公務員と児童に対する性犯罪-公務員が児童にわいせつな行為をした場合に成立する犯罪について解説

区立中学校の校長が教え子のわいせつ画像を所持していたとして起訴されるなど、教育関係者の性犯罪が問題となっています。国公立の学校の教職員は公務員であるため、公務員として懲戒処分の対象となります。

ここでは、教育に携わる公務員の性犯罪について解説します。

児童に対する性犯罪

児童に対する性犯罪としては、以下のものが多くみられます。

・不同意わいせつ(刑法第176条)

・不同意性交等(刑法第177条)

・性的姿態等撮影罪(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿態撮影等処罰法)第2条)

・児童に淫行をさせる行為(児童福祉法第34条第1項第6号)

・児童買春(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童ポルノ法)第4条)

・児童ポルノ所持、提供等(児童ポルノ法第7条)

不同意わいせつ・不同意性交等、性的姿態等撮影罪

令和5年7月13日より改正刑法が施行され、強制わいせつ罪は不同意わいせつ罪に、強制性交等罪は不同意性交等罪に改められました。この改正により、暴行・脅迫による場合だけでなく、不同意を示せないような状況を強いられてわいせつ行為や性交等をされた被害者も保護できるようになりました。また、同日に性的姿態撮影等処罰法が施行され、盗撮行為がより重く処罰されるようになりました。いずれも、被害者が13歳未満の場合又は被害者が13歳以上16歳未満で行為者が被害者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者である場合は、不同意を示せない事由の有無等にかかわらず、犯罪が成立します(刑法第176条第3項・第177条第3項、性的姿態撮影等処罰法第2条第1項第4号)。

性犯罪関係の懲戒処分

公務員が性犯罪やわいせつ行為をすると、非違行為をしたとして、重い懲戒処分を受けることになります。

国家公務員の懲戒に関する、人事院の「懲戒処分の指針について」によると、「3 公務外非行関係」において、「(12)淫行」では、18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して淫行した職員は、免職又は停職とする、と定めています。また、「(13)痴漢行為」「(14)盗撮行為」も停職又は減給という比較的重い処分となっています。

参照

人事院「懲戒処分の指針について」

また、地方公務員については、各地方公共団体の機関が懲戒処分の指針を定めています。

自身の職務に関し、その職務上の立場を悪用した非違行為ほど、厳しい処分がされます。

例えば、千葉県教育委員会の「懲戒処分の指針」の「3 児童生徒に対する非違行為関係」の「(2)わいせつな行為等」では、「・児童生徒に対してわいせつな行為を行った職員は、免職とする。」「・児童生徒に対してわいせつな言辞等の性的な言動を行った職員は、停職又は減給とする。ただし、性的な言動を執拗に繰り返すなど特に悪質な場合は、免職とする。」と定められています。

参照

千葉県教育委員会「懲戒処分の指針」について

公務員の身分に関する手続き

上記のように、性犯罪やわいせつな行為に対しては重い懲戒処分が下されます。

公務員の場合、起訴されると、強制的に休職させられることがあります(地方公務員法第28条第2項第2号、国家公務員法第79条第2号)。休職中は仕事ができませんし、給与は支給されません(国家公務員法第80条第4項参照)。

国家公務員法では、刑事裁判が継続中の事件であっても懲戒手続を進めることができる旨定められています(国家公務員法第85条)。そのため、起訴されたり判決が出る前に懲戒手続がすすめられ、懲戒処分が下されることがあります。

裁判の結果、有罪の判決を言い渡され、禁錮以上の刑に処されると、失職してしまいます(地方公務員法第28条第4項・第16条第1号、国家公務員法第条第76条・第38条第1号)。地方公務員の場合は、「条例に特別の定めがある場合」には失職とならないとすることができます。しかし、通勤中の交通事故や執行猶予付きの禁錮にとどまる場合にのみ失職させないことができるという場合が多いです。性犯罪の場合、懲役刑が多いですし、上記のように事案によっては免職となるほど重いとみなされている類型であるため、原則通り失職することになるでしょう。

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公務員と性犯罪

まとめ

このように、公務員の性犯罪は重い処分が下されることになります。性犯罪でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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