公務員がコンビニのセルフ式のコーヒーマシンで、支払った金額で注げるサイズより大きなサイズを注いで、警察に逮捕されたり懲戒免職処分を受けた事件が相次ぎ、話題となっています。ここでは、公務員がコンビニのセルフ式コーヒーの支払った金額より大きなサイズを注いだ事件について解説します。
犯罪について
まず、支払った代金を超えてコーヒーを注いだ場合、いかなる犯罪が成立するでしょうか。
実際の犯行の内容としては、大きいサイズを注ぐ真意を隠して小さいサイズを注文してそのサイズの代金しか支払っていないので、お店をだましていたと言え、詐欺罪(刑法第246条第1項)ではないかと思うかもしれません。
しかし、詐欺罪が成立するには、犯人の欺罔行為(騙す行為)により相手方が錯誤(勘違い)に陥り、これにより処分行為(商品を渡す、お金を払う、など)を行う必要があります。一連の事案のような行為では、お店の方は大きいサイズで注いでよいなどという処分行為はしていないため、詐欺罪は成立しません。また、当初は代金通りの量を注ぐつもりだったが、いざコーヒーマシンの前に立ってから気持ちが変わった場合、欺罔行為がないことになります。騙すつもりがあったのかどうか、いつからそのつもりだった菅亜土認定するのは極めて困難であり、詐欺罪に問うのは困難です。
一方で、この種の事案では支払った金額分を超える量のコーヒーについては持っていく正当な理由がなく、これを勝手に持ち去ったといえるので、「他人の財物を窃取した」といえ、窃盗罪(刑法第235条)が成立します。
窃盗罪は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金、詐欺罪は10年以下の懲役と定められており、窃盗罪が成立する場合は、罰金刑で済む可能性があります。実際、諸般で被害金額が低い事件では罰金刑となることが多いです。この場合、略式手続き(刑事訴訟法第461条以下)により、裁判所に行かずに書面だけで刑事手続きを終了させることができます。
もっとも、最終的に略式手続きで罰金刑に終わるような事件であっても、繰り返し行い常習性があると判断された場合、捜査中に逮捕や勾留をされて、長期間身体拘束を受けることもあります。
懲戒処分
公務員の場合、犯罪を行うと、非違行為をしたとして、懲戒処分を受けることとなります。
国家公務員の「懲戒処分の指針」では、懲戒処分の基本事項について以下のように定めています。
第1 基本事項
本指針は、代表的な事例を選び、それぞれにおける標準的な懲戒処分の種類を掲げたものである。
具体的な処分量定の決定に当たっては、
① 非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
② 故意又は過失の度合いはどの程度であったか
③ 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
④ 他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
⑤ 過去に非違行為を行っているか
等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとする。
また、「第2 標準例」において、各非違行為の標準的な懲戒処分について定めています。
3 公務外非行関係
(中略)
(7) 窃盗・強盗
ア 他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。
イ 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した職員は、免職とする。
(8) 詐欺・恐喝
人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員は、免職又は停職とする。
窃盗という犯罪事態、免職又は停職という重い処分が標準となっています。
金額的には多くはないとしても、常習的に行われているのであれば、処分は重くなります。
まとめ
このように、コンビニのコーヒーの大きいサイズを勝手に注いでも懲戒免職となることがあります。
コンビニの商品を多く持って行ったなどでご不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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