁護人による弁護活動も、基本的には一般市民が犯罪の嫌疑をかけられた場合と同様です。公務員にも弁護人選任権があり(憲法第37条第3項)、立会人なく弁護人と接見することができます(刑事訴訟法第39条第1項)。

一方で、公務員が犯罪の嫌疑をかけられた場合は、上記のとおり世間の厳しい目が向けられ、報道されるリスクが高まります。捜査の進展は逐次報道され、報道された供述の内容の真偽に関わらず、インターネット上で様々な憶測が広がるでしょう。被疑者・被告人に当然に認められる権利を行使しても、例えば「容疑者は取調べに対して黙秘している」など報道されることで、「反省していない」などインターネット上でネガティブな情報を拡散されるおそれも一般市民より高いでしょう。また、処分や判決によっては、失職や懲戒処分のおそれもあります。

こうしたリスクを回避するため、一層迅速適切な弁護活動を行う必要があります。

報道への対応

上記のとおり、公務員が犯罪の嫌疑をかけられると、実名で報道され、捜査の進捗状況について逐次報道される可能性が高いです。犯罪の嫌疑をかけられたとして実名をさらされ、弁解内容や黙秘の有無まで知られてしまいます。瞬く間に社会に拡散し、半永久的に残ってしまいます。結果的に不起訴となったとしても、ネガティブな情報が世の中に広がってしまい、結局現在の仕事を辞めざるを得ない事態になりかねません。

弁護人は、警察や検察に対し、報道機関に対し、被疑者の実名等個人を特定できる情報や黙秘の有無や供述内容等を発信しないよう申し入れをします。また、報道機関に対しても、こうした情報を報道しないよう申し入れをします。そのうえで、過度にプライバシーを侵害する情報であったり、実際に供述したものとは異なる内容を供述したとして報道された場合、その是正を求めていきます。

不起訴を目指す

「休職・失職」で述べたとおり、被疑者が公務員の場合、起訴されると、強制的に休職させられることがあります(地方公務員法第28条第2項第2号、国家公務員法第79条第2号)。そのまま禁錮以上の刑に処されると、失職してしまいます(地方公務員法第28条第4項・第16条第1号、国家公務員法第条第76条・第38条第1号)。

したがって、公務員の場合は、起訴されないことが何よりも重要となります。犯罪を起こしたのではないときは、不起訴(嫌疑不十分・嫌疑なし)を目指していくことになります。犯罪を起こしたことを認めている場合、被害者がいる事件では被害者と示談をする等して、不起訴(起訴猶予)を目指していくことになります。もっとも、庁舎の備品を損壊する器物損壊事件など、国や地方公共団体が被害者の場合は、示談をすることは拒否され、損害の賠償に留まることも多いです。また、収賄事件など、具体的な被害者がいない事件では、示談をすることはできません。

不起訴とはいかなくても、罰金刑のある犯罪では、罰金刑を目指すことで失職を回避することを目指します。また、100万円以下の罰金又は科料であれば、略式手続(刑事訴訟法第461条以下)により、公判前に、書面で裁判を終了することができます。この場合、休職せずに済むでしょう。

懲戒処分を避けるために

懲戒手続は刑事手続とは別のものです。そのため、刑事手続で処分されなかったり軽微な刑罰であっても、懲戒手続にて重い処分を下される可能性があります。弁護士から、担当部署に、刑事手続の結果の報告だけでなく、非行の内容が重大ではないこと、真摯に反省していること、などを訴えて懲戒処分が過度に重くならないようにしていきます。

おわりに

以上のように、公務員が犯罪の嫌疑をかけられた場合、一般の市民よりも重大なリスクにさらされる可能性が高いです。そのため、早期に弁護士に相談して対応を決めるべきです。

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