公務員の汚職の罪-警察官が勾留中の女性に抱きつくなどした事件を基に特別公務員暴行陵虐罪について解説

【事例】

勾留中の30代女性に抱きつくなどしたとして、千葉県警は15日、特別公務員暴行陵虐の疑いで当時船橋署留置管理課に勤務していた男性警部補(54)を書類送検し、減給100分の10(6カ月)の懲戒処分とした。警部補は同日依願退職した。県警で今年、懲戒処分を受けた職員は3人目。

 書類送検容疑は昨年11月上旬ごろ、同署留置施設内で、勾留中の女性に抱きつき、12月13日には護送中の車内で同じ女性の手を握った疑い。

 県警監察官室によると、警部補は留置管理施設内で、女性が居室外のロッカーに着衣をしまう際、後ろから抱きついた。手を握った際、警部補は隣に座っていた。いずれも複数人で業務を行っている中で行われたが気付いた人はいなかった。

 1月下旬、女性から留置業務の担当官に申告があり発覚した。県警の調べに対し警部補は対応する中で特別な感情を抱いてしまったとしている。警部補は2月、本部警務課に異動になった。警部補は「このような行為を行い、関係者や警察組織に申し訳ない気持ちでいっぱい。職を辞して責任を取る」と話している。

 同室の首席監察官は「被留置者の適切な処遇を行うべき警察官が、このような行為に及んだことは警察業務の信頼を損なうもので誠に遺憾。被害者と県民に深くおわび申し上げる」とコメントした。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8ffbce62e93eb5f676e2e0a6a2e0891b2ca8e060

千葉日報3/17(金)15:37配信

(個人名などを修正しています)

公務員の中でも裁判官や検察官、警察官は逮捕のように国民の権利利益を強制的に制約する公権力の行使をも行うことができます。このような公務員がその職権を濫用すれば、公務の適正が害され、公務に対する国民の信頼も損なわれてしまいます。そのため、公務員が職権を濫用して汚職をすることに対しては、重い刑罰が科されます。

汚職の罪には贈収賄罪も含まれますが、これらは公務の適正とそれに対する国民の信頼を脅かすものです。一方、人を逮捕するなど身体拘束をする権限を有する者が、その権限を悪用して暴行やわいせつ行為を行う罪が特別公務員暴行陵虐罪です。

特別公務員暴行陵虐罪

裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、特別公務員暴行陵虐罪が成立し、7年以下の懲役又は禁錮に処されます(刑法第195条第1項)。法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、同様に処罰されます(刑法第195条第2項)。

第1項の罪の主体も、特別公務員職権濫用罪と同じく、裁判官、検察官、検察事務官、警察官、裁判所書記官などが該当しますが、人を逮捕監禁する権限を有しない者も対象になります。

暴行とは暴行罪などと同じく身体に対する不法な有形力の行使をいいます。

陵辱とは辱める行為や精神的に苦痛を与える行為、加虐とは苦しめる行為や身体に対する直接の有形力の行使以外の肉体的な苦痛を加える行為などをいいます。わいせつ行為など、暴行以外の方法で精神的又は肉体的に苦痛を与える行為が該当します。

第2項の「法令により拘禁された者」とは、逮捕や勾留されている者など、法令上の規定に基づいて公権力により拘禁されている者をいいます。このような者を「看取又は護送する者」が本罪の主体となります。

【事例】では警部補が勾留中の女性に抱きつくなどしており、特別公務員暴行陵虐罪が成立します。

特別公務員暴行陵虐罪を犯し、よって人を死傷させた場合は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断されます(刑法第196条)。

傷害罪は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金(刑法第204条)、傷害致死罪は3年以上の有期懲役(刑法第205条)に処されます。したがって、致傷罪は1月以上15年以下の懲役、致死罪は3年以上20年以下の懲役となります。

懲戒処分

特別公務員暴行陵虐罪は相当重い罪で、公務員への信頼を大きく損ねかねないことですが、懲戒処分の指針では、特別公務員暴行陵虐罪に当たる非違行為をした場合は挙げられていないところが見受けられます。このような行政庁では、暴行やわいせつをした場合の基準を参照して処分が決められるものと考えられます。

参考

人事院「懲戒処分の指針について」

https://www.jinji.go.jp/seisaku/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.html

こちらの記事もご覧ください

汚職の罪

おわりに

以上のように、特別公務員暴行陵虐事件は刑事・懲戒とも重い処分を科される可能性が高いです。そのため、早期に弁護士に相談して対応を決めるべきです。

特別公務員暴行陵虐事件でお悩みの方は、あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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