事件別―大使館・領事館内での犯罪

大使館・領事館とは

日本大使館やアメリカ大使館などという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

大使館とは、一般的に、自国と国交が成立している外国に、自国の特命全権大使を駐在させて公務を執行する役所のことをいいます。

また、大使館とは別に、領事館というものも存在します。領事館とは、領事(外国において、自国の通商の促進や自国民の保護、取締りを行う者をいいます)の活動の拠点として設置される在外公館のことをいいます。

外交使節などを受け入れている国(接受国)において、大使館は通常、接受国の首都に置かれるのに対し、領事館は、首都とは別の主要都市に設置されることが多いです。

大使館・領事館内ではどの法律が適用されるの

こうした大使館や領事館内で犯罪が行われた場合、どの法律が適用されるでしょうか。

この点については、外交関係に関するウィーン条約22条1項において、「使節団の公館は、不可侵とする。接受国の官吏は、使節団の長が同意した場合を除くほか、公館に立ち入ることができない。」とされていて、このウィーン条約を批准している国における大使館等では、原則として、設置した国(在留国ではなく)の法律が適用されます。いわゆる治外法権と呼ばれるものです。

たとえば、アメリカにある日本大使館内で犯罪行為が行われた場合、原則として、アメリカの捜査機関が立ち入って捜査をすることができず、アメリカの法律ではなく、原則として日本の法律が適用されることになります。つまり、簡単にいえば、アメリカにある日本大使館の敷地内は、アメリカの領土にありますが、日本として取り扱われるということです。

こうしたことは逆のことでも同様です。すなわち、日本にあるアメリカ大使館の敷地内は、日本にありながらアメリカだと扱われるということです。たとえば、日本人がアメリカ大使館内で暴行事件を起こした場合、日本の法律ではなく、アメリカの法に従って責任を問われることになります。

もっとも、一定の犯罪については、日本国民が日本国外で犯してしまった場合においても、日本の法律を適用するとされています。たとえば、日本人がアメリカ大使館内で殺人事件を起こしてしまった場合、日本の法律が適用されます(刑法3条7号)。

このように、犯罪行為をしてしまった場合において、大使館や領事館が関わるときには、そもそもどの国の法律が適用されるか、その後、どのような手続になることが予想されるかといった点について、早期に確認する必要があり、一度弁護士に相談する必要があります。

外交官にはどの法律が適用されるの

外交関係に関するウィーン条約において、外交官は身体拘束を受けることはなく(同条約29条)、外交官の個人的住居も大使館等と同様に設置国として扱われること(30条1項)、外交官は接受国の刑事裁判を受けることがない(31条1項)などとされています。

たとえば、日本の外交官が、アメリカに滞在中に犯罪行為を行ってしまった場合、アメリカの捜査機関に逮捕されることはなく、アメリカの刑事裁判にかけられることもありません。もっとも、これは、外交官が日本の裁判権から免れるわけではありません(31条4項)。

そうすると、ここでも、犯罪をしてしまった場合、自身がこうした特権を付与される地位にそもそもあるのか、どこの国の法律が適用されるのかなどについて、早期に、一度弁護士に相談する必要があります。

最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心に扱う弁護士が依頼者が安心できるようにサポートします。犯罪行為に大使館や領事館などが関わるような場合で、今後どのようなことが予想され、どのような対応をしていくべきかご心配な方は、まずは弊所までご相談ください。

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー LINE予約はこちら