事件別―痴漢・盗撮

事例

東京都X区役所に務めるAさんは、JR山手線で通勤中、隣に立っていた女性のお尻付近を、その衣服の上から触ってしまいました。

Aさんはその女性から手を掴まれ、次の駅で一緒に電車を降りることになり、周囲の人による通報によって現場に赴いた警察官に現行犯逮捕されました。

なお、Aさんはこれまでに痴漢も含めて警察沙汰になったことはありません。(フィクションです)

解説

⑴ 不同意わいせつ罪の成立

東京都には公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(以下「迷惑防止条例」といいます。基本的に都道府県ごとに同様の条例が設けられています。)が設けられており、その中で、いわゆる痴漢行為を処罰の対象としています。

しかし、電車内でのいわゆる痴漢行為の場合、「同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがない」場合(刑法176条1項5号)や、「予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕している」場合(同項6号)に該当すると考えられることから、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。

そして、この規定に違反した者については、6月以上10年以下の拘禁刑に処すると定められていますので、Aさんはこうした刑事処分を受ける可能性があります。

⑵ 盗撮行為も規制されている

東京都では、迷惑防止条例5条1項2号において、いわゆる盗撮行為を規制の対象としています。典型的な例としては、電車内で、目の前にいた女性のスカートの中に、自身のスマートフォンを差し入れて、下着を撮影することが挙げられます。

しかし、その後、性的姿態撮影等処罰法が制定され、この法律でいわゆる盗撮行為が規制されるようになり、違反した場合は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処するとされています。

⑶ 逮捕されると報道される可能性がある

Aさんは現行犯逮捕されているところ、Aさんは、当然、仕事を一定期間休まざるを得なくなり、職場に事件のことを知られる可能性が高くなります。

また、公務員が逮捕された場合、社会的に関心が高い事柄として、報道される可能性が高いといえます。もっとも、実際に報道されるかどうかは、報道機関の判断になりますし、早期に釈放することができれば、報道を避けられるかもしれません。

逮捕された場合には、早期に身体解放を目指す必要があり、逮捕された場合には少しでも早く弁護士に相談する必要があります。

⑷ 刑事処分を受けるとどうなるの

Aさんには、同種の前科前歴がないとしても、不同意わいせつ罪として裁判を受けることになれば、拘禁刑で処断されることになります。

Aさんが拘禁刑を受けた場合、仮に執行猶予付きの判決であったとしても欠格事由に該当し、公務員の職を失うことになります(地方公務員法28条4項、16条1号。国家公務員については国家公務員法76条、38条1号を参照)。

よって、欠格事由との関係では、迷惑防止条例違反としての罰金刑や不起訴を目指す活動をしていく必要があります。具体的には、被害者と示談をするということが考えられます。

もっとも、Aさんが身体拘束を受けた状態であると、自身で示談交渉を行うことは困難です。また、Aさんが釈放された状態であったとしても、そもそもAさんは被害者と面識がなく、当然連絡する手段がありません。そこで、弁護士が介入し、捜査機関に協力を求めるなどして、示談成立を目指していく必要があります。

また、Aさんが拘禁刑や罰金刑といった刑事処分となり欠格事由に該当しないとしても、職場に知られてしまうと、懲戒処分がなされる可能性があります(地方公務員法29条1項3号。国家公務員については国家公務員法82条1項3号を参照)。

Aさんが所属する東京都は懲戒処分の基準を公表しています。その基準の中では、「公共の乗物等において痴漢行為をした職員は、免職又は停職とする。」とされています(第5・3⒀エ)ので、Aさんは免職又は停職となることが予想されます。

そこで、そもそも職場に知られないための活動をしていく必要があります。

先ほど話したように、身体拘束されている場合には、早期の釈放を目指す必要があります。また、身体拘束を受けていない場合においても、捜査に積極的に協力し、職場に連絡する必要がないことなどを、捜査機関に説明し、早期に不起訴とするように働き掛けていくといったことが考えられます。

事件のことが職場に知られ、懲戒処分を受けるかが問題となった場合においても、実際にどのような懲戒処分を受けるかは、先ほど話したような基準をベースとしつつも、様々な事情を考慮して判断されます。その事情の中には被害者と示談をしているかといったことも含まれると考えられます。

そこで、先ほど話したように被害者と示談をしているかどうかといった点は、刑事処分だけではなく懲戒処分においても意味を持ってくるものと思われます。

最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心に扱う弁護士が依頼者に寄り添ってサポートします。

痴漢行為や盗撮行為で罪に問われるかもしれないとご心配な公務員の方は、まずは弊所までご相談ください。

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