普段は真面目に仕事をして生活している公務員の方々でも,自動車による人身事故を起こしてしまうことがあります。
公務員が人身事故を起こしてしまったら,失職や懲戒処分を受けることになります。
失職
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」には,以下のように規定されております。
「(過失運転致死傷)
第5条 自動車の運転上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は,七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし,その傷害が軽いときは,情状により,その刑を免除することができる。」
国家公務員法・地方公務員法では,執行猶予だとしても,禁錮以上の刑に処せられたら,公務員としての身分を失うと規定されております。
つまり,正式起訴されたら,罰金処分の可能性が低いことから,失職となってしまいます。
検察官は,正式起訴をするかどうかの判断で,注意義務違反の大きさと被害の大きさを総合的に考慮しています。
被害の大きさは基本的には客観的証拠に基づき評価されてくるので,争いの余地は小さいと思われます。
しかし,注意義務違反について,取調べで違法・不当な働きかけがあり,過剰に悪質性が大きい内容の供述調書が作成されてしまうことがあります。
警察官から取調べで,威圧されたり,誘導されたりすることが珍しくありません。
まずは取調べで毅然とした対応をして,注意義務違反が過剰に大きく評価されないようにしなければなりません。
そのためには,刑事事件について能力のある弁護士を付けて対応していく必要があります。
取調べで具体的にどのように話すかを打ち合わせし,違法・不当な働きかけがあったら抗議や黙秘で対抗することになります。
懲戒処分
刑事処分が罰金処分以下だったとしても,勤務先から懲戒処分を受けることになります。
人事院が示している「懲戒処分の指針について」では,以下のように記載されております。
「4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係
(1) 飲酒運転
ア 酒酔い運転をした職員は,免職又は停職とする。この場合において人を死亡させ,又は人に傷害を負わせた職員は,免職とする。
イ 酒気帯び運転をした職員は,免職,停職又は減給とする。この場合において人を死亡させ,又は人に傷害を負わせた職員は,免職又は停職(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は,免職)とする。
ウ 飲酒運転をした職員に対し,車両若しくは酒類を提供し,若しくは飲酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両に同乗した職員は,飲酒運転をした職員に対する処分量定,当該飲酒運転への関与の程度等を考慮して,免職,停職,減給又は戒告とする。
(2) 飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの)
ア 人を死亡させ,又は重篤な傷害を負わせた職員は,免職,停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は,免職又は停職とする。
イ 人に傷害を負わせた職員は,減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は,停職又は減給とする。
(3) 飲酒運転以外の交通法規違反
著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は,停職,減給又は戒告とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こして措置義務違反をした職員は,停職又は減給とする。
(注) 処分を行うに際しては,過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとする。」
飲酒運転や轢き逃げが加わると,特に重い処分となります。
懲戒処分では,過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとされておりますので,やはり個々の事故の状況の分析や被害者対応が必要になってきます。
被害者への傷害についても,重篤なものかどうかの評価を慎重にする必要があります。
過失の程度について,殊更重く評価されないように主張していかなければなりません。
事故後の対応等で一番重要なのは,被害者への賠償です。
任意保険で対人・対物無制限で補償されているかどうかがまず重要です。
そのうえで,任意保険の賠償金とは別に,示談金をお支払いして示談が成立したら,刑事処分と懲戒処分で有利に評価される可能性が高まります。
被害者に対して誠意を持って謝罪と話し合いをしていく必要があります。
そのためには,刑事事件について経験と能力のある弁護士に依頼することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,公務員の自動車による人身事故の事件もこれまでに数多く扱って解決してきました。
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